陰キャだけどアイドルはじめてGBN〈惑星〉を救う話。   作:神宮寺Re ⑦

10 / 47
エリカはフォースバトルの最中に嫌な記憶を思い出してしまう話。


第十章 -【現実と虚構の狭間で】-

 

──今から十年前。

 

海沿いの東北地方に住んでいたわたしは、父親である拓人(タクト)と母親である美沙希(みさき)とともに仲睦まじく過ごしていた。

二階建ての一軒家に住み、明るい太陽が反射してキラキラしている海に見惚れながらわたしは退屈な日々を過ごしていた。

 

「……なんか面白いこと起きないかなぁ」

 

そんなことを思っても日常が変わることなんてなくて、そんなのはわかっててもどこか違和感を感じていた。

 

☆☆☆

 

夕方になり、夕食の時間を迎える。

階段からタタタタと勢いよく駆け降りてリビングのテーブルの椅子に腰掛けたわたし。

 

「今日は誕生日おめでとう!エリカ!」

「おめでとうエリカ〜!」

 

六月二七日。

この日はわたしの誕生日だったため、大きなホールのショートケーキとドリンク、そしてオードブルが並べられていた。

 

「……あ、ありがとう父さん母さん!」

 

ケーキに付けられた六本のロウソクについた火をわたしは一気に息を吹いていく。

テレビ画面に映るニュース映像を見つめるわたしたち。

 

『……速報です!速報が入りました!ただいま観測所によりますと──』

 

慌ただしくアナウンサーが渡された紙をまとめ上げ、原稿を読み上げていった。

 

『大気圏外から──未確認の飛行物体が地球に向かっているとの……情報が入りました。なお、原因等の調査についてはNASA、および首相官邸との協議が後ほど行われるとこちらのメディア関係に送られている模様です。これから政府による記者会見が開始するとの連絡が入っています』

 

「おうおぅ……なんだ?なんだ?宇宙で事故でもあったのか?」

 

わたしの父親のタクトが、ニュース速報を聞いておどおどしはじめていた。

 

「なんなのかしらね?こんな何もない日に限って」

 

食べはじめていたミサキが、箸を止めテレビに釘付けになる。

脳内に電撃が走り、違和感の正体がこのことだと気づくわたし。

 

(……なに!?なにかが!くるっ!)

 

そこでわたしは本当の違和感に気づく。

ここに居たらダメだってことに。

こんなところに居たら死んじゃうってそう思っていた。

 

だから、はやくここから逃げ出したかった。

こんなことしてる場合じゃないよ!逃げようよ──!

 

わたしに語りかける(電撃が走る)ように直感がそうさせる。

 

「…………はやくっ!はやく逃げようよ!ねぇ!」

「どうしたのよ急に?なにかあったの?」

 

いま起こってるんだよ母さん!ねぇ!わたしの話を聞いてよ!聞いてよ!聞いてってば!

 

「はやくここから逃げないとダメだよ!みんな死んじゃうよ!」

「……大丈夫かエリカ?悪夢にでもうなされていたいたのか?」

 

違うよ!わたしなにも悪夢なんて見てないよ!ねぇ!はやく!はやくここから逃げようよ!

 

(むしろ悪夢なのはこれからなんだよ!)

 

「ほら、落ち着きなさいよエリカ……あなたの誕生日でしょ」

 

変わらず冷静にわたしをおさめようとするミサキ。

なんで……!なんでわかってくれないんだよ!

ほんとにみんな死んじゃうよ!

 

意を決したわたしは靴を履いて、二人の声を無視して飛び出すように外へ出た。

 

☆☆☆

 

ただ、がむしゃらに。

ただ、足を止めずに。

ここから、飛び出したかった。

ここから逃げたかった。

絶対に死にたくなかったから。

 

「……なに?あれ?」

 

紅く染め上がる一筋の光に、一層の恐怖感をひしひしと感じるわたし。

 

それは合計で七つもの光が空を眩く照らしだす。

 

「…………こんなの!こんなの普通じゃない!おかしいよ!こんなの!」

 

転んで足を挫いても、わたしは脚を止めたくなかった。

止めるべきじゃなかった。

ここで振り向いてしまったらいけないと、そう心が叫んでいる。

 

もうどのくらい走っただろうか、そんなことでさえ気にも止めないわたし。

 

