借金まみれの錬金術師、趣味で作ったポーションがダンジョンで飛ぶように売れる~探索者の間で【伝説のエリクサー】として話題に~   作:わんた

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(村田視点+裕真視点)それぞれの動き

 エリア部長会議が終わった夜、子飼いの探索者を料亭に呼び出した。

 

 俺は刺身を食べながら、正座している10人の男どもを睨みつける。事前に放置ダンジョンへ侵入させて貴重な素材がないことまで確認していたのに、どうしてこうなったのだ。

 

「埼玉の放置ダンジョンでラルクノアが見つかったらしい。お前たちはなぜ見つけられなかった?」

 

 花の名前を言っただけで探索者はざわめいた。

 

 それほど有名な素材であり、だからこそ見逃したことを追求されていると分かったようだ。

 

「あのダンジョンは広大で、また魔物も強く、限られた時間では未開拓エリアを調べきることはできませんでした。そのことは報告していたと思いますが?」

 

 俺に反論したのは子飼いの探索者をまとめている男――怜司(れいじ)だ。

 

 中堅レベル止まりで探索者としての才能がなく、借金で首の回らない男だ。報酬を渡す代わりに、密猟やダンジョン内犯罪をさせている。俺の機嫌を損ねれば簡単に切り捨てられるというのに、強気な態度を取るとは生意気だな。

 

「言い訳だな。プロなら結果を出せ」

「村田様、そう言われましても……」

 

 またもや反論しようとしたので、テーブルを強く叩いた。

 

 怜司は口を閉ざす。

 

 それでいいんだよ。

 

「山小屋を荒らすのも失敗しやがって。一匹捕まえるのに5人も部下を殺したんだろ? 成果を出せよ。使えない男だな」

 

 ピクリと怜司の頬が動いた。俺の発言が気に入らなかったようだ。

 

 ムカついたので箸でマグロの刺身を掴み、投げつけると、おでこに張り付く。仕事のできない男に相応しい間抜けな顔になったな。

 

「まあいい。過去のことは忘れてやる。新しい仕事をやるから必ず成功させろ」

「かしこまりました。内容を伺います」

「山小屋にいる天宮裕真を殺害しろ。その後、ラルクノアを数本採取してから群生地を焼き払え」

 

 群生地がなくなれば放置ダンジョンの価値は激減する。さらに子飼いの錬金術師が死ぬとなれば、管理責任を問われて、宇田川は失脚するだろう。

 

 ギルド長の木島や他のエリア部長からも見捨てられるはずだ。錬金術ギルドから追放も可能だろう。

 

 その一方で俺は、ラルクノアを手土産に出世をして地位と金の両方が手に入ると。

 

 完璧な計画だな!!

 

「殺人となれば警察の捜査が入りますが……」

「お前らの誰かが自首すればすぐに終わる」

「身代わりですか……報酬は?」

「成功すれば採取したラルクノアの1本をやろう」

 

 怜司を含めた全員の目つきが変わった。

 

 売りさばけば、全員が死ぬまで遊んで暮らせるから当然だろう。

 

「今度こそ失敗は許されない。破格の報酬を渡すのだから、死ぬ気で達成しろ」

「かしこまりました」

 

 子飼いの探索者たちは全員、個室から出て行った。

 

 金目当てで働いている男どもだ。すぐにでも動き出すだろう。

 

 宇田川は俺をバカにした報いを受けるがいい。

 

 

 * * *

 

 

 精霊の力を解放すると髪色がかわると分かった日。俺はようやく何ができるのか、話を聞くことにした。どうやら昆虫に簡単な命令を出すほかにも、植物の成長をうながすことができるらしい。

 

 断定しないのには理由がある。力の解放を嫌っていたため、ユミ自身も能力についてはあまり把握していないようだ。

 

 虫の魔物とコミュニケーションが取れることだって、つい最近知ったばかりだしね。

 

 こんなことを知晴さんに言ったら、ずいぶんとのんびりしているなと呆れられてしまうだろうけど、それが俺たちなんだから仕方がない。好きなことさえできていれば、自分の能力なんてどうでもいいんだよ。

 

「マスター、今日の夜ご飯はどうします?」

 

 風呂に入って着替えたユミは、エプロンを着けたまま聞いてきた。

 

 正直、何でもいいんだけど、それを言ったら困らせてしまう。少し悩んで簡単に作れそうなものをオーダーする。

 

「親子丼にしよう」

「わかりました。三人分を作ります?」

「知晴さんの分はいらないんじゃないかな」

「それは冷たくないか?」

 

 帰りは明日になると思っていたのに、二階から知晴さんがおりてきた。

 

「早くない?」

「師匠の家にあるアレを使わせてもらった」

 

 転移門を使って戻ってきたんだ。

 

 勝手に使われたことに疑問を持つ。不快感はないんだけど、軽率なことをしたなと思ったんだよね。

 

「何かあったの?」

「珍しく察しがいいな。これから問題が起こるから早めに帰ってきたんだ」

 

 神妙な顔をしながら、知晴さんはダイニングの椅子に座った。俺の正面だ。

 

 ユミは冷蔵庫から鶏肉を出すと切り始めた。料理をしながら聞くことにしたみたい。

 

「問題って放置ダンジョンに侵入する人たちのこと?」

「そうだ。真犯人を挑発しておいたから、早ければ明日には来るぞ」

 

 挑発って何をしたんだよ……。すごく悪い顔をしているし、俺が想像できないことをしたんだろうな。

 

 少しだけ敵が可哀想になったけど、ユミにも危害をくわえるかもしれないと思ったら、容赦はしない。徹底的に叩き潰すつもりだ。

 

「裕真に任せていた仕事はどうなった?」

「予定どおりに終わらせたよ」

 

 警報装置やクロちゃんの配置を知晴さんに教える。

 

 事前に話し合っていたことを実行しただけなので、追加の指示はなかった。

 

「準備は終わっていて安心した。この問題が片付けば、人を増やす予定だ。錬金術で遊べる時間は増やせるぞ」

「今日一番の朗報だね。やる気が出てきたよ」

 

 面倒な仕事を他人に任せて、錬金術に専念できるなら文句はない。

 

 放置ダンジョンに人が訪れるようになれば行商もできるようになるだろうし、渋谷にいたときよりも楽しい生活ができそうだ。

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