スキル【10匹の熊】 作:switch2当選しました
39/ 指示厨オズが人生初スパナを貰うまで
ダンジョン配信は冒険者が、自分のダンジョンアタックをネット上で配信するコンテンツだ。
主流はユーチューブだが、その他配信系のサイトでも盛んに行われている。
そんな中で視聴者たちは、配信者の行動についてコメントであれこれ言うのだが。
配信者の意向を無視して「こうした方が良いよ」「こっちの方が早いよ」などと言う、つまり指示をする視聴者は指示厨と呼ばれ嫌われている。
安全な場所で無責任な事を言う。
誰にでも出来る。
オズにだって出来る。
オズが現場で、咄嗟の判断で失敗するのなら、安全な場所で判断が成功するさまを実感してもらえば良い。
アサヒはそのように考えた。
40/ 妙なコメント
ダンジョン配信者、原ハクノはいつものようにダンジョンの入り口で配信サイトを起動した。
活動を始めて二年ほどで、登録者数に伸び悩みつつもダンジョンアタック時のルーチンワークとして続けている。
保有するスキルは【火鎧】。
身体中に炎を纏わせることができ、身体能力もいくらか増幅させるソロ向きのスキルだ。
当然メインで潜るダンジョンや階層も、火系統が有利な場所となる。
ありきたりな【火魔法】スキルホルダーとの違いは、別途前衛系を必要としない事。
狭い箇所が連続する階層など、パーティーの展開がしづらい場所を選べば、競合の少ない配信ができた。
配信を始めて三十分もすれば、一人も視聴者が居ないなんてことはなかったが、数分に一度コメントがつけば御の字だ。
「こんハクノ〜。
じゃあ今日も都成市ダンジョンの二十七階層、潜っていきまーす」
配信後のアーカイブ、つまり録画を観てくれる視聴者も居るため、始めた瞬間誰も観ていなくとも挨拶は欠かさない。
心あったまるフォイ こんハクノ〜
「お! 初見さんこんハクノ〜。
良かったらチャンネル登録していってね」
「今は都成市ダンジョンの二十七層にいます。
見ての通りトレント系が多く出る階層で、私のスキルと相性がいいんですよ〜」
二十七階層はオープン型のフィールドで、木々が繁いている。
現れるモンスターは植物系および昆虫系で、いずれも火を種族的に嫌がる。
ハクノがコメントとの雑談に時間を割こうと思ったら、【火鎧】を事前に纏っておけば良い。
配信的にも相性が良い階層だ。
心あったまるフォイ さっきの道、右に行かないんですか?
ついたコメントに、ハクノは辟易した内心を隠して返事した。
「さっきの道は右に行くと行き止まりなんですよ〜。
今日はこっちの道を進んで、二十八階層の手前までアタックする予定です」
心あったまるフォイ 右に行った方が良いと思う
ダンジョン配信をする中で避けて通れない二通りのコメントの一つ、自称運勢系だろうか。
ちなみにもう一つは自称一流冒険者。
しかし今日に限ってこの一人以外に視聴者の接続がなく、ハクノは配信を繋ぐためにこのコメントとのやり取りを続けることにした。
「心あったまるフォイさんがそこまで言うなら、戻って右に行っても良いですよ!
今日はお散歩配信ってことで、二十七階層のマップを復習しましょう。
そのかわり、チャンネル登録と高評価、絶対お願いしますね!」
心あったまるフォイ お散歩配信いいですね
お前のせいだぞとハクノは思ったが、配信上では笑顔を崩さなかった。
この都成市ダンジョンの二十七階層も、今日で八回目の配信だった。
そろそろ画面の真新しさのために、アタック先のダンジョンを選び直す時期に来ていたし、こういう理由で普段と違う事をするのも悪くはないだろう。
「はい! 引き返しましたよ〜。
この道の右の先はですね、モンスターと遭遇することもほとんど無くて……。
ダンジョン省の攻略本でも、何も無い行き止まりになってますね。
とりあえず突き当りまでいきますよ」
心あったまるフォイ あっ、すみません違う、右の道を行くんじゃなくて
心あったまるフォイ その右の木の枝の下をくぐると良さそうな気がして
意味不明なコメントだ。
「心あったまるフォイさん、それあんまり良くないですよ〜。
私は胸に自信があるからいいですけど」
女性冒険者を屈ませてセンシティブな姿勢にさせよう、そんなコメントだったのか。
最後と思い、一応コメントの通りに経路の脇に立つ樹木、その逆側の枝の下をくぐって抜けるも、ハクノは馬鹿らしくなって作り声を辞めた。
心あったまるフォイ セクハラちゃうわボケ
内藤明暗フレイム ↑暴言でブロックします こんハクノ〜
「内藤さんこんハクノ〜。
今日は初見さんが来てたんで、お散歩配信しようかって感じだったんですけど。
内藤さん来たしいつも通りアタックにしましょうか」
内藤明暗フレイム アタックの方がハクノちゃんのスキルが映えて良いと思う
「ありがとう!
じゃあアタックって事で、この道は戻って……」
ハクノの言葉はそこで途切れた。
振り返った先に元の景色はなかった。
突然現れた一本道の先に、宝箱が見えた。
伸びないダンジョン配信者ハクノのチャンネルで初めて映る、しかも恐らく一切情報が出ていない、隠しエリアがそこにあった。
41/ 場数を踏まねば
「無事ブロックされた模様」
「何してるんですかオズさん」
「いや、すみません、違います。
手が勝手に」
「まぁでもほら、見てくださいよ。
隠しエリアですよ」
画面では配信者が大きく歓声を上げている。
続けてオズを呼び戻さんとする声が響いていたが、オズの指は既にスマホから離れていた。
「まぁこんな調子で、暫くやってみて下さいよ。
慣れてきたらオズさんの推しのチャンネルでコメントしても良いんじゃないですか?」
「ワイくんが推しのチャンネルで指示厨を……!?」
「そうです。
ワイくんがです」
「あっ、その、すいません、私、私です」
ウェブスパイダスに負けて撤退したので初投稿です