陰キャだけどアイドルはじめてGBN〈惑星〉を救う話。   作:神宮寺Re ⑦

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今回から第三巻《ユメヲカケル》の開始です!

第三巻《ユメヲカケル》

『もしあの日に戻れるのなら──』

あらすじ
都立星羅高等学校では修学旅行や体育祭そして文化祭とイベントが目まぐるしく高校二年生であるエリカたちに出迎えようとしていた。
そんな中でAIダイバーである“IRIS-9999”と和解し獲得した賞金でフォース〈ASTERLISK〉は艦艇〈ディーヴァ〉をフォースネストとして拠点としてもったことでGBNで楽しい日々を送っていた。
三度目のフォースバトルをしていたそんなエリカ達の前にGBN運営管理者の一人である"デュランダル"がサユリとアキナと共に前触れもなしに現れる。
『そちらに所属しているダイバーであるIRIS-9999をこちらに受け渡していただきたい──重要監視対象の保護を名目としていることを宣言する。またこれに協力を拒否した場合には徹底交戦を厭わない』そう告げてデュランダルはエリカたちに有無を言わさずに敵のフォースと共同戦線することに。

ハルナはカグヤと二人の距離が進展しつつも逃れられない血筋から悩みもがき続けて──。

星を求める者と星に成らざるおえなかった者を紡ぐ物語──。

***

はじまりは修学旅行へとエリカたちが京都へと向かう話です。




第三巻《ユメヲカケル》【GBN運営編】
第一章 -【善意の矛先】-


都立星羅(セイラ)高等学校では高校二年の夏目前の七月中旬に修学旅行に(おもむ)くことが通例となっていた。

そこでわたしたちは東京駅から新幹線に乗って到着した京都駅からバスに乗り換え、一日目の観光を終えて宿泊先である旅館へと訪れていた。

 

旅館〈翠山壮(すいざんそう)〉。

この旅館は観光客はもとより、学生などの団体向けに用意された大規模な施設で数多くの従業員とそれを執り仕切る女将さんが協力して配膳や掃除などが隅々まで行き届いている親しみやすい空気感がひしひしと感じられるところ。

 

「……やぁ〜疲れたねエリカ?」

 

右から話しかけてくるのはわたしの義姉の蛭谷暁音(ヒルタニ・アカネ)

左眼は事故かなんかあったことで眼帯をつけてるんだけど。

 

「新幹線に二時間以上閉じ込められるのは結構退屈だったよアカネ……」

「あれってしんかんせん?っていうんだね?はやくて怖かったよ私」

「そいやハルナは乗ったことなかったよね?」

「あるわけないじゃん?だって私ここの人じゃないもん」

 

んで左から話しかけてきたのはつい冬休み明けに転校してきた七夕陽那(タナダ・ハルナ)

こっちはいつも頭にシスターベールを付けてる。

とにもかくにも彼女が言うには惑星〈ローレル〉ってところから来たらしいけど……

 

「だよねぇ……」

「二日目の自由観光楽しみ〜!」

「ミカミせんせぇ〜!生徒会長なのに浮かれてる人がいまぁ〜す!」

「たまにの休みなんだし少しくらい、いいじゃん!」

「声を抑えろよ〜迷惑になるだろ〜」

「ごめんなさぁ〜い!気をつけまぁ〜す!」

 

バスから降りたわたしたち三人は他愛もない会話をしながら先生からの指示を待っていた。

担任のミカミ先生が手を振りながら、先導する。

 

「出欠チェックするから席の番号順に並べ〜」

「「「はぁ〜い」」」

 

わたしたち二年生はひとクラス四〇人×五組の二〇〇人で構成されており、それに伴って大所帯で移動していた。

人数を確認し終えたミカミ先生は生徒たちを従業員さんの案内に従って各部屋へと向かわせていく。

 

◇◇◇

 

温泉に入って疲れを癒したわたしたち三人は和服の部屋着に着替え、白い布団が敷かれた和室でだらしなく胡座(あぐら)をかいて座る。

 

「じゃ!はじめるよ!ゲームで負けた人がジュース奢りねっ!」

 

座って早々にアカネがジュースを賭けてトランプゲームでババ抜きをすることになった。

そういやトランプやるの小さい時以来かも……

 

「そいやアカネ、いつ髪切って染めたの?」

 

とハルナが変貌したアカネの容姿について聞いていた。

以前の黒髪ロングから金髪ショートになっていたときは一瞬、マジでだれ?って思ったけど……唐突に髪色変えられるとこんな人いたっけ?になるよね?前にわたしも同じことしたし言えたもんじゃあないんだけどね?

