突如現れた謎の襲撃者たちに呆然としていた来馬たち。
だがその中でも呆然とすること無く警戒していたホシノが盾を構え、愛銃のショットガン《Eye of Horus》の銃口をその襲撃者たちに向けて話しかける。
「一先ず、君たちが何者かは聞かないでおくよ。でも、この質問には答えて欲しいな。君たちは私たちの敵?味方?」
彼女たちの装いを見たホシノは素性を知られたくない相手であり、正体を聞いても教えてくれることは無いと察して、今ここで最も重要な敵味方の判断をするための質問を投げかける。
そして、呆然としていた来馬たちもホシノの質問を聞いて我に返り、再度四人を観察する。
彼女たちは膝あたりまで届くフード付きの真っ黒なマントを羽織り、そのマントの間からはジャージのような服が見える。
脚は短パンを履いているのか、膝から下は靴下と思われる部分まで生足になっており、顔は全員が目の部分だけが空いた真っ白な仮面をしていた。
その姿は仮面やマントの雰囲気からさながら死神のような出で立ちになっており、やや不気味な雰囲気を醸し出していた。
来馬たちが四人をまじまじと見ていると、リーダーと思われる人物がホシノの質問に答える。
「配慮をしてくれて助かる。質問に関しては、我々はあなたたちの味方であり危害を加えることは無いこと、あなたたちの脱出の手助けをするつもりでいることを言っておく。」
「なるほどね〜。それを聞いて安心したよ〜。いきなり出てきたから敵襲!?って思っちゃったからね〜。」
リーダーの答えに安心したホシノはほんの僅かな警戒を残しつつも、ほっとしたような表情をして武器を下ろす。
そして、ホシノは未だ困惑しているシロコたちに向き直って話し出す。
「ま、というわけだから私たちも行こうか。」
「いやいや、何言ってるの!?てか、あいつら何者なの!?どこからどう見ても怪しい集団ですって言ってるようなものじゃない!」
「それはわかんないかな〜。ただ、敵意とかは感じないから大丈夫かな〜って。それに、私たちもこんなところで悠長にしていられないし。」
「ん、流石にホシノ先輩の言葉でもそう簡単に納得出来ない。こっちを安心させておいて不意打ちを誘うかもしれない。」
「ホシノ先輩、私もシロコちゃんとセリカちゃんの意見に賛成です。素性も目的も分からない相手に背を向けるのは危険過ぎます。」
「私もです。先ずはあの方たちがどのような目的かどんな人かをしっかりと聞くべきだと思います。」
「まぁまぁみんな落ち着いて。先ずはホシノの話を聞いてみよう。それから、あの子たちが信用出来るかどうかを判断してみた方が良いと思うんだ。」
しかし、シロコ、ノノミ、セリカ、アヤネからは反対の声が上がる。
いきなり現れて、自分たちの味方と名乗る素性の知らない者たちを信用しろと言われてできるものは少ない。
その上、戦闘に長けているシロコ、ノノミ、セリカは先程のオートマタの鎮圧から彼女たちの自力と練度の高さを見抜いており、ホシノを除いて簡単に倒されてしまうことを危惧していた。
そんなシロコたちに対して来馬はホシノが信用する理由を聞いてみることを提案する。
シロコたちはその提案に頷き、ホシノは信用する理由を話し始める。
「おじさんがあの人たちを信用するのはこっちを攻撃する意志が無いからだね。」
「え?それってどういうこと?」
「先ずはあの人たちが出てきたとき。あの人たちはおじさんたちを追っていたオートマタやトリオン兵を倒した。でも、その後すぐに私たちに襲いかかることは無かったんだよね。」
「確かに私たちは驚いて固まっていたのに攻撃して来なかった。分かるけどそれだけじゃまだ納得出来ない。」
「他にもあるよ。おじさんたちが質問したとき、ちゃんと答えたんだよね。あの状況なら『お前たちに話すことは何も無い』とか言って去っていったり、答えるように見せかけて襲ってきたりすることも出来た。でもあの人たちはそれをしないどころかこっちの質問にちゃんと答えたんだ。」
「なるほど。私たちを害するなら答えるふりをして襲えば良いし、別の目的があるなら無視することも出来た。それをしなかったということはあの人たちに敵意は無い可能性が高い、ということですね。」
