陰キャだけどアイドルはじめてGBN〈惑星〉を救う話。 作:神宮寺Re ⑦
四月一〇日。
この日はわたしの義姉である
平日だったため学校の部活終わりの夕方の帰り道にあるショッピングモール〈ロンド・ベル〉へと訪れていた。
とうの本人は先生たちとの先に行われる体育祭に向けての会議に参加のために、生徒会の仕事に勤めているその
〈ムーン・ムーン〉。
主にケーキとクレープを販売するこのデザートショップは家族連れからカップル、仕事帰りのサラリーマンが自分へのご褒美として購入していく店である。
そこでケーキを買うために立ち寄った二階にあるこの店に来たものの──。
「あの〜個人用のケーキってまだ残ってますか?」
店員さんにケーキがあるか聞くわたし。
「ごめんなさい、ついさっきまとめ買いした常連のお客様がいて売り切れちゃったの……」
……ええええぇ!?
まだ夕食前の時間帯だよ!?そんなことってあるの!?あるから無いんだよね……困ったなぁ……せったくの誕生日なのに。
「……材料ももう今日の分が残ってなくて作れなくなっちゃって、申し訳ないんですけど」
せっかく日なのにこんなことになるなんて……あらかじめ予約でもしておくんだったなぁ……
「あぁ……いえ、こちらこそ大変なところすみません!別のところ探します!」
「またきてね?」
「……も、もちろんです!」
誕生日ケーキが買えなかったため、わたしは一階にある食品売り場へと向かってエスカレーターを降りていった。
☆☆☆
「……売ってないんだから作るしかないよね、せっかくの誕生日にケーキがないなんて悲しすぎるし」
材料を買って自前でつくることにしたわたし。
とりあえず……スポンジと……あと生クリームと……苺のパック探さないと……プレートはあれば買えばいいや。
一階にある食品売り場をうろちょろしながら目的のものを購入したわたし。
レジに行ってその日の夕飯の買い物を済ませたわたしは早足で自宅へと帰っていく。
◇◇◇
電車に揺られて家に到着したわたしは部屋着に着替え、アカネが生徒会の仕事が終わるまでの間に帰ってくるまでの間にショートケーキを作り終えなくてはいけない。
ここからは時間との勝負なんだけど……かといっていつも冷凍食品ばっかりいつも食べてるもんだからまともにこういうことをするのは絶望的に慣れていない。
というか料理をすること自体、わたしはあまりやってこなかった。
言い訳をしてもどうしようにもないので意を決して作ることにしたわたし。
とは言ってもちゃちゃっとスポンジ乗せてクリームつけていちご置くだけなんだから簡単に──!
(とりあえずスポンジを下に引いてからそこにクリーム塗って苺を挟んでいけばいいよね……)
あらかたのつくり方をネットに掲載されている作り方を覚えたわたしはスポンジにクリームを塗りたくっていく。
かき混ぜた生クリームをスポンジに移すときに余計な力をこめすぎたのかクリームが山のように大量に上に乗っかってしまった……んですけど……!?どろっどろだぁ!?
「ああぁぁぁああああ!ぐちゃぐちゃだよぉ!……不器用すぎでしょわたし……」
(ほんとこういうの向いてないな……わたし)
(気にする時間なんてないよ!お姉ちゃんが帰ってきちゃうよ!)
(……時間との勝負なんだからなんとかするんだよ!)
(時よ!止まれ!)
わかってる!わかってるからエリちゃんはちょっとだけ静かにしてて!変なときにばかりごちゃごちゃうるさい!
額に汗を滲ませながらケーキを作っていくわたし。
プラモデル以外でこんなに集中力を使ったのは久しぶり……
テストのときはなにも考えずにやっちゃうし……
勉強は?……してますよ、してるから!
ってかそんなだからいつも学年中間……そんな話はいま関係ないじゃん!
