特級呪術師のデストピア   作:クモッ!

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 最近エピソード18までいって、メティスが好きになった。なお、この小説でその話を取り扱うかは不明。


浸食、音を立てて崩れ行く

 ラピとアニスに合流したマリアンと夏油、ラプチャーの軍勢を退けた後、市街地への移動を開始した。移動中にラピは夏油に確認を取る。

 

 

ラピ「本当に昨日、任官...されましたか?」

 

 

夏油「...すまないが、その記憶も...。」(検索して私の情報があった...?違う世界の人間だというのに...。)

 

 

 夏油の返答にラピは謝罪し、この現状を客観的に考え思わず本心を吐露してしまい、その発言にマリアンは反応する。

 

 

ラピ「...作戦中に死亡した指揮官の代わりに来たという、新人の指揮官...

何を考えているのやら。」

 

 

マリアン「...はい?」

 

 

ラピ「いや、何でもない。」

 

 

 ラピは直ぐ夏油に分隊の指揮権を引継ぎの確認と、作戦について説明する。

 

 

ラピ「とにかく、あなたは今から本分隊の指揮官になります。

現在進めている作戦の引継ぎが必要ですが、よろしいでしょうか?」

 

 

夏油「問題ないよ。」

 

 

ラピ「作戦について簡単に説明します。

46時間前、この区域を捜索していたニケ1分隊との通信が切断されました。

 通信履歴が何も残っておらず、捜索が必要との判断から私たちが投入されましたが、指揮官が死亡するという事故がありました。」

 

 

 ラピの説明を聞いた夏油は、指揮官が死亡したトラブルがあったという説明から、何かしらの情報や重要な役割があったのかと考察する。

 

 

夏油「...その指揮官が作戦の要だったのかい?」

 

 

アニス「そう、実はその指揮官だけが作戦区域の座標を知ってたってこと。 指揮官様に聞こうにも...記憶喪失だし...。」

 

 

夏油「すまない...」

 

 

 アニスの発言に顔を俯く夏油、しかしマリアンが「問題ありません。」と発言して、その理由について説明する。

 

 

マリアン「私が知っています。」

 

 

アニス「...え?」

 

 

マリアン「作戦前に入力されました。 私が先頭に立ちますから、ついてきてください。」

 

 

アニス「あっ...OK。」

 

 

 三人を誘導するために先頭に立つマリアン、その様子に夏油は心配した様子で声をかける。その気遣いに、微笑みながら答えるマリアン...しかし直ぐに怒りを宿した表情をラピに向ける。

 

 

夏油「あまり無理をしないようにね...マリアン。」

 

 

マリアン「お気遣いありがとうございます、指揮官。...それからあなた、ラピでしたっけ?」

 

 

ラピ「...?」

 

 

 怒りを宿した表情のまま、ラピに対して謝罪を要求する。

 

 

マリアン「自分の指揮官も守れなかったくせに、新米だの何だの、難癖付けないでください。

 この方も私たちと同じく、命をかけて人類のために戦われるのです。...ですので、また今度このようなことを口にしたときは、私も黙っていません。」

 

 

アニス「おぉ、なにこれ。ギクシャクしてる?」

 

 

ラピ「...そうね。私の失言だった。謝る。」

 

 

マリアン「謝るのなら私にではなく、指揮官へお願いします。」

 

 

ラピ「申し訳ありません。...」

 

 

夏油「私は大丈夫、気にしないでくれ。」

 

 

 謝罪するラピ。夏油は本当に気にしていない様子を見せるが、夏油の様子にラピとアニスは少し動揺していることが分かった。

 

 

夏油「...?どうしたんだい??」

 

 

ラピ「いえ...。」

 

 

アニス「ええ、怒らないの? ははっ、今回の指揮官様はちょっと変わってるね。」

 

 

夏油「そんなことで怒るほど、私は短気ではないよ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 夏油はアニスの発言に対して、クスッと笑いながら返答する。市街地に向かう道中...マリアンの様子がおかしい事に夏油は気付く。

 

 

夏油「どうしたんだいマリアン、随分顔色が悪そうに見えるけど...。」

 

 

マリアン「実は...体調が...。」

 

 

 マリアンの説明からラピが反応し、直ぐにマリアンに近づき、マリアンの肉体に不全が無いかを確認するように呼び掛ける。ラピの発言にマリアンは動揺する。

 

 

ラピ「メンテナンスを手伝うわ。上着を脱いでもらえる?」

 

 

マリアン「えっ!? ここで...ですか?」

 

 

アニス「ん?問題でもあるの??」

 

 

マリアン「だって、指揮官もいるし...

