《銀海総合掲示板》   作:にわか太郎

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正義と黄金

 

声とともに開戦の狼煙は上がり、その正義と黄金の激突は数時間にも及んでいた。

 

「……っ……!」

 

しばらくの間、緊迫した状態が続く。だが、その停滞を打ち破り、先に動いたのは正帝だった。

 

彼は無数の絡繰神で周囲を固め、眼前にて光る黄金に負けずとも劣らぬ力を収束させていく。

 

「……ほう。卿はそう動くか、ならば──」

 

黄金の獣(ラインハルト)は聖槍を掲げ、それに自身の魔力を通す。一見すると普通の行為だろう。しかし正帝は神眼()を凝らし、その聖槍の深淵を覗く。そして深淵を垣間見ることで、それ(・・)の異様さに気づいた。

 

いや、直感と言ってもいいだろう。

 

あれは槍の形をした、一つの宇宙(せかい)そのものだ。

 

ゆえに、こちらも相応の覚悟をもって臨まねばならない。完全なる正義を実行するため──

 

「<断罪刃断(ゲゼルデ)>」

 

ドミエルの周囲に侍る絡繰神が腕を赤く光らせ、その魔力を収束させる。そうして腕を振るい、そこから放たれたのは赤き斬撃だ。だが、

 

「甘い」

 

それは弾き返される。

 

いとも容易く。

 

流石に己より深き主神とはいえ、手加減された一撃が我が総軍に届くはずもない。本体は、あらゆる防壁が施された無敵の鎧でもあるがゆえに。

 

「──卿ら、私を失望させるな」

 

「小手調べでもないのによく言う」

 

ドミエルは口を開くと、背後から無数の影を出現させる。それは総勢五十体からなる人工の神──絡繰神によるものだ。

 

「行け」

 

ドミエルがそう言うと、無数の絡繰神がラインハルトに飛びついた。人工とはいえ、一体一体が深層世界の主神だ。いかに絶対的な力をもつラインハルトとはいえ、己より深き神の特攻は堪える。

 

──引き剥がせない。

 

すると絡繰神は徐々に、その身体を液体状のものへと変質させていく。水銀だ。それは球体状に固まり、歯車の多重立体魔法陣が浮かび上がった。

 

「回れ」

 

ギチギチと激しく音を立て、五十体の絡繰神がラインハルトを押し潰さんとしている。そうして歯車の多重立体魔法陣は粛々と回り始めた。

 

「…………!」

 

「<銀世歯車悪滅爆壊(ボロウヴレム・アヴィラータ)>」

 

瞬間、膨大な光の粒子が立ち昇る。

 

辺りは燦然と輝いており、その歯車による大爆発が天地をつなげるほどの銀の柱となった。

 

それは滅びの運命を強制する深層大魔法。

 

絡繰世界デボロスタにおいて、その魔法の発動は絶対的な滅びを意味する。

 

ゆえに生還することは不可能。

 

本来ならば──

 

「…………!?!?」

 

ズガアアアアアアアアアアアアアアン!!!!

 

突如として周囲の銀水が、何の前触れもなく一気に消し飛んだ。蒸発するはずもない銀水が突如として、だ。──いったい、なにが?

 

 

その男は墓に住み あらゆる者も あらゆる鎖も

Dieser Mann wohnte in den Gruften,

und niemand konnte ihm keine mehr,

 

あらゆる総てをもってしても繋ぎ止めることが出来ない

nicht sogar mit einer Kette, binden.

 

彼は縛鎖を千切り 枷を壊し 狂い泣き叫ぶ墓の主

Er ris die Ketten auseinander und brach die Eisen auf seinen Fusen.

 

この世のありとあらゆるモノ総て 彼を抑える力を持たない

Niemand war stark genug, um ihn zu unterwerfen.

 

ゆえ 神は問われた 貴様は何者か

Dann fragte ihn Jesus. Was ist Ihr Name?

 

愚問なり 無知蒙昧 知らぬならば答えよう

Es ist eine dumme Frage. Ich antworte.

