特級呪術師のデストピア   作:クモッ!

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 最近、とんでもスキルで異世界放浪メシという作品の2期アニメが放送されて次の話が待ち遠しくて堪りません。最近の生き甲斐で、これを機に漫画を読み返そうと思っているのですが、最近忙しくてドタバタ...休日が恋しいです...

 皆さんも毎日お疲れ様です、今日も頑張りましょう。

 というか話の構成ミスって文字数がとんでもない量になってしまいました。かなり長い話になって申し訳ありません。


自中(エゴ)、定まらない天秤

夏油「報告は以上となります。」

 

アンダーソン「ご苦労だった。」

 

ラピ「......」

 

アニス「......」

 

ネオン「......」

 

 

 エリアHからアークに帰投した夏油たちは、任務の詳細をアンダーソンとイングリットに報告していた。夏油、アンダーソン、イングリットはいつも通りに会話しているが、ラピ、アニス、ネオンは加わらずに夏油を見つめていた。

 

 

ラピ「あの。」

 

イングリット「何だ?」

 

ラピ「知っていたのですか? 指揮官の事...」

 

イングリット「......ああ。」

 

 

 沈黙していたラピが、イングリットとアンダーソンに尋ねる。イングリットは少しの間ラピから視線を逸らすが、再び向き合って知っていると答え、アンダーソンもイングリットの返答の後に頷く。

 

 夏油の報告が報告した内容は、ヘレティックの破片を回収するまでの内容だ。しかし、最後ラプラスの侵食による支援部隊の砲撃は、確かに放たれたのだが、支援部隊と無事合流して、ラプラスの無力化も完了したのだ。

 

 

 

 

アニス「何だって急に!?」

 

ネオン「それにしたってタフ過ぎませんか!?」

 

ラプラス「うあああああっ...!!!」

 

 

 ラプラスに攻撃を続けるラピたちだが、全く倒れる事無くビーム砲が照射される。

 

 ビームが収束されていき、放射されるその直前に、人型の影がラピたちの頭上から飛び越えて地面に映る。空を見上げると、支援部隊とラプラスのビーム砲の前に夏油が割り込むように位置まで飛んでいた。

 

 

ラピ「指揮官!」

 

アニス「指揮官様!?」

 

ネオン「師匠!!」

 

 

 ラピたちのように、声に出さなかったがウンファ、エマ、ベスティー、砲身を構えているラプラスも驚愕している。対空しているヘリコプターの半分の高さまで飛び上がった事について疑問に思う暇など無く、ヘリコプターを覆い尽くす程のビームが、降下中の支援部隊と間に割り込んだ夏油に向かっていく。

 

 ビームが夏油を覆う前に、夏油がビームに向けて両手を向ける。瞬間、夏油の手のひらから黒いモヤが放出され、モヤの中からバツ印を象る人肉が出現する。

 

 

『ぐぱぁ...』

 

 

 バツの線から人間のような瞳が開かれ、バツの交点から口を開き、青銅色の彫刻が口内にあり、ラプラスのビームが彫刻に被弾する。ビームの高熱によって焼きただれ、融解するに思えた彫刻だが、変形する事なくラプラスのビームを反射する。

 

 

『ドワオッ!!』

 

 

 ビームはラプラスより後ろの地面に向かうように屈折し、辺りに砂埃をまき散らす。集中砲火で固まっていたラピたちも、周囲にいる筈の仲間の確認ができない程、視界が遮られる中、風切る音と共に地下基地にこだまする声が、静寂を作り出す。

 

 

????「()()

 

 

 降下していたヘリコプターが、ラプラスが放ったビームが巻いた土煙を巻き上げ、辺りの光景が鮮明となっていく。夏油は周囲を確認すると、皆の動きが完全に止まり、瞳から光が失われている。

 

 正に自分だけが止まった時の中で取り残されたように、ラピたちはピクリとも動かず、ラプラスに関してはビーム砲を空に掲げた状態で硬直している。その空間の中で、黒い長髪に真紅の薔薇の髪飾りを付けている女性は、首元まで降ろしたマスクを口元に引き上げて隠す。

 

 シフティーは降下した女性を確認して、夏油に報告する。

 

 

シフティー「エクスターナー分隊! 合流しました!」

 

夏油「エクスターナー...彼女が支援部隊だったのか。」(先程の声...呪言師のように自分が発した言葉を強制させる効果か...)

 

シフティー「彼女はメイデン、もう一人...ギロチンがいますよ。」

 

 

 生前の夏油が交戦した記憶のある呪言師の末裔、()()()。言葉に呪力を込めて発する事で、言霊を増幅や強制が可能になる狗巻家相伝の高等術式である。

 

 彼女の能力とは原理は全く異なるのだろうが、夏油なりに彼女から発せされた言葉が、ニケの脳内にある制御系統に命令を強制させると考察する。

 

 シフティーが夏油にエクスターナー分隊の紹介をしている中、長髪の女性メイデンがマスクを口元に戻している間に、同じく長髪で淡い金髪の少女が、降下中のヘリコプターから飛び降りて女性の隣に着地する。

 

 少女の着地を確認したメイデンは、ラピたちとラプラスが停止している事を目視で確認し、ラプラスの様子を見て少女に指示を送る。メイデンの指示を受けた少女、ギロチンは、腕組しながら眼帯越しに右目を添え、渋りながらも不敵に微笑む。

 

 

メイデン「動作の停止を確認。ギロチン、彼女が放出したキャノンエネルギー反応がまだ残っています。

 爆発する恐れがあります、遮断を。」

 

ギロチン「仕方が無い...出来れば使いたくなかったが。」

 

 

 笑みを零しながら、ギロチンは黒い眼帯に添えていた右手を、眼帯の前で手を広げて地面と垂直になっている右手を交差させるように左腕を重ね、十字を作りながら嬉々として詠唱を始める。

 

 

 

 

我の目に眠っている魔王の封印を、今解き放つ。

 

思いっきり暴れたまえ、片翼の魔王よ!

 

 

輝け! アイン・ソフ(無限光)・オウル!!

