陰キャだけどアイドルはじめてGBN〈惑星〉を救う話。   作:神宮寺Re ⑦

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ハルナとカグヤはデートをしている中で「子供ができたかもしれない」とハルナがカミングアウトします。

そしてエリカたち〈模型部〉はフィギュア製作を開始する話です。


第五章 -【フィギュア製作はじめます!】-

 

「……私、子供が出来たかもしれない」

 

学校終わりの放課後、ショッピングモール〈ロンド・ベル〉で休憩のために訪れたフードコートでおれは彼女である七夕陽那(ハルナ)と話していた。

見上げた目線にある時計の針は午後一八時を示している。

……はははは、冗談だよな?

そういう行為をしたんだからありえない話じゃないかもしれないが……

 

「ちゃんと病院で検査したのか?念のために聞くが」

「……うそに決まってんでしょ、本当だったらどうするつもりだったの?」

「心臓が止まるかと思ったよ、そんなこと軽々しく言うなよ……それはまぁ」

「まぁ、……なに?」

「真剣に考える」

「……そ、そうなんだ、ちゃんと私のこと考えてくれるんだね」

「一応彼氏やってるからな」

 

……この瞬間も心臓の音がうるさくて仕方がないんだがなぁ!?

っていうかいきなりそんな話を聞かさせるこっちの身にもなってくれよ……それどころじゃないんだよ。

 

「ところでフィギュアを製作する話だけどさ?」

 

……え?さっきまでのはただのフリだったわけ?

それにしては重くないか?気のせいか?

ところで目の前にあるうどんは食べなくていいのか?麺が伸びてしまうだろ?

 

おれは既にやることなさすぎて伸びきってしまってるが……笑いごとじゃねえんだわコレ。

おれは大盛りのチャーシューメンを頼んでそれを待っているところではあるのだが、まだ呼び出しブザーが鳴らないな。いつになったら来るんだ……

 

「それがどうかしたのか?」

「基本的になにから始めればいいの?」

「細かく説明するとめんどくなるんだよな……」

「ぱぱぱぱーってできるんじゃないの?」

「そんな簡単に錬成できるわけないだろ、その為に対価を支払わないといけない錬金術師(エドとアル)の覚悟を馬鹿にするなよ」

「なんの話?」

「さっきのは忘れてくれ……」

「なんで?」

 

しつこいよ、おれの彼女……

嫌いじゃないけどもう少し手加減してくれよ……

いちいちツッコミ入れなくてもいいだろそこは。

 

「なんでじゃないが」

「まぁいいや、そんでこれからどうするの?久しぶりの三回目のデートだけど」

「ごめんハルナ、さっきの話でなにしようとしてたか全部吹っ飛んだ」

「……なんかごめんね?」

「あぁ、うん、気にしないで食べててくれ」

 

こっちは生徒会の仕事もないし、家に帰ったら父親にいつも仕事のことで詰められてるんだから少しは休ませてくれよ。

 

ハルナだけが今のおれの支えなんだよ……

まして将来のことなんか考える余裕なんて微塵もないのに。

就職?進学?……いまはそれどころじゃない。

彼女のこと?……それはちゃんと考えたいことだけど。

 

「ところでさ〜セナ先生ひどくない?あれはないよ」

「そ、そうだな」

「元気ないけど大丈夫?」

「気にしないでつづきを」

「セナ先生のことだよ、だって勝手にあなたに喧嘩ふっかけた上に謝罪もないなんて大人げなさすぎるでしょ」

「おれは勝てなかったし仕方ないだろ?”勝ったら”って言ってただろ?ちゃんと」

「……でもさぁ?さすがにやりすぎだよあんなの」

 

以前におれは顧問の先生となったミノウ・セナ先生にGP・デュエルで対戦を挑まれた。

かくいう彼女の言うとおりではあるけども、負けてしまったことは事実としてあるわけだから納得しないといけない。

 

「セナ先生なりの考えがあるんじゃないか?」

「カグヤはちゃんと言いたいことは言わないとダメだよ、なんでなにも言わないの?」

 

言ってどうにかなる問題なのか?

