特級呪術師のデストピア   作:クモッ!

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 やっとマザーホエール突破した...やっぱりニケは力だ!力を持つものが全てを征するんだ!!(過激派)


奪還、白界の城

 ランドイーターとの交戦に入った夏油たち、研究基地の周りを鉄板の壁で覆い、本体であるランドイーターは半球で研究基地に張り付いているように見える。また、ランドイーターの背部は空を向いており、ウニの針のように銃身を付けるだけつけている。

 

 ラピたちは手筈通り、両側面の外部装甲に攻撃を集中する。その時、ランドイーターの銃身から球状の砲弾がラピたちに向け発射される。ルドミラはリロード中、夏油にアイコンタクトで援護するように伝え、夏油は頷いてラピたちの死角からイカの呪霊を発射して砲弾を相殺する。

 

 

ルドミラ「奴の実弾は経年劣化で自爆するわ、構わず攻撃を続けて!ビーム攻撃が来たらしもべが皆に伝えるように言ってあるわ!」

 

ラピ「ラジャー!」

 

アニス「頼んだわ、指揮官様!!」

 

ネオン「これで私の火力を、奴にぶつけることができます!」

 

アリス「お願いします、ウサギさん!」

 

夏油「あぁ!任せてくれ!!」

 

 

 ランドイーターの砲弾は絶え間なく発射されるが、悉くラピたちに着弾することなく爆散していく。その間にラピたちは左右の外部装甲を破壊し、半球の中央にある塔に攻撃を集中させる。

 

 実弾では効力が無いと判断したランドイーターは、主力攻撃をビーム砲に変更。夏油は攻撃パターンが変化したことをラピたちに伝える。

 

 

夏油「! ビームを発射した! 奴の攻撃パターンが変化したよ!」

 

ルドミラ「奴の塔は見た目以上に脆いわ! 外部装甲よりも早く壊せるはずよ!!」

 

アニス「じゃあ、ビームが当たる前に破壊できるってわけね!」

 

ネオン「その程度では、私の火力道は止まりません!!」

 

アニス「何その道!?」

 

アリス「私も負けません!!」

 

アニス「対抗心燃やさなくていいから!!」

 

ラピ「攻撃を続行します!!」

 

 

 ビームの発射に怯むことなく、ランドイーターの塔に攻撃するラピたち。やがて塔は爆破と共に破壊され、ラピたちは遮蔽物に身を隠してビームの被弾を避けられた。リロードその際にリロードを済ませたラピたちは、ランドイーターが遠目で振動していることに気付く。

 

 振動が激しくなる中、ランドイーターの周りを覆っていた鉄板の壁が崩壊し、ランドイーターの全容が明らかになる。鉄板の裏には、ランドイーターの顔と四本の足が現れ、その全容をアニスは大声で叫ぶ。

 

 

アニス「アイツの本性亀だったの!?」

 

ネオン「鉄板で覆われていたということは...足が弱点ですね!!」

 

ルドミラ「違うわ、装甲が剝がされて露出した二つのコアが弱点よ!!」

 

アリス「分かりました! 女王様!!」

 

ラピ「攻撃を再開します!!」

 

 

 ランドイーターの実弾を発射できる砲身が無くなったのか、ビームによる攻撃を展開する。ビームが着弾する瞬間に、夏油はラピたちに呼びかけて遮蔽物に身を隠すように伝える。ラピたちも左右にあるコアに攻撃を集中する中、夏油はランドイーターが重い足を上げて少しずつ、こちらに接近していることに気付いた。

 

 

夏油「...っ! やはり、ランドイーターがこちらに少しずつ接近している!!」

 

ラピ「ルドミラ! 接近したらどうなるの!?」

 

ルドミラ「構わなずに攻撃して! 奴がこちらに近づいても的が近くなってくるだけだから!!」

 

アニス「飛んで火にいる夏の虫ぃ!!」

 

ネオン「逃げずに私に近づいてくるとは、余程私の火力の錆になりたいらしいですね!!」

 

アリス「えいっ!えいっ!!」

 

 