「そういうこと。もっと言えば、最初私たちの前に出てきたのは3人だったけど、3人ご出てきた方向に何人かの気配があった。その人たちが仲間だと仮定したら、その人たちで私たちをオートマタと同時に襲うことも出来たのにそれもしなかった。だから、あの人たちに敵意は無い。背中を見せても攻撃してくることは無いっていう信用が出来るんだ。」
ホシノの説明に納得したような表情を浮かべるシロコたち。
そして、ホシノは襲撃者たちに向き直る。
「ごめんね〜。待たせちゃったね。というわけで増援も来るだろうし、私たちは行くよ。さっきは助けてくれてありがとう〜。」
「感謝することの程でも無い。それに、先程話したように我々はあなたたちの脱出の手助けをするつもりでいる。増援とトリオン兵たちの足止めを引き受けよう。」
「えっいいの!?さっき助けてもらっただけでも嬉しかったのにそこまでしてくれるの……!?」
ホシノは彼女たちの申し出にまさかそこまでしてくれるなんてと驚く。
彼女たちは何てことないように言う。
「問題無い。あなたたち……というよりは来馬先生に個人的な恩があるだけだ。それに、傭兵程度に遅れをとるほど弱いつもりは無い。」
「そっか。それじゃあお願いするよ。みんな、行こう!」
そうしてホシノが呼びかけて行こうとしたところで来馬が待ったをかける。
来馬は彼女たちに近付いて言う。
「無理はしないでね。危ないと思ったらすぐに逃げて。それだけは約束して欲しいな。」
「………分かりました、約束します。」
「ありがとう、それじゃあ気を付けてね。」
来馬ははにかむように笑うとホシノたちに向き直る。
そうして、彼らはアビドスに戻るため再び駆け出す。
その様子を見た襲撃者………否、尾刃カンナは通信機を取り出し、命令を告げる。
『総員、増援のオートマタ、ドローン、トリオン兵の撃破にあたれ。先へは一歩も通すな。』
通信機からは重なった了解の声が聞こえる。
カンナは通信機を仕舞うと2人の部下に告げる。
「我々も行くぞ。ついてこい。」
「了解。」
「了解です。」
カンナたちはオートマタたちの足止めをするべく夜の砂漠を駆け抜けていった。
結果として来馬たちは無事に脱出、オートマタやトリオン兵に捕まることも無かった。
その後は夜21時を回っていることもあり、情報の精査や今後の活動方針については翌日に持ち越しそれぞれが帰路についた。
そして翌日、来馬はヴァルキューレ警察学校の公安局に来ていた。
「おっ、おはようっす!こんな朝早くにどうしたんすか?」
「………良かった。ちょっと昨日のこととトリオン兵関連でお話したいことがあって来たんだ。他の子たちもいるかな?」
「あ〜………、ちょっと待ってて下さいっす!」
書類の整理をしていたコノカに来馬が用件を伝えると、コノカは手を止めて来馬に待っているように伝えると、どこかへ行ってしまう。
しばらく来馬が待っていると、コノカはカンナを連れて戻って来た。
「お待たせしたっす!姉御を連れて来ました!」
「おはようございます来馬先生。コノカから話は聞いています、こちらへどうぞ。」
来馬はカンナの案内で応接室に入る。
そして、来馬とカンナ・コノカが向かい合うように座ると、カンナが早速話を切り出す。
「この部屋には録音機等の音声を聞き取る機器はありません。我々以外に誰かが隠れているということもありません。
「!」
「まぁそういうことっすね。何か呟いておきたいことがあるならここが良いっすよ。あ、私たちは何も聞いてないっすよ。」
カンナとコノカはヴァルキューレ警察学校の公安局局長と副局長であり、本来なら犯罪を取り締まる側の人間であり、犯罪を犯すなんてことはあってはならない立場である。
彼女たちが行ったことは本来なら私有地への不法侵入になり、その上で同じく不法侵入をしている来馬たちの逃走の手助けをしたため幇助が成立する。
つまるところ、カンナとコノカは昨日の件をあくまでも無関係であることを貫いていることの意思決定であり、昨日のことについて何か話したいなら独り言ってことにしてね、というそれとない提案でもある。
