《銀海総合掲示板》   作:にわか太郎

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魔弾世界に這い寄る者

 

銀水聖海。第一テルネス領海。

 

第一テルネス。そこは魔弾世界テルネスの中枢であり、元首たる大提督ジジ・ジェーンズを筆頭とした深淵総軍が治めている小世界である。

 

銀泡の形状はさながら砲塔を彷彿とさせ、世界は見渡す限りが火山で埋め尽くされている。そして、その火口の奥底は果てが見えないほどに深く、底知れない闇が奥深く広がっているのだ。

 

時折、火口から蒼い光もちらついて見えた。

 

火山の至る所に軍事基地があり、そこから見える長い砲塔は、常に上空へと向けられている。

 

外敵を撃墜するためのものだろう。

 

そんな規律と秩序を遵守する世界に、一つの招かれざる異物が外界から紛れ込もうとしていた。

 

それ(・・)はニタニタと、いつまでも口の端を吊り上げながら笑声を上げている。ただただ嘲笑を浮かべ、ひたすらに虚空を見つめては、ゲラゲラと不気味な声を上げて(わら)っているのだ。

 

周囲に不快感と嫌悪感を与える嗤い声、その不気味さを隠そうともしない褐色の美丈夫。

 

その異物の名は──

 

「やっはろー!いつもニコニコ、貴方の隣に這い寄る混沌。皆大好き、ナイアルラトホテップ(ニャルラトホテプ)さんだゾ☆」

 

 

 

 

 

 

第一テルネスの領海にて、外界から来たる悪意はふよふよと重力に逆らって浮き続けている。

 

「さて……」

 

それ(・・)の正体は、時間を超越した高次元の神界(外宇宙)において『魔皇(主神)』の無聊を慰める全ての蕃神共の筆頭。別世界における超越の神族にして、神々の意を人々へ伝える代弁者(メッセンジャー)。混沌と狂気の代行者。

 

「スレの皆は制止してきたけど、ボクの性格や本質的に我慢できるはずもなく……ということで?やって参りました、魔弾世界テルネス!流石に原作小説で描写されてた通り、この世界は火山に軍事基地ばっかですね(小並感)。……いや、そんなことはどうでも良いんだが???」

 

邪神の名は、ナイアルラトホテップ(■■■■■■■■■■)

 

主神たる『魔皇』から誕生した原初の神族にして、『闇』や『無名の霧』と共に誕生した存在。

 

《窮極の深淵》に本体を置く「原型」の一柱。

 

そして何より──

 

「ま、趣味と実益を兼ねた暗躍ということでね。今回は魔弾世界テルネスに潜入し、最終的には大提督を化身に加えたいと思います!では……」

 

──(彼女)は「転生者」だ。

 

イクゾー!

 

デッデッデデデデ!(カーン)デデデデ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

邪神移動中……

 

 

 

 

 

半刻後。

 

ドン、ドン、ドン、ドンッ!!

 

周囲では銃声が木霊し、魔法砲撃による爆発が幾度となく炸裂する。それは魔弾世界が擁する軍勢、深淵総軍による()への一斉攻撃である。

 

ドゴオオオオオオオオオオ!!!──パシッ。

 

「はいはいはい、っと……お邪魔しますよ〜」

 

邪神の触手によって、深き力を有した魔弾が掴まれては、ボトボトと落とされていく。

 

「<魔弾爆裂青砲(ガルラ・ゼドム)>、てーーっっ!!!」

 

「……な、何だというのだっ!この魔弾世界を襲う、あの化け物はいったい……っ……!?!?」

 

「……ええいっ、考えるなっ!!たとえ相手が何であろうと我々、深淵総軍の力をもって異物は討ち取らねばならんっ!!次弾、発射用意だ!!!」

 

突如として黒穹から飛来した、世界の外より訪れし侵入者。それが何の予告もなく一方的に、第一テルネスへと被害をもたらしていく。

 

無論、それに深淵総軍が気付かぬはずもない。

 

その動きをいち早く察知した兵士達の行動は早かった。侵入者を視界に入れるや否や、迎撃態勢へと移り、()に対する攻撃を開始したのである。

 

そうした戦闘の余波で、周辺には無数のクレーターが生まれ、外敵たる邪神の攻撃により大破した大砲が辺りに無秩序に散乱している。

 

あまりに唐突な強襲ゆえ、深淵総軍も敵の意図を測りきれずに困惑を隠しきれていない。だが、それでもアレ(・・)が敵であることに変わりはない。ゆえに、彼らはその優れた統率による動き、強大なる戦力でもって敵を撃滅せんと動いているのだ。

 

「(うーん、銀泡に入界したと思ったらすぐこれで草。察知されるのも早いし、兵を動員するのも早い。こりゃ、大提督やオードゥスにはバレてる前提で動いた方が良さそうですねぇ。そうしたら──)」

 

「そこまでだ、侵入者」

 

