《銀海総合掲示板》   作:にわか太郎

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また、別の場面では──


戦闘の時間③

 

「いっくよー!」

 

ゴウッ、という音が宇宙に轟く。

 

聖園ミカによって次々と放たれる銃弾の雨、剛拳の嵐は狙いを定めて襲いかかるが、眼前の存在──ダブラ・カラバはそれを悉く防いでいく。

 

だが、彼もそれを躱すだけではない。

 

ダブラはミカに向かって幾万もの光を叩き込むが、彼女の頑強さは並大抵のものではなかった。

 

軽く見積もっても深層世界と同等の堅牢さ。

 

光速で放たれる光弾もミカの身体に当たりこそすれど、その皮膚や肉体を貫くことはなく、当たったはずの光弾の方が自ら砕け散っているのだ。

 

「あはは、そんなんじゃ効かない……よっ!!」

 

「……!!」

 

瞬間、ミカの拳がダブラを捉え、叩き込む。

 

圧倒的な魔力(しんぴ)と速さを伴った剛拳。

 

それはダブラを流星のような速さで彼方に吹き飛ばすが、同時にミカはそれを追いかけていく。

 

「まだまだ行くよーっ!!」

 

彼女は自らの愛銃に莫大な魔力を込め、吹き飛んでいくダブラを対象に魔力砲撃を行おうとした。

 

「……流石に強い。だが、俺もただでやられるわけにはいかないな」

 

違和感。

 

彼女が最初に感じたのはそれだった。

 

その刹那、ミカの存在そのものを何か(・・)が襲う。

 

「……がぁっ、うっ……!!!」

 

それの影響を受け、彼女の全身に耐え難い激痛が走る。だが、ミカは根源の魔力を迸らせ、己の筋肉を躍動させることで無理やり痛みを遮断した。

 

「……何、だったの?今の……」

 

間一髪の危機に、彼女の全身に冷や汗が滲む。

 

「言っている場合か?」

 

「……っ……!!」

 

突如、目の前にダブラが現れる。

 

そして彼は、即座に無数の光弾を放ってきた。

 

「……それ、さっきもやったでしょ?そんなんじゃ、私には効かない……って、え!?」

 

その光景を見たミカはそれを避けようともせず、ダブラに向かって突進しようとする。

 

だが──

 

「……う、あっ……!!」 

 

ダブラの放つ光弾は先程とはまるで別物だった。その光はミカの頬を掠め、肩を抉り、脇腹を穿ち、そして太ももを貫いてきた。

 

深紅が、宇宙に散る。

 

貫かれた太腿から噴き出した血は、重力なき空間で花弁のように広がっていた。

 

「……へぇ」

 

ミカは、掠れた息を吐きながらも笑う。

 

肩を抉られ、脇腹を穿たれ、太腿を撃ち抜かれた。常人であれば意識すら保てぬ致命傷。だが彼女は痛みに顔を歪めながらも、前を向いている。

 

根源から噴き上がる魔力が、傷口を内側から押し止めたのだ。筋繊維が蠢き、血流が制御される。強引に力で捻じ伏せる、ミカらしいやり方だ。

 

「……さっきのとは明らかに違うね」

 

金色の瞳が、ダブラ・カラバを射抜く。

彼は血煙の向こうで、静かに腕を下ろした。

 

「気づいたか。先程までの攻撃はただの光弾だったが、今のは光に『███』を混ぜた」

 

彼は鷹揚に語る。

 

「『███』とは俺達、デスクンテにしか発音できない質量を伴った殺意だ。だから君の肉体がいくら堅牢でも、その上から殺意そのものを叩き込めば話は別だ。俺の殺意は、防御の上から内部を壊す。それが根源であろうと、な」

 

みしり、と空間が軋む。

 

彼の背後に、幾千、幾万もの光点が浮かび上がる。それはまるで星々を思わせる輝きだった。

 

「あははっ」

 

ミカは口元の血を拭い、愛銃を構え直す。

 

