借金まみれの錬金術師、趣味で作ったポーションがダンジョンで飛ぶように売れる~探索者の間で【伝説のエリクサー】として話題に~   作:わんた

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ドラゴン討伐隊

「知晴の小僧が、裕真と話したいそうだ」

 

 ユミを抱きしめていたら、ばーちゃんがスマホを差し出してきた。

 

 受け取るとテーブルに置いてスピーカーモードにする。

 

「電話、替わったよ。どうしたの?」

「師匠から話は聞いた。ドラゴン騒動で一稼ぎしたいらしいな」

「うん。行商として参加できると最高なんだけど、知晴さんの力で何とかなるかな」

 

 お願いはしてみたけど、あまり期待はしていない。

 

 だって交渉相手は探索者ギルドだからね。

 

 錬金術ギルトとは別組織だから、いくら支部長とはいえ俺をねじ込むのは難しいだろう。

 

「今、探索者ギルドと討伐隊編成について話し合っているのだが、後方支援部隊を作ることになった。そこに、ねじ込むことはできるぞ」

「後方支援部隊に入れば、回復ポーションを売りさばけるの?」

「まあな。正確に言うと、その場では配って消費した分を後で探索者ギルドが買い取る感じになるがな」

 

 ドラゴン討伐はギルド主体だからお金を出す人が違うのか。

 

 前回の行商とちょっと形は変わるけど、商売になるのは間違いない。お金は稼げる。

 

 抱きかかえているユミを見ると、目をキラキラとさせていた。これは断れないな。

 

「回復ポーションは自分で用意して、死にかけの探索者に売ればいいんだよね?」

「死にかけって、お前……まあいいか。流れとしては、それで問題ない。探索者ギルドの人間が同伴するから、使用した各ポーションは報告しておけ。後で口座に直接振り込まれる」

「それは楽でいいね。価格はどうなっているの?」

 

 ユミの望みは高値で売ることにある。

 

 緊急事態だからって安く売れと言われたら、今回は引き下がるつもりだ。

 

「上級回復ポーションは一本300万円だ。他も調整中だが、危険手当として店で売るより高くなる」

「いいですね! 交渉頑張って下さい!」

 

 知晴さんの話を聞いてユミが楽しそうに言ったので、価格は問題なさそうだ。

 

 うん、よかったね。

 

「その声はユミか。師匠から聞いたんだが、新しいゴーレムを作ったらしいな」

「ミスリル水銀スライムのことですね。マスターが()()()()()作ってくれました」

 

 一部強調していた気もするけど、ユミは変わらず嬉しそうにしているので気にしないでおくか。

 

「ミスリルと水銀の融合ゴーレムか。またギルドにない未知のレシピを開発したようだな」

「欲しければあげるけど」

「そんなことしたら、師匠に殺されるからいらん。秘匿しておけ」

 

 適正量を見つけるのは大変だったけど、素材の組み合わせ自体は特殊じゃない。別に公開しても問題ないと思うんだけど、ばーちゃんが俺を睨んでいたので、余計なことを言うのは止めておいた。

 

 ここは知晴さんに従っておけと、弟子だったときの勘が言っている。

 

「わかったよ」

 

 電話の向こう側から、安堵した声が聞こえた。

 

 何を心配しているのかわからないけど、知晴さんにはお世話になっているからね。安心したのであればよかった。

 

「探索者ギルド側との価格調整が終わったら、ユミのスマホに送っておく。後でしっかり説明を聞いておくんだぞ。それじゃ、またな」

 

 俺に送らないところがちゃんとわかっていて素晴らしい。

 

 当日まで錬金をするだけで問題なさそうだ。

 

 通話終了ボタンを押してから、スマホをばーちゃんに返した。

 

「話はまとまったようだな」

「うん。お金も稼げるようで助かったよ。それでさ、新しい相談なんだけど、ドラゴン討伐が終わるまでばーちゃんの家でお世話になってもいい? 素材がたっぷりあるから、商品を用意しておきたいんだよね」

 

 金を稼ぐチャンスなんだから色んな物を売りつけておきたい。

 

 錬成する度に渋谷からここまで来るのはめんどうだから、立ち入り禁止が解除されるまで住もうと思ったのだ。

 

「かまわんよ。家も素材を保管する設備も裕真の物だ。ついでに、わしもな」

「そっか。あははは」

 

 ばーちゃんはちょっと遠慮したい。

 

 笑って誤魔化していると、ユミが前のめりの返事をする。

 

「師匠のお世話は任せて下さい!」

 

 すごいやる気だ。どうしたんだ?

 

 俺に面倒がなければ、まあいいのか?

 

 考えるのが面倒になったので、流れに任せよう。悪いようにはならないさ。

 

「いい娘だねぇ。裕真、大切にするだよ?」

「言われなくても、そうしているよ」

「ならいい」

 

 満足そうに言うと、ばーちゃんは立ち上がった。

 

「渋谷ダンジョンに、ドラゴンが出現する異常事態が発生しているんだ。装備も調えた方がいいだろう。ヒヒイロカネを使うなら腕の良い鍛冶師を紹介するが、どうする?」

 

 実は使いたくてウズウズしていたんだよね。

 

 ヒヒイロカネは素材そのままで使うべきだから、鍛冶スキルの腕次第で完成度が変わってくる。

 

 ばーちゃんの商会なら間違いないだろう。

 

「武器にするつもりだったから紹介お願い!」

「任せな。腐れ縁だが日本で最高峰の鍛冶師を使わせてやる」

 

 自信ありって感じだ。ヒヒイロカネは扱いが難しい。ばーちゃんもわかっているだろうから、人選はまるっとお願いすれば大丈夫だ。

 

 俺はその間、素材を見繕ってドラゴン討伐用に必要な回復ポーションを作って待っていればいいだけ。

 

 店の滞納分の返済もできそうだし、最近はついているな!

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