陰キャだけどアイドルはじめてGBN〈惑星〉を救う話。   作:神宮寺Re ⑦

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エピローグです。


第二〇章 -【やりたいこと】-

 

「新たに生徒会長に就任しました蛭谷暁音(ヒルタニ・アカネ)です!ガンプラ体験会で知ってる人もいらっしゃると思いますが、改めまして今後ともよろしくお願い致します!」

 

春の訪れを告げる桜の花びらがゆらゆらとそよ風に吹かれながら舞い散る四月。

体育館で新生徒会選出による挨拶が盛大に行われていた。

……アカネのことは応援したいけど、なんか夜空の星みたく遠い存在になっちゃったなぁ。

 

「……い、痛い!右眼が疼いてなにかが覚醒しそうなんですっ!まるで誰かが問いかけているみたいに……!」

 

右眼に手を当ててうずくまるアカネ。

 

「おー?なんだぁ!?厨二病かぁ!?」

 

挨拶を聞いていた生徒がツッコミをする。

 

「ごめんなさい、ちょっと世界の深淵が見えたような気がして……!」

 

「なんだよそれ〜!」

 

どしたのアカネ!?そんなノリいままでやってなかったよね!?

アカネは、生徒会長となったことで黒髪のツインテールから髪を解いてロングに変わっていた。

 

「……そいえばハルナは生徒会に入るんじゃなかったの?」

「そのつもりだったんだけどね、カグヤがやめとけってうるさくて」

「あぁ……そうなの」

 

というか相変わらず仲良さそうでいいね?

っていうかカグヤさん?はどこに行ったの?

休み?そんなことするわけないか元生徒会長なんだし。

 

「カグヤさんはどうしたの?」

「なんか生徒会の引き継ぎなんかで忙しいらしくて、いまは先生たちのところで話してるって」

「大変だねぇ……」

 

さすがに元生徒会長なんだからなにも仕事がないわけにもいかないもんね。

 

「ところで今日の部活どうするのハルナ?」

「え?部長はエリカでしょ?」

「……んん?ちょっとまって……?」

 

どうなってるの?書類を書いたのはわたしだけど誰がわたしを部長にしたって?……だれだ確信犯は!

 

と、壇上を見ると──。

 

手で合図を五回して「よ・ろ・し・く・ね♪」と合図するアカネがいた。

 

「……っ!?」

「やられちゃったねえエリカ?」

 

アカネねえええええええええ!なにも聞いてないよぉぉぉ!

あとで拷問してやるんだぁぁぁぁあああああ!

 

「んで今日はどうしましょう部長さん?」

「……この流れで振らないでよわたしに」

「えぇ〜?満更でもなさそうじゃん」

「それとこれとは話が違うんじゃあああああ!」

 

なにがどうなったらわたしが部長になるんだよぉぉ!?

意味がワカンナイよぉ!わたしなにもしてないんだけどなぁ!?

そんなこんなで、わたしの義姉であるアカネが生徒会長に就任することになった。

あとでいろいろと問い詰めたいところなんだけど!?

 

***

 

その日のホームルーム。

まぁなにも変わることなくミカミ先生がやってくる。

 

「進路調査票になにか書いたか〜?提出期限は今日だぞ〜」

 

……なにも考えてないです。

というかそんなこと考える時間も余裕もなかったんですけど。

 

「……アカネはなにか書いたの?」

「あたしはとりあえずアナウンサー?ってところかな」

「へ、へぇ〜」

 

そんなに簡単に決められるもんなの!?

進路ってなに書いていいかわかんないんだよわたし!?

 

「……ハルナは?」

「私はなにかを仕事にするとかわかんないし、とりあえず進学?とだけ」

 

ありがとうハルナ!わたしと一緒でよかった!

 

「ところでエリカは?」

「セミ」

「……せみ?」

「わたしは暑くなる夏のころまで土の中でこもって求愛する時まで冬眠しているセミです」

「…………ごめんもう一回言って?」

 

言えるわけないだろうがぁぁぁ!

