会話を交えながらラプチャーの地下基地を進み続ける夏油たち、周りの景色は変わることなく灰色のままでヘレティックの破片に向かって歩き続ける。その道中、ラピはこの状況に違和感を感じており、シフティーにヘレティックの破片がある場所までの距離を訪ねる。
ラピ「シフティー、残りの距離は?」
シフティー「現在の速度を維持すれば、1時間以内に目標地点へ到着できます。」
ラピ「ちゃんと近づいているわよね?」
シフティー「?? はい、座標上では徐々に近づいています。」
ラピ「...そうか、分かった。」
シフティー「どうかしたんですか?」
ラピ「ううん、何でもない。」
シフティーから観測して問題なく移動できていると聞いたラピは、腑に落ちない表情を浮かべる。シフティーはラピの様子に心配するが、ラピは大丈夫と返答してシフティーはホログラムを消す。同時にウンファがラピに尋ね、同じ違和感を感じたことを共有する。
ウンファ「お前も気付いたか?」
ラピ「まだ確かではないから...迂闊に話して混乱を招くことは避けましょう。」
ウンファ「分かった。」
アニス「何? お腹痛いの? 誰か来ないか見張ってあげようか? 音楽要る?」
ウンファとラピが静かに話していることに気づいたアニスは、ウンファに近づきわざと要らないお節介をかく。ウンファは分かりやすく不機嫌な顔になり、アニスから離れながら口を閉じるように言う。
ウンファ「...お前はその口を何とかしろ。」
アニス「口を何とかしろ? じゃあキスして、チュッチュッ♡」
ウンファ「......」
ベスティー「ウンファが、プ...プルプル震えてる。すごい...」
ウンファの言葉で抑制するどころか悪化してしまい、アニスはさらに接近して顔を近づける。ウンファはもう3歩アニスから離れながら、若干引き気味で小刻みに震えながらしかめっ面になり、ベスティーはウンファの変わりように驚く。
その間に念話越しに花御から連絡が入ってくる、話の内容はラピとウンファの疑念と同じだった。
花御(夏油、何故伝えないのですか? 貴方たちは進んではいますが部屋ごと動いて距離が全く変わっていないのでしょう?)
夏油(ラピとウンファが言っていた通り、今そのことを伝えて隊列を乱す訳にもいかない。)
漏瑚(敵の本拠地だからか? だがこのままでは疲弊していく一方ではないか。)
夏油(幸い、アンダーソンさんとイングリットさんの支援を受けたおかげで、弾丸やバッテリーの予備には余裕がある。戦闘ができない場合は私が戦うしかない。)
夏油たちはヘレティックの破片のある部屋に向かっているが、その実部屋も同じ速度で動いており破片との距離が変わっていない。シフティーはスキャンして場所を確認し案内しているが、適宜確認しなければスキャンしなければ地図情報は更新する事は無い。
その結果、シフティーが見ている地図ではヘレティックの破片に着実に近づいている状況になっている。
真人(じれったいな~、さっさと壁ぶち破って破片回収すればいいのに~)
漏瑚(仮に実行した場合、
真人(ちぇっ...)
夏油(...だが、こうして時間を潰す訳にもいかない。地中にいたハーベスターを確認した時と同じように、四級呪霊を向かわせて偵察させよう。)
真人はこの状況に退屈になっており、直ぐに作戦を終わらせるべきと提言するが、漏瑚が真人の提言に対して状況は悪化すると言って止める。真人は不貞腐れて頬を膨らませ寝転がる中、夏油は四級呪霊をヘレティックの破片がある場所に向かわせる。
夏油が漏瑚たちとの念話が終わったと同時に、ラピはウンファに声を掛ける。
ラピ「ウンファ。」
ウンファ「それ以上言うな。全員、止まれ。」
アニス「順調に進んでいるのに、なんで?」
ウンファ「その節穴の目を大きく開いて周りを見ろ。」
ラピの声を止めてウンファが全員に立ち止まるように声をかけ、全員が反応して立ち止まる。アニスはウンファの行動に疑問を持ち理由を聞き、ウンファは周囲を見回すように呼びかける。ラピとウンファ以外が言う通り見回した後、全く場所が変わっていないことを伝える。
ウンファ「さっきと同じ場所だ。」