 

 

 

 

 高らかに声と共に眼帯を上げるギロチン、左目は藍色のような色を放っていたが、眼帯で隠された右目は鮮血のような鮮紅色が一瞬光輝く。その後、ラプラスの体を走っていた稲妻や、再発射する為に充填していた銃口のエネルギーが霧散する。

 

 ラプラスのエネルギーが散らばる様子を見たギロチンは、上げた眼帯を戻しながら不敵な笑みを零しながら己に宿っている力に恐怖し、葛藤する。

 

 

 

ギロチン「くくくっ...またやってしまったな。

 

ギロチン「恐ろしい...この力が(もたら)すだろう破滅が。

 

 

 

メイデン「撤退しましょう。」

 

 

 ギロチンの語りに対して全くの無反応で、撤退するよう指示を出すメイデン。しかし、メイデンの指示が聞こえないのか、ギロチンは再び右手を眼帯に添えてながら、身を震わせる。

 

 

 

ギロチン「それでも、この力を使うしか無いのか。

 

ギロチン「破滅が約束されている力に溺れた我は、まるで火取り虫だ...

 

火取り虫(ひとりむし):夜の光に集まる蛾などの虫の事

 

 

メイデン「撤・退・し・ま・し・ょ・う。

 

 

ギロチン「......

 

 

 メイデンの圧力に屈したのか、語りを止めたギロチンはぞっとするような表情になり、物凄い眼光を向けてくるメイデンを見上げる。動揺しつつもメイデンの指示を承諾するギロチン、言葉が詰まるが夏油にエクスターナー分隊の情報を秘匿するように釘を刺す。

 

 

ギロチン「い、いいだろう。今日は特別にその頼みを聞いてやろう。

 

 友よ、分かっているだろうが、我々は光に晒されてはならない存在。

 

我々の存在を口にするその瞬間、死の神がお前の魂をズタズタに...」

 

メイデン「ギ・ロ・チ・ン。

 

ギロチン「......

 

夏油「......」

 

シフティー「えっと...つまり、エクスターナー分隊は表だって活動しない特殊部隊なので、二人のことは秘密にしてくださいって事ですね...多分......」

 

夏油「あ、ああ...また会おう二人共。」

 

 

 メイデンの眼光に耐えられず、ギロチンは顔を逸らしている間、シフティーはギロチンの言っていたエクスターナーの存在を秘匿するようにお願いしている発言を、嚙み砕いて要約し夏油に伝える。夏油はシフティーの説明を聞いて了承し、エクスターナー分隊に別れを告げる。

 

 メイデンは夏油を一瞥し、一礼しながら笑みを零す。直ぐにギロチンとメイデンは降下途中だったヘリコプターから降ろされた縄はしごに捕まり、メイデンは再びマスクを下ろしてラピたちに命令を送る。

 

 

メイデン「()()()

 

ラピ「!? さっきのは一体...!?」

 

シフティー「今です! ゴム弾を!!」

 

 

 止まっていたラピたちの時間は再び動き出す、状況が呑み込めない面々は周囲を確認して把握しようとする。しかし、シフティーがラピたちに対して直ぐにラプラスを制圧するように指示を送り、ゴム弾を発射する。

 

 充填していたエネルギーが無くなり、状況が飲み込めないラプラスはゴム弾が頭部に直撃し、遂にその意識をビーム砲から離れるように手放し沈黙する。ラピが動かなくなったことを確認し、ゴム弾を装填してラプラスに少しずつ接近して、意識が無くなっていることを確認し、ラピの確認を聞いたシフティーは支援部隊のヘリコプターを降下することを伝える。

 

 

ラピ「制圧完了。」

 

シフティー「状況クリア、援軍が到着します。これからは援軍の指示に従って動いて下さい。」

 

ラピ「...指揮官、この状況はまさか...」

 

夏油「私は何も見ていないよ。」

 

ラピ「そうですか...」

 

アニス「じゃあ...ラプラスの弾道を変えた事について、教えてくれるの?」

 

夏油「.......」

 

 

 ラプラスのエネルギーが無くなっていたこと、視界を覆っていた砂埃が晴れていたことから、現在の状況について夏油から説明を受けようとするラピだったが、夏油は口を開かずに知らないと伝える。ラピは察して深堀はしなかったが、アニスが夏油の行動とラプラスのビームを反射した事についての説明を要求する。

 

 アニスの要求に対して視線を逸らし沈黙するが、アニス...ラピやネオンに向き直り伝える。

 

 

夏油「宿所に戻ったら...伝えるよ。」

 

 

 

 

 そして現在、エリアHから帰還した夏油たちは、アンダーソンとイングリットの前で報告を行っている。そして夏油の力について知った人間が、ラピ、アニス、ネオンのカウンターズ。

 

 ウンファ、エマ、ベスティーのアブソルート、メティスのラプラス、アンリミテッドのルドミラ、アンダーソンとイングリットの計10名となった。アブソルートの方は漏洩しない環境で伝えることと、完全秘匿するという条件で夏油の情報の開示が許可された。

 

 そして、力の詳細を知らない人物は10名の中で3名、夏油の身近に活動していたカウンターズのみとなっている。イングリットはラピたちの様子を見て、力の開示はどうするのか夏油に尋ねる。

 

 

イングリット「何時伝えるんだ?」

 

夏油「この報告を終えた後、宿所で伝えます。」

 

イングリット「...そうか、では先に回収したヘレティックの破片について説明するとしよう。」

 

 

 ラピたちの表情は表に出さないように無表情で取り繕うとしていたが、夏油に対する疑念や恐怖、一度に複数の感情が沸き上がり混ぜられている。三人の表情から、手早く報告を済ませようとイングリットは説明を始める。

 

 

イングリット「ヘレティックの破片は無事に回収した。

 超高密度の12重セキュリティボックス[アトラスケース]を使って運び、現在は成分の分析を進めている。もうすぐ結果が出るだろう。」

 

 

 イングリットは回収したヘレティックの破片を、アークの科学者が発見したアトラスパターン*1という、特殊な金属を用いて製造されたケースで運搬したことを伝える。アトラスパターンは、極めて強固かつ堅牢な金属素材であり、現存する物質の中でも最も高い高度を誇る。

 

 そのアトラスパターンを12重に重ねた堅牢な箱の中に、ヘレティックの破片を入れている事から、外部からの衝撃で穴を開けることはほぼ不可能に近いだろう。次に浸食が埋め込まれたメティス分隊について尋ねる。

 

 

夏油「メティスの皆はどうなりましたか?」

 

アンダーソン「コールドスリープに入った。浸食は更に進む事は無いが、戦力としては使えないだろう。」

 

ラピ「記憶消去はしないのですか?」

 

アンダーソン「ああ、シュエンが必死に反対してね。方法が見つかるまでそのまま保管するらしい。」

 

 

 アンダーソンは浸食状態且つ、支援部隊を攻撃しようとした報告を受けて、戦力としての運用が怪しいと考えられると、自身の見解を告げる。ラピは記憶消去して復帰しないのかとアンダーソンに尋ねるが、シュエンが反対して保管していると説明を加える。