 

「あぁ〜これ?修学旅行が決まる前にちょっとね」

「でもなんで金髪なのアカネ?」

「前のエリカの髪色いいなぁって思ってたから気分転換にね?」

「……う、うん?」

 

髪染めるのはいいんだけど痛めちゃうから大変なんだよね……

トランプのカードを配り終え、ゲームを開始するわたしたち。

各自でカードをひいて徐々に手札が減らしていく中でわたしはハルナとカグヤ先輩がどうなっているのか聞きたかった。

いや、だって気になりますよね!?この人達変わらず交際続けてるんですよ!?リア充しね!マジ!

 

「んでハルナはカグヤ先輩とどうなったの?」

「ついこの間にプロポーズされたけど?」

「……まって、いろいろと情報が追いつかないからまって!?」

 

プ、プ、プ、プロポーズ……?高校生で!?本気で!?あの元生徒会長が!?ごめんもう一回いいかな?repeat after me?

 

「よし、それでカグヤ先輩どうなったの?」

「二回言う必要ってあるのかな?」

 

これだから!リア充とかいう学生生活満喫中の奴らは!ええ、えぇ!わたしにそんなもんはとっくの昔に終わりましたよ!めでたしめでたしってね!ふざけんなよクソ野郎が!

……いけないいけないこれ以上古傷をセルフで抉るのはやめないと。

 

「……それでどうしたの?」

「受けることにした」

「えっと、ご祝儀出したほうがいいやつですか?」

「まだ正式に結婚が決まったわけじゃないからそもそも……ごしゅうぎってなに?っていうかまだ婚姻届にサインしてないし」

「結婚が決まった相手に渡すお金のことだよ!?当然でしょ!?」

「心遣いありがとうエリカ」

「……そ、そいつはどうも」

 

そして各自のカードが減っていき、先にあがったのはハルナだった。

アカネと一騎打ちになるわたし。

いまわたしはジョーカーを持っているのでこのままいけばわたしがビリになる。

 

(あー!もう眠いよぉ〜!寝かせてよぉ〜!頼むよ〜!)

(っていうか模型部の活動進まないのこれはこれでなんかもどかしいなぁ)

(ところてん、てれさてん、鉄分補給!)

(ちょっとなに言ってるかわからない)

(うおおおおおおおおおおおお!……あっ)

(なに言おうとしたの?)

(トイレ行くの忘れた)

(早く言えよそういうの!もう就寝時間前だし先生に怒られんだろうが!)

(黙れや!こちとら真剣勝負なんじゃい!)

 

いちいちうるさいなエリちゃん……ほんとこいつ……

わたしの脳内で毎回会議が開かれているのはイマジナリーエリちゃん、そう!分身みたいなやつだね!

恐るおそる真ん中にあるジョーカーがアカネに引かれて、そのあとわたしは右にあるカードをひいて……

 

「……よっしゃあ!あがりっ!」

「あたしがビリかぁ……」

 

アカネがジョーカーを最後まで所持していたので今回のゲームはこれでおしまいになった。

そういえば負けた人がジュース奢るって話だったよね!?

 

「ええぃっ!好きなの飲めぇ!」

 

こうしてアカネの善意をありがたく貰って修学旅行一日目が終わりを告げた。

 

***

 

およそ一週間前。

GBN運営サーバー管理室。

そこでデュランダルは各ダイバーのプレイヤーログをチェックしていた。

日々ある作業の中で不審なダイバーの挙動がないかAIダイバーNEMESIS(ネメシス)シリーズとともに随時監視を行っていた。

 

◇◇◇

 

『ザク・ブロッサム!エリカ!フォース〈ASTERLISK(アスタリスク)〉!いくよ!』

『ガンダムシュヴァルゼッテ・ハンティア!アカネ!やっちゃうぞ〜!』

『ガンダムポータント!ハルナ!いきます!』

 

◇◇◇

 

ゲリラレイドボスミッションに参加していたダイバーたちの行動をチェックしていたデュランダル。

 

「……なんだこのダイバーは?」

 

キツネ耳のダイバーを発見した彼女。

もちろんこのGBNでは容姿の選択は自由であり、獣人のルックをしているプレイヤーも数多くいた。

だが……デュランダルは見覚えのある容姿にどことなく懐かしさを覚えていた。

 

「……なぜアミと同じ容姿をしている?見間違えるはずがない」

 

それは彼女がかつての模型部で共に活動していたスメラギ・アミとまるで酷似していたからだ。

 

「どうかなさいましたかデュランダル?」

「気にすることじゃない、仕事に戻れメイリン」

「は、はい」

 

(どうなっている……?)