こんなの黒歴史確定案件だよ!これ以上わたしの心臓をこれ以上抉らないでよ!

 

「だからセミ……」

「先生にそれ書いて怒られない?」

「んなことわたしに言われたって知らないよ!……鳴きたいよミーンミーンミーンミーンって!」

「……だね〜」

 

って!急に視線を屋根に向けるな!死にたくなるでしょうが!

 

「進路調査票はあくまで現時点の話だから、そこまで気を重くして考える必要はないぞ〜ミカミ先生も先生志望のじゃなかったが巡りめぐってここにいるからな、肩の力を抜いていいんだぞ〜」

 

……そんなこと言われってどうすりゃいいの。

まぁいいかいまのところはセミで!

いや!よくはない!なんだよセミって!鳴いてる場合じゃないじゃん!

 

(あの〜ところで今日の夕飯は〜?)

(……つかもう仕送りだけじゃやっていけないよ!バイトしなきゃだよ!)

(頭が痛いです)

(イモータルジャスティスの改造案がまだ固まってないよ!)

(ナイチンゲールのランナーチェックもしてないよ!?)

(ていうかもうここで寝ていいですか?)

 

……寝るな!寝るな!いまここで寝たら夜中に寝れなくてバッキバキでオールして学校くることになっちゃうよ!

 

そんな日常を過ごしていた最中──。

 

***

 

GBN運営管理室。

会議室にはデュランダル、そして側近であるメイリンとリボンズ、イゼルカントが事件の経緯の対策について話し合っていた。

 

「……騒ぎ立てしてすまないリボンズ、イゼルカント」

「まさか直々に三人で集まることになることがあろうとは、それほど重大な要件なのか?」

 

向かい合わせの席に座るリボンズがデュランダルと目を合わせ、真剣な眼差しで質問をした。

 

リボンズ。

緑髪ロングの女性のGBN運営管理者のひとり。

業務はバグ処理のほか、新規のイベント企画立案等を任されている。

 

「……今回の事案についてはメイリンから資料がある、そちらを先に目を通してくれ」

「こちらです」

 

「サーバーサイド3における緊急秘匿事項について」と書かれたおおよそ四〇ページにもおよぶ調査資料がリボンズとイゼルカントに渡された。

 

「……このサーバー内における被害状況についてだが、これは本当のことなのだな?」

「あぁ……その通りだイゼルカント」

「この規模での事案はこれまでにあったが、いままでのこちら側での事故とはわけが違うじゃないか」

「だからこそ、我々三人で会議を開いている」

「……カツラギさんはどう判断している?」

「現状では原因調査に時間を要していて、こまねいているとおっしゃっている」

「……そもそもこれはこちら側に非はないのだろう?」

「もちろんだ」

 

GBN運営側にはこの事件に対する負い目はない。

むしろ、勝手に被害を受けたと言っても等しい状況だった。

ましてやサーバーサイド3内にログインしていたダイバーがおおよそ確認しただけでも五〇〇〇人相当がそれ以降音信不通となっていた。

 

「……件が進めていた計画である〈プロジェクトIRIS(アイリス)〉では対抗策にはならないのかデュランダル?」

 

〈プロジェクトIRIS〉。

デュランダルが計画立案し、AIを用いた擬似ダイバーによるレイドボスみっし用に開発を進めていたプロジェクト。

元々これは、デュランダルがカツラギさんを通して企画を成立させ実行中のものであった。

 

「あれは元々高ランクダイバー向けの企画だ」

「NEMESISシリーズもきみが計画したものだろ?」

 

リボンズが目くじらを立ててデュランダルに問う。

プロジェクトIRISのほかにデュランダルは〈プロジェクトNEMESIS〉という別某体の企画を進行していた。

 

「……NEMESISは処理しきれないバグや平然と違法行為を行うダイバーを粛正するためにやったものだ、わたしたちだけではこの世界は手に負える規模じゃない」

「なにかと君は強情なんじゃないか?もう少しGBNにいるダイバーたちを信用してはどうだ?」

 

