スキル【10匹の熊】   作:switch2当選しました

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切手キリカ登場

55/ ダンジョン省の専任冒険者

 

ジュリエット・ジャガーの死で活発になったものが二つある。

一つは名声を求める冒険者たち。

彼らは空座となった世界一位の名を求め、今までの活動により注力した。

 

そして、もう一つは国家にとってリスクがあるダンジョンアタックやダンジョン研究を行う者たちだ。

彼らはそれまでは、自分たちが信じるその活動を進めたとしても、どこかの段階で征されると理解していた。

しかし今、ジュリエット・ジャガーという最高の体制戦力が崩れたことで、俄に動き出そうとしていた。

 

ダンジョン省による調査報告においてそうした組織は、古い物なら二百年前から暗躍していた。

彼らは機会を待ち続けていたのだ。

 

それら国家への反逆が疑われる人物、組織に対して準備されているのが、ダンジョン省所属の国家公務員。

専任冒険者である。

 

「先月比ですと、三倍弱ですね。

 やはり件の階層更新を期に増えています」

 

そんな専任冒険者の一人、景色ケイコが上司に向けて言った。

彼女が現在担当している案件は、非合法な活動を疑われる組織が、倶楽部クレアへの接触を試みているというものだった。

水面下で防衛できているものの、試行数は増加の一途を辿っていた。

いずれ手が回らなくなるだろう。

 

「倶楽部クレアもねぇ、何もこんな時期にギルドに入らなくてもいいだろうに」

「本官も同意します」

 

上司である城場ジュウゾウがぼやき、ケイコも同意する。

倶楽部クレアが加入したギルド『10匹の熊』は全くの無名で、ダンジョン省としてもノーマーク。

構成員の身辺調査も一から始めねばならなかった。

 

「基本的な情報は集まってきましたが、見れば見るほど気が重いと言いますか。

 はっきり言ってこのギルドは、倶楽部クレアの『弱み』であります」

「うーん、そうなんだよねぇ……」

 

構成員は倶楽部クレアを含めて七人。

 

ギルドマスターは一色イロハ、十五歳。戦闘スキルなし。

朝倉アサヒ、十五歳。戦闘スキルなし。成人男性程度の身体能力。

上野ウサギ、十五歳。運勢系スキル保持者。

ダイアナ・デルタ、二十八歳。戦闘スキルなし。

大阪オズ、二十歳。魔法系スキル保持者。最高到達階層、武泰市第二ダンジョン十一階層。

川瀬カナエ、二十歳。戦闘スキルなし。最高到達階層、渋谷第一ダンジョン三階層。

そして倶楽部クレア、二十五歳。召喚系スキル保持者。最高到達階層、アイルランドカースダンジョン八十階層。

 

こと戦闘力を言うならば、倶楽部クレア以外は有象無象と断言できた。

どこからでも身柄を拐かせるし、どこからでも人質にできる。

 

非合法組織にとっては涎が垂れるほど美味しい獲物にみえるだろう。

 

たまたま入ったギルドで、過ごした時間も短いのなら。

情も薄ければ良かったのだ。

しかし理由は不明だが、倶楽部クレアはギルドメンバーに対する深い親愛を隠さない。

 

景色ケイコは深い溜息をつくと、目元を揉んでから目の前の作業に戻った。

 

 

 

56/ 七匹目の怪獣、切手キリカ:スキル名【騎士道】

 

「ギルド『10匹の熊』の川瀬カナエだな?

 拙からそなたに頼みがある」

 

ある日の夕方。

コンビニからの帰路で川瀬カナエは足止めされていた。

 

「あんた誰?」

 

裏路地の狭い道を遮るのは、頭頂にひとつお団子髪を結わえた大柄な女性。

 

「拙は切手キリカ。

 これは愛刀の『千切』」

 

「は!? あんたなんで日本刀持ってんの?

 ここ市街地なんだけど!」

 

切手キリカはその疑問には返答せず、抜刀した。

 

「拙と共についてきてくれ。

 拙らが倶楽部クレアと話す際の人質となって欲しいのだ」

 

「ふーん、わかんないけど全部犯罪よねそれ。

 刀も誘拐も」

 

「抵抗は無意味と知れ。

 そなたが【自然回復】の使い手で、攻撃力を持たないのは調査済みだ」

 

言い回しが勿体ぶっているし、話の通じなさを節々に感じる。

女の得体のしれなさも僅かにあったが、シチュエーションの面倒臭さに辟易してカナエは逃走を選んだ。

大通りまで何歩もない場所だ。

 

「無駄だ」

 

カナエはなにか、透明の壁に遮られて離脱し損ねた。

 

「拙のスキルは【騎士道】。

 拙を含めた二人での決闘を取り決めるスキルで、発動した瞬間から拙とそなたは逃げられない」

 

抜いた刀を上段に構え、切手キリカが近づいてくる。

 

「そして敗北した場合、勝者の命令を何でも一つ聞かねばならぬ」

 

カナエの目と鼻の先まで切手キリカが近づいていた。

僅かにでも身動ぎすれば、その瞬間に刀が振り下ろされるに違いない。

 

「さあ、拙と共に来てもらうぞ」

 

 

カナエはパンチした。

切手キリカは鼻血を撒き散らして吹き飛び、命令を一つ聞かねばならなくなった。

 

カナエはこの女をギルドメンバーの前に連れて行く事にした。

 

 

 

57/ ファミレスにて

 

「なあ、これ欲しくないか?」

アサヒが言った。

 

「とりあえず動機は聞きたいですが……」

イロハが言った。

 

「いいと思う!」

ウサギが言った。

 

ダイアナ、オズ、カナエ、クレアは、ウサギが同意するのを見て頷いた。




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