スキル【10匹の熊】 作:switch2当選しました
32/ 五匹目の怪獣、大阪オズ:スキル名【四大魔法】
ここ武泰市は冒険者の街だ。
通常一県に一つあれば御の字のダンジョンが、この市の中に三つも固まっている。
一つは冒険者学校が学生向けに占有しているとはいえ、残りの二つは低中級者でも一定の稼ぎが期待でき、専業冒険者もアタック先には困らない。
そんな二つのダンジョンのうちの簡単な方、第二ダンジョンの入り口の近くに喫茶店があった。
窓際の席でカフェラテを啜りながら、大阪オズはいつものようにスマホを睨んでいた。
時刻は午前十時を過ぎた。
その日その場で参加者を探す臨時パーティーのマッチングが粗方終わり、条件の悪いパーティーが僅かに未練がましく募集を続けている時間帯だった。
「ここからが勝負だぞ、私」
オズは選ばれない側の人間だ。
保有するスキル【四大魔法】は四種類の魔法を包括したスキルだった。
通常の魔法系スキルホルダーが【火魔法】や【水魔法】一本でダンジョンに潜っている事を考えれば、その優位性は一目瞭然の筈だった。
しかしこのスキルは、魔法系スキルを必要とするどんな階層にも求められるようでいて、どの階層でも活躍しきれない。
『四種類の魔法を使えるが、出力が0.5倍となる』というデメリットがあらゆるパーティーから嫌厭された。
狙い目はメイン稼ぎのターゲットに魔法は必要ないが、その狩場への道中で魔法があると楽になる臨時だ。
第二ダンジョンで言えば六階層と八階層。
初めに【火魔法】を募集している臨時が締め切った。
次いで【水魔法】、【風魔法】も締め切り。
【土魔法】を募集している臨時はなかった。
大阪オズは今日ダンジョンに潜れない。
33/ 三人の子供たち
今日の予定がなくなったオズが、カフェラテの残りを飲み干すまでの僅かな間の事だ。
オズが座る窓から、三人の子供たちが第二ダンジョンの窓口に入っていくのが見えた。
男一人女二人の組み合わせで、いずれも美男美女だった。
チビで痩せっぽっちの、しかも大学生になってもそばかすが消えないオズにとって、前に立つのも躊躇われるグループだったが、今日の最後の希望かもしれない。
慌ててカフェラテをやっつけて、オズは喫茶店を出た。
「あのぉ!
魔法系スキルはご入用じゃないですか? ヘヘッ」
駆けつけて声を張るも、妙な声も出た。
愛想笑いも上手くできず、オズは逃げ出したくなった。
「俺たちですか?」
真ん中の少年、朝倉アサヒが振り返る。
近づいてみるとやはり、三人とも自分より背が高い。
しかしあどけない顔つきは、歳下に思われた。
「あっ、そのぉ、はい。
あなたたちです。
私魔法系で……魔法系スキルなんかは……」
気まずくなって少年から目を逸らす。
手続きを進めている黒髪の少女の手元を見れば、パーティー申請のようで若干様式が違う。
オズにはとんと縁が無い、ギルド申請に見える。
「あっ、あれ、ギルド申請ですか。
すみません、ヘヘッ、勘違いしちゃって……」
オズはそう言って後ずさった。
一言断って背を向ければ良いものを、体を向けたまま摺り足で下がっていく。
「ねっ、いいんじゃない?
せっかくだしこのままこの人と潜ってみよ!」
楽しげに立っていた茶髪の少女が初めて口を開いた。
オズはぎょっとしてもう二歩後退った。
手続きをしていた黒髪の少女が勢い良く振り向いた事。
話していた少年の顔つきが一気に鋭くなった事が理由だった。
「ウサギがそう言うなら、そうしよう。
お姉さん、一緒に潜りませんか」
オズの今週の生活費に、一筋の光が差した。
34/ どっち?
各々の自己紹介が終わると、三人が未成年だったためオズが引率となり臨時パーティーを申請した。
「俺たちは三人とも物理系なんで、前を歩きますね。
ただ第二ダンジョンは初めてなんで、オズさんから何かあれば都度言ってください」
「えっ、わ、わかりました。
じゃあ何階層までにします?」
「うーん、オズさんは普段一人だと何階層までですか」
答えづらい質問が来たな、とオズは思った。
「えーっとぉ、一人では潜らないので、ちょっと……」
「ん? そうですか。
そう言えば聞いてませんでしたけど、系統は何です?」
そうら来た。
「火と水と風と土で……。
あ、でも、あの、そのぉ」
「四大系統全部ですか!?」
アサヒが驚きの声を上げて、オズは逃げ出したくなった。
この続きを言えば半数が失望し、もう半数も実際の威力を見て失望する。
「すごいな。
四つ使える人なんて聞いたことがない」
言いづらい。
しかし、この少年少女たちを勘違いさせたままダンジョンの先へ進むわけにはいかない。
「ただその、デメリットというか。
四つとも使える変わりに、威力が半分で……」
突然沈黙が場を支配した。
三人が足を止め、無言でオズの顔を覗き込む。
ああ、また失望されたかな。
幾ばくかの後、少年、アサヒが妙な質問をした。
「威力が半分?
それって言葉通り半分ってことですか。
それとも〇.五倍ってことですか」
「えっと、そのぉ〇.五倍です。
でもそれが、何か……」
オズはこの後、自分のスキルが後者だった事に、人生で一番感謝した。
40大魔法ってあと36個何があるんだ
俺にもわからん