陰キャだけどアイドルはじめてGBN〈惑星〉を救う話。   作:神宮寺Re ⑦

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アカネがエリカと出逢う過去編です。


第十八章 -【あんたに出逢ってから】-

 

──今から五年前。

 

東北地方で戦火に巻き込まれ、飛び散った瓦礫(がれき)によって右眼を負傷したあたしは眼帯をつけていた。

身寄りもなかったために児童養護施設〈KARABA(カラバ)〉で変わらない日常を過ごしていた。

 

そんなある日、あたしの前に一人の人物が現れる。

 

「きみも一緒に来るかい?」

 

年齢は五〇歳くらいの叔父さんがあたしを引き取ろうとしている。

 

「……お、おじさん!」

 

駆け寄る黒髪の一人の女の子。

同い年で、あたしと境遇が一緒だった。

あんまり話したことなかったけど、どこか親近感を抱いていた。

 

「エリカ……!生きててよかった……!怖かったろうに……」

 

おじさんは彼女を強く抱きしめて泣いていた。

涙する男性を見ながらあたしは家族がいることに羨ましかった。

あのとき、あたしの家は一瞬で焼き尽くされた。

たまたま外で遊んでいたから助かったけど、あたしの両親は一瞬にして灰になった。

 

涙することも。

悲しむことも。

そんなことすら感じられずに。

 

ここにいても、なにも楽しくはなかった。

ただ生き延びられただけで、それ以外はなにもいいことなんてない。

 

「……わたし!あの子と一緒に行くっ!」

 

エリカがあたしの手を引くと、おじさんと目を合わせて訴えかける。

 

「わかったから!……それでいいかい?」

「ここにいるよりは、いい……」

「じゃあ私たちと一緒に暮らそう」

 

こうしてあたしは叔父さんに引き取られて、車で都内まで向かった。

 

☆☆☆

 

「ここが新しい家だよ」

 

旭川と表札が書かれている。

連れてこられたのは二階建ての一軒家だった。

庭もあって、バーベキューもできるほどの広い敷地の上に建っていた。

玄関を開けて彼女と一緒に家に入るあたし。

 

「……よ、よろしくお願いします」

 

出迎えたのは叔父さんの叔母さまだった。

結婚して長く、ずっとここで暮らしているらしい。

 

「そんなにかしこまらなくていいよ、疲れたでしょう?」

 

叔母さまはあたしのことを優しく迎えてくれた。

 

「……チトセ、とりあえずお茶と茶菓子でも頼んだよ」

「はいはい、いまもってきますから」

 

叔母さまの名前は千都世(チトセ)というらしい。

そういえば叔父さんの名前を聞いてなかったな。

 

「おじさんの名前は……?」

「あぁ、自己紹介がまだだったね?オレはトキヤだよ、よろしくね?」

「……う、うん」

 

おじさんは時也(トキヤ)さんって言うのね、おぼえた。

案内されて連れられたリビングで話をしだす。

 

「そういえばアカネはなにか好きなものはあるのかい?」

「あたしの……すきなもの?」

 

好きなものなんてなかった。

好きになれそうなものもなかった。

 

「……なにもない」

「そっか、じゃあいつか見つけられるといいね」

 

そんなの見つけられるのかな……?

見つけるものなのかな……?

なにもわかんないや……

 

「おじさんの部屋にいっていい?」

 

エリカがトキヤに催促する。

 

「いいけど、女の子が好きそうなものは一個もないよ?」

「いい!いきたい!……一緒にいく?」

 

あたしに視線を向けるエリカ。

この家のことを知らないから、興味はあった。

その提案にあたしは頷く。

 

「……あたしもいくっ!」

 

すかさず右手でエリカがあたしの左手を繋ぎ、駆け足で二階の階段を登っていく。

 

☆☆☆

 

「……自由に見ていいからね?」

 

飾られていたのは飛行機のプラモデルだった。

いくつもケースに入っていて展示されていた。

 

「……すごいねおじさん!」

 

興味津々で作品を見るエリカ。

あたしもつられるように、見渡していく。

 

「これがプラモデル……?」

「そうだよ、小さい頃から作っててね?いつのまにかこんな風になっちゃったんだよ……あはは」

 

そんなとき、扉を優しく叩く音がした。

入ってきたのはチトセさんだ。

 

「あなたいつも楽しそうにやってるから、ワタシもついやりはじめちゃってねぇ〜大変なことになっちゃったわね」

 

これってもしかして二人で作ったってこと?