「そういうの、嫌いじゃないよ」

 

撃鉄が落ちた。

 

轟音。

 

彼女の銃口から放たれた魔力砲撃は、もはや深層世界そのものにさえ迫る圧縮魔力となっている。それが直線を描き、ダブラへと奔った。だが、

 

「……ちぇっ、やっぱり駄目かー」

 

そこに光が割り込んだ。

 

『███』を纏った光弾群が砲撃に接触した瞬間、空間そのものが爆ぜる。魔力と殺意が衝突し、虚空がひび割れたのだ。ミカが舌打ちする。

 

実のところ、両者の実力は単純な出力ではダブラが多少劣る。それほどまでに、ミカの魔力は常軌を逸しているのだ。純度、密度、魔力の総量。

 

その、どれをとっても規格外のものだろう。

 

「確かに君は強い。だが、動きが荒いんだ」

 

光が、収束する。

 

幾万の光点が一点に集まり、槍と化した。そして次の瞬間、それは消えた。

 

「……っ!?」

 

ミカの直感が叫ぶ。視界に映らぬ速度。

 

光速を超越したそれが迫る。

 

ミカは咄嗟に身を捻った。

 

だが、遅い。

 

「がっ……!!」

 

光槍が、彼女の背を貫いた。

 

骨が軋む、内臓が震える。

 

殺意が、彼女の内側で暴れ狂う。肉体の奥を削り取ろうとする質量化した滅び。

 

それでもミカは、両足で宇宙を蹴った。

 

「──あまり舐めないでよねっ!!!」

 

刹那、魔力が爆ぜる。

 

剛拳が、ダブラの頬を捉えた。その衝撃波が球状に広がり、近傍の星系が余波で粉砕されかかる。

 

そうしてダブラの身体は弾丸の如く吹き飛ぶが、彼は空間を踏み止まり、強引に軌道を修正した。

 

口元から血が流れる。

 

「……やるな」

 

「そっちこそ」

 

ミカは背中に突き立った光槍を、片手で掴んだ。殺意が、掌を焼く。皮膚が裂ける。

 

「──こんなの」

 

魔力が、爆発的に膨れ上がる。

 

「……握り潰せばいいだけだよねっ☆」

 

彼女は光の槍を引き抜き、そして握り潰した。

 

血飛沫が宇宙に舞う。

 

同時に体内を蹂躙していた『███』を、己の魔力で粉砕する。力任せかつ、純粋な出力でそれを押し潰したのだ。ダブラは目を細める。

 

「……『███』を力で砕くか」

 

ミカは笑う。

 

血に濡れながらも、その笑みは揺らがない。

 

「やられたら、やり返さなきゃだよね?」

 

瞬間、彼女の魔力が臨界を超えた。

 

その魔力に宇宙そのものが歪む。そうして、聖園ミカという存在そのものが砲身と化したのだ。

 

愛銃が、軋むほどの魔力を宿す。

その様子を見て、ダブラは静かに両腕を広げた。

 

背後には、再び幾憶もの光が煌めく。

 

今度は、全てが『███』を帯びていた。

 

「来い、聖園ミカ」

 

「いくよ、ダブラくんっ!!」

 

両者は、同時に踏み込んだ。

 

「…………っ……!!」

 

最初に動きを見せたのはミカだ。

 

彼女の根源によって練られた魔力が砲撃となり、再びダブラを襲う。そうして圧縮された魔力は空間を押し潰しながら進んだ。

 

それは、もはや砲撃という範疇を逸脱している。

 

彼女の放つ純粋な魔力そのものが、そのまま一直線となって宇宙を抉っているのだ。

 

空間が軋み、時間が歪む。それでもダブラは両腕を広げたまま、それを静かに見据えていた。

 

「……単純極まるが、それゆえに厄介だな」

 

彼の背後に展開された幾億の光点が、同時に脈動する。その一つ一つが『███』、つまり質量を伴った殺意を纏う光だ。

 