 

 

アニス「な~んだ、指揮官様がニケを女として見ると思ってるの?? 私たちはただの戦...」

 

 

夏油「?...女の子だろう??」

 

 

アニス「...素でそう見てるんだ...。」((≖ࡇ≖)夏油を見つめる。)

 

 

 アニスの反応に夏油は首を傾げる。しかし、マリアンはメンテナンスは不要だと直ぐに移動を再開するように歩き出そうとする。

 

 

マリアン「あっ、もう大丈夫です。 不慣れな環境で、ちょっと誤動作を起こしたようです。」

 

 

夏油「戦闘中に支障が出ると大変だからね、私は向こうに行っているから、ラピに診てもらう。」

 

 

マリアン「指揮官...分かりました。」

 

 

 夏油がメンテナンスするよう促した事に対して、ラピは会釈しマリアンのメンテナンスに取り掛かる。夏油は邪魔にならないように、マリアンたちに背中を向けて離れる。その後ろをアニスも続き、夏油と会話する。

 

 

アニス「メンテナンスしている間、私が護衛するね、指揮官様。」

 

 

夏油「そこまで離れないから大丈夫だよ。それより、彼女たちが襲われないように警護してあげてくれ。」

 

 

アニス「指揮官様は私たちニケより特別なのよ。もし何かあったら、私たちがしっかり守れなかった事で罰があたえられちゃうのよ。

 それに...あなたがコッソリ覗くかもしれないから。」

 

 

 アニスは指揮官の護衛の重要性を話しつつ、夏油が裸を見る危険性を危惧していると自分の考えを伝える。その発言に夏油は頭を抱えてアニスに問う。

 

 

夏油「...君は私が女性の素肌を覗き込むような下賤な人間に見えるのかい?」

 

 

アニス「見える。」

 

 

夏油「あのねぇ...アニス。」

 

 

 夏油は即答したアニスを見て「ハァー...」と溜息を零し、その反応が面白かったアニスは直ぐに「冗談!冗談!」と笑っていた。二人が会話している間に、ラピはマリアンのメンテナンスを手早く終えて、異常がないと報告した。

 

 移動を再開しようとした時、アニスが「見えてるよ~」と聞こえる小声を零し、マリアンは慌てて隠そうとする。しかし、噓だと分かるとアニスを見つめ、頬を膨らませる。

 

 

アニス「ジョ~ク、ジョ~ク。...フフッ。」

 

 

マリアン「アニス!もぅ...。」

 

 

夏油「...全く...フッ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 そのやり取りを見ていた夏油は呆れていたが、密かに笑みを浮かべていた。直後、砂嵐が混じった声が、通信から聞こえてくる。その声を聞いたラピは応答する。

 

 

?????「...へ...すか?」

 

 

ラピ「...?」

 

 

?????「アークから地上へ! 聞こえますか? ラピ!アニス!」

 

 

 端末からの呼びかけから、通信が回復したと判断したラピはすぐに応答し、現在の状況を説明する。その応答によって、空中に画面が投影され水色の女の子が映される。

 

 

ラピ「通信が...こちらラピ。シフティー、聞こえる?」

 

 

シフティー「あっ、やっと繋がりましたね! 状況はどうですか?」

 

 

ラピ「新しい指揮官と合流できた。座標も確認して、今作戦遂行中。」

 

 

シフティー「はぁ~よかった! 輸送機との連絡が急に途絶えてしまい、びっくりしました!」

 

 

 指揮官と無事合流でき、作戦が継続されていることに安堵するシフティー、そんな中アニスは輸送機を送った場所に対して墜落した事実を説明するが、シフティーは頭を傾げる。

 