 

 ニケに対して差別的で軽んじているシュエンにしては、今回の行動からメティスの存在が特別だと感じさせる。そして、夏油がスノーホワイトから受け取った物質、アンチェインドの存在と効果を知ったからなのか、浸食を無効にする方法がある事で保管という手段が生まれたと考えられる。

 

 報告から浸食の経路は、ハーベスターに搭載された触手と部屋を支配していた巨大ラプチャーの触手の二点で、負傷者がメティスとラピという事から、ラピも浸食が発生する。しかし、異常が無い事からイングリットはラピには浸食が効かないという事実から結論を出す。

 

 

イングリット「報告上では、ラプチャーの触手にやられたとされていた。しかし、お前は浸食されていない。」

 

ラピ「そうです。」

 

イングリット「夏油傑。記憶消去について、どこまで知っている?」

 

夏油「イングリットさんから聞いたことから、NIMPHについては知っています。」

 

イングリット「では話が早い、浸食はNIMPHにラプチャーのコードを入れて変化させる仕組みだ。

 変化したNIMPHは脳に強制的な命令を持続的に下す。つまり、ラプチャーの手下になるのだ。

 浸食コードが入っていた触手にやられてもお前が正常だと言うことは、

 

脳にNIMPHが無いという話になる。

 

 つまり、記憶消去が効かなかったのは、事実だったのだな。」

 

ラピ「はい、事実です。」

 

 

 NIMPHとは脳という記憶媒体を経由して、記憶や体(データ)験をナノマシンのストレージ上で、常にバックアップをオートセーブしている。

 

 浸食のようにNIMPHに異常があった場合は、最後にアークにて保存されているNIMPHの最近のバックアップをロードして、脳にあるNIMPHのセーブデータを上書きすることで、浸食のコードごと削除する。最終的に脳がNIMPHで保存される前の状態に戻り、結果任務前までの記憶や更に昔まで戻る、これが記憶消去。

 

 ラピの場合はトーカティブの任務で、夏油が報告も無しに無断に出撃したことを知っていた上で、制止せずに同行した事で記憶消去という処罰が下されたが、ラピの記憶は抹消される事なく復帰した。脳に書き換えるデータを送った所でデータの受け取り且つ、更新する役割のNIMPHが無ければ、記憶は書き換えられる事は無い。

 

 以上のことから、イングリットはラピの脳にはNIMPHが無く、記憶消去が効かない事の裏付けとなった。ラピという異例のケースに対して、アンダーソンは以前と変わりなくとも調査が必要だと提言し、イングリットもその考えに同意する。

 

 

アンダーソン「それでも調査は必要だ。」

 

イングリット「ああ、ゆっくりやる事にしよう。」

 

アニス「本当に脳を開けるの?」

 

イングリット「いや、スキャンで十分だ。NIMPHの有無を確認するだけだからな。」

 

ネオン「ふう...」

 

 

 アンダーソンとイングリットの言う調査に、アニスとネオンは不吉な予感を感じ、頭を開くのかを沈んだ表情で尋ねる。しかし、NIMPHの有無を確認するだけならば、頭を開く必要は無くスキャンするだけでも事実確認出来る事をイングリットは伝える。

 

 イングリットの説明を聞いて、アニスとネオンは沈んでいた顔が安堵の表情に変わり、心なしか夏油も安心した表情になった。NIMPHの有無についての方法を説明したイングリットは、ラピにアンチェインドが曝露した経由があったのか質問する。

 

 

イングリット「重要なのはどんな経緯でアンチェインドに曝露(ばくろ)*2し、脳のNIMPHが消失したかだが、まだ心当たりは無いか?」

 

ラピ「ありません。」

 

イングリット「...まあ、構わない。ゆっくり調べればいいからな。」

 

夏油「アンチェインドに関する新しい情報はありますか?」

 

イングリット「ない。中央政府のデータベースに情報はあるが、ナノマシンを削除するという内容しか無かった。お前たちの知っている情報が全てということだ。」

 

 

 イングリットの質問に対して、ラピは曝露したきっかけについて思い出せなかったことを伝える。イングリットはラピに心配させないように気づかい、長期的な調査で補うと説明する。

 

 夏油はイングリットに、中央政府のデータベースから、アンチェインドに関する新たな情報があったかを尋ねる。しかし、関連する情報は無いことを伝え、どのように発見したかや起源に関しても不明ということを伝える。

 

 

イングリット「起源は何処なのか、どんな物質で構成されているかは記録されていない。しかし、ずっと言っているが時間の問題だ。

 お前の持っている弾丸はまだそのままだ、ラピはアンチェインドに曝露したという経歴がある。つまり、アンチェインドは1つではないこということだ。」

 

夏油「そして1つではないということは、量産もできる可能性もあるということですね。」

 

イングリット「そうだな、ここまで情報があるなら、後は時間をかければ解決する。」

 

 

 起源が分からないアンチェインドだが、夏油がスノーホワイトから受け取った弾丸に、ラピのNIMPHが無い事実が確認できた場合、アンチェインドが複数存在し過去に量産していたと考えられると推論を話す。アンチェインドに関する調査は、ラピのNIMPHの有無を確認するということで一区切りとなる。

 

 最後に、今回任務で向かった地下に広がっていたラプチャーの基地に関して、調査の進展があったかを夏油はアンダーソンに尋ねる。アンダーソンは夏油の質問に対して、ヘレティックの破片の分析、調査が終わり次第アンダーソンの推測が確信に変わることを伝える。

 

 

夏油「今回の任務で発見した地下施設について、分かったことはありましたか?」

 

アンダーソン「ああ、調査結果の前後の事情を合わせれば、大まかな状況は推測できるが...

