タイピースとの戦闘を終えた夏油たち、軍需品工場へ続く廊下を進んでいき、やがて開けたドームのような空間が視界に入る。広大な規模の工場にシフティーは驚きを隠せなかった。
エクシア「軍需品の製造工場...入...場...」
シフティー「思ったよりも広いですね?」
エクシア「ラプチャーと戦い始めてから...火器がどんどん大きく...なり...ました。一次侵攻...末期まで、稼働してた工場だから...
一般常識ですけど...シフティーは教育時間に眠ってたから、頭が...悪いのですね...」
シフティー「...す、すみません。」
アニス「へぇ~」
ネオン「シフティーが居眠りなんて...私初めて聞きました!」
夏油「あぁ、少々意外だ。」
真面目で勤勉なシフティーが居眠りしていたことを、エクシアが暴露して意外だと反応を見せるアニスとネオンと夏油。そんな話を区切って、スノーホワイトから渡された弾丸をスキャンする装置の場所を尋ねるエクシア。
エクシア「で...スキャン装置はどこ...シフティー...浄化シーケンス開始...」
シフティー「あ、はい。」
エクシア「終わったら高密度のところから確認...して...中心部付近のチェックよろ...」
シフティー「えええ、はい。」
エクシア「その次は...」
ネオン「厳しい教育を受けていますね。」
アニス「まあ、プロトコールはこの分野では強いものね。いくら中央政府の情報部でも、ちょっと劣るみたい。」
ラピ「でも、滅多にない機会よ。実践で鍛えられたニケに教育を受けるのは、悪くないと思うわ。」
夏油「確かに、エクシアの手つきや口ぶりからかなり高度な技能を持っているように見える。」
ネオン「でも、エクシアも優しいですね~手取り足取り教えてくれて。」
アニス「うん...面倒くさいからやらせてるだけかな~多分。」
夏油「例えそうでも、シフティーはそれを己の力に変えるさ。」
ラピ「確かに、スキルアップには適していますね。」
せっせとエクシアの指示のもとで動いているシフティーを見守る夏油たち、見つめている間に夏油は端末を取り出し操作する中、アニスはラピを見つめて話始める。
アニス「ところで、ラピも大変ね?」
ラピ「少しね。言葉には気を付けているつもりよ。
北部ではあまり一緒にいなかったから大丈夫だったけど、今はまた状況が違うから、気を付けないと。」
アニス「知っている人もいれば、知らない人もいる。もっとややこしくなったわね。」
夏油「出来る事ならこれ以上状況を悪化させたくないね。」
ネオン「シフティーにも教えたらどうでしょう?」
アニス「それは危ないわ、シフティーは中央政府と密接な関係にあるもの。」
ネオン「アニス...」
夏油「もしラピの事が公になったら、シフティーまで危険が及ぶ。アニスだって疑っている訳じゃないんだ。」
ネオン「分かっています...難しいですね。」
夏油「あぁ、かなり難しいね。」
シフティーにラピの記憶消去が効かなかったことを伝えるかネオンが提案するが、アニスは中央政府との関係から危険と判断し、夏油がその補足としてシフティーの身柄が自分たち以外に中央政府の被害が向けられることを伝える。
ネオンはコクリと頷きながら頭を抱える中、シフティーから工場内のスキャン装置の位置を把握したと報告を受ける。
シフティー「スキャン装置の位置把握を完了。マップにマーキングします。」
アニス「思ったより早かったわね。」
エクシア「私なら100倍は早いですけど...後学のために見守りました...」
シフティー「...もっと精進します。」
夏油「...相変わらず手厳しいね。」
エクシア「初心者さんは飲み込みが早いから...シフティーよりちょっとマシですよ...」
アニス「それって褒めてる?」(≖ࡇ≖)
エクシア「ちゃんと...褒めてますよ~...」
シフティーが特定したスキャン装置から、割り出したラプチャーの反応が少ない最短通路を通った夏油たち、古びた横開きの扉を開けると、部屋の中央に夏油より高い複数のパソコンと、一辺が1m程の台座が搭載されている約7mから10m程の巨大な端末が置かれていた。
ネオンは恐る恐る近づいて、視界を覆うほどの巨大な装置に驚く。
ネオン「凄く大きいですね。このスキャン装置。」
エクシア「火器が大きいからスキャン装置も、当然大きいのです...ネオンは応用力が...足りないのですね...」
ネオン「うぐぅ...」(´・ω・`)
アニス「大丈夫?」
ネオン「大丈夫...です...」
凹んだネオンを慰めるアニス、そんな中エクシアはスキャン装置の使用方法について詳しく説明する。夏油はネオンに目を向けていたが、アニスが駆け寄ったことを見た後、大丈夫と判断してエクシアの話を聞く。
エクシア「このスキャン装置に乗せれば...どんな物質で構成されているのか、事細かに教えて...くれます...