 

***

 

修学旅行二日目。

わたしたち三人は自由観光のためにタクシーを生徒分呼んでいたのでそれに乗り込み市内を散策することに。

 

「お客さんどちらへ行かれますか?」

 

男性のタクシーの運転手さんがわたしたちに声かける。

 

「えっとじゃあ伏見(ふしみ)稲荷に」

「はいよ〜」

 

◇◇◇

 

伏見稲荷神社。

この神社の御祭神お稲荷様は衣食住の大祖で五穀豊穣、殖産興業、商売繁盛の守護神として遍く萬民の崇敬を集める御神威を高く拝せられる由縁であるってパンフレットに書いてあった。

 

訪れたこの稲荷神社でわたしたちはお参りを済ませておみくじを引くことにした。

 

「……あぁわたし吉だ〜」

「これなんて読むのエリカ?」

「凶、だね」

「一番悪いってこと?」

「いまは、だよ?これから先はわかんないよ」

「ええぇ〜……」

「そう気を悪くするでない!これからぞ!娘!」

「私アカネの娘じゃないんだけど?」

「そんなこと言ってないで修学旅行楽しもうよハルナ!」

「なんか一気にテンション下がった……」

「よし!もうそろそろでお昼だし食べに行こう!」

「お昼だお昼〜!」

 

◇◇◇

 

そば処〈蓮華(れんげ)〉。

京都にあるこの本格蕎麦屋さんは創業から一〇〇年過ぎた老舗であり、観光客はもとより地元の人たちも愛する八割そばが有名な場所とタクシー運転手さんに教えてもらったところである。

 

そこでわたしたち三人はおすすめの八割そばとそば湯を合わせて頼むことに。

注文後十五分ほとで運ばれた打ちたての蕎麦の香りを感じながら空かしたお腹を満たすために食事をする。

 

「「「いただきます〜」」」

 

ズズズズと喉越しがよくつゆとの相性も抜群な蕎麦を堪能するわたしたち。

 

「この白いのってなに?」

「そば湯だよハルナ、そばを茹でたあとのお湯!おいしいよ〜」

「なんか味があんましない……」

「それがいいんじゃん〜!」

「これのどこが良いの……?」

「それはわたしにもわかんない、雰囲気でそれっぽく言ってるだけ……」

「なんでよ!?」

 

味なんてわかんないよ!?だってわたしまだ高校生なんだよ!?大人になったらわかるんじゃない?

 

「そう言われてもねぇ〜アカネ?」

「ん?あぁ〜そだよね〜?ごめんなさい蕎麦のおかわりっていただけますか!?」

 

まだ食べるの!?アカネが注文したの二人前だよね!?

 

「はぁ〜い!ただいま!」

 

そそくさと店員さんがやってきておかわりの蕎麦を持ってきていた。

 

「まだ食べるの……アカネ?」

「生徒会長やってんだから食べないと仕事出来ないでしょうが!」

「そりゃそうだけど……吐かないでよね?」

「たぶん、大丈夫」

「アカネそれはフラグっていうんだよ」

「ないないない!あり得ないから!」

 

昼食を食べ終えたわたしたちは続けて観光をしていく。

 

***

 

京都・嵐山。

森林が有名なここは嵯峨野にあるトロッコ列車に乗って、川沿いの溪谷を眺めたり春の時期には桜、夏の時期には新緑が秋の紅葉の時期ではあたり一面に綺麗な並木道が観光客を出迎える風光明媚な場所であるって書いてました。

 

そこでわたしたち三人はチケットを取りトロッコ列車に乗車して窓が無いため開放感のある空間を堪能していく。

 

「わぁ〜!めっちゃいい景色じゃん!」

「空気が気持ちいいね〜アカネ!」

「……えっと、これ危なくないの?」

「心配しなくても大丈夫だよハルナ?」

「あ、あれ……なんかお腹が……」

 

アカネ……?いま降りれないんだよ?まさか……

 

「ごめんむり……吐きそう……」

 

アカネぇぇぇえええ!?だから言ったじゃん!

ガタガタガタと細かい振動が身体に伝わり臨場感を感じられるこの状況の中で他のお客さんもいるんだよ!?少しは我慢して!?

