《銀海総合掲示板》   作:にわか太郎

32 / 73
その弾丸は放たれず

 

「ふーん、なるほどねぇ」

 

邪神は視界と空間のリンクを切り、気付けば火口の最下層へと到達していた。

 

目の前には一本道の通路があり、そこを通っていくと、深淵総軍の部隊が待ち構えていた。

 

潜入に<変幻自在(カエラル)>は使わなかった。

 

使ったところで、この精鋭達の魔眼は相当なものだ。仮に存在を隠蔽したとしても、容易く見抜かれるだろう。彼らは迎撃態勢を整え、邪神に向かって魔法砲撃を浴びせようとした。だが──

 

「頼むよ、アムル君」

 

「ああ」

 

邪神の影からぬぅっと小さな人影が現れる。

 

それは第一魔王、壊滅の暴君アムルのものだ。

 

「<極獄界滅灰燼魔砲(エギル・グローネ・アングドロア)>」

 

魔法陣の砲塔に、黒き七重の粒子が螺旋を描く。

 

対する精鋭達は魔法障壁を展開した。

 

だが、撃ち放たれた終末の火は魔法障壁ごと部隊を焼き払い、通路という通路を黒き灰燼に帰す。

 

しかし、部隊の精鋭からはまだかろうじて息遣いが聞こえる。死んではいないのだろう。

 

アムルは後方を振り返り、声を掛ける。

 

「これで俺はお役御免か。次はお前だ、ノア」

 

「任せよ」

 

そして彼が邪神の影へ沈んでいくと同時に、入れ替わるように現れたのは二律僭主ノアだった。

 

「……さてさて、遂に大提督とご対面か」

 

邪神と二律僭主は軽い足取りで歩を進め、やがて見えてきたのは殺風景なドアだ。そうしてドアの前まで歩くと、それは自動で開き始めた。

 

「ここまで来たのは貴様らが初めてだ」

 

声が響く。

 

視線を前へ向ける。

 

すると、青いガラスの向こうには、豪奢な椅子に堂々と坐している軍人然とした男がいた。

 

男は孔雀緑の軍服を身に纏い、左肩からはペリースをかけ、炎の紋章の制帽をかぶっている。

 

その姿は間違いなく魔弾世界テルネスの世界元首、大提督ジジ・ジェーンズのものだった。邪神達はようやく、司令室に辿り着いたのである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

114:グランドロクデナシ

いやあ、遂にここまで来たねぇ

 

115:名無しの不適合者

 

 

116:名無しの不適合者

 

 

117:名無しの不適合者

 

 

118:名無しの不適合者

いや、なに勝手に行動してやがるんですか???

 

119:名無しの不適合者

てか、先程の映像はどういうことだ???

獣殿と裸エプロン先輩どころか、二律僭主に第一魔王までおるやん。いや、ホントにどゆこと?

 

120:名無しの不適合者

そりゃ本部や支部、出身世界にさえ姿が無かったわけだ。なにせ、魔弾世界に突貫してんだから

 

121:練炭

道理で姿が見えないと思ったら……

 

122:管理人

胃が痛い(泣)

 

123:名無しの不適合者

お労しい方が何名か見えるんだが

 

124:名無しの不適合者

>>123 気にしてやるな

 

125:名無しの不適合者

それより動きがあったみたいだぞ

 

126:名無しの不適合者

ホンマやん

 

127:名無しの不適合者

見せろ見せろ

 

128:名無しの不適合者

お、大提督と交戦か?

 

129:名無しの不適合者

ただ、今回はノアとアムルもおるし、かなり余裕だと思うんやが。そこんとこ、どうなん?

 

130:名無しの不適合者

ノアは原作で一度、魔弾世界を相手に撤退したって語られていなかったっけ?

 

131:名無しの不適合者

……難しいの?

うーん。じゃあクマーの螺子をジジにぶっ刺して、《却本作り(ブックメーカー)》で完全に無力化するとか

 

132:名無しの不適合者

どうすりゃええべか

 

133:名無しの不適合者

>>131 格上相手には効くの?それ

 

134:名無しの不適合者

>>133 安心院さんにも効いたんだから、多少なりとも効果には期待できるだろうよ

 

135:名無しの不適合者

なるほ

 

136:碇シンジ(負完全)

『相手の存在が深すぎると、《却本作り(ブックメーカー)》が効果を発揮するのは流石に一瞬だけになるけどね。あーあ、ただでさえ僕は存在が過負荷(マイナス)の側に振り切れてるっていうのに。これじゃあ弱きを助け、強きを挫く僕の信条が形無しだ』

 

137:名無しの不適合者

それでもだろ。ある程度でしかないとはいえ、深さに左右されない力は貴重だからな

 

138:名無しの不適合者

流石は手ブラジーンズ先輩やで(ニッコリ)

 

139:名無しの不適合者

……それにしても()り合ってるねぇ

 

140:名無しの不適合者

お、本当だ。でも、ニャル野郎が戦ってないな。ノアに任せて、あとは一人で観戦気分ってか?

