戦いは終わった。扉の民には大きな犠牲が出たが、アロー、アリスト、リアムは無事だった。長老達は厳重に扉を封印し、二度とそれが使われない様に祈りを捧げた。
ストーン・アローは叔父ハイランド・ホークの誘いを断り、再び村を出た。アリスト達とも別行動を選び、彼はメキシコへ渡った。現地で義賊をして暮らした後、東南アジアへ移住。以降の消息は不明。
リアムはエスペランザ・ブラボーでトッコリの店に住み込むが、町そのものが半年後、地震によって壊滅する。二人はアリストの招きでオーストラリアへ移住、酒場を再びオープンさせ、アリストの知恵袋としても活躍する。ネズミ王も健在。
復讐を終えたジュディアは英国へ帰るが、トラブルに再び巻き込まれスコットランドへ移住。現地で恋人を得、やがて結婚する。子供も三人産まれた。
アリストは以前言っていた通り、オーストラリアへ渡った。現地でひょんな事から莫大な財宝を掘り当てた彼は、後に名前を変えて君臨する。ただ女運の悪さは相変わらずで、二度離婚している。三度目に巡り合った妻と双子を設けた。
そしてロックは、ラビリィを連れて元の世界へ帰るべく旅をしている。
「お兄ちゃん、とっても寂しそうだね」
「みんなと別れたからな」
「それもそうだね」
ラビリィは言葉に出せなかった。短い間だが、彼女はリアムやジュディアに懐いていた。アリストともいい喧嘩友達だった。彼女には、もう家族がいないのだ。
(カリーナがいなくなって、哀しいのは‥‥ロックだけ。ボク、嫌な言い方だけど‥‥ちょっぴり嬉しい。でも、それじゃカリーナに勝った事にはならないんだよね)
想えば想うほど切なかった。だからこそ、彼女は一歩踏み出して行動する事にした。
「ロック」
「また甘えるなよ‥‥ん?」
青年は相手の呼び方が変わった事に気付いた。
「子供扱いしないで」
馬をギリギリまで彼の横に近づけると、突然彼女は鞍を蹴り、ジャンプした。馬は落ち着いていたが、ロックは慌てて娘の身体を抱き留める。
「わ、あ、危ない!!」
「そうやって油断ばっかりして!」
ラビリィは、素早くロックの頬を狙って唇を押し付けた。
「ボクはいつでも狙ってるよ。誰かさんの事」
「そりゃ怖い」
ロックは声を上げて笑った。追う者を失い、守るべき者を手に入れた。それが幸せなのかどうか、まだ分からなかった。だが、抱きしめた命の感触は、久々に心地よいものだった。
二頭の馬はやがて走りだし、果てなく広がる地平線の向こうへ消えた。
今、一つの星の歴史がねじれ、もう一つの歴史と合わさった。この出来事をじっと見つめていた遙か遠くの星は、ひとまずそこで目を逸らし、眠る事にした。まだまだ、物語は続きそうだったからだ。
終