陰キャだけどアイドルはじめてGBN〈惑星〉を救う話。 作:神宮寺Re ⑦
ギラギラと身体に焼き付ける太陽の日差しで平均気温が体温とさほど変わらなくなってきた九月初旬。
都立
その中であたしは体育祭実行委員の仕事を任されていた。
主な仕事は会場の統括指揮と進行を請け負っている重要な仕事。
「これこれからのタイムスケジュールだから確認しといてミユさん?」
手元にあった数枚の資料を手渡しするあたし。
「はい!わかりましたアカネさん!……ってまだはじまる三〇分前ですけど?」
「なにも把握しないで仕事するつもりなの?」
「ご、ごめんなさい……!」
これから行われる午前の競技の順番は──。
球投げ→騎馬戦→綱引き→クラス対抗リレーとなっている。
あたしが座るテーブルの左隣にいる同学年の女子生徒であった
……ピリピリしちゃってるけどこれ遊びじゃないからね?
「なぁ?生徒会長!?まだ生徒集まってないぞ?どうすんだよ」
右には同じく実行委員である美優さんのクラスメイトの
どうするもなにも実行委員でしょ?あたしに指示待ちしないでもらっていい?
「だったら放送部に行ってアナウンスすればいいでしょ、ちゃんと仕事しなよ君も」
「座ってるだけで楽でいいよなぁ生徒会長は」
生徒会長の仕事が楽だって?それは一体どういう了見なの?
「──なんだって?もう一回言ってみて?」
「なんでもありませぇ〜ん、んじゃ行ってきます〜」
はぁ……もう、全体を把握してから仕事割り振りしてるんだからストレスなんてもうすでに限界なんだけどこれ以上イライラさせないでくれるかな?
◇◇◇
都立星羅高等学校第一〇一回体育祭の開始時間である午前九時を示していた。
そして、スタートを迎えるにあたって九条穂乃果による選手宣誓が行われていた。
「選手宣誓!私たち!生徒一同は!互いに切磋琢磨し!全力で競技を楽しむことを誓います!」
校庭にある壇上に登って右手を大きく掲げて鼓舞する生徒たち。
◇◇◇
「戦いはこれからよ、いくよ!おー!」
「「「「「おー!」」」」」
設置されたテントの裏でアカネを中心とした実行委員は手を重ねて意気投合させていく。
「ミユさんはこれから場内アナウンスね?」
「は、はい!」
「それでそこの……?カ……カール?……だっけ?美味しいよねあのお菓子」
「駄菓子じゃないんすけど……つか売ってないだろそれ関東で……人の名前くらい覚えてくれませんかね生徒会長さん?カケルですよ」
「そうだったね、あんたは競技の部材の搬入の指示任せたから」
「そんなの書いてませんでしたけど?オレの仕事は来賓の案内と人数チェックだけでしたよね?」
「すぐ終わる仕事でしょ?それ以外に何もしないつもりなの?生徒会に泥を塗るつもり?」
「……人遣い荒すぎんだろコイツ」
「ちょっと!生徒会長怒らせたらダメだよカケルくん!」
「んなことはわかってるよミユ」
「だったら早く現場行ってきて」
……ったく、指示には従ってもらわないとこれから午前中のスケジュール押しちゃうくらいわかるでしょ。
仕事中にイチャイチャされるのはまったくもって論外なのはさておいて。
◇◇◇
まず最初の球投げを開始するにあたってカケルが他の生徒と部材を搬入していく。
「最初に行われますのは球投げです!」
アナウンスをしているミユがそう声を高くて荒げてエンジンをかける。
開始されるクラス対抗による球投げ。
クラス別に分かれて、男女が入り乱れながらバスケットに紅白の球を一心不乱に生徒達が投擲する。
「はいれー!」
威勢よくカゴに球を投げ込む。
そして三分が経過し時間切れとなったことで集計作業を行なっていく委員たち。
「紅組!一二七個です!」
「続いて白組は──!一三六個!よって白組の勝利です!」
パイプ椅子に腰掛けていた双方の応援団たちが歓声を上げた。
「「「「よっしゃあああああ!」」」
球投げ合戦は紅組の勝利で終了していった。
◇◇◇
変わらず委員の仕事をしているミユに空いた時間を使って話しかけてきたのは……
「なぁ?暇な時間どっか行こうぜミユ?」
「え〜……親と会って話しなくちゃいけないんだしムリだよぉ……」
「キスくらいさせてくれよ〜」
「いっつもそれじゃん!」
「彼氏なんだから当たり前だろうが!デートしてもまともにしてくれないから欲求不満なんだよこっちは!」
「んもぅ……お昼休みになったらね?」
「待ちきれるかってんだよ」
「……っ!?」
カケルはミユの唇に了承も得ずに口付けをしてきていた。
それに怒ったミユは……思わず平手打ちをかます。
「ちょっ!ちょっと!すこしは場所考えてよ!バカじゃないの!最低っ!」
「いってぇ……そこまですることねぇじゃねえかよ!」
◇◇◇
……あいつらまた仕事中にイチャイチャ、公私混同するのやめてもらえないかな?
