陰キャだけどアイドルはじめてGBN〈惑星〉を救う話。   作:神宮寺Re ⑦

29 / 47
エリカは本格的にフィギュア製作を開始する話です。


第九章 -【なんで言ってくれなかったの?】-

 

日差しも健やかに暖かさを取り戻してきた五月初旬。

わたしは模型部の活動としてフィギュア製作に取り掛かっていた。

心機一転やるぞ!と気合いを入れてやりはじめたのはいいんだけど……

 

「だぁぁぁぁぁぁ……!?設計とか言われたってなにをどうやっていけばいいかわかんないよおこれぇぇぇぇぇぇ!?」

 

PCのモデリングソフトを立ち上げてポリゴン?なんかわかんないけどそんな横文字と戦ってるけど、マジでなに言ってるかわかんない……何語?

 

「ちょっとうるさいよエリカ」

「だったらなんか助言くれてもいいんじゃないかなぁハルナァ!?」

「だってよカグヤ?」

「なんでそこでおれを見るんだよ……」

「そりゃあね?」

「……なんだよ、はっきり言えよ」

「ねぇ〜?エリカ」

 

ここでわたしに目線を合わせても困るんですけどねっ!?

いや実際ほんとに困ってるのはわたしなんですけれどもね?

キオ・アスノをフィギュア化するためについこの前に行った金型製作工房T3の資料と睨めっこしてるけど、なんのこと言ってるかわかんないんだよ……阿鼻叫喚だよぉ……ううぅ……

 

(ってかさ〜文化祭に間に合うわけ?こんな体たらくで)

(……進路調査表にセミって書いたこと怒られるんじゃないかなぁ?)

(将来のこととかもう知らない!いまこのときでさえめちゃくちゃなのにもうワカンナイヨ!)

(ハルナの胸……わたしより大きいよね……いったいなにが詰まってるんだろう……うらやましす……へへへへへへ)

(だれだこのおっさん、はやくとめろ!)

(バイトの給料で貯金した使い道はそう!エアブラシの買い替えに全BETすることにしたんだぜぃ!)

(先のこと考えなよわたし……)

 

んなことより今の状況をなんとかすること考えなよわたし!

試作品を作るところさえもまともに進まないよ……

ガンプラ組んでるほうがマシなくらいだよ……こんなの!

 

◇◇◇

 

「あ〜でさ〜エリカ」

「……な、なに〜?いまずっと忙しいんだけど〜あぁもう!数値弄ってたらおかしくなった!?なんなんだよもう!」

「余ってるガンプラもらっていいかなぁって相談を……したいんだけどいま……」

「えぇ〜?あぁ……いいんじゃない〜?またなんか変なとこに縮小させちゃったんだけどぉ!?なにこれどうやって修正してけばいいの!?」

「……ほんとにいいの?一応部活の備品だよね?」

「えぇ〜とこれをこうして……違う違うこれじゃサイズ大きすぎ!まともにパーツ作れないじゃんわたし!死にたいんだけどすでに!誰だよこんなのやろうって言ったやつ!……なんだって?」

 

……ほんと誰だよこんなフィギュア製作なんてやろうなんて言いはじめた戦犯は!ごめんなさいわたしでした、調子こいてマジでむりです。

いまやってる作業全部投げたしたいです……無力なバカですわたし。

もうむり死にたい……消えてなくなりたい……

 

「だから余ってるガンプラを貰いたいって相談をね?」

「……いいんじゃ、ないかなぁ!?……はじめてから一時間経ってるのにまともに目のパーツすらできてないとかこういうの向いてなさすぎでしょわたし!」

「ちゃんと許可とったからね?あとで言いにきても私対応できないからね?」

「……えぇ〜?あぁ〜うぅん」

 

ごめんなんの話?いまほんとそれどころじゃないんだけど!?

って!なんだよデータが消えちゃったじゃん!また一から作り直さないといけないの!?……もうやだやりたくないよぉ!

 

「だからまえに言っただろ?死にたくなるってよ?おれの忠告を無視するからこんなことに……」

「だったらなんとかしてくださいよカグヤ先輩!」

「それはおれの仕事じゃないだろ?……そもそもなんである程度のスケジュール立ててやろうとしてない時点で失敗するルート一直線なのに気づけよエリカ」

「ううぅ……だってぇ……そう言ってもぉ……やれると思っただけなんですぅ……」

「一回作業休め、会議をはじめるぞ」

「秘密基地で両手絡ませてやるやつですか?楽しいですよね!指揮官ごっこ!」

「だれがエヴ○のゲ○ドウのモノマネやれって言ったんだよ?話を聞けよ、殴りたくなるだろ」

「……はい、申し訳ありませんでした」

 

なんかこういうときに限ってカグヤ先輩いっつも怖いんですけど初期プリセットにそう設定されてるんですか?……あぁこれはこっちの話なので気にしなくていいです。

 

「ここに座ってまずは計画書を記載することからだな……」

「もう座ってます、よね?」

「いいからそのPCから離れろ、考えるのを一旦端におけ」

「いやだから……その」

「だ!か!ら!ちゃんとこっち向いて聞けって言ってんだよ!」

「……ううぅ」

 

バイトはじめた手前味噌だけどあんまり面と向かって人と話すの苦手なんだよぉ……こわいんだって……

 

◇◇◇

 

「カグヤちょっとやりすぎだよ?そんなんじゃ誰も話を聞いてくれなくなるでしょ?」

「……つい苛ついてしまって言いすぎた」

「いいですけど……」

 

ちょっとキリキリしすぎじゃないかなぁカグヤ先輩?

