異世界転生した。どうやらこの世界はナーロッパで、魔法があるらしい。こういうのは、幼い頃から魔力を限界まで使い、鍛錬することで魔力量が増えて「基本魔法なのにどうしてこれほどの出力が!?」となるのがテンプレだ。生後まもなく意識があった俺は両親に怪しまれないように気をつけながら、魔法の鍛錬を開始した。目指せ魔力量がチーレム無双!
季節が一巡し、医者みたいな白衣の人が家にやって来た。聴診器のようなものを俺に当てがい、暫くすると驚いた顔をして、慌てて別の機具を取り出した。バレてしまったか。この俺の隠れた才能が。そうなんです母さん。俺は神童なんです。
医者もどきが母親に何かを告げると、彼女は涙を流し、しきりに何かを医者もどきに訴えていた。まるでどうして難病の息子は助からないのかと医者を責めるかのように。その日は一日中、両親は俺につきっきりだった。え、俺死ぬん?
次の日家の前に、やたら豪華な馬車がきて、中からThe 騎士というような人物が出て来た。両親は涙ながらに俺をその騎士に引き渡し、代わりにパンパンに詰まった皮袋を受け取っていた。この国、優秀な子供はこうやって引き抜いてんだ。
あー俺この後どうなるんだろ。貴族とかの養子になってそこで魔法学院に入って、可愛い子と出逢っちゃったりするんだろうか。
馬車に揺られていくと、王城って感じの場所についた。The 騎士が俺を抱いて、とても荘厳で大きな扉の前に立つと、大きな声で「シツレイシマース」と叫んだ。に、日本語!?
混乱する俺をよそにThe 騎士は自動的に開いたドアの中に、俺を抱いたまま足を踏み入れた。中はとんでもなく広く、謁見の間というような感じだった。ただし玉座はなく中には大きな長方形のテーブルがあり、8つの椅子と、そこに浮く7柱のモノリスがあった。○ーレ意識してるじゃん絶対。
The 騎士は俺を丁寧に椅子に置くと退出した。え、赤ちゃんを椅子にポンって置いて出てくの?そう思っていると、モノリスが喋り始めた。
「まだ発声魔法を習得してないだろう。これから魔法を与えるから混乱しないように」
そう言われてすぐ、頭の中に声を疑似的に発生させる魔法の使い方が流れ込んできた。
「突然連れて来られて警戒しているだろう。ただ安心して欲しい。我々は仲間だ。膨大な魔力を持つ赤子を我々は保護している。そして今までの7人全員、ここにいる者は皆、元日本人のオタクだった。きっと君もそうだと思うが、どうだろう?」
「あ、あー。こんにちは。初めまして。確かにそうです。自分だけ特別だと思ってましたがこんなにも先輩がいらっしゃるとは驚きました。」
「それはそうだろう。ようこそ異世界へ。歓迎するよ。と言いたいところだが、一つ君に残念な事実を伝えねばならない。」
え、殺される!? 出逢って数秒でバトルか? 最初の戦闘か? やってやるぞ俺は勝つぞ。
頭を戦闘モードに切り替えていると、7柱のモノリスがサーッと消失し、それぞれ中から俺と変わらない赤ちゃんが現れた。
「我々は魔力赤子。我々は魔力を鍛錬しすぎた。我々の体はもう成長しない。一生赤ちゃんのままなんだ。現に私はこんな見た目でも70才なんだ。」
…
…
あまりにも予想外なその言葉に思考が停止した。ずっと赤ちゃん…ってことは?イケメン最強チーレムは? 彼女いない歴今世でも更新できない!?
「いや。いやいやいや。これドッキリでしょ? 先輩方も人が悪いなあ。そんな、どうしてずっと赤ちゃんなんてことになる? 70才ってもきっとエルフなんでしょう?」
「残念ながら私はエルフでは無い。しっかり5才になった時に親に気味悪がられ、捨てられている。両親からしてもちゃんと異常だったわけだ。どうしてかと聞いていたが、君は膨大な魔力を持っている。多分、生後間も無く訓練を始めたんだろう?」
「あ、ああ。それが?」
「前世で、筋肉を鍛えすぎると身長が伸びないって話聞いたことないか?」
「……まさか」
「その話の真偽はどうだったか忘れてしまったが、この世界、魔力に関して、これが顕著に発生する。そして我々は皆、チーレム無双を夢見て、幼くして魔力を鍛えすぎた。我々の体はこれ以上成長しない。一生赤ちゃん。」
「この世界、魔法の素質は女の子の方が高いらしくてね、可愛らしいロリっ娘魔法少女が沢山いて、彼女らにあやされるのは凄い楽しいよ!合法ロリババアもたっくさん。だけど赤ちゃんの手でしか触れられないけどね。イエスロリータノータッチってね!」
「草」
「草」
「うまいこと言ったか?」
先輩赤ちゃん方は楽しそうにしていたが、本当に楽しいのだろうか。一生赤ちゃんの暮らしなんて想像がつかない。少なくとも今まで想像してた転生チートライフは今世では絶対に手に入らないものになった。