 まあ、ヘレティックの破片の成分分析が終われば確信が持てるだろう。」

 

ネオン「あの...箱の中に入っていた物は...」

 

アンダーソン「......」

 

 

 夏油が地下基地に関して尋ねた時、ネオンの脳裏に残っていた光景が蘇る。無機質な鉄の箱の中に乱雑に敷き詰められたニケの箱、腐食が血肉は鼻に突き刺さり、蛆が断面から顔を出している無惨な光景を。

 

 ネオンは恐る恐る、アンダーソンに箱について尋ね、アンダーソンは一瞬目を細めるがネオンに真っ直ぐ視線を向けて伝える。ニケを箱詰めしていた目的についてまだ分からないことを、夏油にも加えて説明する。

 

 

アンダーソン「ニケだ。間違い無い。」

 

ネオン「そう...ですか。」

 

アンダーソン「それも含めて調査中だ、もう少し待ってくれたまえ。」

 

夏油「分かりました、待っています。」

 

 

 夏油は頷き調査結果を待つまでの間、前哨基地に戻って休養を取る事になり、報告は終了する。夏油たちは前哨基地に向かうが、イングリットも夏油たちに同行するように後に続く。

 

 

イングリット「直ぐに前哨基地へ帰るなら同行する。」

 

夏油「あの人...ですね。」

 

イングリット「ああ、護衛として同行する。」

 

夏油「感謝します、イングリットさん。」

 

イングリット「気にするな、私も少し奴に用があるからな。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 報告を終えて前哨基地に到着し、宿所に戻ってきた夏油たち。イングリットも護衛として同行していく道中で、ネオンは何度も頭を傾げるが、宿所にいる筈の無い人物を見て納得する。

 

 その人物は宿所の玄関前で、二人のニケを引き連れて夏油を待っていたようだ。その人物を夏油は指揮官室に入れて、ソファに腰掛けて二人のニケはソファの背後に立ち、夏油は椅子に座ってその背後にラピとアニスとネオン、隣にイングリットが立ってその人物を見つめていた。

 

 

アニス「......」

 

ネオン「......」

 

ラピ「......」

 

シュエン「座って。」

 

ミハラ「......」

 

ユニ「......」

 

 

 宿所に待っていた来訪者はミシリスのCEO、シュエンとワードレスのミハラとユニだった。もしミハラとユニが個人的に訪問した場合、思い出話に花を咲かせていただろう。

 

 しかし、現在シュエンの機嫌が最悪の状態で、座ったソファの隣に置いたアタッシュケースを、何度も指先で叩いていた。夏油の隣に立って見下ろしているイングリットに苛立ちを感じたのか座れと命令する。

 

 

イングリット「長く滞在するつもりか? 立ったまま聞こう。」

 

シュエン「お前は何しに来たの?」

 

イングリット「正式に招待された、誰かさんと違ってな。」

 

シュエン「......」

 

 

 イングリットの言葉に対して、癇に障るのか更に苛立ち睨みつけるシュエン。イングリットはシュエンの表情にどこ吹く風といった雰囲気で軽く流す。

 

 場の雰囲気が更に悪くなる中、ユニの視線はラピに対して申し訳なさを感じられ、ミハラも笑みを浮かべて取り繕っているが、ユニと同じような視線をラピに向けている。ミハラとユニはラピが記憶消去が効かない事を知らず、自分たちのことを忘れてどう声をかければいいのか、謝罪するべきなのだろうかと悩みつつ、声をかけられないと感じられる。

 

 

ミハラ「......。」

 

ユニ「ぅ......。」

 

 

 トーカティブの調査は、シュエンによる強制で推し進められ、結果的に部隊は壊滅、偶然見つかった車両で運ばれて助かったミハラとユニ。そして、シュエンの情報統制と黙認によって、ワードレスが作戦に参加した事実が見つからない事で、ミハラとユニに対する処罰は無く、結果的にラピだけにエニックの処罰が下された。

 

 もしワードレスが作戦参加していた事実が見つかれば、ミハラとユニも記憶消去を受けていた可能性があった。結局自分たちだけが助かり、ラピだけに責任を負わせて、夏油、アニス、ネオンに心の傷を付けてしまった。ミハラとユニは夏油の復帰に喜んではいたが、その実ずっと後ろめたさを感じていた。

 

 すぐにでも謝り、罰を受けるべきだと分かっていても、今更謝ったところで許して貰えるとも限らない。日を重ねるごとに二人の罪悪感は重くなり、圧し潰されそうに肥大化していた。今二人は、巨大な十字架を背負い続けている、そして今後も重くなり、生涯背負っていくのだと考え続けていた。

 

 二人の事など知った事ではないし、それどころではないシュエンに、夏油はここに訪れた訳を尋ねる。

 

 

夏油「何の御用ですか?」

 

シュエン「幾ら必要かしら?」

 

夏油「...はい?」

 

シュエン「お金、幾ら必要なのか聞いてるのよ。」

 

 

 宿所に訪れた理由について聞いた夏油だが、シュエンはいきなり金銭交渉を持ち掛ける。何の話なのか分からないと装って、何の話なのかを話題を変えて質問する。質問に対して、シュエンは帰還後の報告で話していたある物の取引を行おうとしていた。

 

 

夏油「...何故お金の話に? 一体何の話をしているのです??」

 

シュエン「アンチェインド、幾ら払ったら渡してくれるの? 言って、言い値で払うから。」

 

イングリット「何処から聞いた? その情報は。」

 

シュエン「私もCEOだよ。お前(イングリット)とアンダーソンで隠せると思うの?」

 

 

 副指令室で話していた内容が全て筒抜けだった、シュエンはアンチェインドがNIMPHを消去する効力を有し、浸食を排除することができることを知った上で、夏油に取引を持ち掛けていた。イングリットに情報統制できないと伝えた後、夏油に視線を戻して交渉に戻る。

 

 シュエンの言葉は、いつも見たく他人を蔑み挑発する言葉を発するが、今回のシュエンはなりふり構わず、鬼気迫る表情を向けながら一方的に取引しようとする勢いだった。そんなシュエンの様子に動揺することなく、アンチェインドを購入する理由について、今回の任務に同行した分隊の名前を出す。

 

 

シュエン「お前(夏油)、持ってるわね? 私に売りなさい。買うから、売りなさい。」

 

夏油「メティスに使うのですか?」

 

シュエン「そうよ、悪い? NIMPHを殺すらしいわね。じゃあ、浸食状態も治療できるでしょう?

 だから売りなさい。」

 

アニス「...扱いが全然違わない? 差別が酷過ぎるわよ。」

 

シュエン「何?」

 

 

 シュエンの真剣さにちょっと引き気味のアニスが、他のニケとの差別が酷いことを指摘し、アニスの声が耳に届いたのか、シュエンは視線をアニスに移す。アニスは散々ニケを鉄くずと蔑み、こき使ってきた様子から、メティスと対応が異なることをシュエンに話す。

 

 シュエンは、メティスとその他大勢のニケを比較されたのが気に入らないのか、ソファから立ち上がり声を荒げてメティスの特別性を語る。

 

 

アニス「ニケを鉄くず呼ばわりして荒っぽく扱う癖に、何でメティスだけ溺愛するのかしら。

 ただのニケでしょう? 貴方からすれば、メティスも他のニケでも同じじゃないの?

