ex19/ まずは今どんな気持ちか教えて
「ええと、そうっすね。
ガキのパンチじゃないですよね。反則だろ。
腹から下が無くなったのかと思いました」
ミリアのパンチにより敗北した男が、仰向けで地面に転がされていた。
腹部に激しい打撲の跡。
それから左頬に大きな青あざ。
ジャガーが丁寧に手加減してつけたもので、「負けた印じゃよ」とのこと。
確かにこの姿なら、エルフの前に連れて行っても一目で無力化された状態だと解るだろう。
「それで、この後は何をするつもりだったんですか?」
ミリアが問う。
「仲間と合流するつもりでした。
村の端で火事を起こすことになってたんで、そっちにエルフの戦力を分散させて、その隙に森を出ます。
仲間が戦利品を持ってここに来ることになってるんですが、まだ来てないっすね」
「結界のキーを持っとった貴様が逃がし役ということじゃな」
「そうっす」
「なぜ盗賊がキーを持っていたんだ?」
「確かにねー。エルフってすんごい排他的なイメージだけど」
「お話ではそうですよね」
「えっと、それは、俺が昔ここと取引してた行商人の下っ端だったからで……」
「行商人? 今は来ていない筈じゃが」
ジャガーが尋問し、盗賊の男が答える。アサヒらは銘々好きに発言している。
ミリアがその会話の中で、きゅっと唇を結んだ。
「二年前まで、来てたんです。
急に来なくなって、それで」
どこか遠くを見ている。
「薬の材料が足りなくなって」
ex20/ あと九回あるからそっちで考えといて!
男の身柄はエルフの大人たちに引き渡された。
ジャガーが人手を呼びつけ、特別な魔法で命令を聞く状態になっていると説明する。
「この男が結界のキーを持っておった。
それで逃げる算段らしいの。ならばまだ森に潜んどるんじゃろう。
山狩りでもなんでもしぃな」
「助かった。だが、急に森中に見慣れない熊が大勢現れてな……」
「あっ」
オズが声を漏らした。
「そこの人間、何か知っているのか?」
「いえっ、その、ええと、ジャガーさん」
「妾らの使役獣じゃよ。
引き上げてもいいが、残りの盗賊を見つけるまでやらせた方が良いじゃろ」
「そうなのか? 村の連中が不安がっているんだが」
「そんなもんはそちらで慰めておけ」
「浚われたのは子供なんですよね。
なら、エルフの大人が接敵したら人質だなんだと騒がれるでしょう。
熊なら野性の動物と勘違いするんじゃないかな」
アサヒの言葉に、オズは何とも言えない表情をした。
ぎらぎらと光る鎧を身に纏った熊が、何匹もチームを組んで盗賊を追い詰める様を想像したが、その後盗賊がどういう反応をするかは浮かばなかった。
エルフもオズとよく似た表情をしている。
何とも言えない、気まずい空気が漂う中、ミリアから声が上がる。
「あっ、見つけました。見つけた……。
サーヤちゃんがいます! あと人間の男が三人」
きゅっと目元を寄せながら言う。
彼女の使役する熊が、浚われた子供を見つけたのだ。
「良かったぁ、怪我してないみたい。
あと、あっ。倒した」
あと倒した。
ex21/ ジャガーは知ってましたよ
次のニュースは、
"二人目のエルフ"として連日話題になっている、ミリアちゃんに関する新情報です。
そのミリアちゃんの世界で使用されている通貨、ドロベルと呼ばれている物なんですが、
先ほど武泰大学から新しい発表がありました。
なんとこちら、一般的なダンジョン取得物である魔石と、非常に成分が似ているとのことです。
魔石を動力源とする機械に接続し、複数の大型機器での運用に成功しております。
今のところ問題は確認されておりません。
そしてこのドロベルですが、概ねサイズが均一であることから、動力の供給方法に革新を齎すと考えられています。
産出時の大きさが価格を決定する、魔石市場への大きな一石となるかもしれません。
武泰大学の剣崎教授は、
『従来の魔石式は箱いっぱいに大量の魔石を詰め込んで、毎回このくらいを交換、というやり方が主流でした。
これではどうしても機械のサイズも大きくなってしまう』
『しかしこのドロベルが異世界の加工技術の賜物ならば、小型の機器に合わせて画一化することができるかもしれない。
大量生産が実現すれば、カートリッジ式での運用も見込める』
とコメントしています。
また、こちらの発表に合わせて、サンプル提供元である佐藤食品も調達を強化する意向を表明しており……
まさか同じ作者がオブ・ザ・キングドラという激オモロSSを書いていたなんて、、