スキル【10匹の熊】   作:switch2当選しました

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力を振るってみよう!

28/ 八匹目の怪獣、倶楽部クレア:スキル名【灰銀装甲熊】

 

「俺たちの目標を決めよう」

朝倉アサヒが言った。

 

ギルド『10匹の熊』は最強のスキルを手に入れた三名が何の制約もなく動ける、やろうと思えば何だって出来るギルドだ。

既に帰国したが、世界最強の冒険者ジュリエット・ジャガーも最早仲間の一人と呼んで良かった。

 

何でも出来るからこそ、何をすれば良いのか解らない、という状態にあった。

 

「イロハの目標は、このギルドをお祖父さんのそれのように活躍させる事か?」

 

「大まかにはそうですね。

 ですが一番の目的は、このスキル【共有】に対する祖父の無念を晴らすことでした。

 【10倍】を手に入れてまだ足りないと言ったら、罰が当たるでしょう」

 

「ウサギは?」

 

「あたしはそういうの無いよ。

 新しいクラスも忙しいし」

 

アサヒ自身にも目的らしい目的などなかった。

進学について両親の期待を裏切ってしまった事は、これから素直に活動していく中で慰められるという希望もあった。

 

十五歳の少女二人と、中身は違うが同じ立場の男一人にとって、何を置いても取り掛かるべき緊急の事案など無かったのだ。

三人には時間があった。

 

 

 

29/ 最も幸運で、最も恵まれる10匹の枠

 

「大きく目標を決めよう。

 俺たちには後六人分の枠がある」

 

その枠とは、スキル【共有】が繋げられる残りの人数で間違いない。

イロハ、ウサギも当然同じ認識でいる。

 

「全部埋めれば十人になるわけだけど。

 イロハ、お祖父さんのギルドの『10匹』ってのはギルドメンバーの数を言ってるのか?」

「そうですね。

 祖父を含めて十人のギルドでした」

「ふーん、みんな仲良しだったの?」

「そう聞いています」

 

「なら俺たちもそうしないか?

 ギルド『10匹の熊』の仲間を六人探そう」

「ジュリエット・ジャガーはもう入ってるの?」

「ああ、数に入れてるよ。

 そういう話は前回しなかったが……。

 あの人は今ソロの筈だし、付き合いもきっと長くなる」

 

六人の仲間を作る。

言い換えれば六つのスキルを手に入れるという事だ。

 

わずか一日で圧倒的に選ぶ立場へと変わった三人は、その指針も定まらないまま話し合いを続けていた。

 

 

 

30/ 千年じゃ済まない!

 

ギルド『10匹の熊』の勧誘にあたり、その優位性を言うなら、メリットに比較してデメリットが無に等しい。

 

スキル【10倍】とスキル【転生】の組み合わせは、最強のスキルと無限の生をもたらす。

 

人生に終わりが無いことを、デメリットと呼ぶだろうか。

そんなものは、実際に無限の生を得て堪能しきってから飽いた者だけが口に出来る。

少なくともアサヒはそう考えている。

 

「どんな人間を誘っても、断られる気がしない」

「はい、そうですね」

「あたしもそう思う」

 

三人は今、母親に夕食を聞かれ、なんでも良いと答える子供だった。

 

「例えばさぁ、倶楽部クレアとかは?」

「日本一位の?」

「そう」

「あの人ってスキルが熊のなんかじゃん?

 あたしらのギルドに丁度いいかなって」

 

国内で確認されているダンジョン踏破区域のほぼ最下層、そこにごく稀に現れ挑戦者たちを下していくミスリルベアというモンスターがいる。

それを常に一匹連れてダンジョンに入る冒険者だ。

 

当然そんなものが暴れれば、当の最下層でさえほとんど敵は居ない。

いくつかのダンジョンで、徳川将軍の到達記録を塗り替えたのも彼女だった。

 

「それもいいかもな」

「祖父のギルドはマタギの家系が多かったので熊を掲げていたのですが」

「いいじゃん、倶楽部クレアかっこいいし」

 

今すぐ決めてしまう必要は全くなかった。

三人は五兆円の使い道を考えるように、仲間にしたい冒険者とスキルを挙げていった。

 

 

 

31/ 【10倍】の新米冒険者

 

「それよりあたしはさ、【10倍】試してみたいな」

「それはダンジョンでということですか?」

「そうそう」

 

ウサギは変わらず楽しげだ。

残りの二人も気持ちは同じだった。

 

「ですが私たちは未だライセンスも持っていませんし……」

ダンジョンへの入場は、さほど厳しくはないが無制限で子供を許している訳でもない。

 

「ほらあれってどう?

 イロハならさ、冒険者学校のダンジョン入れるでしょ。

 それにあたしたちも連れてってもらうことってできる?」

 

「ああ、占有ダンジョンのことですか。

 ええと、出来るとは思います。

 詳しくは確認してみなければなりませんが」

 

ウサギにも、他の二人にも、誰か近い大人に引率してもらいダンジョンに入るという考えはないようだった。

 

スキル【10倍】が期待の半分でも問題なく使えたら、自分たちが知る範囲の力量の大人たちは、逆に制約となるに違いなかった。

 

「折角だ、二人で行ってくるといい」

 

アサヒが提案から自分を省いて同意した。

 

「アサヒは来ないの?」

 

「俺はちょっと、遠慮しとく」

 

今となっては思うところもないが、先月落ちたばかりの受験生が、友人を頼って冒険者学校の施設に入るのは、いささか格好がつかない。

 

「なにそれ男の子?」

「正解。

 男の子なんでね」

「残念です。

 ではウサギさん、二人で行ってみましょうか」

 

そういう事になった。

 

「手応えがどんなもんか、後で教えてくれ」

 

その日のうちにイロハが校則を確認し、二人は週末にスキルのテストをした。

アサヒは後日、手応えが有りすぎて無さすぎると聞かされた。

 

スキルの手応えは有りすぎて、ダンジョンの手応えは無さすぎた。

 

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