銃弾を乗せてみましょうか...」
夏油「あぁ。」(スキャン装置の台座に弾丸を乗せる)
エクシア「コネクティングデバイスを、繋げて...ください...」
エクシアの指示に従っていた夏油だが、コネクティングデバイスと聞いて固まる。ラピたちはその様子を見て疑問に思うが、次の一言に更に疑問が大きくなる。
夏油「コネクティング...デバイス...? どうやって使うんだい??」
ラピ(えっ...?)
アニス(は...?)
ネオン(へっ...?)
部屋の中で響く夏油の発言、ラピ、アニス、ネオンは発電所の調査で、夏油がコネクティングデバイスについての説明を受けていたことを覚えている。1ヶ月以上前とはいえ、物忘れが激しい訳でもない夏油が、何故質問するのかと尋ねる前にエクシアがシフティーに任せる。
エクシア「シフティー...初心者さんに...コネクティングデバイスの説明を...」
シフティー「はっ、はい! 少しお待ち下さい......
お待たせしました、コネクティングデバイスは...」
シフティーが夏油に懇切丁寧にコネクティングデバイスについての説明と、接続場所について教えている最中、小声でラピたちは何故聞くのか話し合っていた。
ネオン(一体どうしたんでしょうか??)
アニス(さあ...指揮官って物忘れ激しくないわよね?)
ネオン(はい、寧ろ宿所にある保存食や缶詰の消費期限をほぼ把握していますし...)
アニス(まさか...北部の任務で負傷して、発電所の任務の記憶が抜けたとか...?)
ネオン(そんなっ...!)
ラピ(診断書を確認したけど、記憶障害などの傾向は見られなかったわ。)
アニス(じゃあ一体...?)
ネオン(益々分からなくなってきました...)
ラピ(...指揮官。)
ネオンとアニスが話し合っている中、ラピは夏油を心配そうに見つめる。やがて夏油は所持している端末からコネクティングデバイスを伸ばして、スキャン装置に接続する。シフティーは接続が完了したと口頭で伝え、エクシアは次の指示を出す...
シフティー「コネクティングデバイス、接続完了しました!」
エクシア「は~い、次にシフティー...操作を...」
夏油「すまない、もう一つ質問してもいいかな?」
エクシア「ど~ぞ~...」
シフティー「何でも質問して下さい!」
夏油「本当にすまないね、さて...」
シフティーがエクシアの指示に応答する前に、夏油が再度質問を呼び掛ける。エクシアは許可を出してシフティーが笑顔で夏油の質問を待つ。夏油は視線をエクシアからシフティーに移し、先ほどの発言以上にラピたちは動揺する。
この一言にラピたちは更に困惑、ホログラムに映っているのはシフティーにしか見えない...
