借金まみれの錬金術師、趣味で作ったポーションがダンジョンで飛ぶように売れる~探索者の間で【伝説のエリクサー】として話題に~   作:わんた

39 / 80
ドラゴン討伐の後処理

 ドラゴンの討伐が終わったと知った探索者ギルドは、素材を回収するための人材を連れてきた。その中に一色さんもいる。最高責任者として成果を見に来たのかな。

 

 俺や久我さんがミスラムのソファに座って眺めている間に、手際良く解体していきパーツを次々と地上へ運んでいく。

 

 ユミがあえて数個残した床に落ちている鱗すら、見逃すことはない。

 

 素材は全て回収するという意気込みを感じた。

 

 作業を眺めていると、一色さんが俺たちの所へやってきた。

 

 久我さんは立ち上がろうとしたけど、手を前に出してそのままでいいと合図を出される。遠慮なく座ったまま会話することにした。

 

「探索者がダンジョンから逃げ出したときは失敗したかと思ったが……無事に討伐してくれて感謝する」

 

 そういえば、神官が出てきたときに探索者たちを逃がしていたな。彼らは地上まで無事にたどり着いたらしい。

 

 戦線が崩壊したと噂されて、結構な騒ぎになっていそうだ。

 

「世界初、死者ゼロでドラゴン討伐を成功させた気分はどうだ?」

「全員生還できて良かった、そう思っています」

 

 久我さんは控えめに言っているけど、これは世界的なニュースになるんじゃない?

 

 一色さんだけじゃなく、現場で活躍した久我さんだって一気に有名人になるはずだ。

 

 取材とか殺到して人生は大きく変わりそう。絶対、面倒なことになる。

 

 俺は後方支援部隊でよかった。今の生活を維持できそうだ。

 

「誠から報告を聞いたのだが、ドラゴンの他にも敵がいたようだな。死体はどこにある?」

 

 久我さんは塵の山を指さした。

 

「倒したのと同時に形を保てなくなったようです」

「ふむ。一応、回収して詳細を調べておくか」

 

 近くにいる部下へ指示を出すと、再び俺たちを見る。

 

「ドラゴンと謎の魔物について、久我は討伐レポートを書いてくれ」

「わかりました。数日の時間をいただいてよろしいですか?」

「かまわん。誠や他の探索者からもヒアリングをして、まとめてくれよ」

 

 大変そうな仕事を任されても、久我さんは当然のように受け入れていた。

 

 俺だったら絶対に拒否するよ。錬金術の時間がなくなっちゃうからね。

 

 どうしても逃げられなければ、ユミにまるっとお願いする。頼りになる人工精霊だ。

 

 言いたいことを伝えた一色さんは、俺たちに背を向けて歩き出し、止まって振り返る。

 

「回収部隊が来る前に、素材は盗んでないよな?」

 

 視線は俺に向いている。いや、正確に言うならマジックバッグだろうか。

 

 他人から中身を覗けないため、誕生してから様々な問題を多く生み出してきた。

 

 例えば禁止された商品の密輸入や資産の隠蔽、商品の盗難などだ。

 

 仮に警察に捕まって中身を全て出せと言われても、取り出せるのは錬金術師本人のみ。中を覗いても真っ黒な空間しかないため、検査なんてどうとでもなる。

 

 また破壊しても中身は出てくることはないので、管理する側としては本当に迷惑なアイテムなのだ。

 

 そのため、現在はマジックバッグを持って国外へ行くことは禁止されていて、犯罪者として確定すると没収されることもある。

 

 もし今後、マジックバッグの中身を調査する道具や、他人が取り出せる道具といったものが完成したら、また世界は大きく変わっていくんだと思う。

 

「俺が監視してたから大丈夫ですよ」

「ふむ……久我が言うなら信じよう」

 

 疑わしき目を向けられている。言葉とは違って、一色さんは信じてなさそうだ。

 

「それに、素材が市場に出回ったらすぐにわかるしな」

 

 捨て台詞のように言うと、今度こそ回収班の元へ戻っていった。

 

 素材が市場に出る? そんなこと絶対にないよ。

 

 手に入れた物は、俺が全部実験に使うからね。

 

「ふぅ、ったくギルドの連中も少しは現場を信じろって言うんだよな」

「そうですね。マスターを疑うなんて頭おかしいですよ。さっさと失脚すればいいんです」

「二人とも……」

 

 素材を盗んだのに、なんでそんなことを言えるの!?

 

 二人とも心臓が強い! 俺なんてちょっとだけ罪の意識を……あれ? 感じてない。むしろウキウキしている。

 

 何に使おうなんて悩んじゃうぐらいだ。だったらまあ、いいのかな。俺も一色さんの文句を言っておこう。

 

「後方支援部隊だったのに戦闘をさせられたしね。クレームの一つでも言いたいぐらいだよ」

 

 ドラゴンの素材が手に入って忘れていたけど、戦闘は契約に入ってなかった。

 

 契約外の話になるけど、追加料金おねだりできないかなぁ。

 

「ああ、そうだ。レポートに天宮さんの活躍も書いて良いか?」

「え? 止めてよ」

「どうしてだ。有名になるチャンスだぞ」

「それが嫌なんだよね。俺は錬金術さえできれば、何もいらない。名声なんて邪魔なだけ。全部、久我さんの手柄にしていいよ」

「嘘のレポートか……どうするか悩むな……」

「この話、俺が預かっても良いか」

 

 会話に割り込んできた人を見ると、知晴さんだった。

 

 後ろには、ばーちゃんもいる。

 

「ダンジョンに入ってきて大丈夫なの?」

「誠と一緒に来たから問題はない。そんなことよりレポートの話だ。裕真の活躍については、ギルド同士の話し合いで調整したい。悪いようにはしないから、俺に任せてくれ」

 

 知晴さんにはお世話になっているから信じてもいいんだけど、頼りない感じがしたので、ばーちゃんにも聞いてみよう。

 

「知晴さんで大丈夫だと思う?」

「安心せい。わしがサポートする」

「だったら、まるっとお願いするよ」

「裕真、お前…………」

 

 知晴さんが悲しい顔になったけど、ばーちゃんの方が頼りになるんだから仕方がないじゃん。

 

「頑張ってください。私は応援していますから、マスターのために働いてください」

「ユミちゃん!」

 

 なにげに酷いことを言われたと思ったんだけど、知晴さんは目をウルウルとさせて感動していた。

 

 それでいいの?

 

 疑問には思ったけど、ここは黙っておこう。

 

 俺のために頑張って。応援はしているから。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。