 攻撃を続行するラピたち、途中にランドイーターがエネルギーを充填している動作があったが、シフティーがいたら表示するであろう赤いターゲットの位置に、夏油はイカの呪霊をぶつけて怯ませている。

 

 ラピたちの攻撃によって限界に達したのか、ランドイーターの最後の装甲が剝がれ落ちていき、銃身も無くなってしまった。しかし、ランドイーターは止まらなずに、ラピたちを見つめて自身の体を振動させる。

 

 その行動からルドミラは、ランドイーターから最後の攻撃を放つ準備をしていると理解し、夏油は右上と左下に稲妻が集中していることから、エネルギーを蓄積している箇所だと判断し伝える。

 

 

ルドミラ「っ! 最後の最後で大技を使うつもりよ!!」

 

アリス「そんな! 女王様、私たちはどうすれば...!」

 

夏油「奴の右上と左下に稲妻が集中している! おそらくそこにエネルギーを貯めているタンクがある!!」

 

アニス「ほぼ直感じゃない!」

 

ネオン「私は師匠の言葉を信じます!!」

 

ルドミラ「私とアリスは左下を攻撃するわ!」

 

ラピ「アニスとネオンは右上を! 私も左下に攻撃する!!」

 

 

 攻撃している間に、ランドイーターの半球に青い光球が集まり光り輝いている。ランドイーターは顔を空に向け、エネルギーの充填が終わったのか、再びラピたちの方を向く。

 

 その瞬間、攻撃が集中していたランドイーターの右上と左下が大爆発する。ランドイーターは、大爆発によって損失したエネルギーを貯める為、再びエネルギーの充填を開始する。

 

 ランドイーターのエネルギータンクは計4つあり、それぞれが外敵を排除する為の攻撃のエネルギーとして運用される。だが、そのエネルギーに耐えられ無いほど被害が甚大だったランドイーターは、姿勢を崩し立ち上がることができなくなってしまい、断末魔のような機械音を響かせて、足と口が分解されたことで、ランドイーターは完全に機能を停止した。

 

 もう動かないことを確認したラピは、戦闘終了報告を呼び掛ける。ネオンは自身が火力の極致に到達したことを嘆いていた。

 

 

ラピ「...機能停止を確認。」

 

ネオン「ああ...建物まで壊してしまうなんて、私の火力はもう()()に達してしまったようです。

 ...師匠。私はもう下山します。...これ以上、目指す境地がありません。」

 

夏油「本当にそれで終わりだと思っているのかい?」

 

ネオン「???」

 

夏油「()()というのは、頂き(天井)があることで初めて成立する。けど君はそこに到達していない。」

 

ネオン「!?...私はまだ()()ではない...!?」

 

 

 夏油の言葉に冷や汗を流しながら、期待の眼差しで夏油を見つめるネオン。そのネオンの様子を見て、話を続ける夏油。

 

 

夏油「そう、頂き(天井)は自分で決めるものじゃないんだ。建物で満足せずに、もっと欲張るんだ。」

 

ネオン「欲張る...では、師匠は次の目標が見えていると...!?」

 

夏油「あぁ、次の目標は軌道エレベーターだ。」

 

ネオン「!!」

 

夏油「あらゆる存在を、圧倒できるようになった瞬間、君の言う()()に到達するんだ。」

 

 

 ネオンは夏油の言葉に、感極まって涙を流しながら夏油を賞賛する。

 

 

ネオン「流石は師匠...! 私の自信過剰でした!!

 真の極限とは、先の見えない目標を自分で見つけ、その魂が燃える限り続くもの...っ!