エクシアも夏油の発言に頭を傾げ、シフティーは夏油の発言と視線に凍りつく。当の夏油はシフティーに鋭い視線を向け続ける。
シフティー「えっ...はい...?」
エクシア「...初心者さん...もっと具体的に...お願いします。」
夏油「具体的も何も、そのままの意味さ。
シフティー「わ、私は中央政府の情報部所属...カウンターズの専属オペレーターのシフティーです。」
エクシア「初心者さんも...アニスみたいに探偵気取りで仲間を疑うんですか。」
夏油の発言に少しずつタジタジになっていくシフティー、エクシアは夏油の言葉に少なからず怒気を含めていくが、夏油は二人の様子を気にもせずにシフティーを更に問い詰める。夏油の問い詰めを止めて根拠があるかと質問するエクシア。
夏油「少なくとも、
アニス「ちょっと指揮官様! それだけってあんまりじゃない!?」
ネオン「師匠! 私たちを置き去りにしないでください!!」
エクシア「そこまで言うなら、根拠があるんですよね。...初心者さん。」
シフティー「そっ、そうですよ! 何故私を疑うのか、理由をちゃんと言って下さい!!」
夏油「そうですね...では、私の根拠を
数秒顎に手を添えて、射殺す視線から打って変わってニッコリと笑いながら、夏油がシフティーを疑う根拠を淡々と話し始める。
夏油「まず1つ目、エクシアは知らないけどシフティーが現れたタイミングです。
私たちは地上に出たばかりなのに、あまりにタイミングが良すぎた。」
シフティー「それは...アンダーソン副司令に...」
夏油「そう、
...でもこの任務は私とカウンターズ、そしてエクシアしか知らない。」
シフティー「でもっ...」
エクシア「確かに不自然ですが、それでシフティーが偽物だと疑う根拠としては弱いですよ。」
夏油「確かに、これは
2つ目は、この工場内に入る前の戦闘です。」
アニス「確か、タイピースよね。」
夏油「あの時、私はラプチャーに関する情報を伝えるように頼みました。しかし
エクシア「今回の任務、1ヶ月以上任務に参加していなかったんですよ。シフティーが忘れている可能性を考慮しないのは、些か穴だらけですよ。」
夏油「そこで
シフティー「えっ...えっと...」
シフティーは変わらずタジタジになり口ごもる、エクシアはシフティーを横目で見つめ続け、アニスとネオンは夏油を見つめて、ラピは真っ直ぐシフティーを見つめていた。そしてシフティーは夏油に小声でラプチャーの名前を伝える。
シフティー「ブラックスミスと...グレイブディガー...です...」
ラピ「......」
ネオン「......」
エクシア「...どうなんですか?初心者さん。」
夏油「アニス、覚えているかい?」
アニス「...うん。」
夏油「じゃあここで、言ってくれないか?」
アニス「...アーマードZ.E.U.S.と...グレイブディガー...」
シフティー「っ...」
エクシア「......」
ネオン「ブラックスミスって、タイラントモデルですよね?何で聞かなかったんですか??」
アニス「違うわ、
...最も、ラピは記憶消去で覚えていないけど......」
ラピ「......」
ホログラム越しのシフティーの顔がどんどん青ざめていく、ラピたちはシフティーが偽物という考えが生まれる中、エクシアはそれでも夏油に最後の根拠について尋ねる。
エクシア「...でも、知っているのはアニスだけ、最近記憶消去されたラピはともかく、ネオンがいなかった時の任務では納得出来ません。ネオンでもちゃんと気づく根拠があるんですよね。」
夏油「勿論、最後の根拠はコネクティングデバイスです。」
シフティー「えっ......?」
夏油「ネオンは覚えているかい?」
ネオン「はい、グレイブディガーと交戦する前、電流を止めるためにコネクティングデバイスについて説明してました。」
シフティー「......」
夏油「そう、私は以前コネクティングデバイスについての説明を受けた。それも先ほど発言していたグレイブディガーと遭遇した任務の時です。
敢えて知らないフリをしたら、
シフティー「......」
夏油「グレイブディガーと遭遇して情報を伝えていることは覚えているのに、コネクティングデバイスの使い方について教えたことを忘れるなんて、妙だと思いませんか?」
シフティー「......」