 

「次の駅まであと一〇分もあるんだよ!?耐えて!」

「……う、うん」

「私ポリ袋とか持ってきてないよ!?」

「だ、大丈夫……だから!」

 

顔青ざめてるよ!?持つのかな……これ……

 

◇◇◇

 

ようやく駅に着いたわたしたちはアカネと一緒にトイレに雪崩れ込んで介抱していた。

 

「うぉええええええ……」

「落ち着いたら帰るよ?」

「心配かけてごめん」

「いいけど、無理して食べるからだよ?」

「次から気をつけるよ……」

 

あぁもう!だから言ったのに!

そんなこんなことがありながら修学旅行は無事終了し、東京へと帰って行った。

 

***

 

それから一週間後、夏の強い日差しが日々の体力を奪いつつある七月下旬。

いつものように模型部の部室でわたしは……

 

「ってあれ!?ここにあった体験会用キットの箱がひとつもない!?どうなってんの!?」

 

なんで!?前まで模型部の準備室に三箱置いてあったはずなのになんで!?

 

「ハルナ……ここにあったプラモデルは何処にいったの?」

「それは私が持ち出したけど?なにかあったの?」

 

はい……?いつそんな話したっけ?無許可で相談もなしにやるのは筋違いだよねハルナ!?

 

「どうしたんだいエリカくん?辛気臭い顔をして」

「カグヤ先輩!なんかハルナが勝手にガンプラ持ち出したって聞いて!それで!」

「……なんで私が悪く言われないといけないの?あのときエリカ許可してくれたよね?忘れたの?」

 

◇◇◇

 

「あ〜でさ〜エリカ」

「……な、なに〜?いまずっと忙しいんだけど〜あぁもう!数値弄ってたらおかしくなった!?なんなんだよもう!」

「余ってるガンプラもらっていいかなぁって相談を……」

「えぇ〜?あぁ……いいんじゃない〜?またなんか変なとこに縮小させちゃったんだけどぉ!?なにこれどうやって修正してけばいいの!?」

「……ほんとにいいの?」

「えぇ〜とこれをこうして……違う違うこれじゃサイズ大きすぎ!まともにパーツ作れないじゃんわたし!死にたいんだけどすでに!誰だよこんなのやろうって言ったやつ!」

 

◇◇◇

 

だぁぁぁぁぁああああ!あのときだぁぁぁぁ……!相談するなら忙しいときじゃなくてちゃんと話せるときにしてよ!?

 

「だったら落ち着いて話聞けるときに相談してよ!?」

「……口出しできるような状態だった?それに私悪く言われる必要これっぽっちもないよね?」

 

それはそうだけど……程度ってもんがあるでしょ……部長やってんのわたしなんだよ!?顧問の先生に報告しないといけないんだからね……?

 

「いやでも……それとこれとは話が違う……」

「もう遅いよエリカ、教会〈パラオ〉に持ってちゃったしレクリエーションで子供達が組んでるはずだし」

 

〈パラオ〉ってどこ?そんな話してなかったよね?

 

「わかった、じゃあハルナのその教会〈パラオ〉に連れてってくれない?じゃないと活動報告書が書けないでしょ?」

「とりあえずそれでいいけど、人のこと変な目で見るの謝って?」

「誠に申し訳ございませんでした……」

「じゃあ許す……もうこんなことが起きないようにしてよね?」

「そうするよ」

 

なんとか一件は大きな騒ぎにならずに収めたけど……この先のことが心配にわたしはなっていた。

 

***

 




■登場キャラクター

旭川エリカ:本作の主人公。かつて義姉であるアカネを巻き込んだダイバーを復讐するためにGBNでアイドル活動をはじめる。以降は文化祭に向けてフィギュア製作に勤しんでいる。過去の出来事のトラウマから脳内に自身の分身である「イマジナリーフレンドエリちゃん」を生み出している。

蛭谷暁音:エリカの義姉。一〇年前におきた戦争において右眼を負傷。そしてエリカと児童養護施設〈KARABA〉で出逢い以後彼女の家庭の養子となる。今では都立星羅高等学校の生徒会長として頑張っている。

七夕陽那(ハルナ・ゼナム・ローレライ):都立星羅高等学校に冬に転校してきた地球の人間ではなく惑星〈ローレル〉の住人だとエリカたちにカミングアウトする。エリカたち模型部の活動に携わったりしている。橘輝夜とは交際を続けており、結婚を視野に入れている。

橘輝夜:元生徒会長。たびたび暇なのか模型部に入り浸る。七夕陽那とは交際中でありプロポーズもした。金型製作工房T3の跡取り息子。


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