時計の針は夜の一八時を指ししめしている。
「……今日は帰りが遅くなるのかなぁ、何やってんだろう」
帰宅する時間が遅くなっているアカネの心配を背に目の前にあるスポンジと向き合うわたし。
一層目のクリームを塗り終えると、ヘラである程度均一にならす作業をしていく。
「だぁぁぁぁぁ!また変なとこにクリームついたんですけどぉ!?なんで上手くいってくれないの!」
すでに両手はクリームでベトベトになってる中、はみ出した気泡がキッチンを汚してしまう。
「……ううぅ」
涙を浮かべながら、黙々とショートケーキを作るわたし。
一層目のクリームの上に包丁で半分に切った苺を適当にのせて二層目に入った。
「こんどは上手くいってよ……」
二層目のスポンジにクリームを慎重に乗せていく。
今度ははみ出ることもなく塗り終えたわたしは側面にも塗り上げていく。
「──よし、こんどはうまくいった!」
と、玄関の扉が開く音が聞こえた。
(……か、かえってきちゃった!?まだ作り終えてないのに!?)
◇◇◇
「……ただいまぁエリカ〜、あれ?エリカ〜?どこにいったの?」
靴音から素足でスタスタとフローリングを歩く音が近づいてくる。
(あばばばばばば……!ど、ど、ど、どうしようこれ!?)
「エリカなにしてんの?」
「あ、あの……こ、これはその……えっと……!その!ね!?」
慌てて作りかけのショートケーキが見えないように体を被せるわたし。
それをみたアカネがわたしに近づいてくる。
「エリカがキッチンにいるなんて珍しいんじゃない?なにかあったの?」
……アカネの誕生日だからだよぉ!?なんで気づいてくれないのぉ!?わざとやってるのそれ!?
覗き込むアカネがケーキをわたしの作っていたケーキを見つめる。
「……これってもしかしてあたしのために?」
「誕生日ケーキ買おうとしたら売り切れててさぁ……仕方ないから作ることにしたんだよぉ……そしたらこんなめちゃくちゃになっちゃってぇ……」
「すごく嬉しいよ!愛してるよエリカ!」
「ちょ、ちょっとぉ……!ひっつくなぁ!」
エプロンを着ていたわたしに思わずアカネが強く抱きしめてくる。
「あぁ!クリームが服についちゃうよ……!」
「ごめんごめん!この際だから一緒にやろっか」
「う、うん……!」
わたしたち二人はあとの苺をのせてケーキを完成させた。
◇◇◇
「それじゃあいただきます!」
「……いただきます」
手作りのショートケーキと付け合わせで買っていたオードブルのセットと、シャンパンはこのとき売ってなかったから
アカネが生徒会に入ってからはじめての誕生日、ケーキはあんまり上手く作れなかったけど喜んでくれたかな……
「ケーキ食べるのめっちゃひさしぶりだよ!」
「ならよかった」
「そういえばさ〜生徒会でさ〜」
なんかこの流れは愚痴を言いはじめるタイミングのやつだ。
「どうかしたのアカネ?」
「……みんな顔合わせがはじめてだったのかめっちゃしんみりでさ〜すっごく空気が悪くて大変で〜」
「そ、そうだったんだ」
「あたしの話聞いてる?」
「きいてるから、それで?」
「わざとスマホの通知音鳴らしたの」
「先生に怒られなかったの?」
「……まぁあたし生徒会長だし、『電源切るの忘れてましたてへへ♪』ってごまかしたんだよ」
……よくその状況でそれをやろうとしたねアカネ!?
わたしなら普通にキョドってるよ!?
あぁ!ごめんなさい!ごめんなさい!ってなるよ!?
「そしたらなんかくすくすって笑い声が聞こえてきて、まぁ良かったなぁって」
……そんなことできるアカネだけだよ、そりゃ生徒会長ってこともあるだろうけど。
「それはよかったね、ところで部活動にはいつこれるの?もう一週間も来てないよね?」
〈模型部〉の活動は現時点でハルナとわたし、そしてカグヤ元生徒会長の三人でしか集まらないでいた。
そのため、今後の活動のことを相談しようにもアカネがいないとしっかりとした方向性が決まらないでいる状況だ。
「たぶん来週には出れるとは思うよ?いま部活の予算会議中なこともあってどのみちエリカにも来ることになると思うしさ」
マ……マジなんですか……?あんまり人前で話するの苦手なんだけど……いかないといけませんか?わたしの代わりにハルナでもよくない?ダメ?