シフティーはネオンの発言からホログラム越しに俯く、エクシアはシフティーを横目で見つめるが視線が揺れる。偽物なのかという疑念が、エクシアの中で少しずつ大きくなっていく。
夏油「以上が、私が
シフティー「.........」
俯き続けるシフティーにエクシアは声を掛ける。
エクシア「シフティー...違うならちゃんと否定してください...沈黙は肯定と取られ」
シフティー「はぁ、最悪。」
気だるげな表情で普段なら言わない筈の言葉が、シフティーの顔で呟く。この言い方や態度に覚えのあるアニスとネオンは、シフティーに化けていた正体が誰か瞬時に気付く
アニス「...うそ。」
ネオン「...っ。」
シフティー?「折角ここまで来たのに、オマエのせいで全部台無しじゃない。」
夏油「私は疑問に思ったことを言ったまでですよ。」
シフティー?「それが余計なの、ったく記憶喪失の癖に勘がいい奴。」
ホログラムに映るシフティーの画面が、少しずつジャミングを受けるように荒くなり、数秒でジャミングが収まり、ホログラムに映る姿が変わり名乗る。
シュエン「そうよ、私が変わりにオペレーターしてやったのよ。」
アニス「あんた...っ」
シュエン「何時気付いたのよ。」
夏油「貴方がこちらに接触した際にですよ、中央政府絡みだったら無断で地上に出ている私たちを武力で制圧して尋問すれば分かりますし、わざわざここまで泳がせる必要が無いと思ったからです。
となると、権力はあるけど自己の判断で武力を行使できない人間...
いや、中央政府に行動を知られたくない人間といったところですかね。大方この弾丸に関する情報を横取りしようとしたんですよね?」
そう言って夏油は、スキャン装置の台座に置かれた弾丸を右手に取り、弾丸からシュエンに視線を戻しながら話す。
シュエン「酷いわね、オマエたちの代わりにこの私が有効利用してあげようと思ったのよ。」
夏油「もしこの弾丸に関しての情報を得て、利用できるような物なら自社固有の技術として宣伝する...そんなところですか?」
シュエン「本当に勘がいいわね、虫唾が走る。
...まあいいわ、さっさとその装置に
アニス「この状況で、なんで貴方の言い分が通ると思ってるの...」
ネオン「私たちを騙した癖に...」
シュエン「はぁ...オマエたち、歩いている時に一々アリを殺さないように歩くの?」
アニス「っ...!」
ネオン「貴方っ...!」
シュエン「私からすれば、オマエらはただ道端に這いつくばっているアリ。何処で死のうと関係無いし、私のために死ねるなら感謝してほしいくらいよ。」
シュエンの発言にアニスとネオンは怒りが高まりシュエンを睨む、シュエンは視線を意に介さず夏油に対して話を続ける。
シュエン「でもまあ、ここまでよくやったしご褒美くらいは上げてもいいわね。
オマエ、私の下につく気はない?役員レベルの地位をあげるから。
アニス「指揮官様、コイツの言うこと何て聞いちゃダメだよ。」
ネオン「師匠が聞くわけありませんよ。」
夏油「具体的にはどんな待遇ですか?」
ネオン「師匠!?」
アニス「指揮官様!?」
シュエンがスノーホワイトに渡された弾丸に関する情報を共有する代わりに、ミシリスの地位を約束すると交渉を持ちかける。アニスとネオンは夏油に耳を貸さないよう言い聞かせるが、夏油はシュエンに待遇について質問する。シュエンは意外な反応を見せるが嬉々として話始める。
シュエン「え?...な、なんだぁ~その気はあるようね?
待遇か...待遇。まあ、簡単に言えばお金と権力よね。
異次元レベルの。
等級が上がれば上がるほど、大きな力を手に入れることができるわ。
お前が来るなら、私が特別に0等級を作って待遇を...」
夏油「随分楽しそうに話しますね。」
シュエン「まあ、オマエが使えるって分かったからね。
で?どうするの??」
夏油「ご遠慮させて頂きます。」
シュエン「............は?」
嬉々として話続けるシュエンに対して、笑顔できっぱりと断る夏油。その返答にアニスとネオンは狼狽えていた仕草から一変して、夏油の背後で両腕を組んで頷く。シュエンは夏油の返答が信じられないように見つめる。
夏油「悪くない待遇ですが、生憎私は金や権力などに興味は無いので。」
シュエン「何ですって...?」
夏油「ですのでお断りさせて頂きます。」
シュエン「望む物が何でも手に入るのよ!?私が、この私がこんな好条件出してるのよ!?
