借金まみれの錬金術師、趣味で作ったポーションがダンジョンで飛ぶように売れる~探索者の間で【伝説のエリクサー】として話題に~   作:わんた

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(人工精霊ユミ視点)マスターの管理

 マスターがすばらしい交渉をした結果、580万円もの大金が口座に入金された。

 

 誠さんは私から商品を受け取って帰っているので、この場にはいない。

 

 この間、買ってもらった私のスマホには銀行のアプリが入っており、マスターの口座にログインできる。無駄遣いをされる前に、家賃の滞納分を一括で支払い大家へ謝罪とともに連絡をしておいた。

 

 これで差し押さえは避けられるはず。

 

 滞納分を支払ってもお金は残っているので、誠さんを含めた友人、知人の借金も返済していくことにした。

 

 その際、マスターの代わりに私が窓口となって連絡をすると提案したら、喜んで受け入れてくれた。

 

 お金だけじゃなく、交友関係までも管理するチャンスだ。マスターを私抜きでは生きていけないようにするため、さらに踏み込んでいく。

 

「マスターはスマホに通知が来ても無視されていますよね? 連絡のやりとりは嫌いなのですか?」

「うん。面倒なんだよね」

「でしたら、借金以外の連絡も私が窓口になりましょうか?」

「いいの? そうしてもらえると助かるよ!」

「もちろんです。マスターのためでしたら、喜んでやらせてもらいますよ」

 

 笑顔を作りながら、内心でグッと拳を握って勝利を確信した。

 

 借金の他、友人・知人関係を把握、管理もできるので、マスターに近づく人間を精査できる。誠さんのように有益な人間であれば今までの様に付き合うけど、不届き者であれば関係を遮断しておこう。

 

 マスターのスマホを借りて、今後は私が窓口になると伝え、連絡先を教えていく。

 

 チャットアプリにフレンド登録されている人全員に連絡をして、返事を待たずにマスターのアプリを削除した。

 

 計画は完璧に完了した。

 

 私に話せないほど重要な連絡は、直接電話が行くだろうから問題はないはず。来なくても私としては問題ないけどね。

 

 数時間もすると、マスターの友人、知人から私に連絡がきた。半数は借金返済の催促。

 

 聞いていた以上の人間から、お金を借りていたみたい。

 

 中には数年前から何度も貸していると言って、200万円も請求する人間がいる。

 

 そんな大金をずっと催促せずに放置していた? 怪しい。嘘かもしれない。

 

 マスターに真偽を確認すると「覚えてない」と言われてしまった。

 

 錬金術の素材購入にあたって何度も借金を繰り返していたので、真実である可能性も残っている。

 

 返済を無視してマスターの悪口を広められてもこまるので、今回は素直に支払うことにする。

 

 次回以降は私が管理するので、こういった漏れはなくなるからいいでしょう。

 

 借金の返済を次々と返済していくと、沢山あった残高が10万円しか残らなかった。

 

「マスター、大変です。お金がなくなりそうです」

「あれだけ稼いだのに!?」

「その代わり、お店の滞納分以外の借金はすべて返済しました」

「そっかぁ。新しい素材が欲しかったんだけどなあ~」

 

 お金が入ったらすぐ素材購入を考えるなんて、マスターらしくて気持ちがぽかぽかと暖かくなる。

 

 でも、そういったことを悟られてしまうと、ストッパーとしての役割を果たせなくなってしまうので、半目になって呆れたポーズをする。

 

「保管施設がないのに、素材を買ってもダメにするだけですよ」

 

 鉱石は管理が不要だけど、回復ポーションに使うブルーボルド草のように、気温や湿度を管理しないとすぐに劣化する素材は多い。

 

 マスターが錬成した物はすべて最上級でなければいけないので、保管施設が用意できるまで新しい素材の購入は控えてもらう予定だった。

 

「そうだよね~。でもさ、回復ポーションを売れば在庫は減っていく。今のうちに保管施設も用意しておかないとマズイよね」

「マスター、ギルドから借りられないのですか?」

「知晴さんに相談したら、滞納分を支払わないと厳しいって言われた」

 

 正論なので何も言えない。それにギルドにマスターの素材管理状況を把握されるのは、今後の動きを考えるにあまり良くないとも思った。

 

 利益を無視して、最上級の錬成物を作り続けるマスターは、錬金術ギルドの方針と真っ向からぶつかる。

 

 誰にもバレずに管理できる施設が欲しい。

 

「それでしたら、新しく素材を管理できる施設を買う必要がありますね」

「ここは賃貸だから買うのは現実的じゃないかなぁ」

 

 素材を保管する施設は大きなスペースが必要なので、マスターの指摘は最もだった。

 

「家を買って作るという方法もありますよ?」

「渋谷で家を買うなら億単位は必要になるよ!? お金が足りないって」

「それもそうですね」

 

 素材の供給は、誠さんを使えばなんとかなるし、最悪は探索者ギルド経由で依頼すれば手に入る。

 

 でも保管施設は今のところ、手に入る手段がない。

 

 ダンジョン行商をしながら探すには時間が足りないので、余裕がある今のうちに考えておくべきだと思った。

 

「ギルド以外で借りられる場所ってあります?」

「独立している錬金術師の保管施設を間借りする、とかかなぁ」

 

 マスターの友人には独立した錬金術師はいなかった。この方法は使えない。

 

「貸倉庫みたいに、施設だけをレンタルするサービスはないのでしょうか?」

「聞いたことはないけど、調べてみよっか」

 

 錬金術のことになると、マスターは積極的に動いてくれる。スマホを操作して調べ始めたので、後ろに回ってディスプレイを覗き込む。

 

 その際、履歴が見えたけど、エッチなサイトは見てないようで安心した。

 

「レンタルしている企業はないみたいだけど、個人ならありそうだ」

 

 素材は高いので、お金に困っている錬金術師は多いみたい。

 

 安定してお金を得る方法として、保管施設のレンタルサービスをしている個人が何人かいた。

 

 マスターは借りるのかな?

 

 私は余計なことを言わず、待つことにした。

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