アニス「何?」
ラピ「あれを見て。」
アニス「...マーキングがそのまま残っている...」
ラピの指差した方向には、歩いている道中にあった鉄の柱があり、ナイフで傷つけた跡が残っていた。それも鉄の柱は背後ではなく前にあり、この状況下でネオンは困惑し何が起こっているのか理解出来ず慌てていた。
ネオン「私たち、無限の迷宮とかに入って来ちゃったのでしょうか?」
アニス「そんなファンタジー小説のようなもの、あるわけないでしょう。」
シフティー「座標上では...ちゃんと移動しています。」
アニスもネオンの発言に動揺し始め、シフティーは表示されている地図ではヘレティックの破片に近づいていることを伝える。シフティーの発言から考え込んでいたマクスウェルが、周りの景色が変わらないことについて分析を始める。
マクスウェル「ということは、私たちの移動に合わせて周りも動いているってことか。」
ラピ「そんなことができるの?」
マクスウェル「まあ、できないことはないね。この場所全体がラプチャーの制御下にあるなら。
思ったより大物かもしれないな。あの触手といい、ここといい。」
マクスウェルは部屋全体が、夏油たちに合わせて動いていると結論付け、ラピはその考えに現実性があるかマクスウェルに尋ねる。ラピの疑問にマクスウェルは、地上での不意打ちから正確に位置を特定した上での攻撃から、部屋全体がラプチャーという推論を関連させて、ラプチャーの規模が巨大であると推測する。
マクスウェルの考察を聞いて理解するラピだが、気掛かりなことが依然として残っており、ここまでの手前を要する理由について新たに疑問を抱く。その疑問にアニスも同じ考えのようだ。
ラピ「...おかしいね。」
アニス「うん、おかしいわよ。ここまでする理由なんか無いのに。
オペレーターがいるんだから、こんな真似は何の役にも立たないって考えないのかな。」
夏油「いや、もし私たちに合わせて移動している場合、ジャマーでオペレーターのサポートを妨害できる。今回はドレイクが居たおかげでジャマーを除去できたが。」
ドレイク「フフン!」
アニスがここまで大掛かりな仕掛けを用意する必要性について考えるが、オペレーターのサポートによって、仮に周りが動いている事に気付かずとも、ヘレティックの破片がある座標に到着すれば、この部屋の構造を看破することができる。
しかし、それはオペレーターのサポートに異常が無ければの話であり、この地下基地に入った後にジャマーを無力化しなければ、スキャンが不可能になる為地図情報を入手できなくなる。ドレイクの活躍によってその事態は免れたが、夏油の発言にラピは、この地下基地が対象としている敵について考え始める。
ラピ「オペレーターがいない状態のニケを狙っている...? パニックに落とし入れやすい方法ではあるから。」
アニス「こんな閉鎖的な場所へ偶然入ってくるニケたちの為に、こんな規模の仕掛けを? 効率悪すぎない??
そもそも、ここは何? ヘレティックの破片を回収する為とは言え、普通ここまでするかな。」
マクスウェル「それは考えにくい、何かあると見た方が妥当だね。」
オペレーターのサポートを受けられないニケを対象とすると、確かにどんなに移動しても全く場所が変わる事は無い。しかし、ヘレティックの破片を守るにしても効率も悪ければ、無駄に手が込み過ぎかつ、限定的な標的とした仕掛けと考えるアニスは非効率的だと考えを伝える。
アニスの発言にマクスウェルは、守る目的ではなく別の目的があると言う。マクスウェルの発言を聞いたアニスは何か思い当たるふしが無いか聞く。
アニス「心当たりは全くないの?」
マクスウェル「無いわ。」
アニス「嫌な予感がするんだけど...」
ラプチャーがこの仕掛けを用意する理由が全くわからないアニスは、更に動揺して周囲の警戒を高め、マクスウェルは再び考え込み、ネオンは不安そう表情でキョロキョロと周りを見渡す。
この部屋の構造を認知した事で、各自の緊張が張り詰めていく中、腕組みしているラプラスが堂々と皆に呼びかける。
ラプラス「心配するな! ここにいるのは、ただの分隊ではない!
