陰キャだけどアイドルはじめてGBN〈惑星〉を救う話。 作:神宮寺Re ⑦
エリカが支援メカを作ろうとする話です!
夏真っ盛りの未だ八月の夏休み期間中。
わたしはバイト先で購入していたガンプラを組み上げて、
「それってルブリスソーン?たしか地球側の勢力の機体だっけ?」
「そうそう〜、まぁこれからが大変なんだけどねぇ……」
わたしが手に持っているのは水星の魔女に登場したガンダムルブリスソーンという機体だ。
アーシアン所属のものとしてルブリスウルとコンビで運用され、スレッタのエアリアルやドミニコス隊のベギルベンデと交戦したりしてるやつではあるんだけど。
ともあれ、これからなにをどうするかってちっとも決まってないし……
「エリカのジャスティスを強化するためのやつ?」
アカネが物々しそうにわたしが作業机に向かっているときに右横から興味津々に覗き込んでくる。
「まともに武装も出来てないしそれもやんなきゃなんだけど、GBNで出力不足があってね……完全体にさせたくてっさ〜」
「ついでで悪いんだけどエリカ……?」
「どしたのアカネ?生徒会でなにかあったの?」
「あぁ〜いやね?そうじゃなくってね?前に買ったナイチンゲールあたし組んでいいかな?」
……いつだっけそれ買ったの?わたし今作業中で余裕ないし組む時間ないからいいか姉妹だし。
ってか!?この状況で大型キットなんて組めるもんじゃないよ!?無計画すぎないわたし!?
や〜でも……買っておかないといつ作れるかわかんなかったし……
(おい!急に天井に目を背けるなよ!)
(とりあえず流しそうめんでも食べません?)
(はぁ?流しそうめんだぁ?ジャージャー麺の季節だろうが!)
(暑いときこそラーメンに一票!清き一票を!我が中華製麺党は!決して裏切らないことをお約束します!)
(……で、いま何時何分地球が何回まわった日?)
(小学生のガキは帰れよ!)
いや!うっさいからいますぐ黙れよエリちゃんズ!
わたしなんだけど、わたしじゃないんですよ……ちょっとなに言ってるかわかんないですよね?わかってますよそれはわたしが……って誰に向かって喋ってるんだコイツ。
「……エリカ?あたしの話、聞いてる?」
「なんだっけ?パスタの話だっけ?」
「どこから出てきた!?積まれてるナイチンゲール組んでいいって話だよ!前もあったけどリフレインさせんな!」
「ご、ごめんちゃ〜い……ゆるちてくだちぃ……」
「唐突な幼児化するのやめてもらっていい?処すよ?ここで」
「おい!やめろ!ナイフをわたしに向けるな!目の前のランナーに向けろ!てか離れろ!」
「ならばよし」
「どこも良くないけど!?殺意高めだったけど!?」
「……っ」
「なにその無言の時間!?」
「さっ!ガンプラ組むぞ〜!久しぶりだな〜!いい気分転換になる〜!」
アカネさん……?あの……わたしのことは無視です?はははは、冗談はよしてくださいよ?ってかスマホからなんか通知きてたみたいだけどなに?
「どうかしたのエリカ?」
それを聞きたいのはこっちだよ!なんだよさっきのなぞの間はよぉ!ひやひやさせないでくれる!?
「な、なんでもないよ〜」
内心、心臓がバクバクなんですけれどね!?ってかガンプラのアイデアまともに進んでないんですけど!?
