借金まみれの錬金術師、趣味で作ったポーションがダンジョンで飛ぶように売れる~探索者の間で【伝説のエリクサー】として話題に~   作:わんた

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さみしがり屋のユミ

 高いお肉だけあって、口の中に入れたら溶けるほど柔らかかった。

 

 他にも牛タン、ホルモンも食べていき腹が膨れてくると、ユミが俺の皿に焼いたカボチャ、玉ねぎといった野菜を置いていく。

 

 栄養バランスを考えろと言いたそうな目をされたけど、今日はお肉を腹一杯食べたい気分なんだ。

 

 入れられた野菜を端に寄せて、肉をタレにつけて口に入れる。

 

「マスター…………」

 

 半目で睨まれてしまった。

 

 本気でお説教をする一歩手前って感じだ。

 

 この雰囲気に俺は弱い。野菜の気分ではないけど、皿にのっている爪楊枝に刺さった玉ねぎを食べる。火が通っていて甘い。美味しいんだけど、脂が足りないなぁ。

 

 健康な体は不健康な食べ物を求めているのだ!

 

 野菜を食べるミッションをこなしたので、焼かれた肉を探すべく網の上を探す。

 

「な、ない!?」

 

 すべて食べられてしまっていた。犯人は、さっきまで寝ていたはずの誠だ。髪の毛に土を付けながら、肉を山ほど食べている。

 

 肉体仕事だから、人一倍食べるんだろうけどさ。

 

 ちょっとは俺の分も残してくれてもよかったんじゃない?

 

「マスターは、お野菜で我慢しましょうね~」

 

 嬉しそうに焼いたピーマンを皿に乗せられてしまった。

 

「肉は?」

「皆さんが食べてしまいました。野菜しか残っていません」

 

 それならもっと味わって食べればよかった!

 

 残念に思いながら空腹を満たすためにタレをたっぷりと付けて野菜を食べ、夕食を終わらせることにした。

 

 

 

 その日の夜、風呂や歯磨きを終えてユミと寝室に入った。

 

 ベッドは二つ。一メートルほどの空間が空いているので、お互いに気を使わず寝られそうだ。

 

「ユミは左と右、どっちのベッドがいい?」

「マスターが選んでください」

「じゃ、俺は右にしておくね」

 

 外気の影響を受けやすい場所だから、窓がある方を選んだ。

 

 壁の方が断熱性は高いのでユミは快適に過ごせるだろう。

 

「それじゃね」

 

 今日は山歩きで疲れているので、もう眠い。

 

 ベッドに向かって歩き出そうとすると、ユミがパジャマの裾を引っ張って止められてしまった。

 

 振り返ると不安そうな顔をしている。

 

 いつもとは違う家だから怖いのかな。

 

「山小屋の警備は万全だよ。侵入者がいたらドアの近くで待機しているミスラムが捕まえてくれる。安心して寝られるよ」

 

 精一杯のフォローをしてみたんだけど、ユミの表情は暗いままだ。

 

 何が不安なんだ。

 

「マスターは、どこにも行きませんよね?」

 

 ん? どういうことだ?

 

 発言の意図がまったくわからないから、思ったことをそのまま伝えよう。

 

「俺がユミを置いて、どこかに行くことは絶対にないよ」

「恋人ができてもですか?」

「うん。というか、恋人なんていらないし、結婚するつもりもないけどね」

「でも、人は変わるものです」

 

 愛情に飢えているのか、たまにユミは似たようなことを聞いてきたけど、今日はやけに食い下がってくるな。

 

 不安度数がマックスみたいだ。

 

「どうすれば信じてもらえる?」

「わかりません……」

「そっか」

 

 モヤモヤとした気持ちに答えはない、ってことだよね。

 

 言葉だけじゃ不安なんてなくならないだろう。長い年月をかけて行動で示すしかない。

 

 たった一日じゃ、対症療法ぐらいしかできないよなぁ。

 

「今日は久々に手を繋いで寝よっか」

「マスター、いいのですか?」

 

 人工精霊になった直後は人格が不安定だったこともあって、夜も同じベッドで寝ていた。サイズはシングルだったので、密着した状態だった。

 

 しばらくして人格が安定し出すと、情操教育の問題もあって別々で寝ることにしたのだ。

 

 ユミは不満そうにしていたけど、健全な成長には必要だと判断して新しいベッドを買った。その日から密着するどころか、手を繋いで寝ることなんて一度もなかったんだよね。

 

 そういった経緯もあって確認してきたんだろう。

 

「今日は特別にね。昔みたいに肩を付けながら寝ようか」

「それはいいですね! すぐにベッドを移動させましょう」

 

 一緒に俺のベッドを引きずって、ピッタリとくっつけた。

 

 ユミは満足そうにしてベッドへダイブした。

 

 ゴロゴロと転がっていて楽しんでいる。

 

「マスターも来ないんですか?」

「すぐ行くよ」

 

 一瞬、俺もダイブしようかと思ったけど、さすがに子供っぽいと考え、思いとどまった。

 

 静かにベッドの上に座ると、横になりながらユミが手を前に出してきたので握る。

 

「えへへ、今日みたいな特別な日が続くといいですね」

「そうだね」

 

 毎日手を繋いで寝ていたら精神的に独り立ちできないぞ、とは言わない。そのぐらいのデリカシーはあるのだ。

 

 俺もベッドの上で横になる。

 

 リモコンを持って照明を消そうとしたら、天井の隅に巣を作ったクロちゃんと目が合った気がする。

 

 じーっと俺とユミを見ている。

 

「お休みなさいって、言っているみたいですよ」

 

 何を考えているのか疑問に思っていると、ユミが教えてくれた。

 

 そういえば家族が一匹増えたんだよな。彼にも言っておくか。

 

「クロちゃんもお休み」

 

 前足を振って挨拶をしてくれた。

 

 たまに不穏な目をするけど、悪い子じゃないんだよね。

 

 こうやって家族が増えていけばユミの寂しさも紛れていくのかな。

 

 どうなんだろう。未来のことなんてよく分からないや。

 

 リモコンを操作して照明を消すと、肩と腕を密着させ、手から伝わる温かみを感じながらすぐに寝てしまった。

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