《銀海総合掲示板》   作:にわか太郎

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リハビリ回です。


歯車は回る

 

──数週間後

 

深層十二界。無神大陸。

 

「<断罪刃弾(ゲゼルデ)>」

 

「……クソッ!」

 

赤き斬撃が無神大陸の空を裂く。

 

それは絡繰世界の人工神族、絡繰神による魔法攻撃である。その絡繰神は腕を赤く染め上げ、眼前にいる一人の青年へ腕を一直線に振り下ろした。

 

「エクスプロージョンッ!!!」

 

しかし、眼前の青年──佐藤カズマは手を突き出し、爆裂魔法を放つ。その余波に<断罪刃弾(ゲゼルデ)>は呑み込まれ、赤き斬撃は神なき空へ散っていく。

 

「いや、いくら何でも襲撃の頻度が高すぎだろ!絡繰世界は何を考えてんだよ……っと!」

 

隙を狙い、飛来する斬撃を反魔法で弾き返した。

 

そうして突貫してくる絡繰神を吹き飛ばし、カズマはどうしてこうなったのかを思い出していく。

 

それは突然の出来事だった。

 

いつものように無神大陸で過ごしていた彼は、大地に寝転がり、暗闇に染まる空を見上げていた。

 

そこで異変が起きたのだ。

 

「……何だ、ありゃ」

 

突如、銀に光る無数の点が無神大陸の空を埋め尽くした。それを不思議に思い、カズマは千里眼を発動する。すると、それは無数の絡繰神だった。

 

その絡繰神の軍勢は無神大陸に急接近して大地へ近づくと、そこから無数の<断罪刃弾(ゲゼルデ)>を放ち、大陸を削らんと猛威を振るい始めたのである。

 

無論、その強襲にカズマも黙ってはいなかった。

 

「──デッドリーバックスタッブ」

 

「……!」

 

彼は魔法で気配を消し、後方から一体の絡繰神を襲撃した。すると、その絡繰神は致命傷を与えられたかのようにガクリ、と膝から崩れ落ちる。

 

それに気づいた他の絡繰神達は、そこでようやくカズマの存在を認識した。すぐさま奴らは<断罪刃弾(ゲゼルデ)>を発動し、カズマも爆裂魔法を装填。

 

そこで斬撃と爆裂が入り乱れる激戦が、無神大陸で巻き起こったのだ。そうして現在に至る。

 

「<破邪聖剣王道神覇(レイボルド・アンジェラム)>」

 

「ウッソだろ、お前!?」

 

その戦いの最中、一体の絡繰神が収納魔法陣に手を突っ込み、神々しい光を放つ剣を取り出した。

 

そして剣を振るい、その軌跡には白光が満ちる。

 

それは聖剣世界ハイフォリアの深層魔法、<破邪聖剣王道神覇(レイボルド・アンジェラム)>である。絡繰神は神剣を振り、カズマに向かって闇を祓う純白の道を作り出した。

 

「──、────」

 

しかし、そこで空気が一変する。

 

「『A Voice Behind Me(背後から聞こえる声)』──起動。深層権限保有者による領域解錠、及び特権領域への接続(アクセス)をシステムへ申請」

 

「【『A Voice Behind Me(背後から聞こえる声)』の起動が確認されました。権限保有者による領域解錠、並びに特権領域への接続(アクセス)申請を確認……受諾されました】」

 

「……なに?」

 

一体の絡繰神が思わず呟く。

 

しかし、周囲に響く声が矢継ぎ早に告げた。

 

「【権限保有者による意向の把握……成功しました。権能の作成、統合、最適化……成功しました。権限保有者:()(とう)(かず)()による権能への接続を確認。擬似魔力拘束──解除】」

 

瞬間、カズマから膨大な魔力が噴出する。

 

「……!させると思うか」

 

絡繰神は隙を逃さず、神剣を振るった。

 

しかし──

 

「……!?」

 

放たれた純白の道は途切れ、消滅する。

 