こうしちゃいられないと思ったわたしはスケッチブックを取り出して、カタチを模索することに。
……なんていってもなにも浮かんでこないから、ネットサーフィンしてるんですけどね。
◇◇◇
アカネが大型モデルを組み上げ、わたしは頭を揉みくちゃにしながら数時間が経過していた。
「……おぉ!これがナイチンゲール!さすがシャア専用機だね!ねっ!?エリカ!」
「まるで親子みたいな大きさの違いだね……これで同スケールって言うんだから」
「小説版の機体とはいえ、これを操るシャアは化け物だよね〜そう思わないエリカ?」
「……そらニュータイプですから、余裕なんじゃない?」
「エリカはシャア派なんだっけ?」
「なぜ今それを!?好きだけどさぁ」
シャア・アズナブル。
機動戦士ガンダムから逆襲のシャアまたそれ以降でも度々話題に挙げられる、シリーズにおいてかなりの重要なポジションをしているジオン軍のエースパイロットの有名人……というかアムロの敵キャラ筆頭なわけだけど……
ともいうわたしもシャアからはどこか親近感が湧くようなキャラだし、どこへ向かえばいいのか自身でも迷う中で人類に絶望して隕石落としまですることの業を背負ってまで行動したのは彼なりのけじめだったんじゃないかって思うことだって……
「あたしはアムロ派だけど、Zであんなに良くも悪くも仲良くしてたのにさ〜おかしくない?」
「でもアムロだって連邦軍に言いように飼われてたじゃん?どっちにも言いようはあるんじゃないかな〜?」
「……けどさぁ、やり方ってもんがあるんじゃないかなぁ」
たぶんこの話だってずっと平行線になる。
人それぞれ解釈の違いがあるとはいえ、変えようのないことだってあるはずなんだから。
それこそ……天から定められた宿命のように──。
結局この日はなにも進捗がないまま、日が暮れるまで談義しあった。
***
「ごめん……!待ったか?」
「え〜!?どうしたのその汗……?大丈夫……?」
「ちょっとスポーツジムに行ってて遅くなった……」
「鍛えてたの?なんで?」
「体力はあった方がいいだろ?ましてこれから尚のこと必要だからな」
今日はここにきてから五回目となるカグヤとのデート。
走ってきたのか滝のような汗をかきながらワイシャツとジーンズのシンプルな服装で私を出迎えた。
これから私たち二人は新居に移り住むために、その内見として都内某所にあるアパート〈エウロパ〉へとやってきていた。
階段を上がること数十秒で目的の部屋へと歩いている途中で、私たちは二人は人が向かい側から来るのが視界に入る。
「……おや?どうしたんだい?なぜ君たちがここにいる?」
「セナ先生!?なんでここに!?」
「なんでもなにもここに住んでいるのだが?」
「そんな偶然なんてあるわけが……」
「では君らが見ているのは
……そんなタンクトップとハーフパンツ一枚でビール片手に堂々と仁王立ちされましても困るんですけど私。
「じゃあ知らない人ですね……これからどちらへ行かれるんですか?」
と、カグヤがセナ先生に向かって言葉を投げかける。
「人のプライベートをいちいち詮索するのはよくないな?まして勝手に憶測で語ったりするような輩だったらそれこそ教育が必要だろう?そうは思わないか?」
「言いたいことはわかりますけど、先生酔ってます?……ってかあの、ここで吐かないでくださいよ?」
「ウザ絡みしてすまない……ちょっと体育祭に向けての会議で揉めてるんだよ……招待者の手筈くらい済ませておけって話を……なんで休日返上してまで仕事のことで頭使わないといけないんだ……あの校長呪ってやるぅ!」
「あぁその話おれには関係ないんで他でやってください」
「……なぁ?聞いてくれよぉ元生徒会長さん?」
「あのだから、早めに内見を終わらせたいんでこのままやるようだったら警察呼びますよ先生?」
「……わかった、おうちかえる!かえるもん!独り身の長年片想いの未亡人は邪魔なんだよね!わかってますって!はは……なんで返事してくれなかったんだよ……どんだけ待たせるんだよぉ……マリア……うぐっ……いつだって待ってるのに……」
セナ先生……?あのいろいろと大丈夫ですか?ってか学校とのギャップがありすぎて胃もたれするくらいなんたけど?もしあれだったら私が話を聞きますよ……?
「ついでにうちに来てくれてもいいんだぞ?」
「時間ができたらお伺いさせていただきますねセナ先生」
「ありがたいなぁ……!そうだ!模型部のみんなも連れてきても──」
「やっぱりダメだこの人……手遅れだろ……もう……」
「なんだって?」
カグヤ!?言い方!?怒らせるところじゃないよ!?
