借金まみれの錬金術師、趣味で作ったポーションがダンジョンで飛ぶように売れる~探索者の間で【伝説のエリクサー】として話題に~   作:わんた

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危険な素材ラルクノア

 誠たちがダンジョンから帰ってきた。予定よりも早い。全身が汚れていて獣臭いので、話を聞く前に風呂へ入ってもらい、その間に俺たちは昼食を用意した。

 

 今日のメニューは味噌汁に白米、豚の生姜焼きとキャベツの千切り、あとは漬物をいくつか。

 

 たっぷりと体を動かした後で、肉と塩分を欲しがっているかなと思って用意したのだ。

 

 テーブルに並べ終わると着替え終わった四人がダイニングにやってきた。

 

「美味しそう~~! 腹減ってたんだよね!」

 

 少年のように見える光輝さんは、席に座ると他の人を待たずに食事を始めてしまった。

 

 少し遅れて三人が席に座る。

 

「待てないのか?」

「いいじゃーん」

 

 誠の突っ込みを軽く受け流した光輝さんは、豚肉と白米のセットを口に入れた。

 

 何も言わずとも、その笑顔で味付けが成功しているのはわかる。ユミが料理したから誇らしい気持ちだ。

 

 俺とユミは先に食事を済ませていたので、様子を見ながら放置ダンジョンの状況を聞いてみる。

 

「予定よりも帰りが早かったね。何かあったの?」

「ちょっと事故ってな。立て直すために戻ってきた」

「ってことは、今回は空振りだったんだ」

「いや、ちゃんと成果はあるぞ。未開拓エリアでいろいろと採取した。俺が知らないものも多かったから、錬金術師として見てもらえないか?」

「いいね! 勝手に戦利品を漁るよ?」

「かまわない。好きにしてくれ」

 

 誠からの許可は得た。

 

 ダイニングの端っこに置かれた泥だらけのリュックを開く。

 

 一番上に置かれていたのは痛みやすい植物だった。回復ポーションに使うブルーボルド草やマナポーションに使うイエローボルド草が根っこごとある。数もそこそこあった。

 

 ダンジョンから採取したのであれば、エーテルはたっぷり含まれているだろう。

 

「誠ー。ブルーボルド草といったメジャーなものは、もらってもいい?」

「うーん……数本なら」

「よし! ユミ、畑に植えてもらえるかな」

 

 種を買えなかったのでちょうどいい。

 

 採取してから大して日が経過してないのであれば、すくすくと成長してくれることだろう。

 

「マスター、わかりました」

 

 ブルーボルド草とイエローボルド草をユミに渡して、さらにリュックの中を確認する。

 

 ビニール袋に入った赤い花があった。薔薇よりも深い赤だ。

 

 宝石のような美しさと、生物を殺す危うさを感じる。

 

 実物を見るのは初めてだけど、これはラルクノアだ。万能薬の原材料となって、日本では採取できない珍しい植物だ。

 

 本物なのか確認するべくビニール袋から取り出して匂いを嗅ぐと、体から力が抜けて痺れを感じるようになった。うん。間違いない。

 

 これはレア物だ!!

 

 頭はすごく興奮しているんだけど、力が入らない。どさりと仰向けになって倒れてしまった。

 

 手足、口もダメだ。

 

 噂に違わない強力な麻痺性を持っているね。根っこもあるし鮮度はばっちり。さすが上級の探索者だ。採取の方法も完璧だ。

 

「天宮くん!?」

 

 圭子さんが慌てた様子で俺を抱きしめてくれた。

 

 手に持っていたラルクノアを見て納得した顔をする。

 

「麻痺毒にやられたみたいよ! 解毒ポーションもってきて!」

「あのバカ! プロのクセに何で毒を受けてるんだよ!」

 

 誠が文句を言っているけど、その考えは間違いだ。プロだからこそ、本物なのか調べるために体を張るんだよ。

 

 俺だけじゃなく他の錬金術師だって、ラルクノアを見たら同じことをするはずだ!

 

「何かを成し遂げた顔をしてるんじゃないっ! さっさとこれを飲め!」

 

 解毒ポーションが口の中に入ってきた。

 

 何とか喉を動かして胃へ流し込む。すぐに効果が出て体は動くようになった。

 

「ありがとう。助かったよ」

「おう。次から気をつけろよ」

 

 誠はラルクノアをビニールに仕舞いながら俺を見る。

 

「これ何の植物かわかるか?」

「万能薬の素材だね」

「それって、俺が知っている万能薬で間違いないか?」

「誠が何を知っているか分からないけど、外傷以外の全てを癒やし、若返りの効果すらある万能のポーションのことだよ」

 

 難病が完治するだけじゃなく、コップ一杯ほど飲めば5歳ぐらい若返る効果がある。

 

 市場に出回ることはない。非常に珍しいポーションだ。

 

 人類のためという名目でレシピは公開されているけど、ばーちゃんが言うには万能薬を手に入れる可能性を高めたいため、誰でも錬成できるようにしたらしい。

 

「ということは、この赤い花は高く売れるんだな?」

「赤い花――ラルクノアは海外のダンジョンから、ごく僅かに採取できる花で、定価なんてないよ。好きな値段をつけて売れる」

「…………私たち、ヤバイのを見つけたみたいね」

 

 すごい発見をしたというのに、圭子さんは喜んでないようだ。お金持ちになるチャンスなのに。

 

 もしかして一本しかないから、使い方に迷っているのかな。

 

「ラルクノアは、これ一本しかなかった? 他の材料は金さえ出せば手に入るから、群生地を見つけたら万能薬は量産できると思う。皆で若返り計画だって不可能じゃない」

 

 沢山あれば仲間内でわけあって、みんなで若返ることもできるからね。女性は若さを重視するって言うし、圭子さんに対してナイス気配りだと思う。

 

 過去の失敗で俺はデリカシーってのを学んだんだよ。

 

「だって、誠どうする?」

「知晴さんに相談してみる。俺たちが持っていても命を狙われるだけだ」

「私は賛成よ。二人は?」

 

 食事の手を止めてた、信也さんと光輝さんが口を開く。

 

「僕はどっちでも~」

「万能薬は魅力的だが、俺たちの身に余る物だ。知晴さんに任せるのがいいだろう」

「なら決定ね」

 

 どうやら、こっそりと利益を確保するつもりはないみたい。

 

 知晴さんに報告したら、発見の成果はまるっと錬金術ギルドに取られるかもしれないよ。そんなんでいいのかな。

 

 ラルクノアが取り上げられちゃうかもしれない。

 

 よくないよね。万能薬を作って使ってみたいじゃないか。

 

 こっそり放置ダンジョンに入って採取してこようかな?

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