ミシリスとエリシオンの最強分隊! 相手が誰であれ、絶対に勝利する!」
アニス「まあ...それは認めるけど、ここ、いわばラプチャーの腹の中のようなものなのよ?」
ラプラス「ならば、腹を切り裂いて出て行けばいいだけの話だ!」
ネオン「内側から開腹手術*1するって事ですね。」
夏油「間違ってはいないけれど...」
アニス「患者であるラプチャーは絶対死んじゃうから手術じゃ無いわね。」(≖ࡇ≖)
ミシリスとエリシオンの最強分隊が、協力しているこの状況に如何なる不利や無理難題も障害にならないという確信をラプラスは持っている。その様子に納得しつつも不安が消えないアニス、少し冷静さが戻ってきたネオン。
ラプラスの内側から切り裂く作戦に、ベスティーは同意してアニスの不安を拭おうとする。ベスティーの強張った表情を見て、無理をしているように感じ取るアニス。
ベスティー「うん。あ、相手がラプチャーなら、殺せばいいから。べ、別に心配することは無いと思う。」
アニス「...心強いような、無茶しているような...」
ネオン「最強の者が持つ、自負心みたいなものでしょうかね! 私もありますよ、最強のみが持つ自負心。
私がどういう面で最強かというとですね...」
アニス「うん、そう。あなた最強。うわ、うちのネオンは最強なの。すごい。」(≖ࡇ≖)
ネオン「ありがとうございます。これからも最強としての品格を守れるように頑張ります!」
ラピ「......」
長々と説明しようとするネオンを止めるように、アニスが被せて淡々と無表情でネオンを褒める。ネオンはアニスに褒められて嬉しくなり、アニスに感謝しラピは二人の様子に呆れた表情で見つめる。
ウンファが周囲の景色が全く変わらないと報告した後、暫く移動を続けていた夏油たち。適宜に地図を確認していたシフティーが違和感を感じ始め、ホログラム越しでも不安そうで夏油たちに声をかける。
シフティー「...皆さん、私の目がおかしいのでしょうか? それともモニターにエラーがあるのでしょうか?」
アニス「何?」
シフティー「皆さんの周りがずっと動いています。」
アニス「あ、そう? 心配しないで、実際に動いているから。」
シフティーの疑問に、アニスは先ほどの会話で動いていることを確認したことを伝える。シフティーは地図のスキャンを再び実行して、前回のスキャンと同じ座標にとどまっていることを確認する。
シフティー「...座標は固定されていまして、実際、皆さんは現在の位置から全く動いていません。」
ネオン「えっと...どうしましょう?」
マクスウェル「動き続ける背景か。こんな状況は初めてだから、どうすればいいか全く分からないよね。
もっと精密にスキャンしてみたらどう?」
シフティー「意味がありません、スキャンする度に結果が変わります。
パターンがあると思いますが...パターン把握にどれくらいの時間がかかるか分かりません。」
スキャンの精度と頻度を増加しても、既に試したのかスキャンを繰り返すと異なる結果になると説明するシフティー。結果のパターン分析に時間がかかるとシフティーの説明に、マクスウェルは目的地の座標の変化が無いか尋ねる。
マクスウェル「ヘレティックの破片の位置は変わってないよね?」
シフティー「はい。」
マクスウェル「なら、何とか突破するしかないね。」
ラピ「退却するという手もあるわ。パターンを把握してから侵入した方が安全だろうから。」
夏油「その場合、救援要請が必要になる。天井を突き破って引き上げてもらわないと出られそうにないからね。」
この状況を突破するという考えを示すマクスウェルと、部屋ごと移動する構造について分析、調査する為に退却するべきと提言するラピ。夏油はラピの考えに賛同を示し、退却方法について自身の考えを伝える。
しかし、ラピの考えにウンファとラプラスは拒否する。
ウンファ「ふざけるな、退却はしない。」
ラプラス「同感だ。」
ラピ「...それは100%の作戦成功率を守るためかしら?」
ラプラス「そうだ、それは私たちの矜持のようなものだから。」
アブソルートとメティスはエリシオンとミシリスの最強分隊と言われる所以は、作戦成功率100%という実績によるものであり、自らを奮い立たせる誇りでもある。作戦を中断して退却することは、自分たちが築き上げた実績と誇りを捨てることに他ならない。
ウンファとラプラスの主張を聞いたアニスは、今後の作戦行動に関して理解する為に簡潔に説明する。
アニス「だから話を纏めると、
そういうこと?」
ウンファ「ちょっとは頭が良くなったようだな。」
ラプラス「最強の分隊と一緒にという言葉が抜けたが...そうだ。」
