借金まみれの錬金術師、趣味で作ったポーションがダンジョンで飛ぶように売れる~探索者の間で【伝説のエリクサー】として話題に~   作:わんた

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ヒヒイロカネの使い道

 通話を終えた翌日に、誠はドラゴンの鱗を持ってきてくれた。

 

 お礼に結構な量の回復ポーションを押しつけておいたので、しばらくはダンジョンで探索しても赤字にはならないだろう。

 

 調べた所、手に入った鱗のエーテル含有量はかなり多く、素材としては一級品だ。

 

 離れの倉庫でミスリル銀製の小型ハンマーを持つと、鱗に振り下ろす。手が痺れるほど硬い。表面に軽いヒビが入るだけで、破壊には至らなかった。

 

「これは時間がかかりそうだ」

 

 自然と笑みが浮かぶ。

 

 ヘッドの部分に魔力をたっぷり送って硬度を高めてから、何度もハンマーを振り下ろして鱗を砕く作業を続けていく。

 

 痺れて力が入らなくなったら、手に布を巻いて落とさないようにして作業を再開する。

 

 皮膚が切れて血が出ても無視だ。

 

 休みなく砕く作業を5時間かけて続けると、ようやく細かい欠片になった。

 

 その間もユミは俺の作業をずっと見ていたようだ。

 

 何が楽しいのだろうか。

 

 ミスラムをソファベッドの様に使っているので、たまに寝ているのだが、部屋に行かなくていいのだろうか。

 

 中途半端な睡眠になりそうなので心配なんだけど、作業が終わるまではずっといると言って、俺の意見を聞かない。

 

 ワガママな娘を持った気分だ。

 

 回復ポーションを飲んで手の傷を回復させると、小さい欠片になったドラゴンの鱗をすり鉢に入れて、ブルーボルド草のように粉末にしていく。

 

 ジャリジャリと音を立てながら、たいした抵抗を感じず細かくなっていった。

 

 小さくなると意外と脆くなるんだな。

 

 思っていたよりも作業は早く終わって粉末状になったので、ポーションを入れている瓶に入れるとちょうど一本分になった。これで完成だ。

 

「うーーん! 終わったーー!」

 

 立ち上がって腕を伸ばし、凝り固まった筋肉をほぐしていると、ユミが小さな手で拍手をしてくれた。

 

「おめでとうございます……と言いたいところですが、もう23時ですよ? ご飯ぐらい食べてください。倒れてしまいます」

 

 外を見ると真っ暗だった。

 

 朝から作業を始めていたんだけど、こんな時間になっているなんて気づかなかったな。

 

「夜ご飯はない、かなぁ?」

「お師匠様が作って冷蔵庫に入れてくれたようです。食べに行きましょう」

 

 さすがばーちゃん! 助かる!

 

 作りたてのドラゴンパウダーが含んでいるエーテルが拡散しないよう、素材保管の棚にいれて扉を閉めると、俺たちは倉庫を出て遅すぎる食事を始めた。

 

 * * *

 

 二人で焼き魚とサラダ、白米、味噌汁という和食を堪能していると、薄いピンクの寝巻きに着替えたばーちゃんが入ってきた。

 

 昔から可愛い物が大好きなんだよね。

 

 歳を取っても乙女らしい。

 

「ドラゴンパウダーは完成したのかい?」

「うん。完璧なはず」

 

 作ったのは初めてだけど、細かい粒子になっているし、エーテルの含有量も豊富だ。

 

 だから問題ないと判断している。

 

「ふむ、だったら明日、鍛冶師がいる場所に案内してやる」

「おお! ついにヒヒイロカネを加工できるんだね!」

「マスター、おめでとうございます」

 

 隣で一緒に食事をしているユミと、手を合わせて喜んだ。

 

 今日は疲れているのに、興奮して寝られそうにない。

 

 寝不足になっちゃうかな。

 

「何を作るか決めているのかい?」

「脇差がいいんだけど作れそうかな」

「日本刀は得意な男じゃ。問題ない」

 

 男といったときに、ばーちゃんの表情は緩んだ気がした。

 

 意味深だ。

 

 どういった関係名なのか知りたくなってきたぞ。

 

「もしかして、ばーちゃんの男?」

「…………はぁ。育て方を間違えたかね」

 

 呆れたように言われてしまった。

 

 気になったことを聞いただけなのに、何が悪かったんだろうか。

 

「違ったの?」

「いや、あながち間違いじゃない。元旦那だ」

「ええっ! 結婚してたの!?」

「裕真を引き取る少し前までな」

 

 これは驚きだ! あのばーちゃんと結婚できる男がいるなんて!

 

 師匠としては最高なんだけど、こう、自立しすぎていて誰かと一緒にいるイメージがわかないんだよね。

 

「なんで別れたの?」

「裕真は何でも突っ込んで聞くねぇ」

 

 ユミが「え? 聞くの?」みたいな顔をしているけど、気になるじゃん。

 

 ばーちゃんは呆れていても怒っていない。まだ一線は越えてないはず。

 

「嫌なら答えなくて良いけど」

「性格の不一致さ。よくある話だろ」

「そうなの?」

 

 常識っぽく言われてもよく分からない。

 

 恋愛ドラマや漫画をよく見ているユミに聞いてみた。

 

「そうですね。そういうことも、多いと聞いたことはあります」

 

 チラチラと師匠を見ながら、ユミは答えてくれた。

 

 なるほどね。よくあるのか。

 

 また一つ賢くなったよ。

 

「気まずかったら俺とユミだけで行くけど」

「昔の話さ。それに、たまには顔を見てやらんとな」

 

 ツンツンと指で腹を押されたので、ユミの顔に耳を近づける。

 

「マスター、あれはきっと会いたいんだと思います。三人で行きましょう」

 

 言っていることと内心が違う。これが乙女心ってやつか!

 

 何歳になっても乙女だと言っているばーちゃんだけあるな。

 

「絶対に余計なこと言わないでくださいね」

「わかった」

 

 心配性なユミの顔から話すと、乙女モードのばーちゃんに話しかける。

 

「それじゃお願いするよ」

「任せな。ケツでも叩いて、いい仕事をさせるさ」

 

 いつもと変わらず強気発言だけど、どこか照れ笑いしているようにも見えた。

 

 ヒヒイロカネの武器を作るだけじゃなく、別れた二人の再会に協力できるのであれば、恩返しになるのかも。

 

 そういったのも悪くはないよね。

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