陰キャだけどアイドルはじめてGBN〈惑星〉を救う話。 作:神宮寺Re ⑦
転校生である七夕陽那さんがきてから一週間後のランチタイム。
わたしとアカネ、そしてハルナの三人で学校の屋上に居座り昼食をとっていた。
わたしはソーセージの入った菓子パン。
アカネは自身がつくったお弁当を。
「そういや部活って入るの?エリカ」
「……部活?わたしが?……入れそうなのもうないじゃん?だってガンプラバトル部は廃部してるって──」
そう、春に入学して早々にガンプラバトル部があることを知っていたわたしは入部できると思っていた。
だけどその部活は共学化された時になんか事件があったらしくて、それで廃部になってるみたいでただの物置小屋になってるってクラスメイトから聞かされてた。
「……マジなの?それ?」
「そうだよアカネ」
「そもそもがんぷらばとるぶってなんなの?アカネ」
「GP・デュエルがやってたときにあった、その名の通りガンプラを戦わせたり、大会に向けて練習したりガンプラ作ったりもする部活のことだよ」
「……へぇ〜それがなくなっちゃったんだ」
「っていうかハルナさん?」
ハルナの昼食が気になったわたしは、不意に気になっていたことを聞こうとする。
「なに?エリカ」
「そんなんでお腹空かないの……?このあと体育だよ?」
「これ?ゼリー飲料のが私すきなんだよね、固形物あんま食べたくないっていうか……見たくないっていうか……」
「そんなんばっかりとってたら倒れるよハルナ……」
「心配してくれてありがと、まぁなんとかなるって!」
ほんとかなぁ……?冬だからいいけど夏だったらほぼ確実に倒れるよ?大丈夫なの?
簡単だし楽なのはわかるんだけどさ?
さすがに心配になったので、担任の先生に伝えておこうと決めたけど……
「そういえばカグヤ生徒会長のことって知ってる?」
生徒会長……?あぁ始業式で挨拶してた人?
「その人なんかあるの?」
そうわたしはアカネに問いかけた。
ただの生徒会長ってわけないよね?
「噂で聞いた話だから、本気にしないでね?」
「わかったからはやく話してよアカネ」
なにがあるのか聞きたいだけだからはやく教えてアカネ?
「たしかカグヤ生徒会長は金型製作工房
就職先がすでに確定してるってこと……?この年で!?だってまだ高校生だよ!?それもまだ一年生なんだよわたしたち!?
「将来が決まってるひとって楽でいいよね〜」
と、ハルナが愚痴を混じりあわせながら言う。
それはまぁ……うん、いいかもしれないけどレールを歩くことが確定してるってことでしょ?それってほんとに楽しいのかな?
「ま、そんな他人のことなんてどうでもいいじゃん」
と、アカネが上の空で返事をした。
実際どうでもいい、ほんとどうでもいい。
そんな気持ちでさえも虚無感を覚えていた。
必要とされているだけでどんだけ良いことなのかを。
わたし?彼氏が出来たと思ったら速攻フラれたこと以外なんもいいことないよ?というかそもそも生きてていいことなんて、なんも起こってないよ……なんなのこれ。
ほんとなんなのこれ……
こっちは遊びでヤってんじゃあないんだよ!
いけない、いけない……思わず心の中のカミーユが……暴れだしちゃった……
「……はははは!ざまぁないぜっ!」
「急にどうしたのエリカ?」
「さっきのは忘れて……お願い忘れて……いますぐに!」
「う、うん?」
思わず口に出す癖やめようね!?わたしね!?
そんなとき、話を逸らそうとしたハルナがわたしに話しかけた。
「放課後って部活入ってないひとはそのまま帰るの?」
「かえるよ?やることないんだから当たり前じゃん」
わたしはやることあるよ!?家帰ってガンプラの続きがしたいんだけど!?もう帰っていい!?ねぇ!?ダメなの?
「そりゃそっか」
「あっそうだ、どうせ暇なんだし学校内をまわってみようか三人で」
アカネからの提案によって、わたしたち三人は学校内を出歩くことになった。
ああぁぁぁぁぁぁ!わたしの数少ないガンプラを作る時間がぁぁぁぁぁぁぁ!プラモライフがぁぁ!