おれが負けた時点で反論したらどうなるかなんてわかりきってるだろ?それのなにがいけない?

おれが納得したんだからそれ以上踏み込んでくるなよ、わかったような口を聞くなよ彼女だからって。

 

「言ってどうなるんだよ、そしたら慰めてあげるとでも言いたげだな?」

「……なにそれ」

「さっきに言ったのはハルナだろ、おれをこれ以上追い詰めないでくれよ頼むから……」

「私は別にあなたのことを考えたらって話をしてるのに」

「そりゃどうも」

「やっぱり調子悪いんじゃない?食べ終わったら帰ったほうが……」

 

デートだっていうのになんなんだよ今日は……

こんな風になりたくて彼女と付き合いはじめたわけじゃないのに。

 

「それはいい、ただ疲れてるだけだから」

「ほんとうに?」

「あぁもう!だからこれ以上おれのことをイラつかせるんじゃねえよ!」

「ちょっと今のカグヤ怖いよ……?」

 

必死に彼女のことを気を遣って穏便に進めたい気持ちに余計なことをしないでくれ。

これからどうするか考えるだけでいっぱいいっぱいなんだよ!

 

「……帰りにコンビニよって風邪薬を買うから大丈夫」

「私も今日は泊まりにいこっか?心配だよ」

「いや、いい」

「そうはいってもさぁ?」

「いいから」

「でも……私にできることならしてあげたいし」

 

なんだよ?おれのこのどうにもならない行き場のない感情をぶつけてもいいのか?……それも受け入れてくれるのかよ?

なぁ?どうなんだよ?教えてくれよ、おれはどうしたらいいんだよ?

 

「じゃあなんでもしてくれるんだな?」

「……ちょっとまって、カグヤやっぱりおかしいよ?今のあなた正気じゃないよね」

「だからなんだよ彼女なんだろ?だったら少しくらいおれの言うことくらい聞けよ」

「いまのあなたは好きじゃない、ごめん先に帰るね」

「おい!なんだよそれ!ハルナ!帰るなよ!」

 

注文していた店のブザーの端末の振動が鳴り響く。

そしてその商品を受け取りに行こうとしたおれを背にうどんを食べ終えてトレーとコップをもってハルナは、おれを拒絶するかのようにフードコートから去っていった。

 

☆☆☆

 

春の訪れとともに、暖かな空気が身体に波打つ四月の週後半。

わたしたちの再興した〈模型部〉はフィギュア製作に取り掛かっていた。

 

とはいうものの──進捗なんてものがすぐに出せるわけが……

 

「あのカグヤさん?そもそもどこかははじめればいいんですか?」

 

わたしは金型製作工房T3の息子であり、元生徒会長だった橘輝夜にフィギュアの作り方を聞いていた。

 

「……とりあえず作りたいキャラクターはいるのか?そこが決まらないとなにもできないぞ」

「キャラクターですか……なにも考えてなかったですね」

 

まずそのキャラクターを決めなきゃいけないよね……

いや、あの……申し訳ないんですけどハルナとなにかありました?

顔色がいつもより暗いんですけど?考えすぎですかね?なにかありました?

 

「……まぁ私ガンダムなにも知らないし、そこはエリカに任せるよ、それでいいよねカグヤ?」

「あ、あぁ」

「二人ともなにかあったんですか……?」

「別になんもないけど」

「これはおれたちの問題だからエリカは気にするな」

「いや……その……なんか空気がすごく悪いんですが……」

 

気にしないほうが無理ありませんこの空気?

この状況のなかで作品の方向性を決めないといけないなんて拷問じゃありません?

っていうかなんでこういうときに限ってアカネはいないの!どこいってるの!どこでもドアで引っ張り出したいところなのに!

 

◇◇◇

 

「……なにをしてるのキミたち?」

 

模型部の部屋の扉をずりずりとそっと開けて顧問の美濃 瀬那先生が入ってきた。

 

「たすけてくださいよセナえもん〜!」

「アタシは猫型ロボットじゃないぞ?んでどうしたんだいエリカさん?」

「あの二人がなんか仲悪くて〜」

「それはまたご苦労なことだね」

 

ところで、すみませんセナ先生?その『話はきかせてもらったよ……!』からのメガネクイッ!!!はやめてください……どこも名探偵じゃないですそれ。

っていうか前に来たときは眼鏡つけてませんでしたよね?伊達じゃないですよね?