 

141:名無しの不適合者

うーん、この()

 

142:名無しの不適合者

普段のワイらも大概やけどな

 

143:名無しの不適合者

……素人目ではあるが見た感じ、二律僭主の方が優勢だな。今のところは

 

144:名無しの不適合者

大提督の放った魔弾や、魔砲の類を片っ端から踏み潰しまくってるしね

 

145:名無しの不適合者

背反影体(ダヴエル)>で反撃の隙も潰してるみたいだし、ここから負ける未来があんま想像つかんわ

 

146:名無しの不適合者

がんばえー!

 

147:名無しの不適合者

負けるなー!

 

148:管理人

胃が痛い(泣)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「<魔深根源穿孔凶弾(ベリアリウス)>」

 

激しい魔力が銃口から迸り、滅びの凶弾が唸りを上げる。大提督は手が届くほどの至近距離にて、二律僭主に突きつけた銃から魔弾を発射した。

 

「<二律影踏(ダグダラ)>」

 

しかし、二律僭主は即座に魔弾の影を踏みつけ、その刺滅の凶弾は呆気なく砕け散る。

 

流石は二律僭主といったところか。

 

しかし、それで終わりではなかったのだ。

 

「ほう」

 

砕け散った魔弾が更に弾け、幼いノアの身体に青い文様がびっしりと張り付いたのだ。だが、今のところ、これといって身体に違和感は感じない。どうやら即効性のあるものではないらしい。

 

「なるほど。呪いの類ではないな」

 

「手を止めてお喋りとは感心せんよ、二律僭主」

 

大提督は隙を見計らい、二律僭主の身体にありったけの魔弾を撃ち込む。だが──

 

「問題ない」

 

「……!?」

 

撃ち放たれた無数の<魔深根源穿孔凶弾(ベリアリウス)>が、二律僭主の身体を貫くことはなかった。

 

その凶弾は幼子の皮膚を貫通することなく、完全にぴたりと止まり、その場で静止している。

 

ノアの肉体は今や混沌との融合を果たし、その一切を征服している。いかに大提督の深層大魔法とて、その混沌を貫くのは容易ではないのだろう。

 

だが、そんな事実に特に怯むでもなく、ジジは更なる深層大魔法を撃ち放ってきた。

 

「<魔深流矢波濤砲(ベレニツィア・ノイン)>」

 

猛然と迫りくる波濤の魔弾に、対する二律僭主はその掌を夕闇に染め上げる。

 

「<掌握魔手(レイオン)>」

 

しかし、次の瞬間──二律僭主の身体に張り付いた文様が膨大な魔力を発し始めた。<魔深流矢波濤砲(ベレニツィア・ノイン)>がノアの皮膚を貫けぬまま爆発すると同時に、連鎖するように文様も爆炎に包まれる。

 

「<魔深連鎖誘爆弾印(ゴルゾロス)>」

 

だが、大提督は依然として鋭い眼差しをこちらへ向ける。それは──

 

「──誘爆の魔法か。しかし、私には効かないようだ」

 

爆炎に包まれたはずのノアが、その場にて泰然と立ち尽くしている。やはりというべきか、ノアの肉体を──混沌を貫くことはできていなかった。

 

「……なるほど。貴様の肉体には何かしらの仕掛けがあるらしい。だが、問題はない」

 

大提督は銃を懐に仕舞い、今度は別の銃を取り出す。それは──

 

「銀魔銃砲。我が世界の主神、オードゥスの権能だ。根源を弾丸に変換する機能を持つ。そして、それは──」

 

ジジは銃口に巨大な魔力を集めに集める。

 

「──世界をも弾丸に変えることが可能だ」

 

ノアは目を細め、その魔眼()にて深淵を覗いた。

 

集められた魔力の正体──それは圧縮された小世界そのものだった。それをジジは惜しげもなく、何の感慨すら見せずに放とうとしているのだ。

 

しかし、それを見逃す二律僭主ではない。

 

「<銀界魔(ゾネイ)──っ!?!?」

 

突如、撃ち放たれようとした魔力が霧散した。

 

「<背反影体(ダヴエル)>」

 

まるで制御が利かない。

 

それは秩序に反するかのように、何度発動しようとしても魔力が霧散するのだ。幾度引鉄を引こうと射出されない。だが、そこでジジは気づいた。

 

「……貴様」

 

ノアが掌に浮かべているもの。それは先程、大提督が射出するはずだった圧縮銀泡だ。

 

大提督は声を低くし、二律僭主を睨めつける。

 

それに対し、二律僭主は泰然と言い返す。まるで、行動を見通してたとでも言わんばかりに。

 

引鉄(ひきがね)を引いたからといって、弾丸を撃ち放てると思ったか」

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。