何で首を縦に振らないのよ!!」
夏油「先ほど申した通り、金や権力などに興味は無いので。」
シュエン「じゃあ何が欲しいのよ!!」
夏油「それを相手に提示するのが交渉ですよ、シュエンさん。」
シュエン「っ...オマエ...!」
シュエンの待遇に対して、懇切丁寧に断り続ける夏油。その様子を見たシュエンは最初から応じる気なんて無かったことを察して、丁寧に話し続ける夏油に歯軋りする。
しかし、直ぐに冷静を取り戻し、夏油に警告する。
シュエン「分かったわ、じゃあ
ネオン「
夏油「貴方が偽造したアークテロ計画書ですか?」
アニス「はぁ!?」
シュエン「これからそうなるのよ、事実なんて幾らでも揉み消せるもの。」
ネオン「そんなの犯罪ですよ!!」
ラピ「そして、オペレーターとして活動したことも中央政府の詐称になるわ。」
シュエン「言ったでしょ?幾らでも揉み消せるって、
ラピ「......」
シュエン「どう?分かったらさっさと...」
夏油「お好きにどうぞ。」
シュエン「......は???」
夏油の返答に再び呆気に取られるシュエン、夏油は変わらずに微笑み続けている。
シュエン「聞こえなかったのかしら?オマエはアークのテロリストの首謀者、そしてその鉄屑共はテロリストの協力者になるのよ??」
夏油「好きに情報を偽造して発信しても構いませんよ、こちらも相応の準備を済ませているので。」
シュエン「っ...本当にいいの??オマエの居場所なんて何処にも...」
夏油「二度同じことを言わせないで下さいよ、こっちが疲れます。」
シュエン「...何で。」
夏油「はい?」
シュエン「何でそんなに余裕なのよ、私はミシリスのCEO...シュエンなのよ!!
なんで言う通りにしないのよ!!!」
夏油「......」
シュエン(私に逆らう奴は、私が本気になれば直ぐ地べたに這いつくばり、ペコペコと謝ってきたのに...それなのに...っ...何でコイツはっ!!)
夏油「『地べたに頭を擦りつけて謝らないのか』ですか?」
シュエン「っ!?」
夏油「理由は簡単ですよ、私は謝る必要がありませんし、謝る理由が無いからです。」
シュエンの声が荒くなるに対して、夏油は少しずつ目を開きながら淡々と冷静に理由を説明していく。
夏油「貴方はハッキリと言いましたね、権力を使えば噓も事実になると、なら私は尚更頭を下げません。何故か分かりますか?」
シュエン「......」
夏油「頭を下げた瞬間その
私は大人として行動や言動に責任を持って生きていますし、その生き方を曲げるつもりもありません。」
夏油「ですが貴方はどうなんですか?自分の立場を乱用し周り迷惑をかける、挙句に失敗しては責任を逃れ、自分が優位に立つと直ぐに調子づく、貴方の功績より失態の方が叩けば埃が出るほど多いというのに。
貴方の先祖様が築き上げた会社を自分の力で作ったのだと思っている...
