陰キャだけどアイドルはじめてGBN〈惑星〉を救う話。   作:神宮寺Re ⑦

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エリカたち三人はカグヤのいる金型製作工房T3へと工場見学をする話。



第八章 -【はじめての工場見学です!】-

 

部活動の一環としてわたしたち三人は休日に橘輝夜(タチバナ・カグヤ)先輩のいるフィギュア製作会社へと見学にやってきていた。

その会社にある時計の針はだいたいお昼前の十一時を示している。

 

金型製作工房T3(ティースリー)

都内にあるフィギュア製作の主に金型をメインに製造している会社で、(つちか)われた技術と信頼の実績を誇る老舗の工房って渡されたパンフレットに書いてありました。

 

「今日は案内役としておれが務めることになるが、構わないよな?」

「カグヤ先輩のいる会社なんですから当たり前では?」

「それもそうだな……」

 

と、アカネが至極真っ当な発言をした。

わたしとアカネ、ハルナは訪れたこの会社のことはあまり知らないため自ずとそうなってしまうのは当たり前だ。

 

「……うぅん、では気を取り直して、まずは──」

 

あれ?なんかいつもより緊張してますカグヤ先輩?

というかこんなときはアカネ同伴してくれるんだね……生徒会長の仕事はそれなりに落ち着いてきたのかな?

 

「ところでハルナ?それは?」

「とりあえずノートだけはって持ってきたけど」

「勉強熱心だね〜」

「……一応彼氏のいるところだし、知りたいことそれなりにあるし」

「ピュアだね〜」

「茶化さないでよエリカ」

「あぁ……ごめんごめん」

 

そうしてわたしたちは初めての工場見学に胸が躍っていた。

 

◇◇◇

 

カグヤ先輩の案内のもと、工場内に入っていくわたしたち。

最初のエントランスにはここで作られたであろうフィギュアの数々が飾ってあった。

 

ショーケースに並ぶ、色とりどりの美少女フィギュアや怪獣などの特撮物から小物系のものまでたくさんの商品がわたしたちを出迎えた。

 

「ここにあるのは主にうちで任された商品の完成品(フィギュア)って感じだな」

「こんなにあるんですね〜……」

 

壁一面にあるフィギュアの数々に驚きと感動を覚えるわたし。

というか都内に引っ越してきてからあまりこういうところに行ってなかったってのはちょっと勿体無い気がする。

……というかすでにそんな気持ちですね、これだけでもお腹いっぱいなんだけどわたし。

 

(というかイモータルジャスティスの改造案は纏まったの!?)

(テストまでまた勉強してないよ!?大丈夫なの!?)

(……なんかお腹いたい)

(どこかでアイスクリームたべたい……)

(わたしのバイトの次の給料はまだなんですか!?待ちきれないんですけど!?)

(落ち着こうよわたし!)

 

落ち着く必要があるのはエリちゃんたちだから!いまは静かにしなきゃダメだからここでは!

 

「どうかしたのかエリカ?」

「あ、いえ……えっと……いつものやつです」

「なんだっけ?たしかイマジナリーフレンドエリちゃ──」

「あああぁぁぁぁぁああ!もういいです!もうその話はいいですから!」

 

蒸し返さなくても話は聞いてますから先に進んでください!

 

「それならいいんだが」

 

カグヤ先輩なんかありました?機嫌があまり良さそうに見えなんですけど……?