 

アニス「ちょっと、しっかりしてくれる? 敵陣のど真ん中に輸送機送ってどうするの。」

 

 

シフティー「はい?」

 

 

アニス「もう鉄くずになったよ。おかげで完全にしくじるところ...」

 

 

シフティー「...該当地域のラプチャーは対空火器を保有していないので、輸送機を送ったんですが...」

 

 

アニス・夏油「「...は?」」

 

 

 シフティーの報告にアニスと夏油は疑問を浮かべ困惑するが、ラピは輸送機が墜落した原因を突き止める為、輸送機を調べるように伝える。

 

 

ラピ「シフティー。輸送機のブラックボックスデータを送ってほしい。」

 

 

シフティー「え...ただ今、分析中です! 終わり次第すぐに送ります! あともう少しです!」

 

 

ラピ「ええ、お願い...」

 

 

 ラピの指示に返答すると、視線を夏油に向けて自己紹介を始める。夏油はシフティーに呼びかけられ、シフティーに顔を向ける。

 

 

シフティー「さて、それでは...夏油傑様、初めまして。私はアーク情報部に所属するオペレーター、シフティーと申します。これから作戦をサポートします!よろしくお願いします!」

 

 

夏油「あぁ...これからよろしく、シフティー。」

 

 

シフティー「はい!」

 

 

 オペレータが加わったことで、作戦が有利に進められるようになった。しかし、夏油は移動中にもシフティーが報告した、ラプチャーの武装に対空火器がないことに疑問を抱いていた。

 

 

夏油(なら何故輸送機は墜落したんだ...? 

 アークを疑う訳ではないが、誤情報で輸送機が送られたのか?...仮にも人類最後の砦、そんな事ならもう壊滅しているだろうし、その対策を取っている存在が居てもおかしくない。例え正しかったとしても、態々外部から情報を改ざんするより、内通者を送った方が楽だろう。

 ...突然、対空武装を所持したラプチャーが今日現れたのか?...いや可能性としてあり得るが限りなく低い。そもそも墜落する為に来たのなら、予めこの作戦が漏れていたと考えなければほぼ実現しない。)

 

 

 

 

 

 

 

 

夏油は移動中でも思考を止めず、墜落の原因を考えていた。そんな中、シフティーからラプチャーの反応を探知したことを報告する。その報告にアニスは驚き、ラピとマリアンはそれぞれの考えを提示する。

 

 

シフティー「前方にハイクラスのエネルギー反応を探知! ロード級と推定されます!」

 

 

アニス「ええ? 何でここにあんなのが出てくるの?」

 

 

ラピ「一時退却を提案します。」

 

 

マリアン「でも、行方不明になったニケは?」

 

 

アニス「見捨てるしかないよね!」

 

 

マリアン「......。」

 

 

 アニスの返答を聞いた夏油には、一瞬眉を顰めるが、すぐに元の表情に戻る。アニスは見捨てる理由についての説明をマリアンに伝える。

 

 

アニス「地上で行方不明になったニケの回収率は0.2%よ。捜査作戦なんてただの見せかけ。あなたも知ってると思うけど。」

 

 

マリアン「でも、見捨てるわけには...」

 

 

 マリアンはアニスの説明を聞いても引き下がらず訴えるが、発言しきる前に夏油がロード級に関して質問し、シフティーはその質問に応じる。

 

 

夏油「そのロード級はそんなに危険なのかい?」

 

 

シフティー「危険です! ラプチャーは本来5段階の種類に分けられているんですが、ロード級とは上からの2番目の中級クラスの指揮するだけあって、戦闘力が高めです! シミュレーション上での確率は高めですが、こちらの被害がかなり...24.35%の確率で全滅するかもしれません!」

 

 

 シフティーの説明を聞いて夏油は手を顎に当てて、ビルの一室の穴の開いた壁から、ラプチャーがいるであろう前方に視線を向ける。マリアンは夏油の判断を聞くために伺う。

 

 

マリアン「...指揮官。諦めますか?」

 

 

 夏油はマリアンの問いかけに顔を全員に向けて答える。その返答にラピとアニスが夏油に確認を取る。

 