「【魔法障壁の多重展開を実行しました。続けて、権限保有者に対する補助強化の実行を提案……受諾されました。権能の複製(コピー)変換(コンバート)による能力改変(オルタレーション)を確認──これにより大複合権能『四劫輪廻(ユガ・サルヴァ)』を励起状態へ移行します】」

 

「さて、これで準備は整ったわけだが……最後に聞いておく」

 

静寂が、無神大陸を支配する。

 

一拍の間を置いた後、カズマは絡繰神へ問うた。

 

「お前らは近頃、何が目的で俺達を頻繁に襲撃してるんだよ。俺達の存在が完全なる正義の実行とやらの邪魔になるってんなら、もっと暗躍なりをすれば良かったんじゃないのか?」

 

「……正帝は悪を許さない。この海の外より来たりし邪悪を、この海の秩序を汚せし異物を我らは許容しない。ゆえに消えろ、秩序に背を向ける唾棄すべき逆賊よ。ゆえに滅びろ、正義の名の下に全ての悪は裁かれる」

 

だが、絡繰神は聞く耳を持たず、攻撃する。

 

そうして神剣が赤く染まり、絡繰神が剣を振るうことで赤白の斬撃を飛ばしてきた。おそらくは神剣に<断罪刃弾(ゲゼルデ)>と<破邪聖剣王道神覇(レイボルド・アンジェラム)>の術式を組み込んでいるのだろう。しかし──

 

「……っ……!?」

 

カズマは指の先に小さな火を灯した。

 

それは一見すると、マッチにすら火勢で劣る種火に見える。しかし、それは単なる外見上の話だ。

 

実際には夥しいまでの力が込められていた。

 

本来であれば、殺傷力がまるで存在しない火を灯すだけの単なる初級魔法。それが権能を内包したことで、規模と密度が桁違いに強化されていた。

 

「だが、いくら強力な権能とはいっても所詮は権能でしかないからな。お前達みたいに深さを操ったりはできないし、権能を深化させられたりもしない。というわけで、この権能の深度は俺の深さに依存するわけなんだが……まあ、このくらいで十分だよな」

 

カズマは権能を発動し、魔法に手を加える。

 

そうして発動したのは終末の権能。更に権能の密度が上昇し、それは最終的に飽和状態を迎えた。

 

「──威力凝縮、対象限定」

 

カズマがそう呟き、種火がふっと消えた。

 

「<壊劫火(ティンダー)>」

 

──瞬間、絡繰神の軍勢が燃え始めた。

 

空を埋め尽くす軍勢の全てが、必死に人型を保とうと反魔法を展開する。しかし、魔法に込められた権能の影響で、水銀はどろりと溶けていった。

 

権能の規模を魔力総量として換算するのならば、それは<極獄界滅灰燼魔砲(エギル・グローネ・アングドロア)>にも匹敵するだろう規模だ。流石に終末を謳うだけのことはある。

 

だが、燃え尽きる寸前に絡繰神は声を上げた。

 

「……正帝は悪の存在を許さない。この海に秩序ある限り、貴様らは必ず裁きを受けることになる。努々、忘れるな」

 

そうして軍勢は黒き灰となり、完全に消滅する。

 

カズマは溜め息を吐き、一言──

 

「はぁあああ、終わったあああぁぁぁ……」

 

彼は大地に座り込み、やがて仰向けになった。

 

「ホント、色々と勘弁してくれよマジで」

 

そうして溜め込んでいた不満を吐き出すように、カズマは愚痴をこぼした。しかし、思えば近頃の絡繰神による襲撃頻度は異常の一言に尽きる。

 

それで月に五回は襲撃してくるのだから、襲撃される側からしたら堪ったものではない。

 

だが、だからこそ──

 

「何か、目的があるのか……?」

 

疑念が晴れない。

 

この襲撃頻度からして、奴らに何かしらの狙いがあるのは間違いない。しかし、そんな奴らの狙いと思しき可能性の候補が多すぎて絞りきれない。

 