 

「ところでカグヤ、ここって創業何年になるの?」

「おおよそ今年で五〇年ってところだな」

「へぇ〜結構長いんだね」

「まぁな」

 

五〇年って人の半生くらいだからかなり長いよね……

 

「従業員の数ってどれくらいなんですか?」

 

アカネがメモを取りながらカグヤ先輩に質問していた。

 

「たしか七〇人くらいだったはずだが……」

「詳しく知らないんですか?」

「確認すべきことではあるが、最近までの生徒会長の仕事に終われてあまりこっちのほうは疎かになってしまってねすまない」

「いえ、べつに謝ることじゃないんですけど聞いておく必要がある気がしただけで」

「しっかりやっておくべきだったね」

「あとで調べればいいんですから先行きましょう!先に!見学スタートしたばかりなんですし!」

「あぁ……それもそうだな」

 

◇◇◇

 

続いて訪れたのは主に企画書のイラストから金型を起こす作業を行っている3D設計を担当しているところ。

ここには男性女性問わず三〇代前後の人たちがパソコンと向き合っていた。

 

「パンフレットにもあるがここでフィギュアの設計を起こす場所になっている」

「かなり神経を使う仕事ですね……これ」

「まぁな、無闇矢鱈とできるもんじゃないし」

「それでここの御子息なんですもんねカグヤ先輩は」

「それがどうかしたか?」

「……プレッシャーとかないですか?」

「無いわけではないが……いや、なんでもない」

「どうかしました?」

「気にしないでくれ」

「……カグヤ先輩?」

 

橘輝夜先輩は疲れからなのかいつも以上に虚な目をしていた。

 

◇◇◇

 

そしてメインの金型を作るところにやってきたわたしたち。

一〇人ほどの男性の従業員が調整作業として金属と真剣に立ち向かっていた。

その汗滲む姿を見てわたしはちょっとカッコいいって思った。

 

「ここがこの工場の大事な場面になる」

「……熱いですねここ」

「そりゃまぁ火を使ってるからな」

「ちょっと水分とっていいカグヤ?」

「熱中症になると大変だからこまめにとりなよ」

「ありがと」

 

ハルナは持ってきていた水筒のお茶を口に含みながら、作業しているところを見つめてメモを取っている。

するとそこに一人の男性がやってきた。

 

「なんだカグヤ?見学者がいるなら話を通してくれって言ったろ?」

「父さん、昨日来るって話しただろ?それにメールだって送ったよなんで見てないんだよ」

「そうだったか……?忙しくてまともに見る時間がなくてな」

「勘弁してくれよ……」

「その人は……?」

 

わたしがその人のことを知らないためにカグヤ先輩に問いかけた。

 

「ああ、この人はこの工場の代表を務める橘真守(タチバナ・マモル)だよ」

「お嬢さんたち紹介が遅れてすまないね?カグヤからあった通りここの責任者の真守だ、よろしく頼むよ」

「「「……よ、よろしくお願いします」」」

 

三人ともにお辞儀をして挨拶するわたしたち。

額に汗を滲ませながら笑顔で応える作業着とともに帽子を被ったマモルさん。

その表情はどこかあたたかで丸い顔をしていた。

 

「ここではどんな作業をしているんですか?」

 

水分補給を終えたハルナがマモルさんにそう話しかける。

 

「ここは打ち出された金型のチェック、あとはズレがないかを見たり試作品を出したりするところだよ」

「一回では終わらないんですね」

「一回だけだとどこに問題があるかわからないからね、人の手で何度もちゃんとチェックしないといけないんだよ」

「大変ですね……」

「まぁ慣れではあるし、手に取ったお客さんの笑顔のためにやってる仕事だから……大変だけど楽しいこともある」

「たとえばどんな?」

「上手くいったときは『よっしゃあ!』って言葉では言わないけど心の中でガッツポーズしそうなっちゃうからね、逆に失敗したときはメンタルやられるし……なにやってんだって責めてしまうことはある」

「それでもやり続ける理由はなんですか?」

「生み出した商品を手に取ってもらってそれで少しでも頑張ろうって思ってくれるなら、それでいいんだよ俺は」

「なんか……かっこいいですね」

「照れるだろお嬢さん、この歳にもなってそんなこと言われたの久しぶりだよ」

 

あれ?なんか携帯の着信音が聞こえてます……けど?