見た感じだと三〇くらいあるよ……?

 

「……仕方ないじゃないか、一緒に共有できたんだから」

「それもそうね」

 

仲睦まじく談笑する二人をみて、あたしもこんな風になれたらいいなっておもった。

 

「そういえば夕飯がまだだったわね!いますぐに用意するから!」

「急がなくてもいいぞ〜」

「なにを言ってるんですかトキヤさん!せっかく養子を引き取ったんですから豪華にしないと!」

「はりきってるねチトセ」

「ええ!そりゃもう!」

 

着ていた割烹着の両腕の袖を捲り上げて、チトセさんはキッチンへと降りていった。

 

☆☆☆

 

それから数日後──。

 

遊びに行くことになったあたしとエリカは車で都心へと向かった。

 

「……なにか欲しいものはあるかい?」

「ゲームセンター行きたい!ゲームセンター!」

「それじゃ行こっか」

「やったぁ!」

 

トキヤさんとエリカが話してるのを聞きながら、高速道路の左側に広がる街中の景色にあたしはぼんやりと見ていた。

 

◇◇◇

 

到着したのはゲームセンター〈STAR LIGHT(スターライト)〉という場所。

そこには大きなアーケードゲームの筐体が設置されており、多くの人の活気で賑わっていた。

 

「おじさん車にいるから、何かあったらこれで呼んでね?」

「わかった!」

 

渡された携帯電話を持ったエリカは、返事をして施設に入っていく。

 

またも手を繋いであたしを導いていくエリカ。

強引だったけど、どこかそれが心地よかった。

中央にある大きな筐体にあたしは目を奪われる。

その日は大会が開かれており、数多くの選手たちでいっぱいだった。

司会者の号令とともに開催される大会。

 

「──さて!みなさまお待たせしました!GP・デュエル!公式全日本大会!決勝戦の開幕です!」

 

このゲームはGP・デュエルっていうんだ……

 

「なんか面白そうだねアカネ!」

「……う、うん」

 

エリカと一緒に観戦するあたしは、これからなにが起こるのかさっぱりわからなかった。

 

「九州ブロックから参戦の!夜刀神 鞠愛(ヤトガミ・マリア)選手!」

 

会場の裾から現れる背丈の大きい女性が現れる。

拍手とともに、彼女はプラモデルを持ってバトルに参戦していた。

 

「続きまして……!北海道ブロックから参戦の!美濃 瀬那(ミノウ・セナ)選手です!」

 

あたしから見て右から出てきた彼女。

同じようにプラモデルを手に持ち、自信満々の表情で鞠愛と向かいあった。

 

「──それでは!ガンプラバトル…………レディーィィィィ!Gooooooooooooo!」

 

司会者の掛け声とともにバトルが開始される。

 

「ヤトガミ・マリア!デスティニーガンダム・エンプティ!でますっ!」

「ミノウ・セナ!ガンダムヴァーチェ!いくよ!」

 

☆☆☆

 

バトル開始とともにセナは防御態勢を取る。

その間に〈GNバズーカ〉を両手に構えて砲撃のチャージまでの時間を稼いでいた。

 

「……かなり部が悪いけど──!一撃くらい当たってよね!」

 

対するマリアは〈ビームライフル〉と〈高エネルギービーム砲〉を使って、じわじわ距離を詰めていく。

 

「壊すのは……あまり好きじゃないけど!勝たせてもらう!」

「出来るもんならやってみなさいよ!」

「──よく言ったなガンダム!」

 

チャージが終わった〈GNバズーカ〉をセナは思い切りマリアに向けて放つ。

すぐさまにガンプラの両脚を思い切り開いて回避行動を取るマリア。

 

「……なかなかやるっ!」

「こちらからいかせてもらうっ!」

 

翼から桃色の粒子を発生させたマリアは背中から〈アロンダイト〉を取り出して近接攻撃を仕掛ける。

粒子を張った〈GNフィールド〉で反射的に防御したセナ。

だが、貫通した〈アロンダイト〉がセナのガンプラを貫いていく。

 

「……これで!おわりだ!」

「その程度のことなんて!対策済みなんだよ!」

「なんだとっ!?」

 

セナのガンプラの装甲がパージされ、中身が出現していく。

 

「ガンダムナドレ!目標を駆逐するっ!」

 

パージした武装である〈GNキャノン〉を力強く持ったセナはマリアに砲撃を喰らわしていく。

 

「……こうでなくっちゃなぁ!」

 