 

夏油「捜索作戦を諦めるつもりはないよ。」

 

 

ラピ「でしたら、ご命令ください。それで十分です。私たちは指揮官の命令に従います。」

 

 

夏油「だったら前進しよう、ここで迎え撃つ。」

 

 

アニス「...指揮官様、死んじゃうかもよ? 私たちは頭さえ温存すればいいけど、人間の指揮官様は違うわ。...それでも大丈夫?」

 

 

夏油「心配してくれてありがとう。...大丈夫、何とかして見せるさ。」

 

 

 夏油の返答を聞いたアニスは快諾し、すぐに戦闘準備に移る。そしてマリアンは既に準備を済ませていたのか、夏油に近づき決意を抱いて伝える。

 

 

アニス「OK。分かったわ。」

 

 

マリアン「指揮官、私の後ろにいてください。私が必ずお守りします。」

 

 

 マリアンの表情見た夏油は、その決意と覚悟を信頼して、護衛を任せるように答えると同時に交戦が始まる。夏油は指示を出しつつ、シフティーにロード級に関する情報があるか質問する。

 

 

夏油「あぁ、私も全力でサポートするよ。...シフティー、近づいてきているロード級のラプチャーに関する情報はあるかい? できれば説明を頼みたいんだけど...。」

 

 

シフティー「分かりました! 前方のロード級ラプチャーはアーマードZ.E.U.S.と確認しました。Z.E.U.S.は前方にバリアを展開し、付近のラプチャーを守りながら戦います。」

 

 

夏油「そのバリアは攻撃して破壊できるかい?」

 

 

シフティー「はい、バリアの耐久力が無くなると展開できなくなります。」

 

 

夏油「...ありがとう、質問に答えてくれて。」

 

 

シフティー「いえ、また何かございましたらお呼びください!」

 

 

 ラプチャーの情報を聞いた夏油は、周囲を見渡す。戦闘が繰り広げられる区域に、道幅と同じ高さの廃ビルを見つける。破壊できる武装を持ったアニスに夏油は作戦の内容を通信を介して伝える。

 

 

夏油(あの廃ビル...ちょっとした爆発で倒壊しそうだな。そのロード級はともかく、雑魚は圧し潰せそうだ。)「アニス、ちょっといいかい?」

 

 

アニス「?、何??」

 

 

夏油「合図を出すから、あのビルの角を撃ち抜けるかい?」

 

 

 夏油の考えを聞いたアニスは、リロードがてら自身の推測を夏油に伝える。その推測に対して夏油も答え、その目的を伝える。

 

 

アニス「倒壊させて押し潰す作戦? でもロード級は倒せないかもしれないよ??」

 

 

夏油「確かに、倒すことはほぼ不可能と考えている。でも目的は、周囲の雑魚の一掃と、バリアの破壊だ。」

 

 

 夏油の目的を聞いたアニスは応戦しながら、その考えについて深く言及するよう説明を要求する。

 

 

アニス「ビルを倒してバリアの耐久力を削るのは分かるけど、雑魚の一掃は私たちの攻撃で十分じゃない?」

 

 

夏油「ラプチャーと接触する頻度が高いからね...できるだけ皆の弾数を浪費したくないんだ。それに、雑魚を一掃すれば奴のバリアの意味が自身の防御のみになって、皆の攻撃をゼウスに集中できる。」

 

 

 アニスはラプチャーとの遭遇率を説明し忘れていたが、この作戦中に異常な遭遇率から、【戦力を出来るだけ保持して継戦能力を維持する】という夏油の考えに驚き、その作戦内容に納得して役割を請け負う。

 

 

アニス「凄いね...記憶喪失しているとはいえ、ラプチャーとの遭遇率が異常って気づいたんだ。説明し忘れていたけど、1時間でラプチャーと遭遇する確率って100%なのよね。弾薬を節約できるなら私もその作戦に同意するわ。」

 

 

夏油「障害物からでも打てるかい?」

 

 

アニス「大丈夫、移動しなくても十分狙える。」

 

 

夏油「よし、作戦に関しては私がラピとマリアンに伝えよう。アニスは準備を進めてくれ。」

 

