陰キャだけどアイドルはじめてGBN〈惑星〉を救う話。 作:神宮寺玲那
体育祭も過ぎ、暖かというより激熱の気温から少しだけ下がった空気が秋の訪れの予感を告げていた学校のない九月中旬の休日。
兎にも角にもわたしはこれからの進路をどうにかしないといけないために、家で勉学に励んでいた……いたけど……
「……なりたいものなんてないんだけど?将来ってなに?」
学生の身分でそれはないだろって言われそうだけど、ないものは仕方なくない?そんなすぐに未来の自分なんて描けるの?わたし無理だけど!?今の状態で精一杯だけど……!?
「おやおや?お困りごとですかぁエリカさん?」
「ア〜カ〜ネ〜!?」
「芸人さんみたいなフリやめてくれない?それもう時代遅れだよ?」
「ごめんそれはその人たちに失礼だからやめよ?」
「正気ならレポート早く終わらせなよ……」
「ううぅ……面目次第もございませぬぅ……」
……今更考え事したってどうしようにないのはわかってるけど、みんなどうやって解決してるの!?それくらい自分でやれ?返す言葉もないです……
すると、玄関のチャイムが三回ほど鳴り響き宅配便が来たのかとアカネが向かっていった。
◇◇◇
「お荷物を届けに上がりました〈クゥエル急便〉なのですが、こちら旭川さんで間違いないですか?」
「あぁはいはい!そうです!ありがとうございます!」
あたしがそう返事をすると、大きな200サイズくらいの箱四つを配達員さんが抱えて持ち出していた。
「ではこちらにサインの方をお願いします〜」
「あれ?印鑑とかじゃなくていいんですか?」
「サインだけで構いませんよ〜」
「はぁ〜い……っとと」
あたしはそのまま伝票にサインを記して荷物を受け取った。
「ご利用ありがとうございました〜!」
笑顔で去っていった配達員さんに手を振ってあたしは宛名に記されている名前をチェックする。
「……えぇーとだれから?って!?義理の両親からじゃん!?わざわざ仕送りなんてしなくても生活費は足りてるのに〜」
◇◇◇
アカネのことが気になったわたしは玄関へと足を伸ばす。
「エリカ〜?荷物が届いた〜っよっと!っててて……」
「たいじょうぶ〜?」
「気にしないで……ちょっと足を挫いちゃっただけだから」
「もしひどくなったら病院行ったほうが……よくない?」
「だ、だいじょうぶだし……!……っててて」
わたしの心配をよそにアカネは二つの箱をリビングへと運んでいた。
「なんの荷物……?」
「エリカの両親からだよ、なんでこんな重いんだろ……野菜かなにかかな?あと手紙……?」
『なにかあったらいつでも帰ってきていいからね?待ってるから。あと定期的に連絡しなさい。これは義務です。』
と書かれた手紙をわたしは小声で読み上げる。
そしてカッターを取り出したアカネはスッーと封を開けて、中身を二人でまじまじと確認する。
そこにあったのは五〇食はあろう大量のレトルトカレーと同量のごはんのパック、ビスケットが箱いっぱいに袋詰めされ、災害時用と思われる充電用の大型バッテリー、またガスボンベとコンロ、懐中電灯と電池がわたしたち二人のもとに届けられた。
「こんなにいっぱいわたしたちになにかあったらってこと?」
「もしまた戦争があった時に使いなさいってことじゃない……?考えたくもないけど」
「それも……そうだね……」
五〇年周期で不意になんの前触れもなくやってくるという〈
「とりあえずこれしまうからエリカも手伝って〜」
「よよよよよよ〜」
アカネと協力して隣の空き部屋にある収納スペースへと物を移動していくわたしたち。
およそ五分ほどで終わらせて、アカネは自室へと戻っていく。
「アカネ〜?お昼どうするの〜?」
「ん〜?なに〜?聞こえない〜?」
いや、聞こえてるでしょ……仕切り一枚なんだからさぁ?