 

我が名はレギオン──

Mein Name ist Legion

 

滅びたはずの水銀の中から紡がれる言葉。

 

それに正帝は驚愕を隠せないでいた。なぜ、奴は生きている?そんな正帝の思考を他所に黄金の獣、ラインハルトは詠うように声を上げる。それは威厳に満ちた、気高くも恐るべき神の詠唱。

 

銀水聖海広しといえど、黄金の獣(ラインハルト)にしか扱えぬ、既知世界の秩序()から外れし究極の創造。

 

そうして発動された黄金の深層大魔法──

 

Briah(創造)──

 

「<至高天・黄金冠す第五宇宙>」

グラズヘイム・グランカムビ・フュンフト・ヴェルトール

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

402:名無しの不適合者

いっけぇええええ!!!

 

403:名無しの不適合者

そこじゃああああああああ!!!!

 

404:名無しの不適合者

ヤバ

 

405:名無しの不適合者

語彙力消し飛んでいくわ、こんなん

 

406:名無しの不適合者

凄ぇな、獣殿の戦いを生で見れるのか。……てか、よく俺らの存在に影響が出ないよな

 

407:名無しの不適合者

 

408:名無しの不適合者

なんやこれ

 

409:名無しの不適合者

アムルも一度は滅びたのに、何で生きとるん?

 

410:名無しの不適合者

わからん。わからんけど……

 

411:名無しの不適合者

>>409 気合いッスよ、気合い

 

412:名無しの不適合者

それはアレよ。何か素敵なサムシング的な……うん。アレですね!

 

413:名無しの不適合者

>>412 思考放棄すんなボケ

 

414:名無しの不適合者

>>412 役立たずですねぇ

 

415:名無しの不適合者

そもそも戦闘に発展するまでが短すぎるわい!

 

416:名無しの不適合者

いやぁ……まさかパブロヘタラの方で待ち伏せて、正帝を直接叩こうと言い出すとは思いもよらず

 

417:名無しの不適合者

一刻も早く戦いたかったんやろなぁ

 

418:名無しの不適合者

確かに。出向いてから戦闘になるまでが、即堕ち2コマ並みの速度だったな

 

419:ΑΩ

……じゃあ、そろそろ俺達もデボロスタに向かうぞ?時間も惜しいし、さっさと済ませたい

 

420:彗星の大蜘蛛

全員

 

421:完璧親父

纏めて

 

422:コメディアン術師

余計なお世Wi-Fi──!!!

 

423:名無しの不適合者

>>422 は?

 

424:名無しの不適合者

うーん、この()

 

425:名無しの不適合者

タイミング最悪過ぎて草やで

 

426:名無しの不適合者

……なんか知らんけど、今ので界間通信の精度が上がったっぽい。これ、【超人(コメディアン)】のせいか?

 

427:名無しの不適合者

あ、ホンマや

 

428:名無しの不適合者

 

429:名無しの不適合者

 

430:名無しの不適合者

髙羽も参戦するんかいワレェ!!!

 

431:コメディアン術師

>>430 いや、俺は参加しないぞ?

 

432:名無しの不適合者

>>431 は?(マジギレ)

 

433:名無しの不適合者

マジで何しに来たんだよお前www

 

434:名無しの不適合者

おい、そんなことより

 

435:名無しの不適合者

ん?

 

436:名無しの不適合者

あっ、獣殿が!

獣殿が深層大魔法を使用なされたぞ!!

 

437:名無しの不適合者

ラインハルトの創造って、こっちだと深層大魔法扱いになるんだな。……ってか、深層大魔法なら魔法陣描くだけでええやん。詠唱の必要あるか?別に力が不完全に発揮されるわけでもないし

 

438:名無しの不適合者

>>437 あるに決まってるだろボケカス。だって、

 

439:名無しの不適合者

……だって?

 

440:名無しの不適合者

その方がカッコええやろがい!

 

441:名無しの不適合者

>>440 わかるマン

 

442:一般通過ジオング整備士

偉い人にはそれがわからんのですよ

 

443:名無しの不適合者

>>442 言うほど>>440(ヤツ)は偉いか?

 

444:名無しの不適合者

生きてるだけで偉い定期

 

445:名無しの不適合者

せやね

 

446:名無しの不適合者

それはそう

 

447:名無しの不適合者

まあ詠唱するにしろ、それ自体にデメリットはさしてないだろ。完全に本人の自由やんけ

 

448:名無しの不適合者

せやな

 

449:名無しの不適合者

まま、ええわ。そんで?