 

アニス「了解、指揮官様。」

 

 

 アニスに話した作戦をラピとマリアンに伝える。マリアンは納得し応戦を再開、準備を終えているラピは夏油に質問する。

 

 

ラピ「倒れたビルの音でラプチャーがやってくるのでは?」

 

 

夏油「見たところそこまで高くないビルだ。ドミノ倒しみたいになる事は無いし、背後から来たとしても倒れたビルが足止めしてくれる。」

 

 

ラピ「では、Z.E.U.S.の脚部は私が撃ち抜きます。回避が鈍ると思うので、ビルを当てる確率が上がると思います。」

 

 

夏油「頼むラピ、位置は大体ビルの自動ドアと垂直になる所だ。」

 

 

ラピ「了解しました。」

 

 

シフティー「ロード級ラプチャー、アーマードZ.E.U.S.! 来ます!!」

 

 

 シフティーの報告と共に、前方からZ.E.U.S.が現れ、左右のモジュールからバリアを展開して前進してくる。背後にいるラプチャーも後に続き攻撃を展開する。

 

 

夏油(来たか...最悪上手くいかなかったら、呪霊を使うしかないな...。)

 

 

 マリアンとラピは脚部に標準を合わせてバリアを攻撃し、ひび割れていき一部穴が開き始める。しかし、Z.E.U.Sは止まることなく、夏油たちを押し潰すかのように前進していく。目標地点に到達する前に脚部付近のバリアが壊れ、マリアンは脚部の装甲を破壊していき、ラピは破壊した箇所にある関節を撃ち抜いていく。

 

 やがてマリアンとラピの攻撃によって、脚部が破損して動きが鈍くなったZ.E.U.S.は行進を止め、丁度ビルを倒す際に指示を出す位置に停止する。

 

 

夏油「(動きが止まった!)アニス!!」

 

 

アニス「OK!!」

 

 

 夏油の合図に応じ、ロケットランチャーでビルの2つの支柱の角を爆破する。次第にビルは音を立てて倒壊を始めてZ.E.U.S.の背後にいたラプチャーごと潰れる。

 

 完全に倒れると同時に、ラプチャーがいる位置全体に土煙が充満し、土煙が晴れる前にシフティーはラプチャーの状況を報告する。

 

 

シフティー「Z.E.U.S.の周りにいたラプチャーは全滅! Z.E.U.S.の反応はありますが、大破しています。」

 

 

マリアン「私に任せてください。Z.E.U.S.と直線上でしたのでおおよその位置は把握しています。」

 

 

シフティー「私がナビゲートしてサポートしますね。」

 

 

 シフティーがZ.E.U.S.のコアに攻撃が被弾するように、マリアンのサポートする。数発の銃声とともに電気が弾ける音とモータが止まるような音が響く。シフティーは再び確認して報告を行う。

 

 

シフティー「...Z.E.U.S.の撃破を確認しました! 状況終了! 被害報告をお願いします!」

 

 

 戦闘終了と同時に、各々の状態を報告を行う。ラピとアニスの損傷は軽いが、マリアンは夏油を守っていた影響か、攻撃が集中して損傷が二人以上に酷かった。

 

 

ラピ「損傷は軽微。残段数は良好。」

 

 

アニス「以下同文。」

 

 

マリアン「左側の鎖骨フレーム、破損。右下のプロテクター、中破。破損率10.94%。作戦は続行可能です。」

 

 

 シフティーは報告を聞き取り、通信を一時遮断する。ラピとアニスはマリアンの状態を心配そうに見つめる。マリアンは作戦に支障は無いと説明して移動を再開しようとする。

 

 

シフティー「あっ...はい! 分かりました!」

 

 

アニス「...ケガが酷いわ。」

 

 

マリアン「大丈夫です。もうすぐ座標位置に到着します。急ぎましょう。」

 

 

夏油「いや...私のせいで傷が増えてしまったんだ。これぐらいしか、私にはできないが...」

 

 

 そう言って夏油はマリアンの傷に治療を施し、包帯を巻く。アニスはその行動の意味は無いことを夏油に伝えようとするが、マリアンが止める。

 