☆☆☆
学校の授業が終わった午後の夕方。
わたしたち三人は学校内を散策していた。
ふと二階の廊下を歩いていると前方から人影が見え隠れし始め、ゆっくりとわたしたちのほうに向かってきていた。
「やぁ君たち?廊下は独占しながら歩いてはいけないよ?」
「……す、すみません!カグヤ生徒会長!」
(……この顔、どこかで見覚えがあるような気がするんだけど思い出せない……えっと……どこで会ったっけ?)
わたしが謝ると続けて二人も……
「「ごめんなさい!」」
と、生徒会長である橘輝夜がわたしたちに頼みごとを申し出た。……なんだろう?
(……あ〜!あのときに会った人だ!GP・デュエル全日本大会決勝戦で戦ったひとだ!……まさか同じ高校に入学してたなんて……運命?宿命?どっちにしろ怖いよ?助けて!バーサーカー!あっそいえば完凸してるんだっけ……帰ったら育成しなきゃ……待っててねバーサーカー……わたしのバーサーカーが一番強いんだからっ!)
って!いまはソシャゲのこと考える時間じゃないでしょ!わたし!
茶髪の髪型でおそらくヘアスプレーで髪を整えていた。
現生徒会長にしてGP・デュエル全日本大会決勝戦でわたしと戦ったことがある人物。
そういや彼女……?彼女なのかわからないけど二人くらいといつも出歩いてるはずだけどなんでひとり?
「ついでで悪いんだが君たち三人で
……つまり後片付けをしろってこと?もうそれただの雑用係じゃないですかそれ。
(めんどくさぁ〜あぁはやく帰りたい……はやく帰ってプラモつくりたい……作りかけのポケ戦のザクがあるのに……なんでこういう時に限って野暮用ができちゃうかなぁ……)
「まぁいいんじゃない?アカネ?エリカ?ちょうど見てみたかったしさ?ね?」
ハルナがそう言うんなら仕方ないか、あんましやりたくないけど今日はやることないしいいや。
「それじゃ頼んだよ、また会おうね」
(……また?なんで!?もう会う必要性なくない!?)
カグヤ生徒会長はそうしてわたしたちの前から去っていった。
☆☆☆
カグヤ生徒会長の頼みごとを聞き入れたわたしたちは、模型部の部室にやってきた。
「……し、失礼しまぁーす」
アカネがドアの引き戸をゆっくりと動かしていくと……
「うわぁ……なにこのほこりだらけ……(けっほけっほ……)」
長らく清掃していないためか思わず咳き込んでしまうわたし。
無造作に置かれているダンボールに組みかけの多数のガンプラ、それにショーケースに並んで展示されている塗装された作品たち。
そして部屋の中央にあったのは──。
「これ!GP・デュエルの筐体だよ!まだ残ってたんだ!懐かしいねぇ〜もう五年もさわってないよ!」
ひさびさに見るGP・デュエルの筐体にテンションの上がったアカネは目を輝やかせていた。
「片付けるついでだからさ!三人でガンプラバトルやってみようよ!」
「私がんぷらもってないよ……?」
ハルナはそもそもガンプラのことを知ったばかりだった。
それにまだガンプラ自体を組んだことがない。
そこでアカネは……
「どうせ使わないんだしさハルナ?その中にある適当なやつ組んでみればいいんじゃない?」
「……いいのかなぁ勝手にやっちゃっても」
「怒れるかもだけどそん時は三人で謝ろ?」
「ならいいけど……」
ハルナが部屋にあるガンプラの中からひとつのガンプラを手にする。
それは──。
「……なんかこれ私すきかも」
「うぅーん?なになに?」
わたしが覗き込むと……
「おー!ガンダムポータントじゃん!ひさびさにみた!」
と、アカネが機体名もといそのガンプラの名前を教える。
GNW-100P ガンダムポータント。
ガンダムビルドファイターズトライに登場。
カミキ・セカイ、ホシノ・フミナ、コウサカ・ユウマたち率いるチーム〈トライファイターズ〉がガンプラバトル選手権全国大会決勝戦で戦ったキジマ・シア、キジマ・ウィルフィリット、アドウ・サガの率いるチーム〈ソレスタルスフィア〉のガンプラの一機。
