ヴァルキューレに送られるヘルメット団たちを見送った後、来馬たちはアビドス校舎に戻ってきていた。
「先生のあの説得も凄かったね〜。」
「まぁ先生のおかげでヘルメット団がもう襲ってくることは無いわけだし、感謝するわ。本当にありがとう、先生。」
「ぼくはそんな大したことはしてないよ。ヘルメット団を抑えることが出来たのはアビドスの皆のおかげだから、むしろこっちが感謝したいくらいだよ。」
「そう言っていただけて嬉しいです☆」
「本当にありがとうございました!」
「ありがとう、先生!感謝するわ!」
「ありがとう先生。先生が来てくれて助かったよ〜。」
それぞれ来馬に感謝を述べるホシノたち。
すると、ノノミが先程の来馬とカタカタヘルメット団たちとのやり取りで気になっていたことを質問する。
「そう言えば、先生はカタカタヘルメット団をシャーレに迎え入れるって話をしてましたが、他の先生方には話さなくて大丈夫何ですか?」
「実は元々不良生徒たちの更生プログラムとしてシャーレに所属してぼくたちと一緒に活動するっていうものを計画していたからね。二宮くんたちや連邦生徒会の子たちにも話を通してからにはなるけど、決して無計画な話じゃないよ。」
「なるほど〜。元々考えていたことだったんですね〜。」
「みんなも他に聞きたいことはあるかな?」
来馬の話を聞いてノノミは納得する。
来馬が他の生徒からも質問を募ると、シロコから手が挙がる。
「ん、それなら私も。あの服装が変わったり、銃が出てきたり、バリアみたいなのが出てきたやつについて説明して欲しい。」
「そうか、それについてもまだ話してなかったね。まずはぼくが戦う時に使ってる……この『トリガー』から説明するよ。」
来馬はトリガーとトリオンについて、いくつかを掻い摘んで説明する。
対策委員会の生徒たちはいくつかの疑問を残していたが、来馬の説明に納得していた。
「なるほど、トリオンにトリガーかぁ………そういえば。そのトリオン器官っておじさんたちにもあるの〜?」
「たぶんあると思うよ。ただ、トリガーを使って戦う場合はある程度のトリオン量が欲しくなるから、それだけのトリオン量があるかどうかになるね。」
「ん、なるほど。ありがとう先生。」
「ありがとうございました来馬先生。それでは、先程の話に移りましょうか。」
「え?先程の話って何?」
「ん、何の話?」
アヤネの言葉に首をかしげるセリカとシロコ。
その様子を見たノノミが二人が来る前に話していた内容について説明する。
「そういえば、セリカちゃんとシロコちゃんは少し遅れて来たので分からなかったですね。なんと、来馬先生が私たちアビドス廃校対策委員会の活動を手伝ってくださるんです!」
「えっ!?どういうこと!?」
「先生からねアビドスの復興活動をお手伝いしたいって言われたんだ。先生自身でもアビドスについて調べててね。私たちは賛成だけど、セリカちゃんとシロコちゃんからも意見を聞いておきたくてね。」
「二人が良ければ、ぼくもアビドスの復興活動を手伝いたいんだ。」
「ん、なるほど。良いと思う。先生は良い人だから信用できる。」
「えっ、ちょっ………何でみんな簡単に受け入れてるの!?私は反対よ!先生は良い大人かも知れないけど、納得出来ないの!」
来馬がアビドスの復興活動を手伝うことに賛成するホシノたちにセリカは動揺しつつも反対の意思を示す。
セリカとしては今まで騙されてたり搾取をしてきた大人への不信感が強く、来馬が良い大人であることを理解しつつも納得出来なかったのである。
「う〜ん、やっぱりセリカちゃんは反対かぁ〜。」
「仕方ないよ。黒見さんの言う事も一理あるからね。誰だって知らない人がいきなり手伝いたいなんて言われたら、不審に思うのは当然のことだよ。。まずはみんなから信用してもらえるように行動で示していくよ。だから、みんなには少しだけ時間が欲しいんだ。」
「で、でも先生はこっちに来るまでアビドスについて調べてたなら、アビドスに九億の借金があることも知ってるのよね?先生はそれでもアビドスの復興を手伝いたいって思ってるの?」