アニスの説明にその通りという反応を示すウンファとラプラス、アニスはこの無理難題を突破する作戦を決行しようとする二人を正気とは思えない表情で見つめ、ネオンもアニスと同じような考えを抱く。
アニス「完璧な作戦ね、うん。」(≖ࡇ≖)
ネオン「不可能という点に目を瞑れば、ですが。」(⩌_⩌)
ラプラス「心配するな、私には道が見える。」
アニス「黄泉への道?」
ラプラス「私のヒーローセンサーが反応している...道が分かる気がする。」
アニスとネオンの反応も問題ないと言うように、自身の心臓に手を添えてヘレティックの破片のある道筋が分かると告げる。ラプラスの発言にマクスウェルは驚きの表情を浮かべて、指を指した道なのかとラプラスに問いかける。
マクスウェル「え? まさかあっちの左右に揺れる、あの道?」
ラプラス「!!そうだ! やっぱりな! ナチュラルボーン・ヒーロー同士は何か通じるものがあるのだ!」
マクスウェル「まさかドレイク、貴方も?」
ドレイク「そうだ! 感じられる!」
マクスウェル「よし。行こう、案内するから。」
マクスウェルはラプラスとドレイクが、自身と同じように進むべき道が見えていることを確認し、目的地に辿り着けると確信があるのかメティスはその道の方向に歩き始める。その行動に分隊に対する不信感と確証が全く無い考えで不自然に動くメティスをウンファが制止する。
ウンファ「そんなふざけた直感なんかを信じろというのか。」
マクスウェル「間違いない。私たちは道を知っている。
ここだよ。」
ウンファ「ふざけるな。裏切る機会を虎視眈々と伺っている奴らを信じられるわけ...」
エマ「ウンファ。」
無理にでも進行を止めようと早歩きで追いかけるウンファだが、エマがウンファの肩に手を添えながら声をかけて止める。そして直ぐに二人しか聞こえないようにウンファに耳打ちし、エマの言葉に一瞬表情が硬直する。
その後、数刻考え込んだあとに、メティスに道案内するよう指示を出す。
ウンファ「......案内しろ。但し、お前らが先頭で歩け。」
アニス「お、何? 前に立たせて後ろから撃とうって話したの?」
ウンファ「勝手に言ってろ、三流。」
ラピ「...何を考えているの?」
ウンファ「...歩きながら説明する。動け、メティス。」
ラプラス「行こう! ヒーローロードへ!」
夏油「......」
メティスの独断行動を、先頭になって進むことを条件に許可するウンファ。手のひら返しが早いことに、アニスは背後から撃つつもりなのかとウンファに茶化し、ラピはウンファの意図が読めず説明を要求する。
ラプラスはウンファの指示を聞いて、メティスを先頭に進む陣形を展開し、マクスウェルが指で指した方向に進み始める。アブソルートとカウンターズも後に続くように歩き始める中、夏油は目的地までの道が分かるメティスを後ろから見つめていた...
今までずっとストーリーを見返しながら書いていたのですが、blablalinkを知ってから労力が激減しました。もっと早く気付け私。
UAが13000を突破した...それだけ多くの方々が見ていることに感謝します。そろそろ終わりも近づいていますが、ペースを乱すことなく投稿したいと考えています。
指揮官室で夏油と漏瑚たちは、麻雀を打ちながらこれからの事について話していた。
花御「ここでの生活も長くなりましたね。」
夏油「任務に行っては、報告書を書く。これの連続だけどね。」
漏瑚「だがお主もよくここにとどまれるな?」
夏油「彼女を助けられる希望が見えてきたんだ、今更後に引けないよ。」
真人「それまでは、発電所でここに飛ばされるわ、五月蝿いクソガキに脅迫されるわ、北部で遭難するわと、散々だけどね。」
夏油「確かに、碌なことは無かったよ。」
陀艮「ぶふぅ〜...」(北部は忙しかったね〜...)
花御「立て続けに様々な出来事がありましたね。」
真人「そういえば、合流させる為に俺をラピたちに姿晒したけど大丈夫なの?」
夏油「さあね、だがそろそろ限界かもしれない。」
漏瑚「問い詰められた時はどうする気だ?」
夏油「...出来るなら、マリアンを助けた後に明かそうと思っているよ。」
陀艮「ぶふぅ、ぶふぅ〜。」(じゃあ、早く助け出さないとね。)
夏油「あぁ...そうだね。」
真人「まっ、あの弾丸の情報が出ない限り動けないし、気長に待とうよ。...おっ?」
真人はツモした牌を見て、表情を明るくして手牌に加え、手牌左端の牌を捨てる。
真人「よっしゃあ! 通らばリーチ!」 ️
漏瑚・花御・夏油「「「ロン。」」」
漏瑚「大三元。」
花御「四暗刻単騎待ちです。」
夏油「国士無双。」
真人「...は?」
陀艮「ぶふぅ〜?」(みんなの役って役満だっけ?)