 

マリアン「指揮官...。」

 

 

アニス「はは。指揮官様、何してるの? ニケにはそんなの意味ないん...」

 

 

マリアン「いいえ、あります。」

 

 

 マリアンの発言にアニスは疑問を浮かべているが、質問する前にマリアンが答える。マリアンの返答にアニスとラピは静かに二人を見つめる。

 

 

アニス「...?」

 

 

マリアン「心が...満たされる感じがしますから。指揮官、ここにも包帯を巻いて下さい。」

 

 

夏油「あぁ、任せてくれ。」

 

 

 マリアンが指差した箇所にも同じように治療を施し、包帯を巻く。マリアンは心から喜んでいる表情で夏油を見つめて感謝を伝える。

 

 

マリアン「ありがとうございます。もう全然痛くありません。」

 

 

夏油「そうか...だが無茶するなよ、私たちはチームだ。互いに協力し合って乗り越えよう。」

 

 

マリアン「はい、指揮官...。」

 

 

 

 

 

 

 

 ロード級ラプチャー、アーマードZ.E.U.S.率いる軍勢を退けた夏油達、遂にマリアンが言っていた座標に到着した。しかし、周辺に先発隊がいるどころかどこにもいなかった。

 

 

マリアン「ここです。」

 

 

アニス「...先発隊はおろか、誰もいないわ。」

 

 

マリアン「います。」

 

 

アニス「いや、本当にいないんだけど。」

 

 

夏油「いるとしても、随分静か過ぎると思うが...」

 

 

マリアン「捜してみましょう。」

 

 

 そう言ってマリアンは一人で歩き始める。まるで先程とは別人で何かに導かれているのか、それともおびき寄せられているのかと夏油は感じる。

 

 

アニス「...? 何なの?」

 

 

シフティー「...ラピ。輸送機のブラックボックスの解析が終わりました!テキストデータで送ります!」

 

 

ラピ「ラジャー...。」

 

 

 ラピはシフティーの連絡から端末を取り出し、テキストデータを確認する。その時、ラピの瞳は僅かの間点滅した後、ラピは銃口を遠くに見えるマリアンに狙いを定める。その行動に夏油は動揺する。

 

 

夏油「!?...ラピ!?」

 

 

ラピ「マリアン。止まって。」

 

 

マリアン「はい。」

 

 

ラピ「あなたが輸送機を撃墜したの?」

 

 

アニス「...は?」

 

夏油「っ...!?」

 

 

マリアン「いいえ。」

 

 

 ラピの質問に対してマリアンは否定するが、ラピが確認したテキストデータの内容を説明し、マリアンを問い詰める。

 

 

ラピ「二度も輸送機の内部で爆発が起きた。今回の作戦で使う予定だった爆弾よ。外部からの起爆信号なしには絶対に爆発しない。...そして、その起爆信号の識別コードは、マリアン、あなたよ。」

 

 

マリアン「いいえ。」

 

 

夏油「...。(まさか、彼女は輸送機に乗った時には...!?)」

 

 

ラピ「目的は何。」

 

 

マリアン「ここです。」

 

 

ラピ「答えて。答えなければここで処分する。」

 

 

 ラピとマリアンの間から、一触即発の雰囲気が周囲に漂う中、マリアンは同じ言葉を言い続ける。マリアンの瞳は少しずつ赤い光が宿っていく、まるで敵であるラプチャーのコアのように...

 

 

マリアン「ここです。...ここです。...ここです。...ここです、ここです、ここです、ここです、ここです、」

 

 

シフティー「!! 浸食反応を確認!い、いつから!!」

 

 

ラピ「ちっ。」

 

 

夏油「マリアンに一体何が!?」

 

 

シフティー「ラプチャーに中枢神経を奪われました!」

 

 

夏油「つまり...敵に乗っ取られたのか!?」

 

 

マリアン「ここここここここででででででででですすすす。

 

 

シフティー「コーリングシグナルを感知! 阻止してください!」

 

 

ラピ「撃ちます! 命令を!」

 

 

夏油「っ...。」

 

 

