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ヴァルキューレ警察学校の正門前にて、カンナとコノカ、来馬は別れの挨拶を交わしていた。
「本日はありがとうございました。先生のおかげで初心に立ち返り、見つめ直すことができました。」
カンナは晴れやかな顔で感謝する。
彼女の顔に先程の暗さは見受けられなかった。
「ぼくは尾刃さんの話を聞いただけだよ。立ち直ることが出来たのは尾刃さん自身の力だから。」
「その………来馬先生、私のことは今後カンナと呼んで頂けたら嬉しいです。」
「そっか、分かったよカンナ。」
少し気恥ずかしそうに言うカンナに笑顔で答える来馬。
その様子を見ていたコノカは「これが脈アリ……!?」と呟いてカンナの拳骨を喰らっていた。
そうして、カンナとコノカ、来馬は別れる。
今後、カンナを中心にヴァルキューレのみならず、連邦生徒会とシャーレそして今は廃校となっているSRT特殊学園の生徒たちを巻き込んだ大きな騒動が起こることはとある一人の男を除いて誰も知らない。
カンナとのやりとりから二日後、対策委員会の部室にいつもの5人と来馬が揃う。
今日はカンナから得た情報と来馬が独自に調べた情報を伝え、今後の対策を練る会議を始める。
だが、来馬はシロコ、ノノミ、ホシノの3人を見て違和感を覚えた。
シロコは時折ホシノを睨むように見つめ、そのホシノは気まずそうに目を逸らし、ノノミはシロコを心配するように見つめる。
その不可解な様子に疑問を抱く来馬だったが、今は会議の時間。
話は後で聞いてみるとして会議の進行を促す。
「そろそろ始めようか、アヤネ。」
「はい。それではアビドス廃校対策委員会定例会議を始めます!今回の議題は一連の事件に大きく関わっていると見られるカイザーローン及びカイザーPMCの調査結果と今後の活動計画についてです。」
そうして始まった定例会議。
セリカいの一番に手を挙げて、鞄から数枚枚の紙を取り出す。
それらの紙にはカイザーコンストラクションの名前で退去通知と書かれたものとカイザーとのアビドスの土地の取り引き履歴であった。
「まずは私たちからね。昨日柴大将から連絡があって、アヤネと行って聞いてみたら突然店にやって来たロボットにこの退去通知を突きつけられたっていうの。これがその時に突きつけられた退去通知よ。」
「これは……退去通知……!?」
「はい、カイザーコンストラクション名義の退去通知ですね。この事を受けて私も調べてみたのですが、アビドスのほとんどの土地がカイザーコンストラクションの所有になっていたんです……。」
「えっ………!?」
「カイザーコンストラクション………、カイザーの系列会社ですね……。」
「やっぱり、カイザーはアビドスで何かをしようとしている……!」
「はい、所有権が渡ってないのは本館として使っているこの校舎と周辺の一部地域だけでした………。」
その情報はその場にいた全員に衝撃が走る。
誰も言葉にすることはないが、この事実はアビドスの土地が全てカイザーのものになろうとしている事実を言外に表していた。
「でも、一体何故アビドスの土地の所有権がカイザーに……?」
「アビドスの生徒会、だね……。生徒会には学校の資産の議決権があるからね。」
「アビドスの生徒会は何やってたのよ!」
「まぁまぁ、生徒会の方でものっぴきならない事情があったんだよ……。」
「そういえば、ホシノ先輩もアビドスの元生徒会でしたね。」
「そうだね〜。あの時は私とおバカな生徒会長の二人だけでね〜。私たちは色々と動いていたよ〜。」
「おバカって、よくそんな人が生徒会長になれたわね……。」
「たぶんその人が生徒会長になった方が上手く回せたからじゃないかな。生徒会長に限らないけど、人を率いたり上に立つような人は人柄やリーダーシップとかが重要視されるから。」
アビドスの元生徒会長に苦言を呈すセリカにフォローを入れる来馬。