っていうかハルナの首から下げてる十字架のペンダント誰からもらったの?転校した最初の頃にはなかったよね?

 

「ハルナのその首ペンダントどうしたの?貰ったの?」

「あぁこれはね──」

「まずはおれの話をさきにだな……」

「……ご、ごめんなさい悪気があったわけじゃなくてですね」

 

そして机に紙を置いて話をし出すカグヤ先輩。

 

「まずここに完成までの期間に必要な工程の締め切り期日を決めてくれ」

「まだはじまって三日目ですよ!?」

「いいから書けと言っている」

 

だからその気迫せまるカグヤ先輩の目がこわいよぉ……

 

「目安になる日数とかってないんですか?」

「大方の企業のスケジュールだと原型完成までにおおよそ半年またはそれより半分は必要にはなるが……」

「じゃあ三ヶ月?」

「……企業の話では、と言っただろ」

「ということは……?」

「おれたちがやれるのは二ヶ月だ、そもそも無計画にはじめたバカのことを見てるのは誰だ?」

「鬼ィ!?ここに鬼がいるよ!?そんなの無茶ですよ!?ど素人なんですよわたし!?」

「そうは言っても文化祭の発表は秋頃の一〇月、そこから軽く見積もっても塗装や仕上げまでやると早めに終わらせないと間に合わないだろ?おれは進学があるから受験生なんだぞ?予備校に行く時間もあるし尚更サポートできる時間はあまりないと思ってくれないと困る」

「……それに体育祭と修学旅行がありました、よね」

「君らは二年生なんだから当たり前だろ、なんでそのことを忘れてやれると思っていた?」

「そしたらそのこと早く言ってくださいよ!なんで先に言ってくれなかったんですか!」

 

ごもっともです……あぁいや別に簡単そうだからとかいう理由とかじゃないんです……やれそうじゃんと思ったわたしが悪いので……はい。

っていうかアカネが来るの遅いよぉ、なにやってんの!連絡してくれよ!弾幕張れないよ!スタ爆しちゃうぞ!

 

「……遅れちゃったごめん〜!」

「やっときたのアカネ」

「部費の予算会議で呼び出されてね〜話をまともに取り合ってくれないから余計に時間がかかっちゃってさ〜」

「ご苦労なことで〜」

「カグヤ先輩いつもこんなのやってたんですね……」

「部長たちの話を聞くのは大変なんだよいろいろとね」

「ほんとにやってるんだフィギュア製作……」

「まぁね……」

 

と、ようやく模型部らしい活動ができてきたところです。

……わたしの行動の無計画さに目をつぶってもらっていただいてほしいところで……なんて言ってる場合かぁ!完成させるんだよキオくんを!わたしのつくるキオくんを!ここで!

 

***

 

遡ること一週間前。

私とカグヤは四回目のデートにショッピングモール〈ロンド・ベル〉に二人揃ってやってきていた。

 

「久しぶりのデートだねカグヤ?」

「そうだな……」

「なにかあった?」

「なんでもない」

「ほんとうに?無理しなくてもいいんだよ?」

「気にしなくていい、行きたいところはあるか?」

「……んん〜そうはいってもなぁ、あらかたここは回ってきたし」

「新しいガンプラ作りたいんじゃなかったのか?」

「それもそうだけど……」

 

そうなんだけど……なんかあんまりいい気分じゃないっていうか……デートすること自体は楽しいからいいんだけど。

っていうかなんかいつもより私に気を遣ってない?気を遣いすぎなんじゃない……?私のことちゃんと見てる?

 

「それよりそのいつもつけてるそのベール、外してもいいんじゃないか?いつも付けてると汗かくぞ?」

「これは外すわけにはいかないよ、知ってるのがあなただからそれでいいんだよ私」

「そういうならいいが……」

 

私のこと心配してくれるのはいいけどデートなんだから楽しもうよ?

