《銀海総合掲示板》   作:にわか太郎

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第一次銀海大戦①

 

銀水聖海。銀水世界リステリア領海。

 

「「「「「<断罪刃弾(ゲゼルデ)>」」」」」

 

「<大聖弓(ザンクト・ボーゲン)>──!!」

 

シュッ、ドッ、ズドオオオオオオンッ!!!!

 

取り囲むようにして放たれた無数の赤き斬撃。

そして、それを穿つようにして、創り出された巨大なる光の矢が幾本も斬撃に放たれていく。

 

ここは銀水世界リステリアの近海。そこでは銀海史上類を見ぬ、前代未聞の戦いが行われていた。

 

「甘いですよ」

 

光の矢を放つ男の後ろに、突如として出現した女が魔剣を振りかぶる。しかし──

 

「見えているといったはずだ」

 

その男は振り返りながら、女が振りかぶったはずの魔剣を掌にてギリギリで受け止める。

 

そうして互いの魔力で鬩ぎ合う中で、魔剣をジリジリと鳴らしながらも彼女は気づいた。その男の目の中に、瞳が三つも浮かんでいることに。

 

男が持つ異形の瞳にゾワッとした感覚を覚えるも、彼女はすぐさま後退する。

 

「なるほど」

 

彼女は考え込み、やがて言葉を口にした。

 

「その魔眼()に宿す三つの瞳は、未来を視るためのものですか。しかも、この感覚からして、まだ他に隠している権能がありそうですね」

 

彼女は途端に魔剣を捨て、まるで光と見紛うような速さで男に迫る。

 

「その本性、引きずり出して差し上げましょう」

 

「……何をする気だ!」

 

彼女は魔力を纏い、膂力を急激に引き上げる。

 

そうして左手で男の右腕をわしづかみ、右手を掲げ、途方もない魔力を集中させた。

 

それは巨大な球状魔法陣を作り出す。

 

その余波で周辺の海域が揺れに揺れ、近海に存在する銀泡にまで影響が及んでいる。

 

そうして発動された深層大魔法は──

 

「<孤斬魔滅掌(グヴェリニア)>」

 

「……なっ!? 」

 

瞬間、世界に亀裂が入ったかと思うほどの轟音が鳴り響き、近海が揺れ動くほどの震動が巻き起こった。あらゆる物を最小の大きさになるまで斬り刻む分断の刃、魔を滅する刃はその男を襲った。

 

深層大魔法<孤斬魔滅掌(グヴェリニア)>。

 

この魔法が使える存在は銀水聖海広しといえど、使い手は一人しか思いつかなかった。

 

だが、思い当たる節のある存在は、第一魔王アムルの手によって既に滅びている。それがなぜ、生きているのか。男は不思議でならなかった。

 

「……流石に威力が弱すぎましたか。この様子では本来の半分の力も出せていませんね」

 

男は血に塗れながらも、かろうじて肩を押さえながら、目の前の女を睨めつける。

 

「……流石に不可侵領海だっただけのことはある。我が全知全能(ジ・オールマイティ)による威力の減衰を経てなお、これほど凄まじい威力になるとは」

 

「おや、私のことをご存じで?」

 

「当然だ」

 

その男──ユーハバッハは女に向けて言う。

 

「かつて個別世界を支配していた不可侵領海、第一魔王ジゼルよ。お前はアムル・ヴィーウィザーに敗れ、滅ぼされたのではなかったのか?」

 

ユーハバッハは率直にジゼルへ問うた。

 

するとジゼルは微笑を浮かべる。

 

「第一魔王ジゼル?いいえ、違いますよ」

 

彼女は再び魔剣を創造し、滅却師(クインシー)と相対する。

 

「私は完全なる正義を実行する者、正帝ドミエル。この海の秩序にそぐわない不適合者を滅して、ただ一つの正義を執行するだけの絡繰機構です」

 

「……正帝ドミエルだと?」

 

その言葉にユーハバッハは眉を顰める。

 

だが、ジゼルはただ微笑を浮かべるだけだった。

 

「不思議ですか?」

 

「……あの時、絡繰世界は<願望の星淵>へと呑まれていった。その際に絡繰機構は正帝ドミエルから正帝ヴラドへと創り変えられたはずだ」

 

「本来であれば、そうしたでしょうね」

 

「……どういうことだ」

 

その問いに対し、正帝ドミエル(ジゼル)は丁寧に説明するかのように、ユーハバッハへと語った。

 

「簡単な話ですよ。私達は貴方達が知る情報と同じように、この海が辿るであろう未来についてを把握しています」

 

「…………」

 

「ですので、絡繰機構は────」

 

瞬間、ジゼルが言葉に詰まったように固まる。

 

「……?どうした」

 

「──失礼、お喋りが過ぎました」

 

ジゼルの姿をした正帝ドミエルは魔剣に膨大な魔力を込め、ユーハバッハの後方に回り込む。

 

「やれやれ、この姿だと些か口が回り過ぎてしまいますね。これ以上、喋りすぎても仕方がありません。早急に排除させていただきましょう」

 

「先程も言ったはずだ。見えていると」

 

だが、ユーハバッハは剣を創り、ジゼルの魔剣を受け止める。そうして彼は霊子の玉を生成し、正帝ドミエル(ジゼル)に対して五芒星を展開した。

 

その様子にジゼルは不可解さを感じつつも、魔力を纏い、膂力を上げて魔剣で押し切ろうとする。

 

しかし──

 

「<簒奪聖壇(ザンクト・アルタール)>」

 

そこで彼女は初めて眉を顰めた。

 

自身が内包する魔力と権能の一部が突如、奪われるかのように消失したからだ。

 

「やはり完全には奪いきれぬか……」

 

ユーハバッハは言った。

 

その言葉でジゼルは確信する。

 

「貴方の力は危険ですね」

 

ジゼルが後方に下がり、絡繰神達に目で合図を送る。すると、無数の絡繰神がユーハバッハに飛びついてきた。ラインハルトの時と同じだ。

 

ゆえに絡繰神は徐々に、その身体を銀の液体へと変質させていく。水銀である。それは球体状に固まり、歯車の多重立体魔法陣が浮かび上がった。

 

「……!!!」

 

「私は正帝としては不完全なので、この深層大魔法も上手く発動できるかは分かりませんが──」

 

それはギチギチと激しく音を立て、無数の絡繰神がユーハバッハを押し潰していく。そうして歯車の多重立体魔法陣は徐々に、徐々に回り始める。

 

そうして彼女の大魔法は発動された。

 

「回れ。<銀世歯車悪滅爆壊(ボロウヴレム・アヴィラータ)>」

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