 私は感動しました! 一生ついていきます!師匠!!」

 

夏油「あぁ、共に頑張ろう。」

 

ネオン「はい!」

 

 

 夏油の熱弁とネオンの感涙に、アニスは(≖ࡇ≖)という顔で二人に呆れながらも、ランドイーターを指さして動かないか確認を取る。アニスの疑問にルドミラが答え、内部の状況を心配する。

 

 

アニス「...また動いたりしないよね、これ。」

 

ルドミラ「多分。内部が無事かどうかが気になるけど...」

 

アニス「侵入してみるしかないんじゃないかしら?」

 

ルドミラ「そうね。...少なくとも、記録だけは無事だといいんだけど。」

 

夏油「...そうだね。」

 

 

 ルドミラは、夏油の目的である、()()()()()()()()()()()が無事かどうかを心配する中、アリスは笑顔でルドミラに問いかける。

 

 

アリス「女王様! もう私たちの家を取り戻したんですか?」

 

ルドミラ「そうよ、アリス。しもべとその仲間たちの力のおかげってところね。私が呼んだ、しもべとその仲間たちのおかげよ。」

 

アリス「わあー! 女王様、最高です!」

 

 

 アリスがぴょんぴょんとルドミラを褒める中、ラピは夏油に、研究基地への侵入許可を申請する。

 

 

ラピ「指揮官。侵入を許可してください。」

 

夏油「あぁ、侵入しよう。」

 

ラピ「ラジャー。」

 

 

 夏油の宣言に応じた後、ラピは研究基地に向けて歩を進める。ラピに続いて夏油、アニス、ネオン、ルドミラも研究基地に向かい、アリスも駆け足で侵入していく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 研究基地の内部に入った夏油たち、正面門を潜った後にルドミラは鉄の扉を見つける。その扉を開けようと扉のボタンを押す。

 

 しかし反応が無いことから、眉を顰めたルドミラは扉の側面になるタッチパネルに触れる。するとルドミラは右手を顎に添える。そのルドミラの様子を見て、ラピは声をかける。

 

 

ルドミラ「ん...?これは困ったわね。」

 

ラピ「何が起きているの?」

 

ルドミラ「セキュリティーが生きているわ、侵入できない。」

 

アニス「え~? なんで?」

 

ルドミラ「それは分からないわ。カードキーがあれば侵入できるけど、脱出で忙しかったから、持ってこれなかったのよ。」

 

夏油(...カードキー、あの踊りか...)

 

 

 研究基地内部にカードキーを置いてきてしまったるどミラは、侵入できないと伝える。カードキーと聞いた夏油は、マスタングが見せたダンスを思い出し、『ふふん。』と胸を張るネオンは、ルドミラに問題ないと伝える。

 

 

ネオン「心配しないでください。」(『ガチャ。』という音と共に、ネオンは銃を扉に向ける。)

 

夏油「えっ?...ネオン??」

 

ネオン「こんな薄っぺらい扉なんて、私の火力で吹っ飛ばしてみせます。」

 

ルドミラ「やめましょう、厚さが40cm以上もある合金鉄板なのよ。

 個人火器で突破できるレベルじゃないわ。」

 

ネオン「なんと...極限に達したと思っていましたが、ただの自信過剰だったみたいです...。」

 

夏油(...彼女の熱意に火をつけ過ぎてしまった...)

 

 

 ネオンは鉄板を突き破り、無理やり侵入しようとするが、ルドミラの説明を聞いて止まる。ネオンの行動を見た夏油は、次から元気付ける時は程々にすると決めて、服の胸ポケットからカードキーを取り出す。

 

 

夏油「カードキーはこれでもいいのかい?」

 

ルドミラ「...ん?」

 

 

____________________

 

 

 時は北部に向かう前、エレベーターに乗る前まで遡る...

 

 

マスタング『Meが通行許可証をあげまShow.

 But、このPassはちょっとSpecialなものDESU.』

 

マスタング『今、Meがやった動作をするとPassがActivation!

 My Company! テトララインのTechnologyが集約されたPassなのDESU!』

 

 

____________________

 

 

 そして時は戻り、現在。夏油はマスタングが見せたあのダンスを思い出し、ラピたちの前でやることに抵抗感があるが、背に腹は変えられないと諦めて踊り出す。

 

 

夏油「...仕方ない。」

 

アニス「しっ、指揮官様...?」

 

ネオン「ラピ、アニス。私、変です。」

 

ラピ「何が。」

 

アニス「何?」

 

ネオン「恥ずかしいです...。」

 

アニス「それは...私も。」

 

ラピ「......」

 

 

 夏油のダンスを見て、ラピたちはそれぞれ憐れむような視線を、同情するような視線を、或いは恥ずかしくなっている視線を向けていた。そして夏油の顔は、無表情で死んだ魚の目をして黙々と踊っていた。

 

 一方夏油のダンスを見たアリスは、ランドイーターに勝利したことで踊っていると勘違いし、ルドミラは夏油の心情を汲み、アリスに続きダンスを始める。

 

 

アリス「あ!! それは勝利の舞いですか? 女神に捧げるという...?