腹側が煮え繰り返るくらい神経がピリピリしているあたしは、思わず舌打ちをしてしまうくらい嫌気がさしていた。
「アカネ生徒会長!次のプログラムなんですけど……」
騎馬戦の準備が進む体育祭。
その中で委員のひとりである
「どうしたの?なにかアクシデントでも起きたの?」
「さきほどの球投げの撤収時に脚を怪我した生徒が数名居まして、現場に対応する委員の数が足りてない状況で……」
「大怪我ではないのね?」
「およそ三名が負傷してます、その中でプログラムの代表メンバーが含まれておりまして白組の騎手が欠席に……」
「すぐにでも代打の人間をあてがえばいいじゃない?」
「それが……人がいなくて……なので……」
「なので?」
「生徒会長が出てくれると助かるのですが──」
「あたしが出てどうすんの!?」
「試合時間は一五分程度なので!そこまでなら大丈夫かと!」
「どこが大丈夫なの!?頭湧いてんのあんた!?」
「重々わかった上でですよ!でもプログラムを変更する訳にも……」
「あぁはいはい!わかりました!あたしが出るから!任せたからね!」
「ありがとうございます生徒会長!」
……なんでこうなんのよ!あたしが出る必要性なくない?
◇◇◇
惑星〈ローレル〉首都ラビアン郊外地域。
一帯を砂漠に囲まれたこの場所でGBNから転移されてきてしまったフォース〈
「下に民家があるんですよカナデ隊長!戦闘するわけにはいきませんよこれ!」
「どうすんのこれ!」
「そんなことはわかっている!タイモ!ヒグロ!」
その最中で上空から兵器が彼らの目の前に降り立つ。
桃色に輝く一筋の丸い閃光が三つ、敵対するように銃口を向けていた。
『貴様らはどこの部隊のものだ!?こちらからの停戦命令に従わない場合には──攻撃を開始する』
〈ローレル〉所属王宮警備部隊のアッシマー三機がカナデ達と不運にも遭遇してしまう。
「違う!我々は敵じゃない!襲撃するために来ているわけではない!話を聞いてくれ!頼むから!」
◇◇◇
なおも続く体育祭であたしは騎馬戦の騎手に急遽参加することとなっていた。
いくら欠員が出たとはいえ、こんなことしてる場合じゃないのに……
考えても仕方ないや、とりあえずやるしかない!
『紅白対抗騎馬戦!こちらは三チームに別れて行われるものとなります!さきに大将の鉢巻きを先取した陣営の勝利です!みなさま!ご声援のほど!よろしくお願いします!』
(変わらずしっかり仕事してくれるわねミユ……彼氏のことは好きくないけど……)
はじまる大将の首を掛けた騎馬戦。
四人の肩車に乗ってあたしは紅組からひとりの見覚えのある顔がいることに気づく。
「……って!?なんで相手の中にアカネがいんの!?聞いてないんだけど!?生徒会長の仕事の最中じゃないの!?」
……はははは、やっぱりこうなるんだねぇ!エリカ!
「進めぇぇえええ!」
「いやあのちょっとアカネぇ!?ストップ!ストップ!」
「戦いに!止められることなんてないのよあたしの妹よ!」
「……そっちがその気なら!勝つからね!わたしが!」
「言ってくれるじゃないのさ!」
あたしは広げた両手を使ってエリカの鉢巻きを取り上げようと取っ組み合う。
交互に差し出した手を力づくで弾きかえすエリカ。
怯まずにあたしは両手を握って押さえ込んだ。
ぶつかり合う頭と頭で強い衝撃が押し寄せる。
……痛いじゃないの!エリカ!そこまでして勝ちたいの!
