《銀海総合掲示板》 作:にわか太郎
本編だけを見たい方は読み飛ばしてください。
深層十二界。魔眼世界ゴーズヘッド。
そこは闇に覆われた海の中にあって一際、異彩を放つ強大な世界だった。深層十二界の中心に位置する銀泡、魔眼世界ゴーズヘッド。
その銀泡は深層十二界を支配し、銀海史上初めて深淵魔法に到達した魔導の覇者──大魔王ジニア・シーヴァヘルドが直接治める深層世界だ。
そして、その空は血よりも真っ赤な深紅に染まっており、赤眼神ゼムズガルドが魔眼世界の太陽として煌々と目映い光を放っている。そんな深層世界の空には現在、二つの物体が浮かんでいた。
一つは巨大な球に、ドーナツ状の輪が周囲を覆っている不可思議な物体──それは大魔王ジニア・シーヴァヘルドの居城たる大魔王城だ。
そして、もう一つは空に浮かぶ巨城だった。それは魔眼世界の空を自由に飛行しており、まるで堅牢鉄壁の要塞を思わせる外観をしている。その要塞──否、船の真名はアトラ・ハシースの箱舟。
かつて、とある世界において、名もなき司祭達が遺したとされる古き遺産の一つだ。しかし現在、その箱舟は転生者達の手によって、内装は原型を留めていないほどの改造を施されていた。
そして、その箱舟内部では現在──
「暇だな」
「暇だねー」
「暇ですねぇ」
数人の転生者達で犇めき合っていた。
そこはアトラ・ハシースの箱舟の中枢、ナラム・シンの玉座。次元、時間、実在の有無が確定されずに混ざり合う混沌の領域にして──現在、転生者達が集まるための大広間として使われている。
そんな中枢に今、集まっているのは三人。
梔子ユメ、佐藤カズマ、東風谷早苗である。
彼女達は揃ってN〇ntendo S〇itch 2を手に持ち、多種多様なゲームをプレイしていた。マ〇オカート、エ〇ライダー、ト〇ダチ〇レクション。
遊んでいるソフトも三者三様なようで各々、一番楽な姿勢でゲームをプレイし、楽しんでいる。
そうして時が経ち、三人がゲームを止めた頃だ。
「……ん?」
「どうしました?」
ジャージ姿のカズマのポケットから着信音が鳴る。ポケットを弄り、徐ろに画面を覗くと、そこにはアクアと書かれていた。嫌な予感がする。
「……なんか、物凄く嫌な予感が。てか、着信元があのポンコツ女神の時点でもう出たくないんだが。これ、別に出なくてもいいやつだよな?」
「いや、そんなこと言わずに出てあげましょうよ……」
「あー、嫌な予感しかしねぇ……」
カズマがウンザリした顔で画面を見つめるが、早苗は苦笑を浮かべながらカズマを諭した。
そうしてカズマは恐る恐る、その通話ボタンを押して会話を始める。すると、
『もしもし、カズマで──』
『カズマしゃぁあああああああああああああああああああああああああああああああん!!!』
甲高い奇声が耳元で轟く。
いつもの喧しい、聞き慣れた声である。
『……どうした、駄女神。お前のことだ。どうせカジノで有り金、まーた全部溶かしたんじゃないだろうな?』
『……ギクッ。ち、違うのよ。カズマさん。今回のは、それとは別件で──』
『なるほどなるほど、それとは別件でやらかしているのか。……とりあえず、帰ったらキツイ折檻が待っていることだけは覚悟しておけ』
『何でよぉおおおおおおおおお!?!?』
カズマはそう告げると、アクアの泣き声がスマホ越しに大音量で聞こえてきた。涙目になり、頭を抱えている彼女の様子が嫌でも伝わってくる。
『それで、それとは別件ってことは他に何があったんだ?』
カズマが問うと、アクアは涙声になりながらも現在の状況を伝えるために説明を始めた。
『……ぐずん。えっと、ね。カズマさん、怒らないで聞いてね?』
『内容による』
『昨日の話なんだけど、久しぶりに私とめぐみんとダクネスの三人で旅行に出掛けたのよ。ほら、ここ最近はカズマさんが不在なことが多かったじゃない?だから、リフレッシュも兼ねての旅行を前々から計画していたのよ』
『……お前にしては中々、粋なことを考えるな。それで結局、何処に行ったんだ?』
『アルカンレティアよ』
刹那、辺りに静寂が満ちた。
その意味深な間を不思議に思ったのか、アクアが心底困惑したような声を上げる。
『あ、あれ。カズマさん?これ、聞こえてるのかしら』
『……そうか。じゃあ、あとはお前達だけでも大丈夫だな?もう切るぞ、また連絡があれば──』
『待って待って!?ちょっと待ってよカズマしゃぁああああああああああああああああん!!!』
『だぁーーっっ!!!耳元で叫ぶんじゃねぇ、この駄女神がっ!こちとらト〇コレで島づ〇りに忙しい毎日なんだ!!少しくらいは俺に平穏な日常を謳歌させろぉおおおおおお!!!』
カズマは血走った目で画面に向かい、叫ぶ。
『はぁあああああ!?しばらく見ないと思ったら、私達を置いてト〇ダチ〇レクションですって!?!?ちゃっかり新作ゲームで遊んでんじゃないわよ、このクソニート!カズマ、アンタ今どこにいるのよ!白状しなさい』
『おかけになった電話番号は現在、使われておりません』
『とぼけたって無駄よ!カズマ、アンタが前に言ってたことよ。これ、何かの魔法か権能で作られているスマートフォンなのよね?これが電気で動いていないことくらい、とっくに分かってんのよ!!』
『チッ!……じゃあ改めて聞くが、いったい何をやらかしたんだ?』
カズマが再び、アクアに問う。
すると、アクアは非常に言いづらそうな声音で、恐る恐る白状するかのように語り始めた。
『……めぐみんが』
『……めぐみんが?』
『私の
カズマは途端に腹部へ手を当てた。
最悪の事態を引き起こしてくれたな、あのロリっ子。そう思いながらも、カズマは努めて大人の対応で受け流し、話の続きを無言で促す。
『ほら、カズマさん?めぐみんもね、悪気があったわけじゃないと思うのよ?多分だけど。だから、そんなに責めないであげてほしいかなーって……』
『……御託はいい。アクア、とりあえず請求額を教えろ』
『えーっと。確か本当は五十億エリスだったんだけど、めぐみんを煽った子達も悪いってことで、半額の二十五億エリスまでまけてくれたのよ!流っ石、私の
……何故だろうか。
横にいる早苗とユメが引き攣った顔で、こちらを眺めている。俺、そんなに酷い顔してるか?
「……悪いな、二人とも。ちょっと用事を思い出したから一旦、元の世界に帰らせてもらうわ。とりあえず、何かあったら界間通信の方で伝えてくれ」
ひとまずスマホから耳を離し、後ろの二人へ外出する旨を伝えた。出来る限りの笑顔で。
「き、気をつけてね?」
「……お気をつけて」
「おう、行ってくる」
そうして俺──佐藤カズマは、
『アクア。とりあえず、そっちに戻ることにするわ。じゃ、また後で──』
『え、ちょカズマさ──』
そう、これが俺達の日常だ。
ノア&アムル「「やはりアルカンレティアか……いつ出発する?私(俺)も同行する」」
カズマ「魔王学院」