こちらの戦力や、行使する力の傾向、転生者という存在の性質など。あらゆる面での把握や分析を行っていることは、ほぼ間違いないだろう。

 

絡繰世界は慎重だ

 

一部の例外や規格外を除き、この銀海において絡繰世界は比肩するものなき銀泡といっても過言ではない。軍事力、統率力、心制御、魔法技術。

 

どれも他の世界とは一線を画すレベルだ。

 

しかし、そんな絡繰世界が徹底的なまでに情報収集と戦力分析に努めている。裏で暗躍することもなく、ひたすら真っ向から攻め込んできている。

 

ただ転生者というだけで、不確定要素というだけで、ここまで執拗に襲撃してくるものなのか。絡繰世界の行動にしては、妙に違和感を覚える。

 

「……って、俺が考えたところでしょうがないか。それに無神大陸も荒れてるし、まずは大陸の方を直さないとな」

 

カズマは寝転がりながら指を空に向け、魔法陣を描く。それは強力な権能の力を伴っていた。

 

すると、クレーターだらけだった無神大陸は、まるで何事もなかったかのように修復されていた。

 

それは過去が改変されたかのように。

 

「相変わらず権能がヤバすぎるんだが……物事の見方を変えるだけで、あらゆる現実の変化を操作できるとかチートにも程があるだろ」

 

「ね、便利でしょ?」

 

再び、その場が静寂に満ちる。

 

カズマはギギギ、と横に顔を向けた。

 

「……何も突っ込まないからな」

 

「酷くない!?ただ、ボクはカズマくんが新しい力を使いこなしているのを見てただけなのに……」

 

「いや、使いこなすって……」

 

いつの間にか横にいた外なる神──ナイアルラトホテップは、わざとらしく泣き真似をする。

 

そして、カズマは呆れながら言葉を返した。

 

「まあ便利だとは思うが、結局は俺の力じゃないしな」

 

「ふーむ、謙虚だねぇ。借り物の力とはいえ、全知全能の力に浮き足立つ様子すらないとは。どれ、そんな謙虚な君のためにボクが一肌脱いであげよう!」

 

ナイアルラトホテップは力こぶを作る。

 

「結構です」

 

「まあまあまあまあ!」

 

「いや。だから、何もしな──」

 

「まあまあまあまあまあまあまあ!!!」

 

「お前、それで押し切るつもりか!?」

 

カズマを押し切った隙に、ナイアルラトホテップは指を鳴らす。すると、辺りに声が響いた。

 

「【──警告。超極大規模の神性による因果律、並びに多時間軸への同時介入を確認しました。権限保有者:佐藤和真が属する銀泡内部、基底世界における時空連続体への限定的干渉を容認。既存世界の一部改変が実行されました】」

 

「とりあえず冒険者カードを見てみなよ」

 

響く声に続き、ナイアルラトホテップは言う。

 

「ったく、いったい何なんだ?今の俺にレベルとかの概念は関係ないし、かといって今はポイントが貯まっているわけじゃ……はっ?」

 

そこでカズマは気づいた。

 

「……なんか習得可能スキル欄に、変なスキルっぽいものが大量に追加されてるんですけど。あとポイントも程々に追加されてる……ナニコレ」

 

「なに、ボクからの(ささ)やかなプレゼントだよ。ある程度の素質はあるのに、いまだ器用貧乏の枠組みから脱却できていないのは流石に可哀想だったからね。オマケとして少しだけポイントも補充してあげたけど、今あるポイント以上のスキルを習得したい場合は自力で頑張って!」

 

「……お前、たまに優しくなるよな。もしかして情緒不安定だったりするのか?」

 

カズマがそう問うと、ナイアルラトホテップは大笑する。そして笑い終えた後に、邪神は言った。

 

「ハハハ!千の貌を持つボクに対して、情緒不安定なのかと聞いてきたのは君が初めてだよ。ま、いつもの()(まぐ)れと思ってくれて構わないさ」




本当に気紛れなんですかねぇ……?
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