だが、来馬はそのアビドス最後の生徒会長を知っている。
ホシノと彼女の二人の学生生活は決して恵まれたものでは無かったが、それでも二人にとっては掛け替えのないものであったことがその時を語る彼女の懐かしそうな表情と昔を懐かしむようなホシノの様子から感じられた。
「でも、結局私たちは利子を返し続けることしか出来ずに、みんなの代まで残しちゃったから………。」
「そんなこと言わないで欲しい。この対策委員会があるのはホシノ先輩のおかげ。ホシノ先輩が責任を負うことじゃない。」
「ホシノたちが逃げずに利子を返し続けたおかげで今までアビドスを存続させることが出来たから今があるんだ。借金だって返済する目途も立ってきてるし、ホシノが責任を負うことじゃないよ。」
後輩を一人に置いていってしまったことに負い目を感じ、強い後悔をしていたチームメイトを重ねて、来馬はホシノを励ます。
その言葉にホシノは恥ずかしそうにしつつも感謝する。
「うへへ〜、そ、そんなに言われるとちょっと照れちゃうな〜。……ありがとう、みんな。」
「さて、しんみりと話はこれくらいにして……、話の続きからいきましょうか。」
「さっきの話となると………、何でアビドスの土地の所有権がカイザーに渡ってるのかってところかしら?」
「おじさんの意見としてはこの履歴を見る限り、カイザーの口車に乗せられて最初は砂漠の部分だけを売っていた。それでも借金は膨れ上がるばかりで余裕が無くなった生徒会は次第に市街地も売っていって………」
「いつの間にかほとんどの土地がカイザーのものになっていた…ということですね。」
元アビドス生徒会としての見解を述べるホシノ。
その内容は挙げられた資料とも色々と合致部分も多く、全員がホシノの見解に納得していた。
そして、セリカが昔のアビドス生徒会に苦言を呈す。
「もう!アビドス生徒会は何でそんなのに騙されたのよ!」
「アビドス生徒会の人たちもかなり追い詰められていたんだと思う。それこそ、カイザーの口車に乗せられちゃうくらいに。セリカの気持ちも分かるけど、本当に八方塞がりでどうしようも無かっただろうからあんまり責めないでくれると嬉しいな。」
「………それもそうね。悪いのは騙すような真似をしたカイザーね。ごめんなさい。」
すると、ノノミが一連のカイザーの動きについて核心的な疑問を投げかける。
「カイザーがアビドスの土地を狙う理由は分かりましたが、そうなるとどうしてアビドスの土地を狙ってるのでしょうか?」
「確かに、アビドスにあって他に無いのは砂漠ぐらい。カイザーが何のためにアビドスを狙っているのか分からない。」
「それについてだけど、ぼくに心当たりがあるんだ。」
来馬はカンナから聞いた情報をホシノたちに伝える。
その情報にホシノたちは非常に驚いていた。
「何それ!カイザーがアビドス砂漠に基地を置いてるってどういうこと!?」
「十中八九その基地がカイザーの目的に関係しているのは間違いありませんね。」
「それでしたら、その基地の調査に行きましょう☆」
「いいわね!実際に行って調べに行きましょう!」
「そうだね~、じゃあ早速準備して行こうか。」
ノノミの提案でカイザーの基地の調査に行くことが決定する。
そして、ホシノたちが準備をしようとしたところにシロコが待ったをかける。
「ちょっと待って。今すぐ行くのはまずいと思う。」
「シロコちゃん?」
「どうしてよ、シロコ先輩。調査に行ったらダメってこと!?」
「調査自体は良いと思う。でも、今のアビドス砂漠はカイザーの土地になってる。もし見つかったらカイザーから言いがかりをつけられるかもしれない。だから、私たちはカイザーにバレないように調査する必要がある。」
「なるほど、明るい内から行ったらバレやすいから夜になってから行こうってことですね♪」
「うん、それだったら夜に調査しよう。みんなもそれで大丈夫かな?」
シロコの提案に他の生徒たちは全員賛同し、夜に調査に行くことが決定する。