 

「……おっとおっと、妻から電話だ」

「奥さんいらっしゃるんですね」

「こんな俺でもいいって人がいるだけで幸せもんだよ、……なに?なんだ椎菜(シイナ)?聞こえないぞ?おーい?」

 

着信相手の奥さんからの声が金属音で届かないのか、手を振ってこの場をそそくさと出ていったマモルさん。

 

「……すまない失礼をした」

「いいえ、仲良いの羨ましいです」

「べつにそこまで仲良くはないんだが……」

 

そうわたしが言うとカグヤ先輩はわたしたちを休憩室へと誘導していった。

 

◇◇◇

 

一連の見学を終えたわたしたち三人は多くのテーブルのある休憩室で椅子に座って一休みしていた。

 

「……結構疲れたね」

 

アカネがそんな一言をこぼす。

 

「まぁでもかなり面白かったね、カグヤのこと少しは知れたし」

「そいやまともに話してなかったなハルナ」

「そうだよ〜考えすぎなんだよカグヤは」

「そうは言ってもな……」

 

ところでこのあとはどうするつもりなの?

 

「あたしは資料をまとめないといけないから一回学校に戻るよエリカ」

「そ、そうなんだ」

「私はちょっと寄りたいところがあるからカグヤも一緒にくる?」

「どこに行くつもりだよ?」

「ちょっと新しくガンプラつくりたくってさ、いいでしょ?」

「べつにいいけども……」

「エリカはこのあとどうするの?」

 

アカネが紙コップにあるお茶を飲みながらわたしに。

 

「……えっとこのあとバイトが入ってるから行かないとなんだよね」

「帰りになんかコンビニでアイス買ってきてよ」

「えぇ〜?家の冷凍庫のスペースあんまり残ってないよ?」

「いいからいいから〜」

「も〜しょうがないなぁ……」

 

こうしてわたしたち三人とカグヤ先輩はそれぞれ別れてこの金型製作工房T3をあとにした。

 

***

 

あれから数日後の放課後。

フィギュア製作のやり方をあらかた理解したわたしたちは文化祭に向けて作業をはじめていた。

 

「……3D設計からやったほうがいいのかな?」

「あたしたちズブの素人だよ?本気でやるつもりなのエリカ?」

 

今日はアカネが模型部にいる日であったために、作品の方向性を決めようとしていた。

 

「やれそうじゃない?」

「どこから湧いて出てくるのその自信は……」

「まさか設計からやるつもりなのか?」

「ダメですか?」

 

カグヤがわたしが設計からやることに驚いたのか、恐るおそる聞いてくる。

 

「……だめじゃないが、文化祭まで半年くらいしかないんだぞ?成形と塗装と仕上げまで含めた上で本当にやるつもりか?」

「そこはカグヤ先輩がいるんですから幾らでもアドバイス出来ますよね?」

「そのためにおれをここに入れたのか?アカネ」

「それは想定外なんだってカグヤ先輩!まさかそこまでやるつもりなんてあたし聞いてないよ!」

「だってよエリカ」

「えぇ……ちゃんと作ってみたいじゃん……」

「──もう一度聞くぞ、本気か?」

「遊びでそんなこと決めるわけないじゃないですか」

「いいんだな?」

「カグヤ先輩ちょっと怖いです」

「本当にやるんだな?」

「……えっと、わたしかなりヤバいこと言ってます?」

地獄を見る(死にたくなる)ぞ、それでもいいんだな?」

「は、はい……」

 

いやあの、なにこの気迫せまる鬼の形相でわたしのことマジマジとみるのやめてもらっても……?

そんなに大変そうに見えなかったんだから、やってみたくなるじゃないですか?……ならない?なるもんじゃない……の?

 

「期日は文化祭準備までだぞ、それまでに完成できなかったら部活の展示はほぼなしになると思ってくれよな?」

「……ええっとそれってつまり」

「今日からギリギリまでPCと睨めっこの日々が始まるってことだ」

「ひえええぇぇぇぇ……」

 

わたしはなにも考えずに行動していることを尻目にカグヤ先輩の目がいまにでもやめろと言いたそうなそんな……かおをしていた……

 

***

 

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