ハルウララのトレーナーはメカニック   作:瑠璃ぃぃぃ

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かつてのハルウララの明るさ、純粋さ、天然無垢な性格を取り戻す為に動く…


第2話「Re:Acceleration」

 

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午前のトレーニングが終わり、整備棟のシャワー室に水音が響く。

 

「ふぃ〜っ……今日も全力でがんばりましたっ!」

 

シャワーから出たハルウララが、勢いよくバスタオルで髪を拭く。

 

前回、プロトタイプのギアを装着してから、ウララのフォームは目に見えて改善していた。直線での速度維持、無駄なスタミナの消耗抑制。そして、何よりも――

 

「昨日のビギナー走で、最下位じゃなかったんだよ〜! ウララ、抜いたんだよ〜っ!! うっらら〜っ!」

 

誰にともなく、そう叫びながら廊下を駆けていく彼女に、整備士たちは思わず吹き出す。

 

「……あれが、あの“負け続け”のハルウララか」

 

「ちょっと前まで、涙ぐんで走ってたってのに……」

 

遊星は、その後ろ姿を見つめていた。

 

(まだ、変わりきったわけじゃない。だが――確かに“兆し”はある)

 

端末に走行ログを映し、フォーム補正率のグラフを確認する。

 

右足の内転は9%改善。呼吸乱れは平均15秒遅延。ラップタイムは、従来より1.3秒短縮。

 

だが――

 

「このままでは、ビギナーズ戦突破が限界だろうな」

 

遊星の声が低くなる。現状のウララは、“走り方を学んだ”だけ。スタミナとスピードの絶対値には限界がある。

 

特に、URA公式戦に出るには――最低限、基準タイムをクリアしなければならない。

 

その“壁”を越えるには、何かが足りない。

 

 

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夕刻。施設裏のパドック。

 

遊星は端末を片手に、整備ログを確認していた。すると――風を切る音とともに、誰かの影が降り立った。

 

「よォ。相変わらず孤独、な“裏方”してるじゃねぇか、遊星」

 

その声に、遊星の目がわずかに細められる。

 

「……クロウ」

 

そこに立っていたのは、赤茶の髪にゴーグルをかけた、どこかやんちゃな雰囲気の男――クロウ・ホーガンだった。

 

かつて、共に旧URAと戦った仲間。今は地方支部でウマ娘たちのコーチ兼メカ整備の補佐をしている。

 

「お前が何か仕掛けたって噂を聞いてな。『ハルウララに専用ギアを?』って、誰も信じてなかったぜ?」

 

「信じなくていい。だが、彼女は変わり始めている」

 

「お前が“再起動”する日を待ってたやつも、いたのかもな」

 

クロウは、ふっと笑ってコーヒーの缶を放る。

 

「ところで、見たぜ。ウララのラップログ。よくあんなギア作れたな。回復特化に振って、しかもフォーム補正付き。あれ、誰の技術ベースだ?」

 

「……ミスターシービーの機構を応用した。“重心ズレの補正”は、彼の走法と似ているからな」

 

「なるほどな……それなら、ウララの“あの足”でもいけるって判断か」

 

クロウは缶を空け、ぐっと一口飲んだあと、少しだけ声を落とした。

 

「……でも、遊星。気づいてるんだろ? あの子の“根っこ”がまだ完全には戻ってない」

 

「……ああ」

 

一度だけ“変われる”と信じた彼女。

 

だがその信念が、自分自身ではなく“ギア”や“道具”への依存に変わったとき――それは簡単に崩れる。

 

「道具は補助だ。本質を支えるものであって、すべてじゃない」

 

「だから、どうする?」

 

クロウが遊星の目をまっすぐ見た。

 

「また“チーム”を作る気があるなら、俺は戻るぜ」

 

沈黙が流れる。だがその中で、確かに――何かが動いた。

 

 

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その翌日。

 

ハルウララは、ギアを装着せずにトラックへ立っていた。

 

「……今日はギア、なしで走ります!」

 

「なぜだ?」

 

「わたし……本当に“変わった”か、知りたいんです。ギアに助けられたウララじゃなくて、“ウララ自身”がちゃんと走れるのか」

 

遊星は一瞬だけ、口元を緩めた。

 

(……クロウ。君の言葉が、彼女に届いたようだな)

 

「なら、構わない。だが無理はするな」

 

「うんっ!」

 

ウララは深呼吸し――走った。

 

最初のカーブ。ややフォームが崩れかけたが、姿勢を修正して加速。ギアの補正なしでも、筋肉が“正しい位置”を覚えていた。

 

ラストスパート。

 

全員に抜かれたわけではない。2人、3人を交わし、最後の直線で踏み込む。

 

「うっ……うっららぁぁぁぁっ!!」

 

――ゴール。

 

結果は、全体の9着。

 

ビギナー戦としては、誇れる順位ではない。

 

だが、彼女の顔には……かつての、あの“屈託のない”笑顔が戻っていた。

 

「遊星さぁぁぁんっ! わたし、走れました〜〜っ!! うっららぁ〜〜〜っ!!」

 

芝の上を転がりながら、声を上げて笑うハルウララ。

 

その姿に、整備棟の職員も、通りかかったトレーナーも、自然と笑顔になった。

 

遊星は静かに、ログ記録を保存しながら呟いた。

 

「……これが、君の“Re:Acceleration(再加速)”だ」

 

 

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その夜、遊星の机には新たな設計図が広げられていた。

 

ギアデータ、トレーニングプラン、栄養管理。そして、ウマ娘の個体適性リスト。

 

机の隅には、古びた黒のバッジ――“チーム満足”時代の記章が置かれていた。

 

クロウの連絡は既に来ていた。

「セイウンスカイとツインターボ、それに――サイレンススズカ」

 

彼が育成中の3人は、既にトレセンの外で自主トレ中だという。

 

一方、ジャック・アトラスの名前も、次回の学園会議の出席者名簿に載っていた。おそらく――“ダイワスカーレット”を連れてくるつもりだ。

 

遊星は、黒バッジを手に取り、再び胸ポケットに収めた。

 

「“チーム”を動かす時が来た……まずは、彼女からだ」

 

端末を開き、新たなチーム登録申請を始める。

 

チーム名:スターライトロード

 

メンバー候補:ハルウララ、ウオッカ、スペシャルウィーク

 

その名は、まだ何者でもない少女たちの“可能性”を導くための光。

 

そしてその夜、ハルウララのベッドサイドには、一通のメッセージが届いていた。

 

> 『明日の午後、再調整に入る。フォームは維持できている。

次は、“勝ち方”を学ぶステージだ』

 

―不動遊星

 

 

 

それを読んだウララは、毛布にくるまりながら、ふふっと笑った。

 

「うっらら〜〜♪……次は、勝つウララになるもん!」

 

その声は、かつての彼女――心からレースを楽しみ、全力で笑っていた“ハルウララ”そのものだった。

 

 

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次回予告:第3話「ウララ・ターン」

 

クロウの育成する“逃げの策略家”セイウンスカイ、爆走娘ツインターボ、そしてかつての伝説・サイレンススズカが登場。遊星のチーム計画が本格的に動き出す。

 

 

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