《銀海総合掲示板》   作:にわか太郎

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第一次銀海大戦③

 

「──卿ら、無事かね?」

 

「ラインハルト!」

 

そこに現れたのは黄金の獣、ラインハルト・ハイドリヒだ。彼は自身の聖遺物たる聖槍を片手に、カズマ達のもとへと降下してきた。

 

「ふむ。一応の確認で立ち寄ったが、それも杞憂だったか。息災なようで何よりだ」

 

「いや、そんなことより……」

 

カズマはラインハルトの横に視線を向ける。

 

すると、そこにはアド・エデムとリムル=テンペストの二人がいた。彼らに向け、カズマは言う。

 

「お前ら、来てたんだな」

 

「まあな。これだけの絡繰神が押し寄せてるんだ。人手はあればあるほど良いだろ?」

 

「俺はORTの監視が目的だ。しかし……」

 

アドは徐ろに彼方へと視線を向ける。

 

それは何かを見据えるような視線だ。

 

そんなアドの様子を不思議に思ったのか、カズマも彼方に魔眼を向けた。すると──

 

『ヒャッハー!絡繰神の蹂躙祭りじゃ、ワッショイワッショイ!!』

 

「貴様らは震えながらではなく、藁のように死ぬのだ」

 

「死ね。死ね──呼吸をしていいと誰が言った」

 

視線の先の彼方にて、口々にそう叫ぶ者達が絡繰神の軍勢を蹂躙していた。彗星の大蜘蛛が、銃剣を携えた神父が、冥府魔道を征く者が──他の者達も皆一様に、その正義の軍勢を滅ぼしていた。

 

そして──

 

「<極獄界滅灰燼魔砲(エギル・グローネ・アングドロア)>」

 

終末の火が空を覆う軍勢に、ぽっかりと大きな穴を空けた。そこから陽光が差し込み、闇に閉ざされていた銀水世界の空が再び照らされる。

 

まるで戦況はこちらが優勢だと言わんばかりに、その数の差を物ともしない転生者達の猛攻が、正義の使者たる大軍勢を圧倒しているのである。

 

「やってるな。じゃ、俺達も行くか」

 

リムルは希望(エルピス)を構え、軍勢が密集しているエリアの方へと飛んでいく。アドも同じだ。

 

そうして二人を見送り、ラインハルトは言った。

 

「では、私は卿らの護衛を務めるとしよう。万が一、ということもある。油断は出来まい」

 

「……え、マジで? お前の性格的に、まだ戦いに混ざりに行く気満々だと思ってたんだけど?」

 

「卿は私を何だと思っているのかね?」

 

そう言いつつもラインハルトは聖槍に魔力を込め、宇宙を滅ぼす程の威力で、こちらに向かって襲いかからんとした絡繰神の攻撃を消し飛ばす。

 

そうして堰を切ったように、絡繰神の軍勢が空から雪崩のように襲いかかってきた。しかし──

 

「……はぁ、しょうがねぇなぁあああ!!」

 

瞬間、カズマが空に向けて爆裂魔法を放った。

 

そして、その絡繰神達が焼き尽くされるようにして消え去る。本来であれば、その爆裂魔法が絡繰神にダメージを与えることはなかっただろう。

 

しかし、今の彼の根源は深層十二界と同等の深さを持っている。ゆえに本来、浅層であるはずの魔法はカズマの根源に呼応して深化し、魔王の深層大魔法に迫るだけの威力を見せているのだ。

 

それはまさしく、彼の切り札の一つだった。

 

その様子を横目で見たラインハルトは、珍しそうなものを見たような表情で、カズマに問うた。

 

「ほう。卿は動かぬものと思ったが?」

 

「……気が変わったんだよ」

 

どこか気怠げな表情で頭を掻き、カズマは上空に鎮座する軍勢を、その魔眼()で見据えていた。

 

だが、そのタイミングを見計らってか、絡繰神達は一斉に数多無数の赤き斬撃を飛ばしてきた。

 

それは今までと同じく、酷く単調な攻撃だ。

 

「「「「「<断罪刃弾(ゲゼルデ)>」」」」」

 

「──エクスプロージョンッッッ!!!」

 

カズマは飛んできた無数の赤き斬撃と同じ数だけ、その膨大なまでの魔力に任せ、爆裂魔法を雨霰の如く連発する。

 

ここが並の小世界であれば、その余波で世界は幾度となく崩壊の危機に晒されていたことだろう。しかし、絡繰神は各々の反魔法を全開にしたことで、かろうじて爆裂魔法の直撃から身を守る。

 

その刹那──

 

「……ぐぅ、っ……!?」

 

「元首エルミデッ!!」

 

隠者エルミデが苦悶の表情を浮かべていた。

 

すかさずオットルルーが近寄ろうとするが、エルミデはそれを制止するように手で止めた。

 

見ると、彼の四肢には歯車が突き刺さっている。

 

「……まさかとは思いましたが、ノアの言っていたことが真実になるとは。しかし……」

 

彼は苦痛に顔を歪めるも、何とか懐を弄る。そうして取り出したのは黒い珠──影珠だ。

 

それを握り潰し、エルミデは身体に影を纏う。

 

「<背反影体(ダヴエル)>」

 

秩序に反する影がエルミデを覆い、やがてそれは反転するように実体を取り戻した。

 

「僕の身体は差し上げましょう。ですが──」

 

瞬間、地に映る影が蠢き始めた。

 

蠢く影は人の形を象り、それが立体化し始めると、エルミデは自らの胸に魔法陣を描く。

 

そして胸に手を突っ込み、根源を取り出した。

 

「──銀水聖海の未来のため、まだ僕にはやるべきことが残っています。それまで滅ぶことはできませんよ」

 

それを立体化した影の中に入れ、やがてその影は消え去った。残ったのは空っぽの肉体だけだ。

 

そうしてエルミデは、がっくりと崩れ落ちた。

 

その様子の一部始終を見ていたカズマ、そしてラインハルトの両名は状況を察する。

 

「オットルルー」

 

カズマは放心している彼女の手を引き、ラインハルトとともに、その場から早々に離脱した。

 

残っているのは隠者エルミデの肉体だけだ。

 

だが──

 

「──これを待っていた」

 

誰とも知れない声が空間に木霊した。

 

そうして声が聞こえてきた瞬間、空っぽとなった肉体の前方にある空間にて変化は起きた。

 

まるで裂かれていくかのように、空間に亀裂が走ったかと思えば穴が空いた。そこから出てきたのは固形化した水銀の肉体を持つ絡繰神──否。

 

絡繰機構、正帝ヴラドだった。

 

正帝は自身の手で手刀を作り、その手でエルミデの首を切り落とす。そして、その頭部を自らの胴体に乗せると、水銀の体がぐにゃりと変形した。

 

正帝が隠者エルミデを写し取ったのである。

 

「……さて、これで当初の目的は果たせました。それでは、行きましょうか」

 

そうしてエルミデの絡繰神は、再び空間の穴を通って、彼方の先へと消えていった。

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