貴方の行動や思想がまるで赤子です、一体おいくつなんですか?」
シュエン「お前っ......」
夏油「会社の経営どころか働いた事もない私なんかが、ハッキリ言ってあげます。」
シュエン「ッ...!!」
夏油の一言がかなり答えたのか、苦虫を嚙み潰したような表情で夏油をホログラム越しに睨み付ける。夏油は意に介さずに話し終える。
夏油「偽造書類を提出して結構。
しかし......」
そう告げた後に夏油とシュエンが話している間、エクシアが端末を操作する手を止めず目に見えない速さでキーボードに打ち込んでいた。次第にシュエンのホログラムにジャミングが発生して通信が完全に途絶される。数刻の静寂が流れるが、ネオンが目を輝かせて夏油に近づく。
ネオン「師匠っ...すっっっっっっごくカッコよかったです!!!」
夏油「そう言われると少し恥ずかしいな。」
ネオン「何を言ってるんですか!? さっきまでの会話!ちゃんとメモしたので、寝る前に復唱しますっ!!」
夏油「それは止めてくれ。」
ネオン「?メモですか??」
夏油「違う、復唱の方だ。」
夏油とネオンが話している中、ラピとアニスが心配そうな視線で夏油を見つめる。ネオンがどうしたのかと声を掛けると、その理由を夏油とネオンに伝える。
ネオン「??どうしたんですか???二人とも。」
アニス「大丈夫なの、指揮官様。」
夏油「さっきの態度と、偽造書類かい??」
アニス「うん...指揮官様が断ってくれてうれしいけど...」
ラピ「権力はあちらの方が格段に上です、偽造だと告発しても取り消される可能性が高いと思います...」
ネオン「でも...判決を下すのはエニックですよね??」
アニス「エニックに行きつく前に、情報が消される可能性だってあるの。」
ラピ「何より、ミシリスの運営を止めることは中央政府にも大きな損害を与えてしまう可能性が高いと思います......」
アニス「最悪、エニックに通ったとしても私たちという小を切り捨てることだって...」
夏油「ああ、その事か。」
ラピとアニスが俯き、暗い顔をしているのに対して、全く動じていない夏油。その理由についての言及を後にして、ここに来た目的でもあるスキャン装置に向き直り弾丸について調べる。
夏油「その事は後にして、先ずはこの弾丸について調べよう。エクシア、妨害電波凄く助かったよ。」
エクシア「............」
ネオン「??」
アニス「どうしたの?エクシア??」
エクシア「...私...シフティーではないと...見抜けませんでした...」
夏油「......」
エクシア「ちょっと...違和感があるな~...って感じたんですけど...初心者さんみたいな...確証が無かったので...」
アニス「......」
エクシア「...私...シフティーをちゃんと見ていませんでした...不甲斐なさで......」
ネオン「......」
エクシア「...すみません......スキャン装置...動かしますね......完了するまで...時間が...掛かります......」
そう言ってエクシアはホログラムを一旦消して、スキャン装置の操作に戻る。エクシアの様子を見て、夏油たちはかなりショックを受けたのだと感じた。
アニス「相当応えたみたいね......」
ラピ「エクシアは、シフティーと長い付き合いだから...」
夏油「彼女がプレイしているゲームを一緒に遊んでいたらしいからね...」
ネオン「とても可哀想です。」
夏油「...戻ったらシフティーにこの件を伝えておくようにアンダーソンさんに言っておくよ。彼女にも整理する時間が必要だ。」
アニス「うん、ありがとう指揮官様。」
ラピ「お願いします。」
夏油たちがエクシアについて会話している間に、スキャン装置の駆動が終了して発光していた装置が停止し、エクシアのホログラムも再び出現する。
エクシア「スキャン...終了......構成物質が...出ました......一般的に使用される...ライフルの弾丸です......」
夏油「他に何か分かったかい?」
エクシア「変な物が...混ざってました......
夏油「アンチェインド...皆はこの単語に聞き覚えはあるかい?」
ラピ「いいえ。」
アニス「知らないわ。」
ネオン「私もです。」
エクシア「私も...初めて聞きました......」
夏油「そうか...そうなると死語なのか?」
弾丸をスキャンして現れた単語、
エクシア「そう考えて...アーク内のデータベースを...検索しましたが......アンチェインドが...ヒットしませんでした......記録が...消去されたのかも......しれません......