「だーかーらーお昼ーだーよー!」
「そうそう!この前にデートで行ったお台場のさ〜?」
「また行くのお台場に?今から行ったら帰ってくるの夜になるよ?」
「でも行きたいじゃん〜」
「いいかたまには〜!じゃあ行こうアカネ!お台場に!」
即断即決でわたしとアカネは二人きりのデートのために、少しだけおしゃれをしてお台場へと電車で向かった。
***
おれはハルナと決別したことで必然的にお見合い相手のひとりを選ぶこととなった。
目の前から彼女が去ってしまった以上、できることから進んでいくしかない。
「カグヤさんとデートなんてはじめてですよ、うちは」
「カオリくんはその、本当におれでいいのか?」
「みなまで言わせないでくださいよ、今隣にいる人くらいちゃんと見てくださいよ旦那様?」
スーツを着たおれの左腕を組み、現クラスメイトであり、事実上の婚約相手となる白いワンピースを着込んだ
「まだ仮交際中だろ?結果を急ぐのは早いだろうよ」
「……それとこれとは別です、カグヤさんはお台場って来たことあるんですか?」
「小さい時に親子で見にきたことはあるよ、実物大立像のガンダムがあった頃に」
「まだ海浜公園にあって人が賑わってたときですね〜」
「あの頃はたしかガンダム三〇周年くらいだっけか?ちょうど新企画がはじまったあたりの」
「すみませんそこまでは詳しくないので……」
「なんかすまん、つい」
「それとこれからは呼び捨てにしません?堅苦しいの嫌いなんですよ、うちは」
「いいが、カオリはその……おれのこと聞かないんだな?」
「ハルナさんのことですか?」
ぼかしたつもりが
「……それはまぁ」
「気にしないといったら嘘になりますし、傷心中の人をぼっちにさせるわけないじゃないですか」
「嬉しいことだけど……」
「すぐに忘れてうちのことだけ見てなんてそんな冷たいこと言います普通?ていうか今デート中なんですから他の女のこと出すのよくないですよカグヤ」
言い出したのはおれだけど名前を出したのはカオリくんだろって反論したら帰ってしまいそうになるからそれをおれは抑えて──。
わかってはいる、わかってはいるんだが……なんだか申し訳がなく……不甲斐ないのは承知しているが……
「それに今まであったことを無いものとして見てしまったらその人の人生を否定することになっちゃうじゃないですか、そんなのいやですからねうちは?」
「君はその、どうしてそこまでおれのことを……」
「好きだからそばに居たいじゃダメなんですか?共に生きる覚悟を持った女の気持ちを馬鹿にしないでくれます?」
「そこまで言わなくても……別におれじゃなくても良かったろ?」
「あ〜そういうこと言うんですね……平手打ちしますよ?しますからね?」
眉間に皺を寄せてカオリくんはおれの左頬をパシンッと強烈にはたく。
「やることないだろ!?やることは!?」
ヒリヒリと痛みが続く頬を手で押さえるおれ。
『甘ったれるなっ!』と言われているようでこれじゃあブライトさんに怒られたアムロみたいじゃないか……
「目が覚めましたか?──もう一回しましょうか?」
「覚めたからもうよせ!これ以上は勘弁してくれ!」
「元気になったんならご飯食べに行きますよ〜!ほら!行列ができちゃってる有名店へ!さぁはやく!」
どうしてそんな明るい精神面してるんだよ……とツッコミたくなるのを我慢して海鮮料理店〈はんぶらび〉へとおれとカオリは店へと入った。
***
海鮮料理店〈はんぶらび〉。
ここでは朝採れたて魚たちを陸送で直送された海産物をメインに取り扱い、刺身や海鮮丼、蒸し料理やパエリアなど各国の料理が人気の都内にあるSNSなどでも人気となった有名店である。
って言伝に聞いたことがあるんだけど、わたしあんまりお魚食べないんだよね……ほんとに女子なの!?って言われたら敵に回しそうだから黙っとくけど。
「こちらは採れたてあさりのボンゴレビアンコになります〜」
「そしてこちらが鯛のカルパッチョです」
運ばれてきた料理を店員さんから両手で受け取るアカネ。
つづいてわたしの頼んだ……えっとなんだっけ?
