借金まみれの錬金術師、趣味で作ったポーションがダンジョンで飛ぶように売れる~探索者の間で【伝説のエリクサー】として話題に~   作:わんた

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鍛冶師のじーちゃん

 翌日、ばーちゃんの元夫と会うことになった。

 

 鍛冶は騒音問題があるらしく、秩父の山奥に住んでいるらしい。

 

 交通の便が悪い場所だ。移動はどうしようと思っていたんだけど、ばーちゃんはタクシーを用意してくれた。料金がすごいことになっていたけど、お釣りはいらないと言って現金支払いをしていたから驚きだ。

 

 ばーちゃん、お金持ちだったんだな。

 

 無事に元夫の家に着いたので、玄関でブザーを鳴らすと老人が出てきた。腰が曲がっているけど、全身は鍛えられているように見える。腕が太かった。

 

「久しぶりじゃな。多恵」

「ふん、その名で呼ぶんじゃないよ」

「弟子の前だからって恥ずかしがるんじゃないって」

 

 はっ、はっ、はっと笑っていた。

 

 どうやら親しみやすい性格のようだ。

 

「それで隣にいる男がヒヒイロカネを持っているのか?」

「愛弟子の裕真だ」

 

 背中をポンと押されて一歩前に出た。

 

「ばーちゃん最後の弟子、天宮 裕真(あまみや ゆうま)です。後ろにいる少女は契約している精霊のユミ、本日はよろしくお願いします」

 

 最初の挨拶はしっかりしろと、ばーちゃんに念押しされていたので、軽く頭も下げておいた。

 

「ふむ、話と違って礼儀はなっているようだな。俺の名前は鉄蔵だ。よろしくな」

「じーちゃんよろしく」

「この俺が、じーちゃんか……」

 

 しまった。油断して砕けた口調になってしまった。

 

 ギロリと睨まれたけど、何も言われることはなかった。

 

 呼び方は認めてくれたんだろうか。挨拶が終われば、いつものノリで言っても問題なさそうだ。

 

「ま、そういうヤツだ。ヒヒイロカネを扱わせてやるんだから、細かいことは気にするんじゃないよ」

 

 ばーちゃんは家の中に入っていき、じーちゃんも続く。

 

 俺とユミは置いていかれてしまった。

 

「マスターは初対面の人でもフランクなんですね?」

「ばーちゃんの元夫なら身内だからね。知らない人なら、適切な距離を取って接するよ」

「そうならいいんですけど……」

 

 明らかに信じてなさそうだけど、やるときはやる男なんだ。

 

 安心してくれ。

 

 

 

 細かい話は、ばーちゃんがしてくれていたみたいで、すぐ鍛冶場に連れて行かれた。

 

 ヒヒイロカネは金床に置かれていて、じーちゃんはミスリルとアダマンタイトの手槌を持っている。炉に火は付いていない。

 

 錬金術や鍛冶のスキルは合成する過程を簡略もしくは省略して、結果を出してくれる。

 

 だから金属を熱して叩いて鍛える、みたいな作業は不要なのだ。その代わり魔力を込めた手槌で金属を叩き、イメージした形に成形していく必要はある。しかも込めた魔力が、どのくらい金属に浸透して含まれるかによって、品質は大きく左右される。

 

 スキルを扱う際は、火の扱いではなく魔力の扱いが重要なのだ。

 

「ドラゴンパウダーは、どのタイミングで使うの?」

「最初からだ。持っているなら俺に渡しな」

 

 瓶に入ったドラゴンパウダーをじーちゃんに渡すと、半分をヒヒイロカネに振りかけた。

 

 ふりかけみたいだと思っていたら、お腹が減ってきた。

 

「残りは使わん」

 

 思っていたよりも使用量は少ないらしい。ドラゴンパウダーが余ったので、強化系のポーションでも作ろうかな。

 

 俺が持っているとなくしてしまいそうなので、隣にいるユミへ預けると、マジックバッグに入れて保管してくれた。

 

「作業は見ていてもいいんだよね?」

「多恵の弟子ならかまわん」

 

 許可が出たので、ミスラムを椅子の形にして俺が座り、膝の上にユミを乗っける。

 

 じーちゃんは俺のことをチラッと見たけど、それだけ。無言で手槌を振り上げると全体が光り出した。魔力を注いだのだろう。周囲に糸のような帯が見える。

 

「光の帯が強ければ強いほど、鉱石へ注がれる魔力が増える」

 

 ばーちゃんも来たようだ。椅子を持参しているなんて用意がいい。

 

 元夫の仕事ぶりでも見に来たのかな。

 

「じーちゃんってどのぐらいすごいの?」

「……日本一じゃ」

 

 照れくさそうにしていた。頬がちょっと赤い。

 

 やっぱり好きなんだと思う。俺の鋭い直感がそう言っているんだ。

 

「行くぞッ!」

 

 じーちゃんから気合いの入った声がすると、手槌が振り下ろされた。

 

 金属のぶつかり合う甲高い音がするのと同時に、ふりかけ……じゃなかったドラゴンパウダーと共に光の帯がヒヒイロカネに吸い込まれていく。

 

 形は変わったように見えない。一度だけじゃ変化は足りないのか。

 

 もう一度、手槌を振り上げてからヒヒイロカネに叩きつける。また光の帯が吸収された。

 

 これを十回ぐらい続けていくと形も変わっていき、延べ棒になる。脇差にはほど遠いが、手槌の動きは止まった。

 

「魔力切れじゃ。休憩する」

 

 第一世代は魔力量が少ない。じーちゃんは技術があっても、魔力だけはどうしようもないので、こまめに休憩が必要なようだ。

 

「ユミ、じーちゃんにマナポーションをあげて」

「マスター、わかりました」

 

 マジックバッグから瓶を取り出したユミは、俺から飛び降りてスカートをなびかせながら、じーちゃんの前に立った。

 

「どうした?」

「魔力が回復するポーションです。どうぞ、お飲みください」

「そんな貴重な物をもらってもいいのか?」

「はい。マスターがそう、望んでいますので」

「そりゃぁ助かる」

 

 マナポーションを受け取ったじーちゃんは、ユミの頭をグリグリと撫でた。

 

 孫と祖父みたいだな。優しさを感じる。

 

 それがたまらなく嬉しい。ユミはずっと優しい世界に包まれて、生きて欲しいなと願っていたからだ。

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