高台の展望台にやってきたわたしは街を見渡す。

 

「……どうしてみんな!逃げようとしないの!頭おかしいんじゃないの!」

 

息が切れそうになりながら、360°街中全体をを見通していくわたし。

建物はいつもの日常の風景と変わらず、家族団欒(だんらん)が営んでいるであろう電気の光が何千と光っている。

 

「……ここにいれば助かるよね?」

 

不安感がずっと心を蝕んでいく。

ここに居ても助からないかもしれない。

ここでわたしの命は尽きてしまうかもしれない。

まだやりたいことも夢もなにも持っていないのに。

そんなのは嫌だ。

そんなのは認めたくない。

ただ……生きることを諦めたくなかった。

 

そんな中、大きな巨体が街に降り立つ。

そびえ立つビルよりも大きなその建造物が、いまこの地球に降り立った。

 

「……人型のかたち?なんで?」

 

いままで怪獣やヒーローは見慣れてはいたけれど、人型を模しているその形状に見覚えがなかった。

 

その大きな巨体の指先から、なにやら緑色の粒子が溜め込まれていく。

 

「…………なんなの!ねえ!ここから居なくなってよ!消えてよ!」

 

わたしが大声で叫ぶも、その言葉が届くことはなかった。

両手の五本の指先から放たれた粒子の塊が、街を蹂躙していく。

 

有無を言わさず、背中の甲羅のような物体からも同様に粒子が放物線を描くように周囲を焼き尽くしている。

 

一瞬にして、わたしの住んでいた街は炎の渦に飲み込まれていく。

 

「……あぁ、……あぁ……ぁあああああああああ!」

 

溢れ出す涙が止まらない。

こんな光景なんて目に焼きけたくない。

当たり前だった日常がこんな簡単に、こんな一瞬で変わっていくなんて記憶に残したくない。

 

こんなの嘘だ……

こんな光景なんて夢だ……

今日はわたしの誕生日だったんだ……

だったのになんで……

なんで……

なんでなんだよ!

 

「……あは、あははははははは……あはははははははは……はははははは……」

 

そのとき、わたしのなかで風船が破けるようになにかが弾けとんだ。

 

(今日はわたしの誕生日!目の前に広がるのはわたしを祝福する光だよ!きれいだね!)

(おめでとうわたし!六歳になったよ!)

(ねぇ!祝ってよ!生きててくれてありがとうって言ってよ!)

(……きれいな光だね!今日は花火大会でもやってるのかな!?)

(こっちには赤い光!こっちにもオレンジの光!あっちには白い光がみえるよ!)

 

わたしの前に広がる光景はこんなにも綺麗だったんだね!

こんなにもわたしを祝ってくれてすごくうれしいな!

 

その日からわたしの人生はなにかと繋がっていた細い糸が破れたからか、現実から閉ざすように別の自分を生み出していた。

 

☆☆☆

 

「ねぇ!ちょっと!エリカ!どうしたのよ!ねぇ!返事してよ!」

 

アカネからの問いかけにも反応を示さない。

明らかにおかしい。

崩れいく瓦礫と炎に包み込まれる記憶を呼び起こされてしまい、脳内に悪夢のフラッシュバックされた映像が再生され、挙動不審になってしまうエリカ。

 

(……もう!もう!もういやなんだよ!こんなのは!)

 

「……ここはあたしがやるしかないのか!」

 

アカネが操縦桿を一気に動かすと、エリカを助けに向かう。

 

「ようやく出てきたか!畳み掛けるよクロミ!」

「わかったよ!オリバ!」

 

迎え撃つフォース〈MARS RAY〉の二人。

 

「ねぇ!返事してよエリカ!返事をして!正気にもどってよ!あんたが見てる世界は現実(リアル)じゃないよ!虚構(ゲーム)だよ!」

「うぁぁぁぁぁああああああああああああああ!」

 

アカネの怒号にも近い掛け声にもエリカは反応を示さない。

 

(絶対になにかがおかしい。こんなのいままでなかったのに)

 

(こんなことが起こりうるなんて思ってもみなかったのに。

いったいなにがあったのエリカ……)

 

エリカはコンソールを動かし、いままで取っておいた禁断の……

 

「……エリカ!?あんたまさか──!」

 