肝心のヴェヴェルスブルグ城はどこや

 

450:名無しの不適合者

>>449 上の方にあるで

 

451:名無しの不適合者

あ、あったわ。サンクス

 

452:名無しの不適合者

それにしても、いつ見ても圧巻だな

 

453:名無しの不適合者

死後の概念を具現化した地獄。流出一歩手前に位置するといっても過言ではない究極の創造……いやはや、荘厳にして美麗の一言に尽きますね

 

454:名無しの不適合者

はえー……あれ?髑髏ないやんけ

獣殿、地獄の軍勢はどうしたん?

 

455:ミレニアムカイセツメガネ

解説しましょう!あれはラインハルトさんの創造、【至高天・黄金冠す第五宇宙】。またの名を『グラズヘイム・グランカムビ・フュンフト・ヴェルトール』。彼の「全力を出したい(全力で愛したい)」という渇望から、全力を出せる場である「城」を作り出し、城の中で死んだ者を不死の英雄(エインフェリア)として己の軍勢に取り込むのが能力となります!この『城』と呼ばれるモノ……いわゆる、ヴェヴェルスブルグ城は既存の世界秩序から完全に切り離されていまして、距離と座標の概念を破壊することが可能です。なので無資格者は入るどころか、近づくことも出来ません。ですが、逆に招かれると世界中の何処からだろうと入れるというのが『城』の実態のようですね。……そしてご存知の通りラインハルトさんの愛とは破壊なのですが、不死の英雄(エインフェリア)は彼が存在する限り不滅でして、どれだけ死んでも蘇るため、この異界の中では喪失の不安に怯えることなく、彼は全力で総てを()すことができるということです。……本当に恐ろしい力ですね!

 

456:名無しの不適合者

【速報】黄金の髑髏、一体も存在しない

 

全員、肉体持ちやないかい!!!

 

457:名無しの不適合者

>>455 え?じゃあ最低数百万の総軍が全員自我を持っていて、かつ不死の英雄(エインフェリア)ってことっすか?

 

458:名無しの不適合者

より厳密に言えば、今の(・・)獣殿は根源や在り方、その他諸々に少々特殊な事情が絡んでいまして。まあ、今は戦いに集中させてもらいましょ

 

459:名無しの不適合者

がんばえー!

 

460:名無しの不適合者

>>458 ……話、逸らしましたね

それにしても特殊な事情ですか。

ラインハルト殿ほどの方となると一体、どんな事情が絡むんでしょうね?気になります

 

461:名無しの不適合者

>>460 多分、転生絡みの案件だと思われ。そういう、存在や在り方の根本に関わる特異な事情って転生者の間ではよくある話ですし……

 

462:名無しの不適合者

なるほ

 

463:名無しの不適合者

あー然程、珍しいことでもないのね

 

464:名無しの不適合者

まあ色々あることにはあるんだけど……そこを話すとややこしくなるんだよねぇ。ま、今は観戦に徹しようか。楽しくなるだろうしね……ん?

 

465:名無しの不適合者

……あれ。正帝の奴、撤退してねぇか?

 

466:名無しの不適合者

ホンマやな

 

467:名無しの不適合者

……いやいや、逃がしちゃアカンやろ!それでこっちの行動を学習された結果、俺らの誰かが首刈られて正帝になる未来とか絶対に嫌だよ!?

 

468:名無しの不適合者

>>467 記憶も盗まれるだろうし、余計に最悪だゾ

 

469:名無しの不適合者

あっ、逃げた。追えっ、追えぇえええええ!!!

アイツ、獣殿の魔城から脱出しやがったぞ!?

 

470:名無しの不適合者

マズE

 

471:名無しの不適合者

ワイら、完全に目をつけられたな

 

472:名無しの不適合者

これで後戻りはできなくなったぞ

 

473:名無しの不適合者

……じゃあ、絡繰世界を襲撃しに行ってる連中に連絡しないとな。ラインハルトはこのままパブロヘタラに陣取るとして、絡繰世界の方に残り七割の<絡繰(からくり)淵槽(えんそう)>があるんだし。それで正帝や絡繰神を量産されたら堪らないから、さっさと《淵》を叩き潰しにいくことを提案しないと……

 

474:ΑΩ

>>473 あー……

 

475:彗星の大蜘蛛

>>473 ……遅かったね(・・・・・)

 

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