そして、夜になるまでは仮眠と準備の時間を取ろうということで一時的に解散となった。
来馬もシッテムの箱を二宮から借りるためにミレニアムに向かおうとしたところ、シロコが来馬に話しかける。
「先生、ちょっと話したいことが……」
「どうしたの、シロコ?」
「えっと………ここだとちょっとまずいからこっちの教室で……。」
シロコに手を引かれて別の教室で二人きりになる来馬とシロコ。
不思議そうな顔をする来馬にシロコは険しい雰囲気で口を開く。
その内容はホシノについてのことであった。
「ホシノ先輩のことについて話しておきたい事があって……。」
「ホシノについて……?」
すると、シロコはバッグから一枚の紙を取り出し来馬に手渡す。
その書類には退学·退部届けと書かれており、名前の欄にはホシノの署名が記されていた。
「これは……退部届け!?それもホシノの!?どうしてシロコがホシノの退部届けを持ってるの!?」
「実は……今朝教室の机にホシノ先輩のバッグが置いてあって、チャックが空いていたから閉じようとしたら見慣れない紙が挟まってるのを見つけて取り出して見たらその退部届けだった……。」
「シロコ……。一つ聞きたいんだけど、このことはぼく以外に話した人はいる??」
「先生以外にはまだ誰にも話してない。その紙を見つけてすぐにホシノ先輩が来て、私はこれについてホシノ先輩に問いただしたけど、ホシノ先輩ははぐらかすばかりで何も話してくれなかった。その後、ノノミが来てうやむやになっちゃってこの退部届けについては誰にも話してない。退部届けを返すわけにもいかなくてそのまま持ってきちゃったけど、人の物を盗んじゃって悪かったとは思ってる。」
「教えてくれてありがとう、シロコ。でも、流石に人の物を盗んじゃったのはまずいから後で一緒に謝ろうか。取りあえず、これはぼくが預かっておくね。」
「うん、ありがとう先生。」
その後、仮眠を取るため帰宅するシロコと別れた来馬はミレニアムへと向かっていった。
「みんな、こっちだよ。」
時刻は夜の8時。
来馬たちは奇妙な格好をして夜の砂漠を駆け抜けていた。
彼らは全員が学校指定のジャージの上にそれぞれ持ち寄った夜の砂漠の防寒と身元の特定を防ぐための外套やコートを羽織っている。
無論、それだけなら特段おかしいと思えるような部分は少ないが、彼らが奇妙な格好をしている所以は全員が番号の書かれた目出し帽を被っていることにある。
この目出し帽はシロコがアビドス全員で銀行強盗をするために作っていたものである。
結局、銀行強盗をすることは叶わなかったが、今こうして身元の特定を防ぐために活用されていることに満足しているようである。
こうしてホシノを先頭にセリカ、来馬、アヤネ、ノノミ、シロコの順番で走っていると、ホシノが不自然な光を見つけ、足を止める。
「どうしたの、ホシノ先輩?」
「みんな、あの光見える?」
「あれは……サーチライト?」
「映画でよくある刑務所とかの施設で脱走者や侵入者がいないか監視するサーチライト見たいですね。」
「ということは…あれが、カイザーの基地と見て間違いなさそうだね。」
「どうする?もっと近付いて確認してみる?」
「そうだね。ただ、近ければ近いほど見つかるリスクは高くなるから慎重に行こう。」
来馬はそう言うと、二宮から受け取ったシッテムの箱を起動してアロナに話しかける。
「アロナ、レーダーで周辺に巡視しているドローンやオートマタがいないか探してくれないかな?」
『お任せ下さい!ついでに監視が手薄なルートを表示しますね!』
「ありがとう、アロナ。それじゃあみんな、アロナの示してくれたルートで行こう。」
来馬はアロナの示した安全なルートで行くことを促す。
しかし、ホシノたちは彼が予想だにしていなかった反応をする。
「あ、あの………、先生は誰と話してらっしゃるのですか……?」
「え…………??」
それは、ホシノたちにアロナの存在が視認出来ず、声も聞こえないという奇妙事実を示していた。