 

「……なにか用ですか先生?」

「なにも悪気ない相手に敵意を向けるのは感心しないな、すこしは周囲にいる人間のことも考えたらどうなのかな?カグヤくん」

「お説教ですか、楽でいいですね先生は」

「キミはいったいアタシのなにを知ってその口を聞いてるんだ、いい加減に目を覚ましなよ」

「あぁあああああはいはいはいはい!喧嘩はやめましょう喧嘩は!いま!ここで!する話じゃないでしょ!静粛に!静粛に!……じゃないとここにわたしの神の雷(メメントモリ)を堕としますよ?いいんですね?」

 

こんなの楽しい部活でやるもんじゃないでしょ!さすがに怒るけどわたし!部長なんだからね!話くらい聞いてほしいよね!

 

(ってかさぁ〜フィギュア作りの話まったく進んでなくない?)

(なんでこうなっちゃうの?)

(……バイトのお給料はやくほちぃよぉ)

(ザクが使えなくなったらわたしのガンプラ無くなっちゃうよ!いまどうにかしなきゃいけないのはわたしだよ!)

(もうこの状況なんてどうなってもいいや!)

(どこもよくはないけど?)

(うるさいなぁ!)

 

いま一番うるさいのはエリちゃんだよ!ちょっと頭ん中うるさいから引っ込んでて!

 

「すまない、すこしばかり嫌気がさしてね」

「──つい血の気が走ってしまった申し訳ない」

「わかってくれるならいいんです!んで!いま!フィギュア作りの話をしてるんですよ先生」

「それでなにか決まったのかい?」

「いえ、まだなにも……」

 

とは言ってもはじめないといけないのはわかってはいるけど、ずっと心のどこかであのダイバーが囁いた──。

 

"人間になりたいな"

 

そんな言葉がわたしの脳内から消えることがなく、落ちていた画鋲が不意に足に刺さる痛みから抜け出せないでいた。

あれはいったいどんな気持ちで言ってたのかを、考えずにはいられなかったから。

そうだ!あのキャラクターにしよう!

 

「とりあえず作るキャラクターは『キオ・アスノ』でいっか……これ以上迷ってるとなにも出来なくなるし文化祭までの期日に間に合わなくなるのは嫌だからね!」

 

キオ・アスノ。

機動戦士ガンダムAGEに登場。

アセム・アスノとロマリー・ストーンの間に生まれたXラウンダーであり、祖父にあたるフリットからモビルスーツの戦闘訓練を受けガンダムAGE-3のパイロットとなる。

その後、キオは火星にあるヴェイガンの本拠地「セカンドムーン」の現状を知ることとなり最高指導者である「フェザール・イゼルカント」から地球に帰還する計画である「プロジェクト・エデン」の話を聞かされる。

 

イゼルカントは息子であるロミが病気に臥していて、その子と瓜二つのキオにヴェイガンの未来を託した。

 

「決まったようだし、おれにできることはそんなにないね」

「なんでですか?カグヤ先輩はフィギュア製作会社にいるんですからこれからそこに行くんですよ?」

「……なにを言ってるんだエリカ?」

「なにをって?決まってるじゃないですか?社会科見学ですよこれも部活動の一環なんですから」

「……ちょっと待ってくれよ、まだなにも許可なんて出してないだろ」

「だからそのために先輩が交渉してくれるんですよね?」

「おれが親父と話せってこと……だと」

「それなら話がはやいですね!んじゃああとのことは頼みましたよカグヤ先輩!」

「……後輩に押し切られてしまったな」

 

そうこうしてわたしたち模型部は、フィギュア製作について知る必要があるためカグヤ先輩の金型製作工房T3に見学をすることとなりました。

 

で……いつになったら出てきてくれるのわたしのお姉ちゃん(アカネ)

 

***

 

 

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