「ならば、真正面から砕くまで」

 

無数の光が放たれた。

 

光と殺意が螺旋を描き、ミカの砲撃へと突き刺さる。次の瞬間、空間に亀裂が走った。

 

圧縮魔力と質量化した殺意が拮抗し、その余波で空間そのものが裂け目を生じさせたのだ。

 

罅が広がり、魔力が吸い込まれていく。

 

「……っ、まだまだっ!!」

 

ミカは歯を食いしばる。

 

肩を穿たれ、背を貫かれ、太腿を撃ち抜かれてなお、その魔力は衰えない。むしろ増している。根源から溢れる光が、彼女の全身を純白に染めた。

 

血が蒸発し、傷口が焼けていく。

 

その様子にダブラの瞳が細められた。

 

「……あまり無茶をするな」

 

「無茶じゃないよ」

 

ミカが笑った──その瞬間だった。

 

再び放たれた砲撃の軌道が僅かに揺らぐ。直線だったはずの魔力が、波打つかのように動いた。

 

「……?」

 

ダブラは眉を動かす。

 

『███』を帯びた光弾群が、軋みを上げているのだ。殺意の質量が、徐々に削がれていく。

 

「殺意とはいえ、質量があるならさ……」

 

ミカは砲撃を撃ち続けながら前へ踏み出す。

 

「……壊せるよね?それ」

 

刹那、轟音が宇宙を満たした。

 

そうしてダブラの光群が一つ、また一つと砕け散る。ミカの魔力に飲み込まれているのだ。

 

「……何というか、流石という他ないが。それはどうなっているんだ……?」

 

「理屈は知らないってば!」

 

ミカは突進した。砲撃を撃ちながら、光の嵐を突破する。肩が裂ける、脇腹が抉れる、太腿から血が噴く。だが、彼女は止まらない。

 

ダブラが即座に光槍を生成する。

 

死角から同時に、今度は三本放つ。

 

「終わりだ」

 

槍が消える。しかし、次の瞬間──

 

「……甘いよっ!!」

 

彼女は自らの砲撃を、足場にした。

 

「……!!」

 

拳が振り抜かれ、彼は吹き飛ぶ。

 

「……ぐ、っ……!!」

 

「まだまだっ」

 

ミカの瞳が輝き、愛銃が軋みながら唸った。

 

「これで、終わりっ!!」

 

至近距離からの魔力砲撃。彼女の魔力を、収束できる限界まで圧縮した一撃がダブラの胸に叩き込まれる。光と、それに内包される殺意が砕けた。

 

「……見事だ」

 

ダブラは微かに笑い、ミカは肩で息をする。

 

そうして彼女は銃を下ろした。

ミカはゆっくりと星々を見上げる。

 

「……はぁー。ちょっと痛かったかも」

 

そう言いながらも、魔力が傷を押し止めていた。

 

こうしてここに、一つの戦いは終結する。

 

──勝者、聖園ミカ。




モジュロでは明確にされなかったから、ダブラの術式「███」は幾らでも盛っていいよね?私的には神座万象における「必滅の審判」的なものを想像しています。実際、ここのダブラの実力もあって、ほぼ必滅の審判そのものなんですけどね。

※あとミカの実力に関してですが、第三魔王から吸収した力のせいで馬鹿みたいに深化してます。具体的には準最上位寄りのコテハン上位くらい。今回は一応、本気ではあるが全力ではない感じ。

──追記──
質量をもった殺意である「███」、どうやらデスクンテ族に生えている角のことでもあるらしいですね。ですが、「角のこと『でも』あり」とある通り、意味は一つだけではないっぽいので、本作では敢えてこの設定で進めていこうと思います。まさか呪力=殺意で、それが物質化して角(質量)になっていたとは思いもよらなかった。まあ呪力が殺意らしいのですが、とりあえず今回の攻防ではダブラが転生者由来の呪力と、デスクンテ由来の呪力(殺意)を使い分けていた事にしてください。
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