 ミハラとユニが動けなくなった時に何もしなかった癖に、何で今更大切なフリしてるのかしら。」

 

ミハラ「......」

 

ユニ「っ......」

 

シュエン「あの子た(メティス)ちは特別なの。道端で転がってる鉄くずとは全然違うのよ!」

 

アニス「何がそんなに特別なの?」

 

シュエン「そんなのお前とは関係無いでしょ?」

 

 

 アニスとの問答にうんざりしてきたシュエンは、強引に話を止めて再び視線夏油に戻して、アンチェインドの交渉に戻る。机にアタッシュケースを乱雑に置き、中身を見せるように開くと、とても綺麗に並べられたクレジットの山が顔を出す。

 

 その額は1000万を遥かに上回る金額と推定でき、アニスとネオンは改めて三大企業のCEOの財力に圧巻する。ラピは依然と変わらず、夏油も毅然とした態度でシュエンに答える。

 

 

シュエン「夏油傑、アンチェインドを売りなさい。」

 

夏油「無理です。第一、私は以前金や権力に興味が無いと話しましたよね?」

 

シュエン「じゃあ、タダで渡しなさい。」

 

イングリット「...無茶を言うな。」

 

 

 あまりに横暴な要求を提示するシュエンをストップするイングリット、開いたアタッシュケースを閉じて、メティスが起こした問題について話始める。今回の作戦によって発生した被害と損害と、その引責についてシュエンに問い詰める。

 

 

イングリット「あまりにも残酷な言葉だから控えていたが、今回の作戦はメティスが全て台無しにした。

 橋の破壊未遂、浸食されてカウンターズやアブソルートが危険に晒された事。それにより作戦費用が膨らんだだけでなく、私は『最後の切(エクスターナー)り札』まで露出させた。

 これに対する責任はどうやって取るつもりだ?」

 

シュエン「......」

 

 

 イングリットの説教に近い追及に、シュエンは顔を俯きイングリットから背ける。続けて今回の交渉に対しても、シュエンの厚かましさについて指摘し、諦めるように促そうとする。

 

 

イングリット「なのに、アンチェインドを寄越せと? 図々しいにも程がある。」

 

シュエン「じゃあ、あの鉄(ラピ)ずでも貸してちょうだい。」

 

ラピ「??」

 

 

 イングリットの追及から、これ以上アンチェインドでの交渉は不可能だと悟ったシュエンは、ラピに向かって指を指し、譲渡するという条件を提示する。当の本人は疑問符を浮かべているが、先程話した内容をその場で暴露する。

 

 

シュエン「アンチェインドに曝露されたって? だから記憶消去も効かなかったし、浸食もされなかったそうじゃない?」

 

ラピ「!!」

 

ミハラ「!?」

 

ユニ「えっ...?

 

 

 副指令室での極秘とされる報告の内容を、ある情報ルートの中から入手したシュエンは、アンチェインドに曝露されたラピをターゲットに切り替え、確認次いでにこの場でラピが浸食、記憶消去が効かない事を明かす。

 

 ラピの表情は一変、先ほどアンダーソンとイングリットでも規制していた情報でも、シュエンが入手したという発言から、ラピの特異を知りえていた可能性がある事を失念していた。同様にミハラとユニは、ラピに記憶消去が効かないという事実を知って、驚愕し鳩が豆鉄砲を食ったような表情を見せる。

 

 当然この暴露に対して、イングリットは機密情報を安易に明かすシュエンに怒りを向ける。しかし、イングリットが眼中に無いのか、続けてイングリットが請け負う予定のラピの調査を、ミシリスの技術、費用を含め全て提供、負担する上でラピの身柄を譲渡するように持ち掛ける。

 

 

イングリット「貴様...! 極秘情報を勝手に喋るな!!」

 

シュエン「調査は全部私がやる。費用も何もかも私が持つから、貸してちょうだい。」

 

夏油「お断りします。」

 

シュエン「むっ...!」

 

 

 それでも夏油は首を縦に振らない、丁重にお断りした夏油に対しても苛立ちを感じ始めたシュエンは、真剣な表情が一変して怒り心頭の顔を夏油に晒しながら、メティスの救助を優先する重要性について怒鳴りながら語り始める。

 

 

シュエン「ちょっと! 何が問題なの! 私がこんなに頼んでいるのに!!

 お前のような分際で私を無視するの!? お金でも何でもあげるって言ってるでしょう!!

 あの子た(メティス)ちを助けないといけないの! これがどんなに重要なことか、分からないの!?」

 

 

 切実にメティスを救いたいというシュエンの言葉は、自分の大切なモノが離れていくという危機感から発露したものだ。エゴではあるが誰にでも該当し、誰しも大切なモノがあり、失うことは何よりの苦痛でもある。場合によっては己の存在以上に耐えられないモノも存在する。

 

 傍から見たら少女の癇癪に見えるが、シュエンなりの命乞いとも取れる言葉で、彼女は生まれて初めて、見下した人に懇願している。それでも夏油の返答は変わらない。

 

 

夏油「お気持ちは心中お察しします。ですが、今は無理です。」

 

シュエン「っ.......!!」

 

 

 シュエンが救いたいと懇願しているメティスがあるように、夏油にも救いたい存在がいる。こうなると人数の問題ではない、同じ目的で必要とし、同じように助けたい。二人の条件は等しく誰にも比較することはできず、当事者同士のエゴの衝突である。

 

 最初から交渉が破綻した事に気づいたシュエンは立ち上がり、己のエゴを突き通すために背後にいたミハラに向けて、怒気を含めた声を響かせながら命令を下す。

 

 

シュエン「ミハラ!」

 

ミハラ「...はい。」

 

シュエン「感覚を交換して自害しなさい! 頭を壊して!!」

 

ミハラ「っ...」

 

ユニ「!?...ダメ!」

 

イングリット「いい加減にしろ!!

