借金まみれの錬金術師、趣味で作ったポーションがダンジョンで飛ぶように売れる~探索者の間で【伝説のエリクサー】として話題に~   作:わんた

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インセクトイーターとの戦い

 森に住まう昆虫を助けるべく、畑仕事を中断して山を登っている。山道どころか獣道すらない場所を進んでいて、移動のペースは落ちている。

 

 体力ない俺はユミについていくので限界だ。ミスラムを持っている彼女の背中を見ているだけで……ん? ミスラム? その手があった!

 

「ミスラムを貸してもらえない?」

「マスター、投げてもいいですか」

「うん」

 

 立ち止まったユミは、抱えていたミスラムを軽く投げてくれた。

 

 俺の胸辺りに届く動きだったんだけど、足を引いて回避する。ボトッと落ちて、地面が少し陥没した。

 

 あんな重いものを俺が受け取れるわけないよね。

 

 落ちたミスラムを触ってソファーモードにして座り、さらにユミへついてくように命令する。

 

 ぽよん、ぽよん、と跳ねながら移動をした!

 

 計画通りだ。これで俺は楽できる……うっ、うっ。

 

 上下に動くから気分が悪くなってきた。吐きそう。

 

「マスター!?」

 

 見かねたユミがミスラムを止めてくれた。

 

「助かったよ。このままだと、朝食を出すところだった」

 

 悪い案じゃないと思ったんだけどなぁ。どうにかして便利な乗り物になってくれないだろうか。

 

 悩んでいるとユミがミスラムを触り、四本の足を生やした。

 

 ああそうか! そうすれば、よかったのか! 天才じゃないか!

 

「ユミありがとう。一緒に座る?」

「マスターのお誘いは断れませんね」

 

 少し考えた素振りをしてから、隣に座ってくれた。余裕があるのに太ももが密着するぐらいくっついている。

 

「もう少し離れたら?」

「これがいいんです」

 

 さみしがり屋は継続かな。俺は嫌じゃないので別にいいけど。

 

 ミスラムには足の他に剣の腕も生やしたので、邪魔な草や枝まで切って進んで行く。不定形のゴーレムは便利だね。

 

 移動が快適になったので、先ほどよりもスピードは上がっている。乗り物酔いすることはなく、ユミの帽子の上に乗っているムカデの案内に従って、進んで行くと30分ぐらいで目的地に着いた。

 

 インセクトイーターの見た目を一言で表現するなら、岩の鎧を着たアルマジロだ。違いがあるとしたら、サイズが大きいことぐらいだろうか。全長は成人男性ぐらいあって、長い舌を使って近くにいる昆虫を食べている。食欲は旺盛なのか、根こそぎ食べる勢いだ。

 

「昆虫が美味しいのはわかりますが、節度を守らないのはダメです。放置すれば生態系が崩れるので、さっさと処分しましょう。マスター、私が行っていいですか?」

 

 いつもより殺意が高い。

 

 ユミにとって、それほど許せないことなんだろう。

 

「岩の鎧は素材になるから、なるべく傷つけないでね」

「わかりました!」

 

 俺は少し離れたところで様子を見ることにした。

 

 ミスラムに触れたユミが武装用のキーワードを唱える。

 

剣と盾(ソード&シールド)

 

 2つに分裂すると、片手剣とスモールシールドに変化した。

 

 大剣では鎧に傷を付けるため、小回りが利く武器を選んだんだろう。

 

 盾を前に出しながら慎重に歩くと、インセクトイーターは食事を止めた。ユミを見ると二本足で立って体を大きく見せ、威嚇をする。

 

 それでもユミは動きを止めないので、舌を鞭のようにしならせて攻撃してきた。

 

 剣や盾では防げない。横に飛んでユミは回避する。

 

 追撃はなく、インセクトイーターは帰れと威嚇しているだけだ。

 

 臆病な性格みたいだな。

 

 ユミの体から淡い光を放つ青白い無数の蝶が出現した。幽灯蝶(ゆうとうちょう)と呼ばれる下位精霊の一種だ。接触すれば電撃による痺れで動きを止められるのだが、インセクトイーターは舌で近くにある木の枝を拾い、投げると、幽灯蝶に当ててしまった。

 

 パチンと音がして幽灯蝶が消える。

 

 ユミの攻撃は失敗してしまったようだ。

 

 俺の持っているアイテムでもサポートしたほうがよさそうだな。

 

「俺がチャンスを作る!」

「マスター、わかりました!」

 

 ユミは立ち止まって睨み合うことにしたみたい。

 

 俺はインセクトイーターの背後に回って、マジックバッグから丸い形をした音爆弾を出した。

 

 ボタンを押して空中に投げる。

 

 ユミは何をするのかわかってくれて、耳を塞ぐ。

 

 直後、爆音が響き渡った。インセクトイーターは驚きひっくり返る。

 

「たぁっ!!」

 

 走って近づいたユミは、剣で腹を突き刺した。内側は柔らかいみたいで、弾かれなかった。切っ先は完全に入っている。

 

 剣を引き抜き、もう一度、攻撃しようとする。

 

「新手だ!」

 

 敵は一匹だけじゃなかったみたいだ。ユミの左側から、体を丸めて転がっているインセクトイーターが猛スピードで近づいている。

 

 気づくのに遅れたため回避する時間はない。盾に当てて受け流したけど、勢いを完全には殺せなかったようで、ユミは後ろに吹き飛ばされてしまった。

 

 転がっているインセクトイーターは、立ち上がろうとしているユミに再び近づく。

 

 直撃したら致命傷を受けそうな速度だが、蜘蛛の糸で作られた網に引っかかって、インセクトイーターは転倒してしまった。

 

 助けてくれたのはクロちゃんだ。

 

 約束を破って後を付けてきたみたい。

 

 転がっていたインセクトイーターを糸で簀巻きにしてから、頭を噛んで攻撃を続けている。

 

「ユミ! もう一匹の方にトドメを!」

 

 お説教をしようとして歩いていたのでやるべきことを伝えると、ハッとした顔をして腹から血を流しているインセクトイーターの頭を何度か刺して倒した。

 

 クロちゃんの方も終わっているみたい。

 

 他に敵の影は見えない。

 

 少し危ない場面はあったけど、終わってみれば完勝だったね。

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