「……このぉぉぉおおお!」
◇◇◇
場所は戻って惑星〈ローレル〉。
無理やり戦わされることを強いられているフォース〈SLEEVE ENGEGE〉のカナデ、タイモおよびヒグロの三人。
『我々の指示に従わない場合──排除行動を開始する』
「ちょっと待ってくれ!こちらに戦いの意思はない!……お願いだ!やめてくれ!」
だが真下には獣人種の数多くの民間人が住んでいる。
それが意味することは……ひとつしかなく──。
◇◇◇
「いますぐここから出ていけ!恥知らずが!」
「逃げますよ!はやく!」
「まって!まってよ!父さん!母さん!」
巨人達が闊歩している中でヘクスは両親に急かされて避難しようとしていた。
逃げ場のない状況で戦端がついに開かれてしまう日が沈みだした夕方。
行き交う粒子によってそれまで平和にあった日常の風景でさえも……一瞬にして民家が蒸発していくのを目の当たりにするヘクス。
「……あぁ、ぁぁ……みんなが!みんながっ!……っ!」
大きく踏み出した巨人の脚。
必死に走って生きながらへようとするヘクス。
母親のクヤヤと父親のウクモが足を挫いたのかその場に倒れこんでいた。
「……はやく!いきなさい!ヘクス!」
「逃げるんだ!ここから!」
「父さん母さん!でも……!」
「いきなさいっ!」
必死に訴えるヘクス。
瓦礫に足が埋もれてしまった二人を助けようと動こうとするも震えて進めなくなっていた。
◇◇◇
「……なんで姉妹で勝負することになるんだか」
先ほどの騎馬戦であたしは無事に勝利を収めていた。
とは言うものの……あまりいい気持ちはしない……
「どうかしましたか生徒会長?」
「気にすることじゃないわ、次のプログラムの進行状況は?」
「午前の競技の最後は対抗リレーですね」
「ごめんあたしちょっと疲れたから休むね……」
「出てもらって助かりました生徒会長!」
「そ、それはどうも……」
「ゆっくり休んでくださいここは俺がやっておきますんで!」
「そういえば聞いてなかったけど名前は?」
「
「あんたあいつの幼馴染なの!?」
「えぇ……まぁ……彼氏のことはよく聞かされてますけど」
「チャラすぎるでしょアイツ、嫌いじゃないの?」
「出来ることなら寝取りたいですけどね……」
「真面目な顔に似合わず強気だね君?」
「ずっといた幼馴染がぽっと出の男に取られて嬉しい訳ないじゃないすか?奪い取ってやりますよ!」
……どことなくあたしと似たような性格なのかどうなのかついいろいろと考えてしまった。
◇◇◇
午前の競技の最後となったお昼前。
クラス対抗リレーにはハルナが参加していた。
……あんまり走りたくないんだけど私。
バレたらここに居られなくなるんだから尚更やりたくないのに……どうしてこんなことに……
『それでは!位置について!』
一列に並ぶ選手たちを横目に見ながら私はバトンを持って今かいまかと心臓をバクバクさせながら待っていた。
『……よーい!──
大地を踏みつけるように走りだす私。
すると上空から見覚えるのあるシルエットがこちらを捉えていた。
(なんでサキブレがここにいんの!?乗ってるのは誰!?)
(そんなこといまはどうでもいいか!バトンをはやく渡さないと!)
◇◇◇
変わらない状況の中にいるヘクス。
両親を置いていくわけにもいかず立ち尽くすしなかった。
「はやく!はやくしないと!死んじゃうよ!父さん!母さん!」
「行きなさいヘクス!」
「……生き抜くんだヘクス!」
二人の懸命な訴えかけに応じないヘクス。
巨人の脚が目の前で瓦礫の上から押し潰したのだ。
……目の前にいたはずの両親の影の形もなにもかもが荒らされてしまう光景を見てしまったことで、行き場のない感情が一気に押し寄せる。
「……父さんと!母さんを!やったのは!お前たちか!おまえたちがこんなところに来たせいで!」
(お前たちが来なければ!こんなことにならなかったのに!)
(殺してやる……!殺してやる……!)
(この世界なんて!滅んでしまえばいいのにっ!)
ヘクスの心の灯が黒くすべてを覆い尽くすように侵食されていた。
◇◇◇
次の走者にリレーのバトンを渡す私。
そこに居たのは同じクラスメイトのエリカだ。
「あとは頼んだよエリカ!」
「わかったよハルナ!ちょっとばかし一位取ってくるね!」
「って!?なんなのあれ!?サキブレ……?なんで?」
思わず前方を走っていたエリカが脚を止める。
すると強い風が校庭を吹き荒らす。
この世界では見たことのない巨大な機動兵器が現れる。
『探しましたよ!姫様!お迎えにあがりました!帰りますよ!〈ローレル〉に!』
風が私の被っていたベールを発せられた強風によって吹き飛ばされていく。
……あぁもうダメだこれ、もうどうしようにも無くなっちゃったよカグヤ。
「なんだあいつ!?狐の耳してるぞ!」
「まさか人じゃないのか!?」
「化け物がいるぞ!」
「ここから消えろよ!人間もどきが!」
「帰れ!帰れ!」
……やっぱりこうなっちゃうんだ、せっかくここまで来たのに……最初から私の居場所なんてどこにも無かったんだ……なんだったんだろう今まで……私。
「おい……!どうしてなにも言わずに居なくなるんだよっ!ハルナ!おれを置いていかないでくれよ!」
***
□新規キャラクター
葛城美優(カツラギ・ミユ):現体育祭実行委員のひとり。後述の庄川翔と付き合っている。
庄川翔(ショウカワ・カケル):葛城美優と付き合っている男子生徒。不意にキスするなど他者を顧みない行動が目立つ。チャラい。
久留間昇(クルマ・ノボル):葛城美優の幼馴染。もともと美優のことが好きであったが翔に取られているため、自分のものにしたい。
◇◇◇
惑星〈ローレル〉
ヘクス:王宮警護隊のアッシマーとフォース〈SLEEVE ENGEGE〉の戦闘に巻き込まれて両親を失う。またそれによって憎悪を抱く。
クヤヤ:ヘクスの母親。
ウクモ:ヘクスの父親。
□新規設定機体
アッシマー・〈ローレル〉王宮警護隊機
型式番号:NRX-044R
武装:ビームライフル
ビルドダイバーズ二次設定
惑星〈ローレル〉内にあるハルナがいる王宮周辺の警備隊機であり、原典機とスペックは変わりない。またグレミー軍機と同様にグレーで塗装されている。