ちなみに、カンナは自分で決めたことながら犯罪を許さないという意志を固めたのにこういうことをしたことに複雑な感情であったが、コノカの「これは潜入調査!潜入調査っすから!あの人たちを助けたのも潜入捜査のため何で問題は無いっす!いや本当に問題が無いわけでは無いんすけど……」という説得で何とか踏みとどまったという話があったとか無かったとか。
閑話休題、来馬もカンナとコノカの発言からある程度意図を察して独り言という体で助けてくれたことへの感謝を述べる。
「……これはぼくの独り言だけど、昨日カンナたちが助けに来てくれて本当に助かったよ。あの後、ぼくたちも無事に逃げることが出来た。本当にありがとう、カンナたちのおかげだったよ。」
「「………」」
二人からの言葉は無い。
しかし、二人の目はしっかりと来馬の方を向いており、確かにその感謝を受け取ったという意思表示をしていた。
その後、三人の間には沈黙が流れる。
しばらくして、頃合いを見計らっていた来馬が口を開き、三人は本題についての話を始める。
「…つ、次の話に移ってもいいかな?」
「…そうですね。確か…トリオン兵についての話でしたね。」
「うん。これはぼくがアビドスの子たちからの協力を得て独自に調査して分かったことなんだけど、カイザーPMCがトリオン兵を所持しているという事実が判明したんだ。同時に何かしらのトリガーかトリオン製の武器を所持している可能性も浮上したんだ。今回はそれについて二宮君たちや七神さん、ミレニアムの子たちに後はゲヘナ学園の風紀委員長さんも交えて会議を行う予定なんだ。そこで、二人にも会議への出席をお願いしたくて来たんだ。」
「はえ~すごい面子っすね。でも、その面子ならあたしたち要らなくないっすか?連邦生徒会に連邦捜査部シャーレ、果てはミレニアムにゲヘナまで。流石にその人たちだけじゃ無いだろうし、人が多くなり過ぎたら何処かで情報が漏れるかもしれないっすよ?」
「いや、私たちも必要だ。トリオン兵は現在シャーレの先生方を主導に対処や対策が行われている。そんなトリオン兵を所持しているとなれば捜査をするのは当然だ。そこで、捜査のプロとも言える私たちが必要になる、そのような考えでよろしいでしょうか、来馬先生?」
コノカの疑問に対してカンナは自身の推察を話した上で来馬に確認をとる。
来馬はカンナの確認に頷き、より詳しい話を続ける。
「そうだね、カンナの考えは合ってるよ。もっと言えば、長期的なトリオン兵への対処と対策のために早期にヴァルキューレとは密な連携をしていきたいからその挨拶も兼ねているんだ。」
「なるほどっすね〜。理由は分かりましたけど、その会議はいつやるんすか?」
「カイザーPMCがトリオン兵を隠すかもしれないことを考慮して今日の15時から始める予定だよ。カイザーPMCもこっちの動きに気づいている可能性が高い。隠されたら捜査をしても躱されてしまうからね。それに人員についても必要最小限の人員で行う予定でいるから大きな問題は起こり辛いと考えているよ。それと場所はサンクトゥムタワーの大会議室で行う予定だからよろしくね。」
「そうですか、それでしたら私たちも会議に出席させて頂きます。」
「よろしくっす来馬先生!」
来馬の説明を聞いて納得したカンナとコノカは出席の意思を見せる。
その言葉に来馬は喜び、その後アビドスの生徒たちと会議に向けての情報の擦り合せをすることを伝えてヴァルキューレを後にする。
そして、コノカとカンナも会議に向けての準備を進め………
15時、サンクトゥムタワー会議室―――
アビドス廃校対策委員会、連邦捜査部シャーレの先生二宮匡貴、来馬辰也、太刀川慶、加古望、堤大地、ミレニアムサイエンススクールセミナー会長調月リオ、特異現象捜査部部長明星ヒマリ、C&C部長美甘ネル、エンジニア部部長白石ウタハ、特別顧問冬島慎次、ゲヘナ学園風紀委員会委員長空崎ヒナ、連邦生徒会生徒会長代行七神リン、ヴァルキューレ警察学校公安局局長尾刃カンナ、副局長コノカ。
以上19名による会議が開かれる。
幇助とか法律の話は勝手な解釈です。銃刀法違反?そんなもの、うち(キヴォトス)には無いよ……。
後、勝手な話で申し訳ありませんが、無期限でこの作品の投稿を休止します。
また、モチベーションが安定してきたら投稿を再開しますので待って頂けたら幸いです。