 私もやります! 女王様も一緒にやりましょう!」

 

ルドミラ「そうね、そうしましょう。」

 

 

 3人揃ってふわりふわりと踊り、その踊りを3人はただ見守る。ルドミラが微笑みながら夏油のダンスを賛美し、アリスは踊ったことないダンスに満面の笑みで楽しんでいる。...しかし夏油の表情は変わらず、声に覇気がなかった。

 

 

ルドミラ「凄い踊りね、しもべ!」

 

夏油「女王様こそ、体のキレが凄いですよ。」

 

アリス「凄いです!こんな踊りは初めてです!」

 

夏油(この踊りは、これで最初で最後にしたい...)

 

 

 サイドでルドミラとアリスが微笑みながら楽しく踊り、センターで夏油は無表情で死んだ魚の目をしながら踊っていた。このシュールな光景が1分程続き、ダンスが終わったと同時にカードキーが光り出す。

 

 

ルドミラ「これで中に入れる筈よ。」

 

夏油「素晴らしい技術力だよ...ほんと。」

 

ラピ「...お疲れさまでした、指揮官。」

 

夏油「ありがとう...ラピ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 1分半ほど奇妙な踊りを踊った後、合金鉄板の扉の先を通り廊下を歩いている夏油たち。廊下を見渡すと傷や銃痕などの争いの痕跡が無いことから、ラプチャーから手を出されていないと分かる。

 

 

ルドミラ「幸い、こっちにはあまり手を出していないみたいね。あっちの端末を調査するといいわ。私が後ろで、資料の経路を教えてあげる。」

 

アニス「なんで? 罠でも仕掛けてるの?」

 

ルドミラ「どういう意味だ?」

 

アニス「なんで自分でやらずに、私たちにやらせるかってことよ。」

 

夏油「あぁ、それは...」

 

ルドミラ「大丈夫よしもべ、今から見せるわ、その理由を。」

 

 

 そう言ったルドミラは、近くにあった横にあった小さな端末を触る。ルドミラが触った瞬間、小さな端末は『ジジジーッ!』という音と同時に稲妻が走り、数秒と経たずに黒い煙を上げて機能を停止した。

 

 この光景を見たアニスは、超常現象じみた光景に動揺する。

 

 

アニス「...超能力?」

 

ルドミラ「まあ、こういうことよ。何故か私が触る機械は全部故障してしまうの。」

 

アリス「だから家にある機械は全部、私がコントロールするんです!」

 

アニス「な、なんで。」

 

ルドミラ「私にも分からないわ。...まあ、どうやら私は、壊れているものしか触れられないみたいなの。」

 

 

 ルドミラの体質について説明した後、ラピはルドミラが最初に指示を出した端末に向かい、操作するがパスワードがかかっていることを伝える。ルドミラは直ぐにラピの元に向かう。

 

 

ラピ「...パスワードがかかってる、何?」

 

ルドミラ「パスワードは、WonderLand。大文字と小文字に気を付けて入力して頂戴。」

 

夏油「この場合、WとLが大文字か...」

 

ルドミラ「さあ、次はあのフォルダよ。それからそのファイルを開けて...