放出する粒子のあとセナはそれを使って打撃を繰り出していく。

その打撃をマリアは華麗に避けて、左手からビームを溜め込む。

 

「──〈パルマ・フィオキーナ〉!」

「この至近距離でっ!?」

 

対応に遅れたセナのガンプラは胴体部を打ち抜く。

 

「──〈BATTE ENDED〉!」

 

客席からの大きな歓声と拍手がゲームセンターを包み込んでいく。

 

「「「「「うおおおおおおおおおおおおおおお!」」」」」

 

☆☆☆

 

「すごかったね!アカネ!なんなのあれ!なんかワクワクしたよね!」

「そ、そうだね!」

 

思わず見惚れてしまったあたしは、興奮と感動が夢のようにこの瞬間を醒めないで欲しかった。

 

「……がんぷらっていうんだね!おじさんと話して買ってもらうおうよ!」

「あたしもそうする!」

 

携帯電話でトキヤさんを呼び出したあたしたちは近くにあった模型店でガンプラを購入することにした。

 

***

 

「なにか見つかったのかい?」

「うん!楽しそうなの!ガンプラって言うんだって!」

「おおぅ、それは良かったね!おじさんが記念にプレゼントしてあげるよ」

「ありがとうおじさん!」

「いろんなのがあるよアカネ!」

 

訪れたのは模型&ホビーショップ〈AXIZ〉だ。

入店したあたしたちに店員さんが声をかけてきた。

 

「お嬢さんたちはプラモデルははじめて?」

「はじめて!」

 

と、エリカが大きな声で返事をする。

 

「なにか欲しいのはあるかい?」

「えっと……えっとね?ですてぃにーがんだむってかいてあるやつがほしい!」

「デスティニーガンダムだね?ちょっと待っててね?きみは?」

「あたしはみてからきめるっ!」

「そっか、んじゃあいっぱいあるから見つけたら教えてね?」

「うん!」

 

そうしてあたしは店内をゆっくりと歩きながらガンプラを探していた。

 

◇◇◇

 

トキヤおじさんに購入してもらったエリカは近くにある組み立てスペースであたしのことを待っていた。

同じくプレゼントされた「ガンダムシュヴァルゼッテ」というガンプラを選んだあたしは、エリカと並んで組み立てていく。

 

「……こんなふうになってるんだね!」

 

箱を開けた瞬間から心臓の鼓動が鳴り止まなかった。

袋を開けてらんなーをチェックするあたしたち。

 

「一緒にやろ!」

「うん!やろ!」

 

ガンプラと一緒に買ってもらった不慣れなニッパーを使ってあたしとエリカはガンプラを組み上げていく。

 

隣でエリカのことを見ていたあたしは、楽しそうに笑う彼女のことをいつしか好きになっていた。

その笑顔をみてあたしもちょっとだけ、この時間だけは幸せを噛み締められた。

いいことなんてないって思ってたけど、この空間にいるときだけは悪くないって思えた。

 

おおよそ五時間くらいかかって、外は真っ暗になっていた。

けど、時間を忘れるくらいエリカといた時間はあたしを幸せにしてくれた。

 

「……たのしいね!ガンプラ!」

 

完成したガンプラを手に持ったエリカはあたしにそれを見せてくる。

あたしも出来上がった自分のガンプラを見せ合った。

 

「また一緒につくろ!」

「つくろ!つくろ!」

 

完成したガンプラを持ち帰って、家へと帰宅していった。

 

***

 

──そして今。

 

あたしはいま、エリカと戦っている。

目の前には(ブレイクデカールによって)巨大化したザクが待ち受けている。

ブレイクデカールを使用した彼女のガンプラにあたしは苦戦していた。

あたしの大好きだった彼女の姿は目の前にはいない。

 

あの笑顔をあたしはもう一度見たい。

いまの彼女は好きだったあの頃とは違う。

好きになったあのときに戻ってほしかった。

 

ずっと側で見続けてきたのになんで気づかなかったんだ……

どうしてなにもしてあげられなかったんだ……

 

あたしは一体エリカのなんなんだよ……

 

あたし一人じゃ彼女を助けられる力なんてないよ……

 

でも、それでも、あたしは……!この気持ちに嘘はつきたくない!

 

あのときの!あのときあんたの楽しそうな顔に惚れたんだ……!

 

あんたの一番最初の友達(ファン)になったのはこのあたしなんだ!

 

だから!もう一度──!

もう一度戻ってきてよ……!

 

ガンプラを一緒につくって笑い合ったあの日みたいに──!

 

***

 

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