リボンズはデュランダルに向かって、懐疑的な態度で話を聞いていた。

 

「それとこれとは別問題だろう?いまはGBNに起きているこの未知の脅威に対して、なにか行動を起こさなければならない」

「……とは言っても強固なプロテクトを突破してきている時点で対応策にも限界があるじゃないか」

「だからこそ、わたしたちでそれを退かなければならない」

 

……対抗策を講じている暇でさえ、じわじわと侵略行為が進んでいる危機感から焦りはじめていたデュランダル。

 

「……提案があるのだがいいか?」

「なんだイゼルカント?」

 

イゼルカント。

白髪ショートの同じく女性のGBN運営管理者。

リボンズやデュランダルとは違い、GBN内の大型基幹サーバーユニット〈メサイア〉等の保守管理を任されている。

 

「ダミーのサーバーを立ててそこにおびき寄せるというのは可能なのか?」

「確認されている敵の目的がデータを盗むことと考えると、その提案には許諾したいところではあるが……」

「なにか大きな問題がある……?というのだな?」

「……そのサーバーの基礎データさえもあちら側に取られてしまうと、こちら側が圧倒的に不利になる」

「厄介だな……それは」

 

侵略者の行動目的がGBN内のガンダム作品のデータ、またはそれに関する情報を得ることとするならばダミーを用いて叩くというのは有用ではあるものの、基盤となるサーバー設計さえも危険視するしかなかった。

 

「これではまるで相手の手の内じゃないか……」

 

落胆するイゼルカントにデュランダルは、打開策を見出せないこの有り様に神経をすり減らしながら毎日を生きていた。

 

***

 

数日後、ここは模型&ホビーショップ〈AXIZ〉。

わたしはそこでバイトのために面接を受けていた。

 

「……ここにくるのははじめて?」

「かなり前から利用してました」

 

およそ四〇代くらいのお姉さんがわたしに対して質問をしていた。

 

「もしかしてだけど……小さい頃に会ったことがある?」

「どういうことですか?」

 

小さい頃にって言われても記憶が朧げでなんのことかわからない。

ネームタグには「セリナ」と書かれていた。

 

「GP・デュエル全日本大会で真剣に見てた女の子二人組がいてね?そこでガンプラを買ってたの結構印象に残っててね」

「……そ、そうなんですか」

 

もう何年も前のことだからなにも覚えてない。

たしかにここで初めてガンプラを買って作ったっていうのは記憶の片隅にあるけど……

 

「ワタシ、あのときの司会者だったんだよ?覚えてない?」

 

あのときのお姉さん……?ほんとにそうなの?

 

「大会で夢中になってて覚えてないです……」

「そっか、けどまたここで会えて嬉しいよ」

「は、はぁ……」

「というわけでこれもなにかの縁だし、採用ね」

「い、い、い、いいんですかわたしで!?」

「いまのところ不自然なところもないし、初バイトなんでしょ?」

「それはそうですけど……」

「じゃあうちでやってみなよ」

「わ、わかりましたセリナさん」

「ワタシのことはセリナでいいよ、よろしくねエリカさん?」

「……よ、よろしくお願いします!」

 

なんというか不安でいっぱいいっぱいだったけど、初めてのバイトに受かりました。

……あれ?落ちると思ってきてたんだけどなぁ?

 

◇◇◇

 

数日後、週末となったこの日にわたしはバイト初日を迎えた。

仕事用の制服に着替えてレジに立つわたし。

隣にいるのは面接官だったセリナさんだ。

 

「……一応これがレジのマニュアルね?それと〜これが商品の発注書になるんだけど……これはあとにしよっか」

「は、はいっ!」

 

あまりにも緊張していて、声がワントーン上がってしまう返事をしてしまったわたし。

 

「大丈夫?はじめてでいろいろと慣れないと思うけど、なにかあったらサポートするからね?」

「あ、ありがとうございます……」

「そんなに肩肘張らなくてもお客さんは敵じゃないから深呼吸だよ深呼吸〜」

 

セリナさんに促されて一呼吸おくためにに深呼吸するわたし。

すぅぅぅ…………はぁぁぁぁぁ…………

 

(なにもわからないよ!?)