 

 

 ユニが反射的にミハラの利き腕にしがみつき止めて、イングリットがシュエンの怒鳴り声をかき消す声量の怒号が部屋中に反響する。気圧されたシュエンは必死の抵抗で、イングリットを睨みつけ強行しようとするが、イングリットは先ほどの怒りを感じさせない表情で、シュエンを諭すようにかたりかける。

 

 

シュエン「邪魔しないでよ、おばさん...!」

 

イングリット「お前を助けているのだ、この間抜け。」

 

シュエン「......」

 

 

 今この場でシュエンの命令で夏油を殺した場合、メティスどころの騒ぎでは無くなってしまう。間接的にミハラが殺人を強行したと供述しても、噓と断じる証人はシュエンとミハラを除いた全員である。

 

 加えて、イングリットとアンダーソンの配慮で、エリアHに向かう前に支援物資と共に防犯カメラが設置されている。証拠も揃っている以上、特殊別働隊の指揮官を殺害したシュエンには、責任追及が後を絶たなくなり、メティスを蘇生しても会社の存続はほぼ不可能になるだろう。

 

 八方塞がりのこの状況に、シュエンはただ静かに項垂れていた。アンチェインドと曝露したラピは手に入らない、かと言って強奪したら会社の運営が絶望的になる。メティスか会社か、どちらもシュエンにとっては必要であり、最悪の板挟みにあった。

 

 項垂れているシュエンに、夏油は静かに立ち上がり近づきながら声をかける。

 

 

夏油「...私が調べてみます。」

 

シュエン「...は?」

 

 

 夏油が語り掛けた言葉は、蔑みでも弱みに付け込むような言葉でも無かった。ただ一言、アンチェインドについての調査を請け負うと言い、シュエンに対して手を差し伸べたのだ。

 

 シュエンは思わず項垂れていた顔を上げて、夏油の言ったことが聞き取れなかったのか、意味が分からなかったのか疑問を抱いている。対して、夏油は続けてシュエンに語りかけ、シュエンも夏油の話を静かに聞き始める。

 

 

夏油「メティスを救う方法を見つけます。」

 

シュエン「......」

 

夏油「必ず見つけます、だからもう少しだけ辛抱してください。」

 

シュエン「...それを、信じろって?」

 

夏油「必ず助け出します。」

 

シュエン「......」

 

 

 嘘にも見える夏油の言葉は、シュエンに残された最後の助け舟だった。メティスが復活し、会社も変わらず維持できるという好条件に、縋るほかなかった。

 

 シュエンは再び俯きながら指揮官室の扉まで向かい、最後に気掛かりである要素を排除するように夏油に伝える。

 

 

シュエン「その方法、必ず探し出しなさいよ。

 そしたら土下座でも何でもしてあげるから。

 その代わり、見つけられなかったら...」

 

 

 

私がお前を殺す。

 

 

 

 明確な殺意を込めて、夏油に釘を刺すシュエン。請け負うからには絶対に成し遂げて貰う、果たせなかった暁には、己の意思で、己の手で、人を殺める決意を向けた。

 

 シュエンの発言にイングリットは眉を顰めるが、夏油は気にも留めない様子でシュエンに告げる。

 

 

夏油「私の目的を果たせたら、こちら(アンチェインド)は貴方にお譲りします。」

 

ラピ「っ...!?」

 

アニス「は!?」

 

ネオン「師匠!?」

 

夏油「これの効果が一度限りとは限りません、他の方法が見つからない時は貴方に譲渡することを、重ねて約束します。

 もしアンチェインドの効力が無く、調査してもメティスを救う術が見つからなかった時は、私を殺してください。」

 

シュエン「......。」

 

 

 強い殺意に対して、全く動じる事なく夏油は持っている一発限りのアンチェインドを、目的が達成出来た際に渡すことを加えて条件に出す。夏油が追加で提示した条件に対して、シュエンは話さず頷かずずかずかと歩きながら指揮官室を去っていく。

 

 無茶な条件を受けた夏油に、イングリットは頭を抱えながらどうするのかと問う。

 

 

イングリット「...一緒に来てよかったが、何故追加で条件を付け加えた?」

 

夏油「今はただ彼女(マリアン)を救う為にアンチェインドが必要なだけです。助からなくとも、私は彼女(マリアン)を殺さなければならない。

 すみません、イングリットさん。あの人が後になっても納得するのはこれしかないと思ったので。」

 

イングリット「次回からは事前に相談して欲しいものだな...」

 

夏油「善処します。」

 

 

 夏油の返答に対して頭を抱えるイングリット、夏油は説得力のない返答を返す。しかし、その返答を良しとしない人物がいた。その人物たちは夏油に急接近して、目前で説教を始める。

 

 

アニス「善処します...じゃないわよ! とんでもない条件受けるなんて!!」

 

ネオン「そうですよ! 師匠はもっと自分を大切にしてください!!」

 

ラピ「アニスとネオンの言う通りです。責任や立場も大切ですが、指揮官一人で背負わないで下さい。

 最後に残される私たちに対する責任は考えているのですか?」

 

夏油「...すまない。」

 

アニス「すまんじゃすまん!!」

 

ネオン「全くですよ!!」

 

 

 イングリットの警告より、ラピたちの 責の方が効果があるとイングリットは感じ、夏油も三人に謝罪するが、アニスがギャグ交じりに苦言を呈し、ネオンもアニスに続いて言及する。

 

 

ユニ「ラ...ラピ...?」

 

ラピ「...ユニ、ミハラ。」

 

ミハラ「シュエンの言ったこと...本当なの?」

 

 

 ラピに声をかけてきたのは、シュエンに取り残されたミハラとユニだった。シュエンの暴露によって、ミハラとユニにもラピの記憶消去が効かないと言っていたが、信じられないという様子で恐る恐る近づき声をかけてきたようだ。

 

 ラピは2人の質問に対して、頷く。

 

 

ラピ「ええ、本当よ。」

 

ユニ「ホント?...ユニのこと覚えてる??」

 

ラピ「ええ、指揮官の膝を枕に寝ていたこともね。」

 

ミハラ・ユニ「「!!」」

 

 

 トーカティブ探索の際、廃墟になった家で野営した際、夜が明けた際にユニが夏油の膝を枕にしていたことを話す。その当時の出来事は全員が目の当たりにしていたが、ユニの追及に対して直ぐに、思い出交じりに返答したことに驚愕する2人。

 

 しかし、記憶があるという裏付けには少々弱く、続けてラピはトーカティブの交戦を振り返りつつ、微笑みながら2人に感謝する。

 

 

ラピ「トーカティブとの交戦時、ミハラの感覚交換で腹部を抉って、ユニが視界を奪ってこちらが一方的に攻撃できる状況を作り出した時、凄い連携だと思った、私たち(カウンターズ)だけだと、もっと被害が悪化していた筈だから。

 ありがとう、二人とも。...あの時は信じられなかったけど、今度一緒に行動する時は、分隊の再構成についての話について話してくれる?」

 

ユニ「!!...うん...うん!」

 

ミハラ「ええ...分かったわ。」

 

 

 克明に交戦時の状況や戦闘方法について、詳細に説明するラピ。2人の能力無しでは被害が悪化していたとラピの考えを伝えて感謝する。そして、当時否定的だった分隊の合併についての話を、ラピの方から持ち掛ける。