「そうだね。アビドスに9億の借金があって、自治区が衰退していて………そんな現状を知った上でぼくは君たちを手伝いたいって思ってる。できることは多くないかもしれないけど、少しでも力になりたいんだ。」
「うーん…………」
「一度信用してみても良いんじゃないかな〜。今までの大人は騙そうとするか、事情を知ったら見捨てる大人ばっかりだったけど、来馬先生は私たちの事情を知っても助けたい、手伝いたいって言ってくれるし。」
セリカはそんなホシノの言葉を受けて考える。
セリカとしてはまだ来馬が手伝うことに納得はできていないが、ホシノが言ったようにここまで知った上で手伝うと言ってくれた大人はほとんどいなかった。
セリカは一度だけ来馬を信じてみることを決める。
「…………………わかったわ。一回だけ先生のことを信じてみる。でも、私たちも本気でやっているから先生も中途半端なことはしないでね!」
「ありがとう、黒見さん。ぼくもみんなの力になれるように頑張るよ。」
「あ、そうでした。セリカちゃんとシロコ先輩からまだサインを貰ってなかったです!」
「サイン?何かあるの?」
「ほら、前にアヤネちゃんが依頼した支援物資が届くことになったんだけど、私たち全員分の署名が必要だから二人からもサインが欲しいってことなんだ〜。」
「ん、なるほど。」
「わかったわ。えっと……この書類かしら?」
シロコとセリカはその書類にサインを書き、来馬はそのサインの確認をする。
全員分のサインを確認した来馬はシャーレ本部に物資の搬入を連絡する。
どうやら、30分ほどで到着するようだ。
「30分ぐらいで着く予定だね。ヘリで搬入されるから時間になったらグラウンドに出ていこうか。」
「いや〜、本当に助かったよせんせ〜。おじさんたちもギリギリでやってたからこれでかなり余裕ができるよ〜。」
そして30分ほどが経過し、来馬たちはグラウンドに出てヘリの到着を待っていた。
「あっ、もしかしてあのヘリでしょうか?」
「うん、そうだね。よし、みんな!搬入の準備をしようか。」
「とりあえず、運ぶための台車はあるわ。」
「搬入物の保管は一階に使われていない備品室があるからそこに運ぼうか。」
「準備はできていますね。まずは、搬入物の確認をして、確認が終わったものから運び入れていきましょう。」
グラウンドの中央にヘリが着陸し、中から二人出てくる。
運転室からは連邦生徒会に所属する交通室の生徒が、そして、ヘリの後部座席部分からはゲヘナに行っていたはずの太刀川が現れた。
来馬は太刀川を見るなり、彼がこの場にいることに驚いて聞く。
「よー来馬。ここがアビドスか。話には聞いていたが、本当に砂だらけだな。」
「た、太刀川くん!?ゲヘナに行ってたんじゃ………。」
「ん?あー、ゲヘナでの活動が早く終わってな。ちょうどシャーレ帰ってきた時に支援物資をアビドスまで運ぶって話を聞いてな。時間も空いて暇だったし、物資運ぶのにも人手は多いほうがいいからってことで乗ってきた。」
なんてこと無いように答える太刀川。
太刀川のことを初めて見る対策委員会の生徒たちは首をかしげる。
来馬からはシャーレの先生は全員同い年であるということを聞いていたが、目の前の太刀川は来馬と同い年に見えないのだ(主に髭のせい)。
アヤネは来馬に太刀川について質問する。
「来馬先生、こちらの方は………?」
「この人は太刀川慶。ぼくと同じくシャーレの先生で、今は三大校のゲヘナ学園を中心に活動しているよ。」
「太刀川慶だ、よろしく。」
「よ、よろしくお願いします。アビドス廃校対策委員会一年の奥空アヤネです。」
アヤネの挨拶に続いてホシノ、シロコ、ノノミ、セリカが挨拶する。
ヘリの運転をしていた連邦生徒会の生徒との挨拶も終わった彼ら(彼女ら)は手分けして、アビドスの倉庫に物資を運んでいく。
「んじゃ、大きい物から運んでいくか。」
「ノノミちゃん、そんなに持って大丈夫……?」
「大丈夫です!これでも力には自信がありますので♪それに、先生方もそんなに持てて力持ちですね!トリオンの力は偉大です☆」