 違う、そのファイルじゃないわ、それはゲームよ。Digital Copって知ってる?古いけど名作なの。

 その隣のファイルよ。そう、それを開けてパスワードを入力して頂戴。」

 

夏油「ファイルの名前を言えばいいんじゃないか...??」

 

ルドミラ「パスワードは SuperUltraNikke よ。」

 

ラピ「......」

 

ルドミラ「その画像をスクリーンに出力させて。北部の全体地図よ。

 そして、画面に表示されているのは巡礼者、つまりピルグリムを目撃したところ。」

 

 

 端末の上部にあるスクリーンに、研究基地を中心とした北部の全体地図が表示され、赤い円で囲っている箇所が何ヶ所かある。ラピはその地図を見て、ルドミラに実際に見たことがあるのか質問する。

 

 

ラピ「目撃したことがあるの?」

 

ルドミラ「遠くからね、実際あった事は無いわ。それから今画面に表示されているのが、巡礼者が出没する時期よ。」

 

ラピ「...パトロール。」

 

ルドミラ「そう、巡礼者は北部で何かを捜しているみたい。一定した周期で動いているのよ。

 そしてちょうど、このポイントに現れる時期が近いわね。運が良ければ会えるわ。」

 

夏油「本当なのかい?」

 

ルドミラ「えぇ、北部で目撃した巡礼者。コードネームは『スノーホワイト』。」

 

ラピ「...これで十分。指揮官。休息を取ってから直ぐに出発しましょう。」

 

夏油「そうだね、戦いが続いたから英気を養おう。」

 

ルドミラ「ついて来い。ここは天井に穴が開いているから、休息には向いていないわね。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 研究基地から、ピルグリムの出没する座標と時間を確認した夏油たち。ルドミラについていき、ソファとベッドがある部屋を案内される。ふと夏油は、ルドミラたちが長期間に渡りピルグリムを追跡していることに疑問を感じた。

 

 

ルドミラ「ここで休みなさい。」

 

夏油「長いことピルグリムを追跡しているようだけど、どうしてだい?」

 

ルドミラ「ふぅん、それが気になるのね。」

 

夏油「あぁ、神出鬼没と聞いたから。」

 

ルドミラ「理由は2つよ。恥ずかしかったから。そして、やるべきことだと思ったから。」

 

 

 ルドミラの答えを聞いた夏油は、再び疑問を抱きもう一度質問する。ルドミラはその質問を答えない。ラピたちとアリスはルドミラの意味ありげな返答に首を傾げる。

 

 

夏油「??すまない、どちらもよく分からないな。」

 

ルドミラ「詳しいことは、しもべが私ともっと親しくなってから教えてあげるわ。

 もちろん、これからの()()()...とね。」

 

夏油「...あぁ、分かったよ。」

 

ラピ「...」

 

アニス・ネオン・アリス「「「???」」」

 

ルドミラ「アリス。」

 

アリス「はい、女王様!」

 

ルドミラ「しもべの隣にいてあげないさい。」

 

アリス「あ、温かくしてあげましょうか?」

 

夏油「...えっ??」

 

ルドミラ「そう。」

 

 

 夏油がルドミラの発言に困惑する中、アリスはぴょんぴょんと跳ねるように、夏油が座っているソファに近づき横に座った。アリスと接している所から、何故か温もりを感じられる。

 

 

夏油「...温かい。」

 

ラピ「発熱スーツ?」

 

ルドミラ「いや、冷却スーツなのよ。

 アリスの体温は異常に高くてね。あのスーツで体温を抑えているのよ。」

 

夏油「じゃあ、今は冷却機能を切っている状態なのか。」

 

ルドミラ「そういう事、疲れすぎると眠れないから。そんな時は、アリスの体温がとても役に立つの。」

 

 

 アリスの体質を聞いた夏油は、そのスーツの機能について理解した。アリスは更に夏油に寄りかかり、嬉しそうに微笑む。夏油はアリスの温かみを体を通して伝わり、少しずつ眠気が強くなり瞼が落ちてくると同時に、疲れが一気に押し寄せて意識を手放していく。

 

 

アリス「へへ、ウサギさん。温かいですか?」

 

夏油「あぁ...すまない...すこ...し...ねむ......

 

アリス「おやすみなさい、私が傍にいます。

 

ルドミラ「...おやすみ。

 

 

 夏油は完全に目を閉じて、アリスに体を預けるように寄りかかりながら眠りにつく。

 

...よく考えると、この任務で雪崩に巻き込まれ、新しい人にであって秘密を吐露し、大型のラプチャーを撃破した。かなり濃密な一日だった......