 

 ユニはラピの腹部に抱き着きながら頷き、ミハラもその申し出を快諾しながら、小さく呟く。

 

 

ミハラよかった...私たちは...誰も傷つけていなかった...。

 

ラピ「誰も貴方たちを責めたりしないわ、だからもう自分を責めなくてもいい。」

 

 

 ラピの一言に、ミハラの目じりに溜まった一筋の涙が零れ落ちるも拭い、ユニはラピに顔をうずめながら、涙腺が決壊したようにぽろぽろと零れ落ちる。その様子を静かに見つめるアニスとネオン、そして夏油とイングリット、彼女たちが背負っていた十字架は、蜃気楼のように露と消えた。

 

 嘗ては夏油も同じように感情が決壊して、これまで抱えてきたものを吐き出した。自分の信じるモノが、自分の中の指標が、自分が信じるべき大義が分からなくなり、己の行動を悔いた。2人も自分たちが知らぬ間に、苦しみながら戦ってきたのだと痛感させられる。

 

 ミハラとユニの姿を見ている中、イングリットの携帯電話に通知音が鳴り、2人に背を向けて電話越しに会話する。

 

 

イングリット「私だ...そうか...ああ、それで?...............ああ、分かった。」

 

ネオン「どうしたんですか? 社長??」

 

イングリット「破片の調査が一通り完了した。」

 

 

 イングリットの電話の内容は、回収したヘレティックの破片の調査が完了した事を伝える連絡だったと明かし、夏油たちに一緒に来るように伝える。ミハラとユニは、落ち着いたのかイングリットに問題ないと話す。

 

 

ミハラ「私たちはもう大丈夫、これ以上シュエンを待たせると後が怖いから。」

 

ラピ「無理しないで。」

 

ミハラ「それはお互い様、今度ゆっくり話しましょ。夏油君とのデートの話もまだだしね...♡」

 

アニス「ちょっと待って今聞き捨てならない単語が聞こえたんだけど。どういう事なの指揮官様?」

 

夏油「私も初耳なんだが?」

 

ユニ「またね、みんな。」

 

ネオン「はい、また今度!」

 

 

 ミハラは夏油に貸しが残っていることを告げて指揮官室を出ていく、ミハラの言ったデートという単語に対して過剰に反応するアニスは、夏油に追及という名の尋問を始め、夏油もお礼はするがデートすると言った覚えがないと伝える。ユニは指揮官室にいる全員に向けて手を振りながらさよならを告げて、ミハラの後を追う。

 

 ミハラとユニが去っていくところを、窓越しで確認したイングリットはラピに電話で伝えられた内容を説明する。

 

 

イングリット「ラピ、ヘレティックの破片の調査が一通り終了した。今からM.M.R.*3に向かいたいのだが...」

 

ラピ「私は問題ありません...ですが」

 

ネオン「師匠の不可解な力も気になりますが...」

 

アニス「指揮官様の事は後にしましょ、後でたっぷり聞けるし。」

 

夏油「ありがとう...イングリットさん、今すぐ向かえます。」

 

イングリット「よし、では出発しよう。」

 

 

 宿所に戻った時に、夏油の力に関して問い詰めるつもりだったが、想定よりも早くヘレティックの破片についての調査結果が出た。ラピたちはヘレティックの破片を優先して、調査結果を聞くために宿所からアークの地下にある研究施設、M.M.R.に向かった...

*1
ニケのゲームで

Tier7、8、9に使用されている金属素材

*2
~にさらされること、

直接当たること。

*3
Missilis Military Reserchの略であり、

アークの兵器開発や研究を行っている機関、

及びその機関に所属するニケ部隊を指す。




 完全に話のバランスを間違えた...最終的に詰め込めるだけ詰め込んだ結果がこんな長文...誠に申し訳ございません。というか、10月28日にはUAが15000を超えてた...凄い人が見ていることに驚いています。尚更休む訳にもいきませんね。

 とうとうニケも三周年になりましたね、虹チケットが30日に10枚贈られるわ、シュミレーターと総力戦報酬2倍とかとんでもない事になって、頭ショートしそうです。



にけ さんぽ




 エリアHに向かう前、アークのスーパーマーケットで、日用品を購入ついで、帰りに前哨基地の図書館に寄って本を読んでいた時の事...
夏油の手と前の机には、アーク設立までの歴史が記された文書が開かれている。


夏油(...現在からおよそ100年前に建造された地下都市であり、1000万人が居住する人類最後の生存地...
 元々は核戦争を予見して建設していたバンカーを、ラプチャー襲撃時に用途が地下都市に変わり、建設にはミシリス、エリシオン、テトラの三大企業が携わったことで、絶大な権力を手に入れた...
 私の世界の総人口は、大体76億人...その中から1000万人となると大体0.13%の人間を選別する必要がある。詳細な数は分からないが、実際にアークの居住権を手に入れる為に争い、多くの血が流れた...か。)


 他にも、アークの候補地は現在の一つのみだけではなく、複数存在し資材が集約されて建設を試みたそうだが、どれもラプチャーの襲撃によって壊滅。それらの場所をロストセクターを呼称し、集まった資源や遺された技術は貴重であり、その地域の奪還と回収も、指揮官とニケたちの任務となっている。


夏油(そしてラプチャーの侵攻が苛烈化し、その対処として入口を封鎖する作戦を決行...当時主力だったゴッデス部隊を動員して、アークガーディアン作戦の後、ゴッデス部隊のメンバーは全員死亡......
 今分かるのはこれくらいか...しかし、いくらアークの技術力が優れているとしても、アーク内部や地上周辺に発電設備が無かったが、一体何処でエネルギーを賄っているんだ?)


 これまで、何度もアークの各所を見て回ってきたが、これといって発電施設のような建物は無く、居住区かオフィス、飲食店に警察署、病院といった必要な施設が立ち並んでいた。地下で居住を築き、外のような気候を再現した映像も天井に設置されているが、維持に莫大なエネルギーを要することは想像できる。

 しかし、太陽光、風力、水力は外の環境があってこそ効果を発揮する為、候補から除外される。

 地熱、火力、原子力は発電施設が見られない点と、地熱は地下にマグマに温められた水が無ければ機能せず、限られた資源で燃料を火力に使用すると考えにくく、排気ガスの換気に電気を使う必要があるとすると釣り合わないと考え、原子力は万が一の被害で人間が密集するこの環境で推進すると考え辛いという結論になった。

 結局、何を動力にして発電しているのか、全く分からないまま読書を終えようとする夏油。



ギロチン「くっくっくっ...よもやここで会えるとはな...