「わたしも行かなきゃいけない……?」
「部長なんだから当たり前だよね?」
「部長にしたのアカネだよね!?」
「あぁ〜それはね、ちょ〜っとした理由があんの」
「……理由もなくもなくない!?」
「あたしが生徒会長になったわけだし、そのぶん融通してあげられるってこと」
「まんまコネじゃんそれ!」
「あって損はないでしょ、それに活動に支障をきたさない限りは問題ないわけだし」
アカネってもしかして策士……?……どことなく
「そんなわけだからちゃんと出てよエリカ?」
「わ、わかったけど……」
頼りにはなるけど、いいのかなぁこんなこと……
そうして久しぶりの豪華な食事を食べ終えたわたしたちは一緒にお風呂に入って寝室で揃って眠りついた。
***
その次の週。
〈模型部〉の活動のため部室にきていたわたし。
「……さぁて今日もやるぞ〜!だれも協力してくれないけど」
と、カグヤ先輩が引き戸を開けて入室してくる。
ハルナもばったり会ったのか一緒にきていた。
「今日もお疲れ様エリカくん」
「ど、どうもカグヤさん」
「もうおれは生徒会長ではないんだし、堅苦しいのはやめにしないかエリカくん」
「そだよ〜呼び捨てでいいんじゃないかな〜」
恐るべし陽キャの適応能力……わたしじゃ最低でも一ヶ月くらいかかりそうなことを平然とこなしやがる……くやちぃ……
「……じゃ、じゃあカグヤ」
「それでよろしく頼むよ」
「ところで活動ってなにすればいいの?プラモデル作ってればいいの?」
と、ハルナがカグヤに。
「そういうわけにはいかないよ?活動報告は定期的に提出しないといけないし、それなりに結果を残さないといけないからね?」
「結果って……たとえばどんな?」
「料理部なら作ったものの資料としてメニューの書類と写真が必要になるし、運動部に所属しているのなら大会参加時のタイムや勝敗結果を記録したものを出さないと」
「……それもそうだよね〜書類はちゃんと提出しなきゃね〜」
……まぁなにもなしに
「おっひさ〜!今日も元気ですか〜みなさま!」
「やっときたねアカネ」
「人数も揃ったことだし、今後の活動を考えていこうか」
「で、ですねぇ……」
っては言ってもさぁ……?なにをやればいいわけ?展示会に出すようなものを作らないといけないわけだよね?
「なにか案があったりしますか……?」
わたしは三人に提案できるものはないか聞くことにした。
「おれもそれなりにやってはきたけど、ここにきてだとなにが最適なのか検討もつかないな」
「とりあえず作品としてなにか作らないとじゃん?」
「それもそうだけどね〜」
……メガサイズモデルでもつくる?
それともなにかこう、なんかないかな……
展示会にでも参加して知名度を上げる?
「フィギュアとか作ったりとかって出来るの?」
ハルナ……!そ、それだよ!フィギュアだよ!
って思いつくのはやいな!?さす陽キャ!
「やれないこともないが、ある程度の設計の上でなら可能ではある……金属線で骨組みつくってそこからパテとかで肉付けしていくっていうアナログ的手法もあるけども」
と、カグヤが真剣な眼差しでハルナからの案を考えていた。
「それでなら発表できそうじゃないのかな?ね?エリカ?」
「たしかに……」
とはいえ、おおよその完成までの目安を決めておかないとたぶんまともに出来る気がしない……
「秋頃にはちょうど文化祭内での部活動紹介として作品掲示があるし、それまでには最低限完成させておきたいところだね」
「よしっ!それじゃあそれでいこうよ!」
アカネがカグヤの提案に快くのった。
部の方向性が明確になったことで、すこしだけ前に進んだ気がする。
「ってなわけで!フィギュア製作するぞ〜!
「「「お〜!」」」
こうしてわたしたち〈模型部〉の第一の活動としてフィギュア製作をすることが決まった。
***
旭川エリカ:誕生日は六月二七日。
蛭谷暁音:誕生日は四月一〇日。