画面上に映し出される“BLAKE DECAL(ブレイクデカール)"の文字列。

 

「わたしから──!わたしの世界から!大切なものを奪うやつはみんな敵だ……!消えてしまえええええええええええ!」

 

先ほどまで欠損していた左腕が復元され、バトル開始時と遜色なくもどるエリカのガンプラ。

 

「……やめなよエリカ!そこまでやる相手じゃないよ!いい加減!正気にもどって!戻りなさいよ!もどれって言ってんだよ!」

 

何度もエリカに問いかけるも聞く耳を持たない。

まるでなにかに取り憑かれたかのように彼女の眼はなにも見えていなかった。

見えているのは今、敵対しているガンプラだけ。

 

目前にはウーンドウォートを操るクロミの姿。

 

TR-6 ウーンドウォート。

雑誌企画『ADVANCE OF Z(アドバンス・オブ・ゼータ)ティターンズの旗のもとに』より登場。

ティターンズが行った次期主力候補機の開発によって生み出された本機はこの機体をコアとすることで、幾つもの戦場に適応できる拡張性を有している。

また、強化人間骨格OS『BUNNys(ヴァニス)』が搭載され、一般兵でもサイコミュを操れるなどの特徴を有していた。

 

ブレードを展開させたオリバはブレイクデカールを使用するエリカへと攻撃を差し向ける。

 

「本気になるのが遅いってんだよ!バカにしてんのかよ!」

 

(……こんなやつに負けるわけがないだろ!わたしのことバカにしてんのはてめえだよ!ゴミクズがよ!ぶっころすぞ!わたしのことなんてなにも知らないくせに!)

 

正気ではないエリカはチマチマ撃つのは時間の無駄と考え、つい癖でライフルを投げ落とす。

 

背中から取り出した《アロンダイト》を両手に持って、オリバを倒すために迫撃する。

 

「……ねえ!ねえってばエリカ!あたしの話を聞いてよ!聞きなさいよ!」

 

何度も問いかけるアカネの声はいまだに届かない。

届くはずがない。

だってもう彼女は人間でいることを放棄したのだから。

 

ただ、怒りの感情に飲み込まれていくエリカは対峙するオリバと切り結ぶ。

 

「……あんたの存在そのものが気に食わない!アイドルだなんて幻想を抱くようなやつに負けてたまるかってんだ!」

「……黙れつってんだよっ」

「んだよ!てめえこそ黙れよ!……どうした?ブレイクデカールを使っても勝てないってことを思い知らされたいか!」

 

(……こいつと話しても無駄だ!わたしのなにがわかるっていうんだ……こんなやつなんて死んでもいい奴だから!)

 

ガンプラ全体が巨大化するエリカのガンプラ。

その大きさは、クロミのガンプラの一.五倍以上にまで膨れ上がっていた。

 

「……お、おい!?冗談はよしてくれよ!なぁ!?聞こえてんだろ!?なぁ!おい!」

 

コンクリートの地面に叩きつけられるクロミ。

重圧によってひびが入っていくのを見たオリバは怖気はじめる。

 

「……もう!やめろよ!やめろって言ってんだよ!やめろ!やめてくれええええええええ!」

 

押しつぶされたことによってクロミのガンプラは撃破扱いとされ、消失していく。

 

「つぎはおまえか──!」

「…………ヒッ」

 

オリバはエリカがクロミを押しつぶす状況を見ていたことで、恐怖感が勝ってしまう。

 

「やめろ!もういいだろ!もういいだろうがよ!……話を聞けよ!」

「それを決めるのはおまえじゃねえんだよ!このわたしだ!」

 

止まることのないエリカのガンプラは、オリバへと近づいてきていた。

 

「……それ以上やんなくていいよエリカ!もう勝ったも同然だよ!戦はなくていいんだよもう!ねぇってば!」

 

振り下ろした巨大化した《アロンダイト》によってオリバのガンプラは半分に切断されていく。

 

「…………この化け物がァァァァァァァァァァァァァァ!」

 

『〈BATTE ENDED〉──!』

 

そうして、フォース〈ASTERLISK〉のフォースバトル初戦は相手であるフォース〈MARS RAY〉に強い恐怖感を植え付けさせることで終わりを迎えたのだった。

 

***

 

 





  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。