どこからともなく声が聞こえた。その声に邪神は耳を傾け、兵士達の後ろへ注目する。現れたのは軍服を纏い、右手にマスケット銃を構えた男だ。

 

「こちらは深淵総軍、三番隊隊長ガウス・ジスロー」

 

三番隊隊長ガウスと名乗る男は銃口を向け、どこまでも無機質な声色で邪神に警告を発する。

 

「我々は貴様を滅殺する戦力を有している。ただちに魔力武装を解除し、投降せよ。捕虜としての待遇を保証する」

 

それがこちらの義務であるかのように彼は言う。

 

しかし、間髪入れずにその警告を鼻で笑った者がいた。邪神、ナイアルラトホテップである。

 

「ハハハ!そうは問屋が卸さない、ってね!!」

 

邪神は右手を触手に変え、眼前の者を薙ぎ払わんと攻撃を仕掛ける。その攻撃の余波だけで、並の小世界なら軽く消し飛ぶ程の威力を秘めていた。

 

だが、

 

「言ったはずだ、侵入者」

 

彼はマスケット銃を構える。すると蒼い粒子が銃口に集中し、迫りくる触手にそれが向けられる。

 

「我々は貴様を滅殺する戦力を有している、と」

 

銃口に膨大な魔力が収束し、そこから波濤の如く魔弾が至近距離で撃ち放たれようとしていた。

 

それは魔弾世界の深層大魔法──

 

「あ、ヤバi」

 

「<魔深流矢波濤砲(ベレニツィア・ノイン)>」

 

瞬間、声を無視して青き魔弾が邪神を襲った。

 

それは迫りくる破滅の触手をいとも容易く貫通し、本体であるナイアルラトホテップを穿つ。その根源は粉砕され、辺りは煙で立ち込めていた。

 

あまりに呆気ない侵入者の最期。

 

外敵が滅びたのは確認した。しかし、どうも違和感がある。それが何かまでは拭えぬまま──

 

「ガウス隊長!」

 

気付くと部下と思わしき男が、ガウスの下へと走り寄ってきていた。

 

「戦況はいかがでしょうか」

 

「侵入者はこちらの方で排除した」

 

ガウスは淡々と部下へ告げる。すると部下は驚いたように、目を丸くしてガウスを見つめた。

 

「なんと……!」

 

「それよりもお前達も早々に持ち場へ戻れ。またいつ、外敵が侵入してきてもおかしくない状況だ。それを留意しつつ、部隊への現状報告も忘れるな」

 

「はっ!……ところでガウス隊長、つかぬことをお聞きしますが」

 

「何だ?」

 

部下が言いづらそうに俯き、ガウスに問う。

 

「……先程、討伐された外界の神族と思わしき侵入者。それは──

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

本当に本物だったんでしょうかねぇ?

 

 

 

 

 

 

 

 

「……っ……!?!?」

 

驚愕に顔を歪ませたガウスは、すぐさまマスケット銃を部下らしき何か(・・)へと突きつける。

 

俯いていた顔を上げた男の顔面。それが明らかに()のものではなかったからだ。その顔に広がるのは、まさしく無限の広がりを持つ黒穹そのもの。

 

その顔は暗黒に染まった奥深き空間であり、星々が辺りを強く照らしている様子が垣間見える。

 

それは、まさしく人外のものだった。

 

ゆえに、彼は咄嗟に銃口へ膨大な魔力を集中させた。そして先程同様、深層大魔法にて敵を撃滅せんとした時──ガウスはようやく気付いたのだ。

 

「……な、ぜ……?」

 

己が手に握られていた銃が消失していることに。

 

「いやぁ、驚いているようで何よりだよ」

 

部下らしき何かは姿を別のものへと変質させる。そして、その姿を元の邪神のものへと戻した。

 

「……何をした?」

 

うんうんと頷く邪神を前に、ガウスは冷や汗をかいた。先程までは確実に握っていたはずの武器が、何の前触れもなく、突如として消えたのだ。

 

ゆえに彼は問う。今のは何だ、と。

 

「ん、ボクがしたことは非常に単純だよ?ちょっとした小手先の技術、要するに魔法と権能の合わせ技でね」

 

ガウスは眉を顰めつつも耳を傾ける。邪神の語る言葉の、その真意は何だとばかりに。

 

「ボクの権能と<時間操作(レバイド)>を併用することで、時間軸を書き換えて『ガウス・ジスローがこの場で銃を所持していた歴史』を無かったことにしたのさ。ま、流石に別の小世界だからか権能も万全に使える訳じゃない。だから、その効果も非常に限定的だ。それこそ、本当に手品みたいな用途でしか行使できないんだよねぇ……だから、」

 

「……っ……!がぁっ……!!」

 

ナイアルラトホテップは左手を触手に変え、眼前の彼の首に少しばかりの衝撃を加える。そうしてガウスは呆気なく、その意識を刈り取られた。

 

「君達は少し眠っててくれ。なに、起きた頃には全て終わってるさ──」

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