 

 

 

____________________

 

 

 暑い夏の熱気、自動販売機からなり続ける機械音、こちらに向かってくる足音が私の耳に木霊する。そして、足音から私を呼び掛ける声に変わる。

 

 

??「あっ! 夏油さん!」

 

 

 聞き覚えのある声だった、最近聞くことは無くなったが、今でも私の耳は直ぐに反応した。

 

 

夏油「...灰原。」

 

灰原「お疲れ様です!」

 

夏油「何か飲むか?」

 

灰原「えぇ~、悪いですよ~...コーラで。」

 

夏油「...ふっ。」

 

 

 ピシッと背筋を伸ばして労う灰原、私のポケットから百円玉を何枚か取り出し、自動販売機からコーラを取り出し、灰原に手渡す。冷たいコーラは結露で水が滴り、喉ごしがいいのか『ゴクッゴクッ』と喉を鳴らしながら飲む。

 

 飲み終わったコーラから、軽いアルミの音が小さく鳴り、灰原がこれから受ける任務について話始める。その話から、灰原にお土産を買うように頼む。

 

 

灰原「明日の任務~結構遠出なんですよ~。」

 

夏油「そうか、お土産頼むよ。」

 

灰原「了解です!甘いのとしょっぱいの、どっちがいいですか?」

 

夏油「...悟も食べるかもしれないから、甘いのかな?」

 

灰原「了解です。」

 

 

 お土産の内容を聞き終えた灰原は、私に向けて右手で敬礼する。この時、私の精神(こころ)はグラついていたのかもしれない。

 

 

夏油「灰原...呪術師やっていけそうか?...辛くないか?」

 

灰原「そうですね~...自分はあまり、物事を深く考えない質なので。

 

 自分にできることを精一杯頑張るのは、気持ちがいいです!!」

 

 

 灰原の返答は、とても真っ直ぐだった。今の私のようにブレることない、まるで定規に沿って引いた線のように...その真っ直ぐな所が、あの時の私は...羨ましかったのかもしれない。

 

 

夏油「...そうか、そうだな。」

 

 

 しかし、もう自分には無いもの。彼のそういった真っ直ぐになる事ができず、私はブレてしまった。

 

 ......守るべきだと...決意したのに......そうあるべきだと......言ったのに.........。

 

 次第に私は雨粒の音に包まれる、雨粒に紛れて声が聞こえるようになってきた。

 

 

???「非術師を間引き続け、生存戦略として呪術師に適応してもらう。

 要は進化を促すんだ、鳥たちが翼を得たように...恐怖や危機感を使ってね。

 だが残念ながら、私はそこまでイカレていない。

 非術師は嫌いかい?夏油君?」

 

 

 声の高さと話の内容から、私の隣にいる人は九十九さんだろう...私が決めた時のことだ...

 私は重い口を開き、迷っている現状を九十九さんに淡々と伝える。

 

 

夏油「分からないんです。...呪術は非術師を守るためにあると考えていました。

 ...でも、最近私の中で非術師の、価値のようなものが揺らいでいます。

 

 弱者故の尊さ、弱者故の醜さ、その分別と受容ができなくなってしまっている。

 

 非術師を見下す自分、それを否定する自分。

 

 術師というマラソンゲーム、その果ての映像(ビジョン)があまりに曖昧で、

 

 何が本音か分からない。」

 

「どちらも本音じゃないよ。」

 

 

 その言葉を聞いて、雨音が静まっていく...私は自然と九十九さんの声が集中して聞き届くようになっていく。

 

 

九十九「まだ、その段階じゃない。

 

 

非術師を見下す君(今の私)

 

 

それを否定する君(昔の私)

 

 

 これらは思考された可能性だ、どちらを本音にするかは、君がこれから選択するんだよ。」

 

 

 そうだ...私が選択した...私が決断した......私が......離れたんだ.........

 

 目の前の視界が歪み、溶けて、捻じれてゆく...やがて銀色で統一された部屋が見えてくる......