特筆すべき点として準決勝戦でチーム〈フォン・ブラウン〉との戦いの中で見せた、破損したガンプラをリアルタイムで修復するそのさまは、会場にいた観戦者およびトライファイターズの三人を驚愕させている。
「これなんか綺麗だなぁ〜って、それになんか似てるんだよねコレ」
「いいじゃんいいじゃん!つくろうよ!」
ん?似てる?なにに?どういうこと?似てるやつってなんだっけ?……だめだ体育の授業はりきりすぎて体力使いきってるし……めっちゃなんか疲れててあたま働かない……しんどい……
ハルナがガンプラを作っている間、わたしとアカネはGP・デュエルを筐体を稼働させていった。
☆☆☆
戦術試験区域四番。
機動戦士ガンダム 水星の魔女においてミオリネの決闘の申し出によって〈ミカエリス〉を操るシャディクと、それを率いるグラスレー寮の5人の女子が使う対ガンドフォーマット用MS〈ペギルペンデ〉のトップパイロットたちがスレッタたち〈ガンダムエアリアル〉を含む地球寮と戦った場所。
多くの破壊されたビル群を形成したその試験場で彼女たちは、搭載された〈アンチ・ドート〉を使用し、スレッタを追い込んだ。
だが、決着の際に地球寮のチュチュが使う専用の〈デミ・トレーナー〉によってリーダー機であるミカエリスの頭部が狙撃され、無事に勝利を収めた。
「デスティニーガンダム・ルヴァンシュ!エリカ!いくよ!」
「ガンダムシュヴァルゼッテ・ハンティア!アカネ!やっちゃうよ!」
☆☆☆
あの決勝戦から五年ぶりのGP・デュエルの感触をエリカは噛み締めていた。
が、体育の授業で体力を使い切っていたエリカはすでに集中力が限界ちかくに到達していた。
そんなことは知らないアカネはビルの屋上で狙撃態勢に入っていく。
視界に見えるのはこちらに接近しようとしてくるエリカのガンプラ。
アカネのガンプラ、「ガンダムシュヴァルゼッテ・ハンティア」は腰部にミラソウル製ユニットと、両脚をダリルバルデに換装したのち、バックパックをRX-78-2ガンダムのものに差し替えている、いわば組み換えミキシングのガンプラ。
そして長距離狙撃用のおもに地球連邦軍のジムなどが使用していたスナイパーライフルを
カラーリングはミリタリー色のつよい濃緑色を彩っている。
MDX-0003 ガンダムシュヴァルゼッテ。
機動戦士ガンダム 水星の魔女の終盤に登場。
スレッタたちが上手くいっていた最中でラウダはミオリネに嫌悪感を抱き、義兄であるグエルと再会。
スレッタがきたことでおかしくなった世界で義兄弟同士で戦闘をはじめてしまう。
危険視されているガンダムの〈パーメットスコア〉を使用するラウダは義兄であるグエルを死亡させてしまいそうになったとき、乱入してきたフェルシーによって難を逃れた。
高台から狙撃を開始するアカネ。
「──狙い撃ちさせてもらうよ!エリカ!」
まっすぐ一直線上に伸びるその粒子の塊はエリカのガンプラの右半身すれすれを掠めていく。
(……やばい!集中力がないせいでまともに判断ができないよ!こんなのはじめてだよ!)
「なかなかやるじゃん!アカネ!けど──!」
エリカは滑空していた最中に目の前に飛びついたビル影に潜み、ライフルを角から露出させ、臨戦態勢を整える。
(とりあえず距離を取るしかないか……わたしのガンプラはほとんど近接専用になっちゃってるし)
「──かくれんぼなんて!」
そうアカネが言葉を発したとき───。
「まったく……君たちは部屋の片付けを頼んだというのに、備品を許可もなく勝手に使用するとは──聞き捨てならないな」
「「カ、カグヤ生徒会長!?」」
廊下で出逢った橘輝夜そのひとがエリカたちの前に現れたのだった。
***
■キャラクター紹介
橘輝夜:都立星羅高等学校二年現生徒会長を務めている。GP・デュエル全日本大会決勝戦にてエリカと戦ったことがある過去をもつ。