(というかバイトしなきゃって!なにも考えずにきちゃったけどしどろもどろだよわたし!?)

(……知り合いが来ないか心配で仕方ないよ!?)

 

「お客さんがきたよ〜」

「い、い、いらっしゃいませ〜!」

「おや?ここでバイトを始めたんだねエリカくん?」

 

(うわぁぁぁぁああああああ!チュートリアルから知り合いが来るとかわたしついてねぇぇぇえええええ!)

(やめてええええええ!わたしを見るなぁぁぁぁぁ!)

 

「ま、まぁ……」

「あれ?エリカってここで仕事してるの?」

 

付き添いで来ていたハルナがわたしと目を合わせて話しかける。

 

「きょ、今日からだよ……?」

「そっか、がんばってね〜」

 

(こんなバイト初日なんて嫌だぁぁぁあああ!)

(今すぐに家に帰りたいよぉぉお!)

 

カグヤさんとハルナはわたしに挨拶を済ませたあと、店内に入り回っていった。

 

「エリカさんの知り合い?」

「え、えっと……クラスメイトです」

「そりゃまた偶然だね」

 

(偶然だねで済ませていい話じゃあないんですけどぉ!?)

(狙ったかのように出てくるのやめてもらっていいですかぁ!?)

 

◇◇◇

 

バイトをはじめて数時間後、店内の空気感に慣れはじめた頃……

 

ひとりのお客さんがわたしの目の前に現れる。

 

「これお願いします」

 

同い年か少し年上のお兄さんがわたしに商品を渡して会計をしようとしていた。

 

「お買い上げ……ありがとうございます、袋にお入れしますか?」

「じゃあそうしてくれると」

「わかりました」

 

そのお兄さんが買ったのは「ギャンシュトローム」という劇場版ガンダムSEEDfreedomに登場したガンプラだった。

 

「お会計が……合計で三一九五円です」

「それじゃあ電子マネーで」

「は、はいっ……!」

 

あたふたしながらわたしはレジのボタンを押して支払いをしてもらうことに。

 

「……もしかしてバイト初日とか?がんばってね」

「あ、ありがとうございます!」

 

数分後、買い物袋を手にお兄さんは颯爽と去っていった。

ほどなくしてバイトの時間は終了を告げて、わたしは家に帰っていった。

 

***

 

翌日にエリカはゲームセンター〈STAR LIGHT〉でGBNにログインしていた。

ロビーを抜けて、いつものように歌うライブ会場を探していた。

 

「なんかいいとこないかなぁ……」

 

バイトまで余裕があるため、彼女はその時間までアイドル活動を続けていた。

 

ふと降り立った場所は──。

 

AEU軌道エレベーター付近。

軍事施設があるここでは新型機「イナクト」のお披露目が行われていた場所だ。

そして突如として上空から現れた私設武装組織ソレスタルビーイングのガンダムエクシアがこれに襲撃。

世界に「ガンダム」を認知させるきっかけをつくった。

 

「──♪」

 

エリカは自身の居場所を誇示するように、歌を世界に届けるために声を振るわせる。

 

だが、そんな彼女にはかつて視線を向けられていたあのときと同じように誰かの気配を感じていた。

 

「……だれかいるの?」

 

周囲を見渡しても誰もいない。

いくら目を細くして探してもダイバーの姿は現れない。

 

「なんなんだろう……気のせいじゃないはずなのに」

 

 

『ようやく見つけたよ──おねえちゃん』

 

 

儚げな声でエリカに向かって発した声。

それはGBNに混乱を招く新たな戦いの一端に過ぎなかった。

 

***

 




今回で第一巻《ワタシノユメ》は終了になります。

あとがきに記載する情報を書くのが間に合っていないので、合間に編集します。

***

第二巻《ユメノトビラ》は推敲作業が完了次第こちらで更新する予定です。
最短一ヶ月ほどかかると思いますのでよろしくお願いします。
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