 

 

??「なんてことはない、2級呪霊の...討伐任務だったのに......」

 

 

「...........クソっ!!!

 

 

 静かな部屋に、鉄同士を叩きつける鈍い音が響き渡る。直ぐに静まり、静寂に包まれる。

 

 ...あの時のように、笑顔でお土産を持って...皆に笑顔を見せると思っていたというのに......

 

 ...今では動かない灰原が、私の目の前にいる。

 

 

??「産土神信仰......あれは土地神でした。...一級案件だ。」

 

 

 精神、肉体共に疲弊している七海...そんな二人を見て、私は労いの言葉しかかけられなかった。

 

 

夏油「今はとにかく休め、七海。任務は悟が引き継いだ。」

 

 

「もうあの人(最強)一人で良くないですか?」

 

 

 悟はあの時から、最強となった。......私は...彼の隣に立つことができなくなってしまった......

 

 視界が滲み、夕暮れなのか、燈のような橙色の景色が広がっていく......

 

 

「説明しろ、傑。」

 

 

 私を呼び止める声が、後ろから来た。

 

 

夏油「硝子から聞いただろ? それ以上でも以下でもないさ。」

 

「だから、術師以外殺すってか。...親も!」

 

夏油「親だけ特別という訳にはいかないだろう。それにもう私の家族は、あの人たちだけじゃない。」

 

「んなこと聞いてねぇ、意味無い殺しはしねぇんじゃなかったのか!?」

 

夏油「意味ならある、意義もね、大義ですらある。」

 

()ぇよ!」

 

 

「非術師殺して術師だけの世界を作る!?」

 

 

「無理に決まってんだろ!!」

 

 

 

「出来もしねぇことをせこせこやんの、

意味無ぇつぅんだよ!!」

 

 

 

 

夏油「...傲慢だな。」

 

 

 

 

 

「あぁ!?」

 

 

 

 

 

 

夏油「君にならできるだろう? 悟。」

 

夏油「自分に出来ることを...人には、出来やしないと言い聞かせるのか?」

 

 

「君は()()()だから()()なのか、」

 

 

()()だから()()()なのか、」

 

 

 

 

 

 

 

「何が言いてぇんだよ?」

 

 

 

 

 

 

 

 

「もし私が君になれるのなら...」

 

「この馬鹿げた理想にも地に足が着くと思わないか?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「生き方は決めた、後は自分に出来ることを精一杯やるさ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「殺したければ殺せ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「それには()()がある。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

呪術師として呪いと向き合い、祓ってきた...

 

 

「困りましたねぇ...」

 

 

非術師(弱者)を守るために、術師(強者)が守るべきと考えた...

 

 

「そうだ!園田さん、よろしければ壇上へ。」

 

 

二人で最強であり続けられると考えていた...

 

 

「そう! 貴方です!」

 

 

だが、私は決めた...

 

 

「さて、改めて...」

 

 

(非術師)は嫌い...

 

 

「私に従え、」

 

 

それが私が選んだ本音...

 

 

(非術師)ども。」

 

 

 

 

 

「じゃあ、その責務を捨ててもいいと思うわ。」

 

 

「こっちの思い出にも目を向けてみて。」

 

 

「こっちの世界で青春を謳歌してみなさい。」

 

 

「重い荷物は捨てて、手ぶらで歩いたほうが楽しいわ。」

 

 

「腕いっぱいに、仲間との楽しい思い出をたくさん作ってみなさい。」

 

 

 

確かに...疲れた。

 

この世界に(非術師)はいない。

 

呪霊もこの世界にいない(取り込む必要もない)

 

...私の呪い(責務)は終わったんだ。

 

 

 

____________________

 

 

 夏油は重い瞼をゆっくりと開ける、そこにはラピが夏油の顔を見つめていた。ウトウトしながらも目を覚まし、ラピの方へ視線を向ける。

 

 

ラピ「お目覚めですか?」

 

夏油「あぁ、おはよう、どのぐらい眠っていたんだ、私は?」

 

ラピ「9時間ほどです。」

 

夏油「ぐっすり眠れたようだね。」

 

 

