ex16/ このダイアナのスクラップブックを見よ!
1.ジュリエット・ジャガーの詳細な活躍レポート
2.スキル【10匹の熊】一日貸与
3.おいしい屋台料理
「誘拐は現在進行系で問題になってるってことですよね?
それをミリアに解決させたいんですけど」
アサヒはジャガーの様子を伺いながら言った。
出会ったばかりで、縁も薄い、しかし昔の自分に似た彼女の名誉を回復させてやりたかった。
「おお、構わんぞ。ダイアナにでも【10倍】を都合させるが良い。
悪いことにはならんだろう」
ギルド結成後にメンバーの全員が大きく生き様を変えたが、その中でウサギを除くメンバー全員に共通して変わった点がある。
判断を気軽に下すようになったことだ。
特にジャガーが顕著に変わった。
かつて【転生】の噂を聞いて極東に自ら赴く際は、随分時間をかけて熟慮した筈だった。
「ええっ、良いんですか?
こんな子どもにそれは、危険なんじゃ……」
「オズさんも子ども認定されてませんでした?」
「それはあのエルフっ娘たちが節穴だったので。大人ですんで」
「あの三人組は下が三十二、上は九十じゃよ」
「えっ」
「そしてミリアは六十八」
「ぴぃっ」
「ははは、百を超えぬうちは誰も彼も若造よ」
ジャガーの言葉には不思議な温かさが籠もっていた。
この場には七人居るが、実年齢が百を超えるのはジャガーのみ。
彼女だけの特別だった【10倍】がそうさせた。
恐らく今までもそう思っていた。彼女はトップ冒険者として気の遠くなる間、母のように生国を守ってきた。
しかし口に出したのは初めてだった。
「ひとまずそういう感じで行きましょう。
それにオズさんも、なんとなく口にしただけで、別に危険とは思ってないですよね?」
「あっ、実は。はい。
【10倍】と言わず全部でも良いじゃんてなってます」
オズも危険だなんて思っていなかった。
この判断が事態を悪くはしない。今後はそうやって生きていく。
ウサギが楽しげに笑っている。
ex17/ 過去一で森の危機
生まれつき犬の十倍の嗅覚を持つ生物がいる。
そしてその動物は、【10倍】のスキルによって犬の百倍の嗅覚を持つ。
「あの、本気で熊が大量発生していて森の危機だと思うんですけど。
許可などは取っているのでしょうか」
イロハが先程の光景を思い返しながら言う。
いずれも巨体で、自然界にそぐわぬ分厚いアーマーを着込んでいる熊が七十匹。
エルフの森の広さをイロハは知らなかったが、更地にするまで一晩とかかるまい。
「許可? いらんいらん。
森に熊がいておかしいことがあるかいね」
誰もジャガーの意見に賛同しなかったが、反論もしなかった。
どんな文句が出たとて、結果があれば鎮まるだろう。
「おっと、早速ですが。
今回は拙の勝ちですな」
キリカが言う。四方八方に散開した熊のうち、成果を揚げたのは彼女が召喚した一匹だった。
「よし、全員で向かいましょう。
ミリア、行けるか?」
「えっと、大丈夫」
「凄い勢いが出ますからね! 転ばないように気をつけて!」
未だに度々転ぶ先輩からの、ありがたいアドバイスもある。
ex18/ エルフの辞書にないですね
キリカの先導のもと、一行が向かった先は森と平地との境だった。
ミスリルベアを前にして震える男がいる。
右手に手入れの拙い短刀を構えている。
「一人か」
粗末な衣類に身を包んだ、耳が短い男だ。いかにも盗賊といった風体で、しばらく洗っていないだろう髪が固くうねっている。
拐われたエルフは近くにいない。仲間と共に別の場所にいるのだろうか。
「ん? あやつ、結界のキーを持っとるか?」
ジャガーが何かに気づき声を上げる。
アサヒたちが注目すると、男の左手には木版のような物がある。
「何だお前ら! この熊が見えないのか!?
助けてくれよ!」
眼の前の熊に震えながら、男がアサヒらに向かって叫んだ。正しくは、人間に向かって、だろうか。
男にはどの様に映っているのだろう、人間が五人とエルフの子どもが二人だ。
「その熊は拙が使役しているものよ。
そしてそなたは、誘拐犯の仲間だな」
キリカが口火を切る。その言葉で悟ったのだろう、男は身構えた。
「クソっ、エルフの仲間かよ!」
「そんなことはよい。
なぜ貴様が結界のキーを持っているんじゃ?」
エルフの森の、許可のない者を遠ざける結界。そしてそこを通るための鍵である木版。
「今は通れんじゃろう。何者かの侵入が疑われて、すぐに村長がいじっとる。
結界の表情も変わっておるよ」
「畜生!」
男が一行を背にして、森の中に逃げ込もうとした。
「えーっと、誰がやる?」
「ワイくんはちょっと……」
「拙がやっても構わんが」
「開いていただけたら私も参加しますよ」
「そんなん決まっとるじゃろ」
「ああ。ほら、ミリア」
アサヒが彼女の背を叩く。
物怖じしつつ、アサヒたちの表情を伺いながら。
「えっと、い、いきます!
【騎士道】!」
一瞬の後、ミリアの足元から、長大なフィールドが展開された。
参加者は誘拐犯の男と七人の子ども。
正々堂々の戦いが始まる。
自作のポケモンSSが激オモロすぎて申し訳ない