スキル【10匹の熊】   作:switch2当選しました

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ギルド『10匹の熊』の雛形

20/ 行こ!

 

物部モクゾウのスキル【魔道具作成】により、アサヒの【転生】、イロハの【共有】をアイテムに封入する作業が始まった。

二人がすべき事は二週間に一回、己の血を提供する事。

イロハの【共有】が付与されたアイテムが出来上がった時、ギルド『10匹の熊』は本格的に活動を始める予定だ。

 

上野ウサギは地元の高校へ入学した。

一色イロハは冒険者学校の普通科に入学した。

朝倉アサヒは中学浪人となった。

 

三人は三月から四月にかけて、時間を作ってはカラオケに行ったりファミレスに行ったりした。

 

 

 

21/ スキル【未来視】の証言

 

その商品は、国内および、海外在住ながら日本へ向けたアンテナが高い一部の富裕層の間で、大きく話題となった。

 

日本のマジックアイテム作成者として最高峰の一人である物部モクゾウが、彼と取引のある顧客に向けて購入者を募ったのだ。

 

商品の名は「中身を来世に持っていける壺」。

今までモクゾウが販売してきた物、今まで顧客が購入してきた物、いずれとも全く異なるその商品について、始め顧客は懐疑的であった。

かのエンチャンター物部モクゾウが詐欺に手を染めるのか、と疑う人もいた。

 

そんな中、モクゾウは彼らの声に誠実に対応した。

 

 

先ずはこの商品が一点物で以後手に入らない事をしつこい程強調し、性能には一切の嘘も誇張も無いと断言した。

その上で、希望する顧客には来店の上、製品に触れたり確認したりする事を許した。

 

流れが変わったのは、とある顧客が懇意の【未来視】スキルホルダーを連れてきたこと。

その顧客は齢八十を超えており、自身の死期を近くに捉え様々な生前の準備をしていた。

一族への財産分与もほとんど決まっており、遺書も既に書き上げ年に一度承認し直す段階だった。

 

その日その時点では明確に購入の意思を示していたのはその顧客のみで、【未来視】はその老人が購入した「中身を来世に持っていける壺」の先一年の行く末を見定めた。

 

床の間に据え置かれた壺は三ヶ月後、老人とともに病院の一室へ。

更に二ヶ月後には家族に囲まれ逝去する老人の傍らにあった。

 

そして、どこか別の場所、全く知らない若夫婦の間に子が生まれた時、その壺は変わらず傍らにあった。

 

詰めるだけ詰め込んだ莫大な財産と共に。

 

 

 

22/ コンタクト

 

スキル【未来視】が見たビジョンは現実とならなかった。

 

どこからか情報は漏れ、壺は始めの老人よりも更に莫大な資産を持つ人物の手に渡った。

付いた値は四十億と端数。

モクゾウが予想した以上に、それは釣りが出る商いであった。

 

額面が五億を超えたあたりで、モクゾウはイロハを通じてアサヒに連絡を取っていた。

 

「超えるとは思っておったが、オークションは儂の予想を大きく超えて白熱しておる」

電話口でモクゾウが言った。

 

「当初想定しとった依頼料を大幅に超える商いとなるだろう。

 取り分は六対四でどうじゃ?

 勿論そっちが六で良い」

 

アサヒ自身、想像以上の額に一度息を飲んだが、返答を変えるのは躊躇われた。

 

「それって、今後も同じくスキルを付与して売っていこうって話ですよね?

 すみませんがお断りします」

 

「変わらんか?

 凄まじい額になるぞ」

 

「勿論金に興味がないわけじゃないですよ。

 ですが、それで生計を立てるつもりはありません」

 

「そうか……ところで、儂の顧客から、このアイテムに付与したスキルホルダーを紹介してくれという声がいくつも出ているんじゃが」

 

「秘密でお願いします、どうか。

 想定以上で売れた分は口止め料としてください」

 

電話口からは暫く沈黙のみが聞こえていた。

 

「……そうか、わかった。

 儂も商人じゃ、約束は守ろう」

 

「はい、ありがとうございます。

 ですが一つだけ」

 

アサヒは言った。

 

「ジュリエット・ジャガーがこの件で連絡を入れてきたのなら、

 俺たちの事を言ってくれて構いません」

 

 

 

23/ ギルド『10匹の熊(新世代)』

 

五月の半ば頃、環境を新しくした新入生や新社会人は環境の変化に少しずつ慣れてきただろうか。

ここ三十年生国であるイギリスから離れることのなかった、世界最高の冒険者ジュリエット・ジャガーが日本に入国した事がニュースとなった。

 

彼女は首相の歓待を受け、ダンジョン省の歓待を受け、しかし入国の目的を聞かれれば観光と答えるのみだった。

 

政府は喜び勇んで彼女の観光のために人員や融通を可能な限り利かせようとしたが、ジュリエット・ジャガーはそれを断ったとされている。

日頃から侍る何名かの連れと共に、歓待が終わり次第姿を消した。

 

政府側の人員はいとも容易く彼女らの姿を見失い、一行がどこに行ったのか、何が目的なのか、把握できないでいる。

 

繋ぎ役の商人と、三人の少年少女のみがその目的を知っていた。

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