「重いものも持てるなんてトリオン体って凄いのね。」
「ん、私たちにもトリガーが欲しい。」
「ごめんね、シロコちゃん。ぼくたちにはトリガーを作ったり出来る技術が無くて……。」
「ん、残念。」
物資を運び終えた来馬と対策委員会の生徒たちはシャーレに帰る太刀川たちを見送っていた。
「流石に太刀川先生もアビドスの復興を手伝いたいって言い出さなくて良かったわ。」
「まぁ、来馬がいるからな。来馬がアビドスの復興を手伝うんなら俺まで入る必要は無いな。まぁ、強いて言うなら戦闘に関してちょいと不安はあったがそれに関しては問題なさそうだからな。」
太刀川はホシノの方を見ながらそう言う。
太刀川は初めて会ったときからホシノの実力を見抜いていた。
ホシノは太刀川がヘリから降りたタイミングから後輩の生徒たちを庇える位置に取り、何かこちらが変な動きを見せればすぐに守れるように不自然にならない程度に盾を構えていた。
その事に気付いた太刀川はホシノのその動きに只者では無いことを悟っていた。
「うへ〜、それは
「……ほぉ……。」
「ホシノ先輩……?」
「小鳥遊さん……?」
ホシノはそんな太刀川の言葉にそう返す。
太刀川がホシノの挙動に気付いていたように彼女もまた太刀川の動きを見抜いていた。
太刀川はホシノが警戒していることを悟るまでは腰に下げている得物…弧月の持ち手あたりに手を置いて、直ぐに弧月を抜けるようにしていた。
彼としては生徒を信用していないわけでは無いが、キヴォトスに来てからは何処に行っても銃撃戦が繰り広げられており、普段からも何かがあった時に素早く対応出来るようにするため、弧月に手をかけるように心掛けていた。
無論、太刀川はホシノの警戒に気づいてからは腰から手を離し、攻撃の意志は無いことを示していたが。
二人の間に剣呑な空気が流れる。
「まぁ、取りあえず荷物も運び終わったし俺は帰るぜ。後は頼んだぞ、来馬。」
「ぼくも対策委員会の力になれるよう頑張るよ。」
「お前たちもまたな。復興活動頑張れよ。」
「ん、先生に言われるまでも無い。」
「あはは~、じゃあね〜太刀川せんせ〜。」
太刀川が早々に話を切り上げたことで二人の間に流れていた剣呑な空気も直ぐに解け、太刀川はヘリに乗り込む。
太刀川を乗せたヘリが飛び立ち、シャーレの方向へと機体を向けて帰っていった。
時刻は夜10時頃、来馬はアビドス高校から少し離れたところにあるホテルにいた。
太刀川を見送った後、時間的にも夕方に近づいていたため来馬と対策委員会は解散し、各々が帰路についた。
予約を取っていたホテルの一室で、来馬はアロナと話をしていた。
「宿泊予約を一日だけで取っておいてちょうど良かったね。」
『はい!明日からはアビドスの校舎で寝泊まりが出来ますね!』
来馬はホシノからは空き教室を使っても良いとの話を受けており、今日はホテルの予約をしていたため泊まることは出来なかったが、明日からはアビドスの空き教室で泊まることになっていた。
寝具に関しても仮眠用の布団があったため、問題は無かった。
(やっぱり『あの子』から聞いていた小鳥遊さんと今の小鳥遊さんはかなり違っているな……。いや、当時は二人だけでアビドスの復興活動をしていたんだ。そんな時にいきなり一人になれば、心境に変化が訪れるのは何も不思議じゃない。どちらにしても、今のぼくはアビドスのみんなから十分な信頼関係を築けていない。まずはそこからだ。)
来馬はホシノの変化について考察し、また対策委員会からの信頼を築けていけるように再び気を引き締める。
そして、アロナに労いの言葉をかける。
「アロナも今日はお疲れ様。アロナのサポートのおかげで戦闘がスムーズに運べて本当に助かったよ。」
『はい!このスーパーAIのアロナちゃんにかかれば、この程度朝飯前です!』
「うん、頼もしいね。今後も頼りにさせてもらうよ。それじゃあ、明日も早いからそろそろ寝ようか。」
『はい、おやすみなさい来馬先生。明日もよろしくお願いします。』
「うん、よろしくねアロナ。おやすみ。」
来馬とアロナは、明日に備えて共に深い眠りについた。