 

「そんじゃとりあえず模型&ホビーショップ〈AXIZ(アクシズ)〉にいくか」

「そうしよそうしよぉ〜!おぉ〜!」

「おい、ひっぱるなよ!」

「歩くのが遅いよ〜カグヤ!」

「待ってくれよ……!」

 

カグヤの手を掴んで揃って歩いていく私たち。

両端に広がる店先には七夕に向けた商品が陳列されたショップの店員さんたちが宣伝活動をしていた。

 

「もうすこしで七夕だな、短冊に願い事とか書いてたの小学生くらいまでだった記憶があるな……」

「七月七日になにかあるの?」

「諸説はあるが織姫と彦星が年に一度逢瀬をするための日、ではあるけどそんなだったら最初から怒られるような事しなければいいのになって思うだろう普通」

「つまりどういうこと?」

「……簡単にいえば双方が見せびらかすようにイチャイチャしだすもんだからそれに怒った天帝が二人の距離をひっぺがしたって話だよ」

「リア充爆発しろ的な?」

「やめろその話は今のおれたちに効く」

「あっはは〜!たしかにそうだね〜!」

 

そんなの気にしたって仕方なくない?やりすぎはよくないとは思うけどさ?

そして〈AXIZ〉へとやってきた私たちは新しいガンプラを作らために品定めをしていた。

 

◇◇◇

 

「なにか見つかったか?」

「……うぅんなんかこうパッとするやつないかなぁ」

「そんな都合よくあるわけないだろ」

「わかってるけどさ〜」

 

かわいいやつってないかなぁ?そんなのあるわけない?

 

「アッガイとかどうだ?」

「なんか違う」

「別の世界では大人気なんだけどな……派生機もいっぱいあるし……よくわかんねえやおれの彼女……」

「じゃあ私の好きな食べ物は?」

「ミートソース……とか?」

「不正解でぇ〜す!答えはグラタンでした〜!」

「初めてのデートのとき食べてなかっただろそれ、話してないんだからわかるわけないだろ?エスパーじゃねえんだよ」

「それはカグヤと一緒のものが食べたかったからだよ?」

「……お、おう、それは嬉しいが」

 

まあ私から言わないのもよくないけど、ちょっとくらいはさ?

あっ!なんか惹かれるやつみつけた!なんだろこれ?

 

「このかっこいいのなにカグヤ?」

「ガンダムレギルスって書いてあるだろ」

「がんだむれぎるす?なんかドラゴンみたいに尻尾ついてるよね?」

 

私が手に取ったガンプラの名前は「ガンダムレギルス」というらしいけど……なにもわからない……

 

「ヴェイガンってなに?」

「話をするとオタクしぐさ全開になるからあんましたくないんだが……」

「カップルの彼氏が彼女に教えてる構図にしかならないよ?」

「機動戦士ガンダムAGEに登場した地球に帰還することを目的としたヴェイガンの指導者用MSなやつ、鹵獲したガンダムAGE-3を解析して作り出したガンダムになったんだよ。それで最初にフェザール・イゼルカントが搭乗して、んでそのあとゼハート・ガレットがプロジェクトエデンを引き継いで最終決戦で親友だったアセム・アスノと戦ってたりしてる」

「ちょっとおたく?じゃないから話よくわかんないんだけど、あせむってだれ?」

「それはまた別のときにでも……」

「スマホで調べたけどこの通販限定の“memory of eden ver”ってどゆこと?」

「サイトにも書いてあるOVA版にも出てて、火星の赤い色に変更されたやつなんだよ……」

「なんでそうなっちゃったの?どっちもお店で売ればよくない?」

「そうも言ってられないんだよ、なんせ種類が多くなってきてるからカラバリも一般流通に出すと生産管理が大変だからだろ?ここ最近だとまた色違いのガンプラ出してきて判断基準が曖昧だが」

「よく知ってるね?」

「そら製造業の息子をやってるからな……痛いほどわかるわけだし……」

 

工場見学行ったときもお父さんとなにかありそうだもんね?

これ以上は知らないほうがいいやつなのかな……

 

「まぁいいやこれで!買ってくるね!」

「いってら〜」

 

◇◇◇

 

模型&ホビーショップ〈AXIZ〉での買い物を終えた私たち二人は夕食を取るためにフードコートにきていた。

私は今日ドーナツを八つほど買ってイートインスペースで彼を待っていた。

 

「……これハルナにプレゼント」

「え?なんで?ありがたい……けど……どうして……」

「前回のお詫びと言ってはなんだが、誕生日も知らないし彼氏としてはこれくらいしかやれることないから」

 

受け取ったのは十字架(「+」)のペンダント。

……プレゼントをもらったのは生まれてきてからはじめてだった。

なんだろ、なんていうか……ちょっと泣きたくなってくる。

両親からはまともに貰ったことがなかったし、こっちにきてからも人から優しくされたのはこれで二回目になる。

 

「……ご、ごめんなんかその嬉しくてつい」

 

滲ませる涙を堪えながら私は彼に微笑みを返す。

笑ったことなんていままでなかったけど、ちゃんと笑えてるよね?私?大丈夫だよね?

 

「気に入らないなら一緒に買いに行くか?」

「うぅん、いいの……カグヤが選んでくれたのがいい」

「大丈夫か?なにか気に障ったのなら先に帰っても」

「……ちがうって違うから!私のことを想ってくれたのがわかったからだから!」

「そ、そうか」

「さ!たべよ!たべよ!」

 

私たち二人は久しぶりのデートを満喫しながらこの日を終えた。

 

***

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。