漏瑚「そうだな。」
花御「子の役満の直撃点数は32000点ですね。」
夏油「つまり、真人は96000点マイナスだ。」
真人「やってらんね〜! 寝る!」
席を立ち上がった真人は姿を消す。
漏瑚「お前が暇だからやりたいと言ったのだろうが...」
夏油「仮に続行しても0にするまで骨が折れるからね。」
陀艮「ぶふぅ〜?」(僕も入っていい?)
花御「構いませんよ。」
夏油「役の一覧が書かれた紙は渡したから、役作りは問題無いね。」
漏瑚「ルールが分からぬ時は声をかけてくれ。」
陀艮「ぶふぅ〜!」(わかった〜!)
卓上の麻雀牌を両手を使って混ぜながら、夏油たちは会話する。
漏瑚「弾丸についての情報が明かされた時、お前はどうする?」
夏油「マリアンの捜索に移るかな。」
花御「侵食を無効化出来ると明言されていないというのに、そう断言する理由は?」
夏油「スノーホワイトがわざわざ私のもとにまで来て手渡した物だからだ、きっと意味があると考えている。」
漏瑚「仮に、あの娘を殺す効果の時はどうする気だ。」
夏油「その時は、あの時果たせなかった事をする。彼女の尊厳をこれ以上踏み弄らせはしない。」
陀艮「ぶふぅ...」(夏油...)
漏瑚の問いかけに、牌を混ぜる手を止める夏油。しばらく静寂が流れるが、すぐに気を取り直してそれぞれ山牌を積み上げる。
夏油「すまない、しらけさせてしまったね。」
漏瑚「お前の覚悟を聞きたかっただけだ、気にするな。」
花御「推測をこれ以上並べても、事態は変わりません。今は彼女を助ける事を考えましょう。」
陀艮「ぶふぅ〜!ぶふぅ〜!」(そうだよ!絶対助けなきゃ!)
夏油「ありがとう...っとさて、親はどうしようか?」
陀艮「ぶふぅ〜?」(僕やってもいい〜?)
漏瑚「ああ、では賽を振れ。」
陀艮「ぶふぅ!」(うん!)
花御「...5ですね。」
夏油「それじゃ、右から5列は残して6列目から4牌ずつ取ろう。」
陀艮の山から牌を取っていき、手牌を見て目指す役を決めた中、陀艮だけ慌てた様子で手牌と役一覧表を見ている。
漏瑚「どうした陀艮? 親から手牌を切らねば進まんぞ?」
陀艮「ぶふぅ、ぶ...ぶふぅ...」(えっと、そ...それがね...)
花御「急がなくても大丈夫ですよ、落ち着いて言ってみて下さい。」
陀艮「ぶ、ぶふぅ...」(う、うん...)
陀艮は何回か深呼吸して、リラックスし落ち着いたようだ。
夏油「それで、どうしたんだい?」
陀艮「ぶふぅ...」(それがね...)
陀艮「ぶふぅ。」(あがってるの。)
漏瑚・花御・夏油「「「............は?」」」
自身の手牌を倒して、夏油たちに明かす陀艮。夏油たちは身を乗り出して陀艮の役を覗き込む。
夏油「......萬子の純正九蓮宝燈だね......。」
漏瑚「チョンボ*1でも無いな。」
花御「そして最初の配牌で役が出来上がっている...。」
漏瑚「天和*2は役満...」
夏油「純正九蓮宝燈はダブル役満...」
花御「そして親の上がりは子の1.5倍...」
陀艮「ぶふぅ...ぶふぅ...?」(えっと...つまり...?)
漏瑚・花御・夏油「「「......トリプル役満...144,000点...。」」」
陀艮「ぶふぅ...?」(どうなるの...?)
漏瑚「ハコテン*3...つまり儂らの負けだ。」
陀艮「ぶふぅ?...ぶふぅ??」(えっ?...終わり??)
花御「......仕切り直しますか?」
夏油「...そうだね、その前にその配牌写真撮ってもいいかい?」
陀艮の天和の純正九蓮宝燈を写真で撮った夏油は、再び麻雀を再開する。最初は自分の役作りに手一杯だった陀艮は、回数を重ねていく内に相手の待ちの予想を始める。初心者ではあったが、それ故に夏油たちの助言を正直に学ぶ為、飲み込みが速く数時間の内に基本ルールから勝負の本質を触れるまで至った。