夏油(騒がしい人が来たな...気づかないフリしてもう少し読書しよう。)


 夏油の背後にギロチンがやって来るが、夏油は無視して机に置いてある既に読んだ本を手に取り、読み始める。ギロチンは反応が無いことに疑問を抱きつつも続けて声を掛ける。



ギロチン「我を追う『組織』の手先...! 久方ぶりだな、こうして相見えるとは...


夏油(そろそろ昼時か、献立は何にしようか?)


ギロチン「だがこうして会ったからには、戦うのがこの世の(サガ)...!!


夏油(そろそろカセットコンロのガスも無くなってきたから、また買い足す必要がありそうだ。)


ギロチン「我々も...開放されるべきだよな...??



 そう言ってギロチンは夏油の肩に手を添えて、語りかける。夏油は自分に対して話しているのではない可能性が潰えて溜息を零す。


夏油「はぁ...私に何か用でも?」


ギロチン「惚ける必要はもう無い、我々は今日、会うべくして逢った。それだけのこと、こちらも『組織』との因縁を断ち切る為に戦うという理由がある。


夏油「帰っていいですか?」


ギロチン「奴らの手がかりを、そうみすみす逃がすわけ無いだろう? さあ、決着をつけようではないか。10年と続いた、我々の因縁を...!


夏油「今日が初対面ですよね?」


ギロチン「ここでは人目に付く、付いて来い。



 言われるまま夏油はギロチンの後に続き、人気の少ない路地裏に入る。ギロチンは太陽の光を背にして夏油を見据え、右手に眼帯を添える構え?を取って夏油に宣戦布告する。



ギロチン「貴様は、『組織』の統制によって記憶が無くなってしまった。しかし、貴様が忘れても、我は貴様との死闘を片時も忘れた事は無い。


夏油「そうですか。」



ギロチン「今度こそ貴様を倒し、『組織』の手がかりを手に入れる...さあ...来...


メイデン「何をしているのですか?」

ギロチン「いや...実は『組織』に組する者を...」

メイデン「イングリットさんの書類にあった写真を見て、探していたのですよね?」

夏油(エリシオンに所属しているのか...)

ギロチン「そうだ、『組織』の一員ならば、何か情報を...」

メイデン「私たちはあくまで、前哨基地の視察に来たんですよ。社長は彼のことを知っていますし、探す必要もありません。」

ギロチン「いやしかし...」

メイデン「それとも...私の仕事をこれ以上に増やすのに、納得のいく説明ができるのですか??

ギロチン「......」

メイデン「はぁ...分かったら彼に謝って下さい。」

ギロチン「ああ...すまなかった。」(夏油にペコリと頭を下げる。)

メイデン「申し訳ありません、指揮官。」

夏油「私は気にしていないよ、君たちは?」

メイデン「重ねて謝罪を...私たちの事についての追及は避けて頂きたいのです。」

夏油「そうか、分かった。私もこれ以上干渉しないよ、視察頑張ってくれ。」

メイデン「はい、ありがとうございます。」


 メイデンが感謝した後、夏油の携帯電話から通知が届く。エクシアからの通話のようだ。


夏油「私だ、どうしたんだい? 君の方からかけてくるなんて珍しいね。」

エクシア『ようやくメンタルも安定してきたので~...久しぶりに初心者さんと遊ぼうと思いまして...』

夏油「そうか、じゃあ久しぶりにファイナルクエストでもするかい?」

メイデン「...?」

エクシア『メンタル最悪で何日も開けてしまったので...デイリークエストに付き合って貰えませんか~...?』

夏油「分かった、これから宿所に戻るから少し待てるかい?」

エクシア『こちらもウォーミングアップがてらプレイしてますので...準備ができたらチャットしてくださ~い...。』

夏油「ああ、今から準備するよ。」


 エクシアとの通話を終えた夏油は、携帯電話を懐に戻しメイデンとギロチンに顔を向き直ると、メイデンが頭を傾げていた。


メイデン「ファイナル...クエスト...??」

夏油「ん?...ああ、スマホのゲームアプリでね。君も遊んでいるのかい?」

メイデン「いえ、広告は見たことあるのですが......楽しいのですか?」

夏油「まあね、皆いい人で下手な私でもアドバイスをくれたり、フォローしてくれる。このゲームを始めて、新たなコミュニティを見つけられたと思っているよ。」

メイデン「...あの...宜しければ...私も参加していいですか?」

夏油「?? 構わないが、視察があるんじゃなかったか?」

メイデン「直ぐに終わらせて来ます、宿所を目指せばいいのですよね?」

夏油「あ、ああ...じゃあ準備して待っているよ。」

メイデン「はい、ありがとうございます。」


 その後、視察を終えた後にギロチンは帰宅、メイデンは日中まで指揮官室に入り浸り、夏油はスマホ、メイデンは指揮官室のパソコンを使って、エクシアと共にデイリークエストを消化した。初心者であるメイデンは、ミスする度にチャットに謝罪を書き込んでいたが、タンカーとして筋が良いと評価されて、みるみるうちに力を身に着けていった。

 翌日には自宅にゲーム環境を整え、アカウント名をブラックローズとして作成し、本格的な活動を開始。治癒の風、銃術師修正希望、ジャンプこそが生きる道の三名とギルドメンバーとして活発化していく...


サイ○ミュ「初心者さん...初心者さんにも良い所はありますよ~...タンカーとしてはブラックローズさんの方が一枚どころか7、8枚上ですけど...」

ざる蕎麦「それフォローになってないよね?」










ネオン「いきなり次回予告〜!!」

ラピ「本当にいきなりね。」

アニス「今までしてこなかったのに何で急に始めた訳?」

夏油「次回から始まる第8章が、作者の中でかなり重要みたいでね。
 それは建前で、本当はアニメの次回予告見たら作りたくなったんだそうだ。」

ネオン「凄い軽い理由ですね。」

ラピ「この作品も見切り発射で作られたから。」

アニス「じゃあ今後も次回予告入れるの?」

夏油「タイトル考える時間がかなりかかるのと、最近忙しくなるから第8章までらしい。」

アニス「継続しなさいよ、ここまで続けてきたんだから...」(≖ࡇ≖)


ラピ「次回。 始動、奇跡か 道理か 最良か 最悪か」


アニス「このタイトルって...」(≖ࡇ≖)

夏油「知ってる人は気付くかも。」

ネオン「詳しくは『呪術廻戦 25巻 PV』で検索して見てください!」
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