 ラピの発言に夏油は言葉が詰まる、短い時間だが死線をくぐり抜けてきた仲間だ。直ぐに切り捨てることなんてできない。...夏油が迷いを抱いている1秒にも満たない瞬間、強力な振動が地面から感じられた。

 

 

シフティー「ぜ、前方からハイクラスのエネルギー反応! この振動パターンは...ブラックスミスが来ます!」

 

 

マリアン「ここここここここでででででででですすすす。

 

 

夏油「...こちらに真っ直ぐ向かって来る...!」

 

 

シフティー「コードネーム・ブラックスミス! タイラントモデルの1つです! 地上に上がったニケを捕まえ、ラプチャーの部品に変える特殊モデルです!」

 

 

マリアン「ここここでででですす...

 

 

 シフティーが向かってくるラプチャーの情報を提示する中、マリアンはどこからか現れた触手に捕まり、あっという間に建物の向こうに姿を消した。夏油は思わず消えたマリアンを探そうと走り出そうとするが、アニスに止められる。

 

 

夏油「マリアンっ!!

 

 

アニス「ダメよ! 指揮官様!! もう吸収された!」

 

 

夏油「離してくれ! アニス!!

 

 

 既に冷静さを失った夏油、アニスは必死に止める中、ラピは先発隊が消えた原因を分析しつつ、夏油に提案する。

 

 

ラピ「...行方不明になった先発隊は多分、あれにやられたのでしょう。まだ間に合うかもしれません。

 ...マリアンも、先発隊も」

 

 

夏油「!!」

 

 

アニス「ラピ! 何を...!」

 

 

ラピ「ブラックスミスは捕獲したニケをしばらくの間保管します。時間的には、生存している可能性が高いと思われます。...どうされますか?」

 

 

アニス「どうって何よ! 頑張って逃げなきゃ!」

 

 

ラピ「ご命令ください。」

 

 

 ラピの考えによって、嘗て体験した暗闇に包まれた心の中に、一筋の光が見え始める。『訳も分からず、こんな世界にやってきた。助ける義理なんてない、関係無い。』そんな考えは既に夏油の中には無い、既に死を体験したから、間違えた死を体験したから、あんな形で別れて、自分たちが逃げている間に死んでしまうなんて考えたくもない。

 

 

 

 

 夏油の瞳に決意が宿る、『やることは決まった。あとは自分に出来る最善(こと)を精一杯やるだけだ。』

 

 

 

 

 

夏油「マリアンを助け出す。」

 

 

ラピ「ラジャー。」

 

 

アニス「二人とも...」

 

 

夏油「今やらなったら...多分一生後悔する。私の命を救い、何度も皆で乗り越えてきた。なのに、私はあんな形で別れるなんてごめんだ。」

 

 

アニス「...分かったよ指揮官様、やってみよう。」

 

 

ラピ「シフティー、サポートをお願い。」

 

 

シフティー「え...はい! まず、シミュレーションの結果は...」

 

 

夏油「言わなくていいよ、絶対に負けられないから。」

 

 

シフティー「...分かりました!」

 

 

 シフティー、ラピ、アニスは各々戦闘準備を済ませ、マリアンを助け出し、ブラックスミスを倒す覚悟を固める。

 

 対して夏油は前世で体験した、自分の周りにいる仲間が理不尽に殺されないように、自分の目の前にいる人を、今度こそ守る為に、彼はこの世界で初めて、(呪い)を解き放つ。

 

 

シフティー「ただ今より、タイラントモデル003ブラックスミスとの交戦に入ります! エンカウンター!」




 実はブラックスミスとの決着をつけて、アークに行くところまで書きたかったのですが、いい感じに締めてしまったので次回に0章を完結させます。

 ついでに下に夏油のスペックを記述しておきます。


夏油 傑

・年齢
20歳

・身長
187cm

(現在の分隊の身長の高い順 ※非公式)
夏油→アニス(約162cm)≒マリアン(約162cm)→ラピ(約159cm)

・生得術式
呪霊操術

・技
極ノ番「うずまき」

・呪霊保持数
6400体以上+α

・所有武器
釈魂刀
天逆鉾
万里の鎖
遊雲

・縛り
????
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