名前が消されたから......後続措置によって......データが...消されたと考えた方が...妥当......」
ネオン「つまり何も分からないということですかね??」
夏油「現状はそうだね。」
エクシア「多分......中央政府のデータベースに......あると思います......」
ラピ「中央政府のデータベースにアクセスするには、副司令官クラスの権限が必要になります。」
夏油「ふむ...そうか。」
顎に手を添えて、エクシアとラピの言葉を聞いて考える夏油。考えが固まったのか、数秒で顎から手を放してエクシアに感謝する。
夏油「ありがとう、エクシア。後は私たちで何とかしてみるよ。」
エクシア「はい......すみません...初心者さん......お先に...失礼します......通った道は...マッピングしたので...真っ直ぐ帰れば......大丈夫......」
夏油「ああ、お疲れ様。」
夏油の返答を聞いたエクシアは、力無く頷きホログラムを切る。通信の切断を確認した夏油たちは、アークに戻る為にマッピングされた道を歩き始める...
ということで、エクシア生存しました。なんやかんやで書いてたら一万文字超えてしまった。長くなって大変申し訳ございません。次回は帰りの道中の描写とアークの描写を書こうと考えています。
宿所で報告書の作成を終わらせた夏油、呪霊たちとテーブルを囲ってババ抜きをしていた。
真人「最近夏油も引っ張りだこだよね、体大丈夫なの??」
夏油「心配いらないさ、ラピたちのいないところで呪霊を使って楽してるし。」
漏瑚「だが根の詰め過ぎは体に毒だ、たまには休め。」
夏油「今休んでいるとも。」
花御「漏瑚はどちらかというと貴方の体を案じているのですよ。」
夏油「まぁ確かに、何度か死にかけることもあったし...あっ揃った。」
陀艮「ぶふぅ...ぶふぅ...」『体を休めるには何がいいかな?』
花御「マッサージはいかがですか?体が凝っていると疲れも貯まりやすいと聞きます。」
夏油「ダメだ、本格的なマッサージは費用がかかる。出来る事ならあまり使いたくない。」
漏瑚「お主変なところで貧乏性だな...では運動やすとれっちとやらをやってはどうだ?...むっ。」
夏油「日々の習慣でやっているから無しかな?」
陀艮「ぶふぅ...ぶふぅ?」『じゃあ...寝るのは?』
夏油「あまり睡眠を取り過ぎるのも、体を崩してしまうからね...気持ちは嬉しいけど、任務に行けなかったら元も子もない。」
真人「......じゃあ任務の時にいっそのこと温泉に行ったら?...あっ、一番~!」
漏瑚「温泉か...確か湯によっては効能も異なると聞くな。...上がりだな。」
花御「名案ですね、真人。私もです。」
真人「でしょでしょ!」
陀艮「ぶふぅ?...ぶふぅ。」『温泉?...気になる。』
夏油「...しかし、任務中に行っていいのか...」
真人「今後の任務の為のガス抜きって言えばいいでしょ?」
夏油「だが...」
真人「よし!じゃあ、夏油が負けたら俺たちを温泉に連れていくこと!」
夏油「...分かった、その代わり私が勝ったら、報告書作成を手伝ってもらおうか。」
真人「陀艮、慎重に選べよ。負けたら俺たち過労死しちまう!!」
花御「そこまで負担にならないと思うのですが...」
漏瑚「儂は貴様が逃げても逃がさんぞ真人。」
真人「酷くない!? 俺なんか悪いことした!?」
夏油「心当たりしかないだろ...」
陀艮「ぶふぅ...!...ぶふぅ!!」『うん...!...あっ、揃った!!』
夏油「私が一枚...陀艮が二枚か...」(ここは直感で右を)
陀艮(´・ω・`)
夏油「......」(......左か...?)
陀艮(꒪ˊ꒳ˋ꒪)
夏油「......」(二枚のカードを背中でシャッフルする。)
陀艮「ぶふぅ......ぶふっ!」『う~ん......上がりっ!』
真人「うっっし!!約束通り温泉連れていけよ!!」
夏油「全く...しかし温泉か、偶にはいいかな。」
夏油がトランプを纏めている時、扉をノックする音が響く。漏瑚たちは直ぐに姿を消す。
ラピ「指揮官、いらっしゃいますか?」
夏油「あぁ、どうしたんだい??」
ラピ「失礼します、これから30分後に任務です。」
夏油「分かった、直ぐに行くよ。」