《銀海総合掲示板》 作:にわか太郎
どこかでカタカタ、と歯車の回る音がした。
その歯車はまるで秩序に従っているかのように、精密に、どこまでも正確に動いている。
それが聞こえるのはパブロヘタラの奥底。偽りの宮殿の遥か深層にある、水槽から響いている。
カタカタカタ、と歯車は回った。
その歯車──正帝ドミエルと呼ばれる秩序機構は、その思考を絶え間なく巡らせ、まるで秩序機構同士が互いに対話をなしているかのように、ある議題についてを議論し始めたのだ。
「──おかしい」
カタリ、と歯車は回る。
「この海の秩序に異変が生じている」
絡繰機構は自分自身に向かって問うた。
「……どの秩序に異変が?」
「転生の秩序だ。ここ数年の間、この海の輪廻に甚大な不具合が起きている」
「生じるはずのない秩序が、生まれるはずのない生命が、本来の秩序に背く形で産まれ始めた」
秩序機構は深刻そうな声色で事を語る。
「これは看過すべからざる事柄だ」
「これでは完全なる正義を実行できなくなる。一刻も早く、対策を講じなければならない」
カタカタカタ、と歯車は回り続ける。
まるで焦燥感に駆られるように、歯車はその速さを増し、ひたすらに思考を巡らせている。
「それだけではない」
「我々が創りあげた学院同盟──パブロヘタラが最近になり、妙な動きを見せている」
「……それは秩序の異変と関連が?」
「──ある」
それは確信があるようにカタリ、と回った。
「近頃、謎の集団が各世界で不穏な動きを見せている。実態こそ定かではないが、あの世界の学院のように、複数の世界からなる同盟的な集団であることは明らかだ」
「……では、どうする?」
「このままでは完全なる正義を実行できない。ならば、我らがすべきは──」
秩序機構は歯車の速さを更に増し、やがて動きを止める。そうして彼らは結論を出した。
「この海に混乱をもたらす集団の排除。もとい、それは悪の排斥に他ならない。準備しろ」
そう結論を出し、秩序機構は一部の歯車を水槽の外へと放出する。そして歯車が嚙み合い、連結し、完成したのは人型の歯車だ。
それは人払いの済んだ宮殿から飛び上がり、無数の絡繰神を伴って、完全なる正義を粛々と執行しようと空を征く──まさにその時だった。
人型の歯車、正帝ドミエルは動きを止める。
──
辺りを見回すが誰も居らず、ただただ神々しい声が周囲に響いている。そうした刹那、正帝は何もない空間から莫大な力の起こりを検知した。
「<
それは世界一つを容易く滅ぼせる、極めて強大な神の魔力だ。声とともに響いたのは天地開闢にも等しい、深き神たる力の発露──
「さあ、正帝ドミエル。卿の全霊をもって、我が
それは目の前で眩く、光輝を放つ黄金の獣。
ラインハルト・トリスタン・オイゲン・ハイドリヒが、正義を求めし絡繰の前に姿を現した。
黄金の獣 VS 正義の絡繰──。