 ラピの受け答えをしている間に、夏油の頭も目覚めていき、完全に意識をハッキリすることができるようになった。

 

 

ラピ「体調はどうですか?」

 

夏油「問題ないよ、ぐっすり眠れたおかげでコンディションも最高だ。」

 

ラピ「では、出発します。」

 

アニス「そういえば、アークと連絡はまだ繋がらないの?」

 

ラピ「繋がらない。エブラ粒子の濃度も低いはずなのに、何故だろう。」

 

ルドミラ「まあ、北部ではよくあることよ、未知の何かが通信を妨害しているんでしょうね。」

 

夏油「厄介だね、判明できないというのは。」

 

 

 現在の状況を伝えられるか確認したが、依然通信状況が改善されないままだった。ルドミラでもよく分からない原因に、夏油は面倒だと考える。加えてルドミラは噂話を口にする。

 

 

ルドミラ「氷の下には怪物が眠っている。ありふれた話だと思わない?」

 

夏油「怪物...か。」

 

アニス「はは、そうかも。」

 

アリス「あっ!女王様!」

 

ルドミラ「どうしたの?アリス。」

 

アリス「眠り姫たちを確認しないと!」

 

夏油(眠り姫...?)

 

ルドミラ「...後でやったらどうかしら?」

 

アリス「ダメです! 長らく見てませんから!

 もしかしたら、目が覚めたかもしれませんよ!」

 

 

 アリスは研究基地を長い間入ることができなかったことから、眠り姫を思い出してルドミラに見に行くように言う。ルドミラは後にするよう提案するが、アリスの勢いに折れる。

 

 

アニス「...眠り姫たち?」

 

ルドミラ「......」

 

アリス「女王様!は~や~く~!」

 

ルドミラ「...そうね、行きましょう。」

 

 

 アリスが研究基地の廊下を駆け出す背中に、夏油たちは続いていく...




 足が筋肉痛になって書くことに集中できなくなってる...でも今日の内に出しておきたかった...


にけ さんぽ



 人の姿に変えられた花御は、前哨基地を散歩していた...


花御(全く、真人は...)

花御(この世界は、以前の世界より荒れている。)

花御(この星が青く輝くには、更に長い時間を必要としている...)

花御(その為には、ラプチャーと人間の戦いを...うん?)

花御(あれは...公園...?)

花御(よく手入れされている...綺麗な花ですね。)

????「...おや? 貴方もみんなを??」

花御「いえ...ただ立ち寄っただけで。」

???「まあ、貴方もお花を見に来たんですか~」

花御「えぇ、まぁ...」

????「では、ごゆっくりお寛ぎください。」

???「みんなも貴方のこと、快く迎えてくれますよ~」

花御「...あの。」

????「どうかなさいましたか?」

花御「貴方方は、この公園の手入れにきたのですか?」

???「はい~、そうですよ~」

花御「私もお手伝いしても宜しいでしょうか?」

????「あら、お優しいのですね。」

???「ありがとうございます~」

????「失礼しました、自己紹介が遅れてしまいましたね。
私はフローラ。」

???「トリナです~」

花御「私は花御です。」


 三人はそれぞれ、公園の手入れに取り掛かり、気づけば空は夕暮れになっていた。


フローラ「お疲れ様でした、花御さん。」

トリナ「お疲れ様でした~花御さんのおかげで予定よりいっぱい暮らしやすくなりました~」

花御「いえ...こちらこそ。荒廃した地上を見てきて、こういった公園は私にとっても心の拠り所ですので。」

フローラ「まあ、ありがとうございます。」

トリナ「そう言ってもらえると、みんなも嬉しそうに笑ってますよ~」

花御「ふふっ...あの、また来ても宜しいですか?」

フローラ「えぇ、勿論。」

トリナ「みんな、はなみさんに会いたがってますから~」

花御(...彼女たちは華やかなこの空間を、少しでもより良い環境を作っている...)

花御(...考えを改める必要がありそうですね。)

花御「はい、また明日ここに来ます。」


 公園に華憐に咲き誇る花は、いつも以上にそれぞれ輝きを放っていた...
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