《銀海総合掲示板》   作:にわか太郎

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【閑話】ただ飲んで、ただ駄弁るだけ②

 

「……んっ、んっ……ハァー……」

 

「凄い飲みっぷり」

 

「それだけ疲れてたってことですよ。現にペンギンさん、今回の拠点設立に関連する事務仕事の八割方を任されてるって話ですし……」

 

「ん、クソブラック」

 

藤丸は苦笑いを浮かべ、自身とシロコのコップにジュースを注いでいく。

 

「まあ、俺の方はいい。それよりも現場の進捗はどうなんだ?」

 

ペンギンが藤丸に問う。

 

「もうそろそろですね。本来なら今日の昼頃に完成する予定だったんですけど、技術班があまりにも拘りすぎて……まあ、はい。それでも明後日辺りには完成すると思いますよ」

 

「方舟の方は……見た目は一緒だったけど、内装が一部を除いて原型を留めていなかった」

 

「お前達も苦労しているんだな」

 

呆れ果てた顔で二人は言った。

 

「それにしても凄まじい技術力だな。ウチの技術開発部もここまでじゃなかったと思うが……」

 

「自分達の拠点になるわけですからね。何というか、技術班の熱気と気合いの入り具合が尋常じゃなかったです。しかも能力や権能を最大限に駆使した結果、内部は一つの銀泡に匹敵する広さになったらしくて……正直、着いていけません」

 

「もう無茶苦茶だな」

 

「技術班の一人が言うには、『個室一つとっても、空間操作で無限に拡大縮小できる異界になっている。しかも、要塞自体が多重次元によって構成される迷宮。多次元バリアとヨグ=ソトースの庇護によって常に護られているから内外問わず、あらゆる害や攻撃から対象を自動(オート)で護り抜く。誰がどんな手で攻めてこようと、そう簡単に落とせるような代物じゃねぇ。不可侵領海級になると流石に別だけどな。オラオラ』とのことらしいです」

 

「何だそりゃ」

 

「ん、もう仕事の話はいい」

 

シロコはうんざりしたような顔で、ジュースを飲みつつ、おつまみをボリボリ食べている。

 

「……それもそうだな、よし。三人だけじゃなんだし、他の連中も呼ぶとするか」

 

「良いですね、誰を呼びます?」

 

注がれたジュースをぐいっと飲み干し、藤丸は<思念通信(リークス)>の魔法陣を描く。

 

「そうだな。(ひと)()ずは──」

 

「私と一献交えるのはどうかね?」

 

「普通に不法侵入なんだが?」

 

いつの間にか後ろに立っていた不法侵入者(なぞのじんぶつ)

 

それは長い金髪に軍服を纏った、神々しさとカリスマとを感じさせる男の声──

 

「ラインハルトさん、来てたんですね」

 

「私の方もやるべきことは粗方片付いたのでね」

 

用意された椅子に黄金の獣(ラインハルト)は座る。

 

「頼むから、この家では何もしないでくれよ」

 

ペンギンはぞっとした表情で彼を見つめる。

 

「ふむ。誤解があるようなので訂正させてもらうが、今の私(・・・)に誰かれ構わず、総てを愛する(万物を破壊する)ような渇望はない。……半分、と頭にはつくがね」

 

ラインハルトは持参した酒を取り出す。

 

「……まあ、その話はまた今度の機会にさせてもらうとしよう。この憩いの場に似つかわしくない話は、私としても遠慮させてもらいたい。せっかくの興を削ぐような真似はしたくないのでね」

 

「なるほどな。ところで、メルクリウスの方はどうしたんだ?……いや、まさかとは思うが」

 

「その様だ。曰く、『……獣殿。申し訳ないが、今日は女神のために成さねばならぬことが──』と足早に去られてしまった」

 

困ったような顔でラインハルトは言う。

 

「あいつも平常運転か」

 

「まあまあ。何時ものメンバーも一人を除いて揃ったわけですし、もう一度乾杯しましょう」

 

藤丸がコップを掲げ、皆にそれを促す。

 

「それもそうだな。……では、改めて乾杯だ」

 

「乾杯!」

 

乾杯(Prost)

 

「ん、乾杯」




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