ex12/ 名誉の負傷
「やった! 取引成立!」
「えっマジで? ミリアちゃんのやつ?」
「そうそれ。張り付いてた甲斐があったぜ」
日本の何処かで喜びの声が上がった。
隙間時間にスマホでデルタ・トレードを度々チェックする、今世界中で珍しくないありふれた男の一人だ。
「すげーじゃん。何送ったの?」
「姉ちゃんの通学用のリュック」
「お前の姉ちゃんのリュックって、あの赤いの?
なんかゴテゴテいろんなのついてるやつ」
「そそ。高校んときの」
「へー。許可とったの?」
「取ってないけど。
今はブランド物以外ありえないとか言ってるし大丈夫っしょ」
「ならいっか。ミリアちゃん可愛いもの好きで解釈一致だし」
「確かにキーホルダーがジャラジャラついてっけど。
この脈々してるやつとかって可愛いのか……?」
「それは俺にはわかんねえけど……」
ex13/ 委員長すげーや!
「えーとじゃあ、ホームルームの最後に。
クラス委員からお知らせがあります。志木さん」
「はい! 志木です。凄いお知らせがあります!」
教師から指名されて立ち上がった少女が、さも重大発表がありますといった風に言葉を切る。
「まずは先日の学園祭、お疲れ様でした!
学年で売上一位! 全校でも二位の成績でした。みんなが頑張ったからだと思います。
そして」
すうっと息を吸い込む。クラスメイトは学園祭を思い出してめいめいの表情を浮かべる。
「当クラスで使用した大看板『超おいしいクレープ ジュースもあるよ!!』が、なんと!
なんと、ミリアちゃんの生写真と取引成立しました!」
一瞬沈黙がよぎる。
「あー、志木が無断で出品したんだが、来週の廃棄が決まっていたし先生もいいかなと……。
勿論反対のやつがいたら言ってくれ」
教師の心配は無用だった。
クラス全体から歓声が爆発した。
「キャー! ミリアちゃん、マジ!?」
「委員長すげえ!」
「やったー生写真だ!」
「なので!
ミリアちゃんの写真が届き次第、クラス費から写真立てを購入したいと思います!」
「賛成!」
「いいと思いまーす」
「いくらでも出す」
「そして!
ミリアちゃんを卒業写真の右上に入れてもらうよう、学校にお願いしようと思います!」
「天才!」
「いいと思いまーす」
「いくらでも出す」
ex14/ パパから電話
「おいドーラ、ドーラ!」
「何よパパ。言っときますけどね、孫はまだよ。
彼も私も仕事が忙しいんだから」
「孫はもういい!
それよりもほら、家にお前がジュニアスクールの頃の服があったろう。
あれのサイズを教えろ」
「何よ急に。五フィートくらいじゃなかった?」
「そんくらいわかっとるわ!
センチとやらでいくつだ!」
「パパまだ計算できないの? 何やってたのその歳まで」
「畑一筋だわい!」
「あーはいはい。そのお金で私を大学まで行かせてくれたんだものね。
えーっと150cmくらいじゃないかしら」
「150!? ピッタリじゃないか!
あと孫は待っとるからな!」
「もう……捨てといてって言わなかったかしら?」
ex15/ "ふんわり美味しい!ミリアの大好物!"
「えー、我が社の主力製品である『おうちでホイップクリーム 超カンタン&超ながもち版』のパッケージですが。
この度リニューアルいたします」
「店頭の差し替えは来週金曜を予定しております、はい。はい。
旧パッケージ品の在庫がある小売に対しては、ラベルの上からシールを貼って対応していただく予定です。はい、こちらの配布は既に完了しております」
「この"ミリアちゃん御用達"の文字はもう少し大きくできないのですか?」
「えー、事前の会議でも同じ意見が挙がっております。
ですが、文字よりもミリアちゃんの写真の占有率を大きく取る方向でして、はい。はい。
社長の判断です」
「コストはどの程度かかっているんだ?」
「えー、写真の使用料につきましては、ミリアちゃん本人への定期的な製品供給が対価となっております。
季節ごとのパッケージ刷新についても、はい、意欲的であると、はい。先方から伺っております。」
「費用の打診自体は行っておりますが、現地で使用されていると考えられる通貨が、この世界のどの通貨とも両替できないわけでして……」
オブ・ザ・キングドラ面白すぎるな……未読の方は読んだほうが良いかも!?