「こちらがまぐろとサーモンの海鮮丼、また牡蠣のフライになります〜」
ほとんど回転寿司と変わらないメニューじゃん!?って言うわけにはいかないので……さすがに怒られるし。
っていうかここ最近記憶力が乏しい気がする……疲れてきてるのかな……
テーブルに並べられた料理を少しづついただくわたしたち。
飲み物を取りに行くのを忘れたわたしはドリンクバーへと歩いていく。
するとそこに居たのは──。
◇◇◇
「……って!?カグヤ先輩!?それとカオリ先輩まで!?なんで!?」
「エリカくんじゃないか?誰かと来てるのか?」
「お久しぶりですエリカさん」
どどどど!?どういうこと!?二人していつからそんな関係がっ!?ってあれ……これって浮気なんじゃ……
「おれたちはただのデートだよ、たまたまカオリくんが行きたいって聞かなくてね?」
「カグヤ?呼び捨てにしてって言いましたよね?」
「わかってるよカオリ?ほら怒るとせっかくの可愛い顔が台無しだよ?」
「……そういうとこほんときらいです」
……またマジマジと見せつけられるわたしのライフポイントはもうゼロなんですけどっ!やめて!もう殺さないでっ!
なんか嬉しそうなカオリさんが照れてる……?まるで乙女の顔になってるぅ!?実況してる場合かわたしはっ!!
「す、すみません!いまどきますのでっ」
「そこまで警戒されることはないだろうエリカくん?」
「せっかくのデート中にわたしがほんと……ではっ!」
「ちょっ!ちょっと!エリカくん!」
なにか言いたげなカグヤ先輩を横目に振り切ったわたしはアカネのいるテーブルへと戻る。
◇◇◇
「どうかしたのエリカ……?そんな血相かえて」
「それがね?カグヤ先輩がカオリさんを連れてきてて……」
「もう彼女できたの?乗り換え早過ぎじゃない?」
「あんま他人のこと詮索するのよくないよアカネ」
「だってこの前ハルナが連れ去られたばかりなんだよ!?なのに別の彼女とデート!?意味わかんないけどっ!?」
「おさえておさえて!他のお客さんの迷惑になるから……」
グラスをおいて両手でアカネの顔の前にだすわたし。
「でもさぁ……なんか引っかかるじゃん」
「それもわかるけどとりあえずいまは食べよ?」
久しぶりの外食にわたしは気分が昂っているのを悟られないように食事をすすめていた。
***
GBN運営管理室。
ここでモニター監視のもとで仕事を継続しているリボンズはこれからくる一人のダイバーのために手筈を整えていた。
「……やぁやっときたね」
「あなたがリボンズさんであってます?」
「あぁそうだよ、この前はガンプラの提供をしてくれたこと感謝するよカナエくん」
「……そ、その節はどうも」
「おかげで対侵略者用のAIダイバー〈
「ところで用というのはいったい……?」
「すまないね?君にはこの親善大使として我々に力を貸してくれないか?それこそ"もう一人の
「それってつまり──」
「君には仕事をしてもらおうと思ってね?もちろん報酬は弾ませてもらうよ」
「ありがたいことですが……そこまでこだわる理由ってなんですか?」
「勝ちたい女がいるのさ、煩わしい嫌味な女がいるからね」
そうしてリボンズの言葉を聞いていたカナエは、華やかで綺麗な衣装を身に纏い自身のガンプラと共にGBNへと飛び立った。
***
〈クゥエル急便〉
三宅 佳織のいる〈ミヤケ運送〉系列の配送業者のひとつ。事業開始から数年あまりであるため利用者はそこまで多くない。
海鮮料理店〈はんぶらび〉
都内某所のお台場にある海鮮料理がメインの店。基本的に価格帯はリーズナブルであるほかSNS投稿も盛んに行われており来店客が多い。