「じゃあまた〜」
切り替えはや!?……待ち合わせに遅れるところだったから仕方ないとはいえ、もう少し手心ってものくらいあっても……
◇◇◇
「こちらがお部屋になります〜!」
あれからセナ先生と別れてカグヤと部屋を見ることとなった私はスーツ姿の担当者と一緒に見学をすることとなった。
「おぉ〜!思ってたより広いね〜!3LDKだっけ?ってかLDKってなに?」
「リビング、ダイニング、キッチンの略な?で、どうするハルナ?ここでおれと一緒に住むか?」
「……故郷の家より狭いけど、カグヤと住めるならいいよ」
「なら決まりだな〜!すみませんここにします!」
「ご契約ありがとうございます〜!これからのお話として保証人などの確認がありますがよろしいでしょうか?」
「それで進めてください」
私とカグヤはこれから二人でここで暮らすことになる。
……けど、もうそんなに私がここに居られる時間がないのが迫っていることをここで言えることが出来ないままだった。
「カグヤ……私、私ね?あのね……?」
「どうしたんだよハルナ?お腹でも空いたか?これからどっか食べに行くか?もうお昼だしな〜」
「そ、そうだよね!私お寿司が食べてみたいかなぁ〜?」
「じゃあそうするかぁ」
「お二人とも仲が良いんですね〜!」
「……そ、それほどでもないですけど」
さすがにこの場で言えるようなところじゃないよ……
ほんとはもうここに居る場合なんかじゃないっていうのに……
「てかカグヤ?お母様との話はどうなったの?」
「そんなのおれたちには関係ないだろ、二人の未来の話をしてるんだぞ?」
「けど……それってあまりよくないんじゃ……」
「ここで話してもアレだしご飯を食べながら考えようぜハルナ」
「う、うん……」
彼と二人で住むアパートの内見を済ませた私たちは近くにある回転寿司店へと徒歩で向かうこととなった。
***
あたしには許せないことがある。
GBNでエリカが復讐することとなった相手のダイバー、アイリ。
そして彼女を駒として動かしていたとされるリリナという人物を見つけるためにあたしは手かがりを探していた。
現状としてGBNのログデータには痕跡が見つからない。
だが、彼女に関わっていたとされる人物をひとり見つけることが出来た。
あたしはその相手と会う為に現実で待ち合わせをすることとなっている。
「……ったく、この夏にこんな場所を指定してくるなんてなに考えてんだか」
あたしが今いる場所は都内の池袋にある有名な水族館だ。
なんて言ってもデートに来たわけでもないし、まして楽しみにしてきたわけじゃない。
「きみがアカネ?」
「……どちら様?」
「どちら様もなにもここで待ち合わせしてるサヤカだけど?人違い?」
……あたしより歳上なのか胸を大きく出した大人びた服装で彼女はそう言った。
「……あたしがアカネだけど、ここで話すのもなんだし水族館入る?」
「別にいいけど、チケット代はあとで払うからね?」
「当たり前じゃん」
こっちは早く聞きたいことがあるんだから、こんなところで油売ってる場合じゃないんだっつうの。
◇◇◇
施設の中を歩くこと数分、彼女からリリナという人物のことを聞きだすために話題を振ることにした。
「……ところでリリナとはどんな関係なの?」
「あぁ……まぁあいつとは腐れ縁ってやつでね、児童養護施設育ちなんだよ……なんなら一緒に暮らしてるし」
「だったら今すぐにここに連れてきてよ」
「そう焦らないでいいでしょ?ましてリリナのやったことは褒められたもんじゃないけどあいつには恋人みたいな関係だった女の子が居たんだ……」
「それとこれとなんの関係があんの?」
「その恋人関係の人が先の戦争……なんだっけ?なんかこうあったでしょ?」
「〈
「そうそれ、んで晴れて恋人になったときにね?目の前で運悪く踏み潰されたって話を聞いたんだ」
「……冗談でしょ?」
「あんたにもわかるでしょ?大切な人がいつか突然居なくなるかもしれないという恐怖を」
「そんなの……わかりたくも……」
「でも、それでも、生きていかなきゃいけない」
あたしだってその戦争で家族を失ってる。
なにもできぬまま、跡形もなく消失させられていまここで生きてるのに。
だからなに?同じ不幸を背負うもの同士仲良くしよって?
ふざけるのも大概にしろよ、お前がやったこととそれとは関係ないだろうがよ!勝手に人を巻き込むんじゃねえよ!
「もしあなたがケリをつけたいって言うんだったら、場所は用意するよ」
「……なにがしたいわけ?」
「なにもしないよ、やるならちゃんと決着つけろって言ってんのよ、それこそバトルでね?」
「GP・デュエル?」
「話がわかるのは助かるよ、また追って知らせるからあとは任せたよ……」
そういって手を振って彼女はあたしの前から去っていった。
どこか寂しげで、どこか気が晴れたようなそんな顔をしながら。
「リリナ……!絶対におまえなんか許してやらないからっ!」
***
■登場キャラクター
旭川エリカ:新たなるガンプラである「ガンダムジャスティス・アスティカシア」のGBN内による出力不足のために支援メカを製作する。
蛭谷暁音:都立星羅高等学校現生徒会長。エリカが購入していたナイチンゲールを組み上げる。
橘輝夜:元生徒会長。ハルナとの同棲を進めるためにアパート〈エウロパ〉を内見して、交際を進めている。なお、母親である橘椎菜からは同級生である二人とお見合いすることになっている。
七夕陽那〈ハルナ・ゼナム・ローレライ〉:惑星〈ローレル〉の皇女のひとり。彼である橘輝夜との交際しているがこの先のことで不安がある。
美濃 瀬那:模型部の顧問。橘輝夜と七夕陽那が訪れたアパートに住んでいる。酔うと語りたがるのであまり他人に見せたくない。
鷹野 紗弥加:木兎 理梨菜と同居している女性。エリカたちと同じ児童養護施設育ちである。